IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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一度会ってますが


意図せぬ対面

 一夏に相談したい事が出来たので、千冬と箒は一夏の部屋を訪れようと立ち入り禁止区域に近づいていた。

 

「毎回思うんだが、先に連絡した方が良いんじゃないのか? 一夏さんだって、毎回部屋にいるとは決まってないんだし」

 

「いきなり行って驚かしたいだろ」

 

「一夏さんなら、気配で私たちが近づいてるのに気づきそうだが」

 

「それはあり得るな」

 

「じゃあお前の計画は最初から頓挫してるじゃないか……」

 

「そう言われればそうだな」

 

 

 まったく考えていなかった千冬に、箒は盛大にため息を吐いた。

 

「そもそも、私たちだって関係者では無いんだから、近づいたら怒られるだろうが」

 

「私は一夏兄の妹で関係者だ。お前だって、妹みたいなものだろ?」

 

「それはそうだが……いや、そうじゃないと思うんだが」

 

「お前とこんなところで時間を無駄にするつもりは無いから、怒られるのが怖いならお前は部屋にいて良いぞ」

 

「お前一人で一夏さんの所に行けば、絶対に何かやらかすだろうが! そうなると私まで責任を取らされるかもしれないだろうが! お前の監督不行き届きで」

 

「何時からお前が私の保護者になってるんだ!」

 

 

 二人は大声で言い争いを始める――何時の間にか一夏が側にいるのにも気づかずに。

 

「やかましいぞ小娘共」

 

「「げっ、一夏兄(さん)」」

 

「学校では織斑先生だ」

 

 

 持っていたファイルで二人の頭を叩くと、一夏の背後から二人に同情するような息遣いが聞こえてきたので、二人は痛がるのも忘れて一夏の背後に視線を向けた。

 

「簪と本音のお姉さんたち? 何故一夏兄の部屋から二人が出てきたんですか! まさかとは思いますが、一夏兄に異性として近づこうとしてるんですか? それだったら――」

 

「お前は黙ってろ」

 

 

 楯無と虚に噛みつこうとした千冬の頭に、もう一撃一夏からの制裁が下される。先ほどより強めだったのか、千冬はその場に蹲り、箒までもが息を呑んだ。

 

「それでは更識、布仏。くれぐれも慎重にな」

 

「は、はい……お邪魔しました」

 

「お疲れさまでした」

 

 

 蹲る千冬の横をすり抜け、一夏に挨拶をしてから去っていった二人を見送り、箒は視線を一夏に戻した。

 

「それで、お前らは何の用でここに来たんだ」

 

「それは……今の二人について聞こうと思いまして……本音に聞いてもイマイチ要領を得なかったものでして」

 

「更識楯無と布仏虚。現在生徒会に属している三人の内の二人で、楯無の方はロシアの国家代表でもある。お前らの友人、更識簪と布仏本音の姉だ」

 

「それは知っていますが……四ヶ月この学園で生活をして、あの二人を見かけたことが無いのはおかしいのではないかと思いまして……上級生と交流する機会など滅多にないので、話したことがないというのは納得出来たのですが、一度くらいすれ違っても良いのではないかと思いまして」

 

「更識姉は国家代表として、しょっちゅう海外を飛び回っていたから、一学期は殆ど学園に顔を出していない。布仏姉の方も、更識の実家の方の仕事で休みがちだったから、お前らと会ってなくても当然だと思うぞ。実際、新入生で更識姉と布仏姉を学園で見た事あるのは、更識妹と布仏妹くらいだろうからな」

 

「だけど、一夏兄と頻繁に会ってるみたいだって本音が言ってたよ」

 

 

 漸く痛みから脱する事が出来た千冬が、立ち上がりながら一夏に問いかける。楯無と虚がいなくなったことで、名前呼びは大目に見てもらえたのだろうと、箒は千冬が叩かれなかった理由をそう解釈した。

 

「更識姉とはギブアンドテイクの関係だからな。こちらを手伝ってもらったり、向こうの相談に乗ったりと、顔を合わせる機会は多かったのは確かだが、ただそれだけだ」

 

「ですが、簪のお姉さんは大人を信用していないと聞いたことがあります。その彼女が一夏さんに懐いているのはどうしてでしょうか? 確かに一夏さんは信用出来る人ですが、それは私が一夏さんの事を昔から知っているからで――」

 

「アイツとも付き合いが長いから、だろうな」

 

「どういう事? 一夏兄は簪のお姉さんと何時からお付き合いしてるのさ!」

 

「そういう『付き合い』じゃない」

 

 

 盛大に勘違いした千冬にツッコミを入れてから、一夏は楯無との過去を話せる範囲で二人に話した。

 

「簡単な事だったんですね……元日本代表候補生である簪のお姉さんが、国家代表だった一夏さんと面識があるのは当然。聞いたことがあったかもしれないのを私たちが忘れていただけでしたか」

 

「……とりあえず納得したけど、一夏兄と生徒会長が付き合うのは絶対に反対! 一夏兄にはもっと落ち着いた感じの人が良いと思うし、何より生徒と教師の恋愛なんて絶対に駄目だからね!」

 

「俺とアイツが付き合うわけ無いだろうが」

 

「一夏兄にそのつもりが無くても、向こうにはありそうだった」

 

「すみません、一夏さん。コイツはこっちで引き取りますので!」

 

「おい! 離せ箒! おいってば!」

 

 

 箒に引きずられていく千冬を、一夏は呆れた表情で見送ったのだった。




相変わらずのブラコン……
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