IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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可哀想な人が一名ほど……


千冬たちの計画

 一夏の誕生日の事は、当然の如く楯無以外の女子も知っており、頭を悩ませている子らがいる。

 

「さて、一夏さんの誕生日に何をするかだけど」

 

「毎年この議題が上がってるわよね? あたしが中国にいた時は二人でやってたわけ?」

 

「当然だろ。この件は最重要案件であり、毎年趣向を凝らす必要があるのだ」

 

「これに付き合わされるアンタも大変よね」

 

「もう慣れてる……というか、悲しくなるから同情するな」

 

「ゴメン……」

 

 

 頭を悩ませているのは千冬一人で、箒と鈴はそんな千冬に頭を悩ませているのだが、なんだかんだで千冬に付き合うあたり、この二人の人の好さが分かるだろう。

 

「それで、去年は何かしたの? 確か千冬が誘拐された後から今年の四月まで、一夏さんの所在が分からなかったんじゃなかったっけ?」

 

「だから箒と二人でお祝いのメッセージを送ったりしただけだ」

 

「あの恰好で写真を撮ると言い出した時は、本気で殺そうかと思ったぞ」

 

「どんな格好よ」

 

「束さんが考案した、生まれたままの姿を写真に収め、それを一夏兄に見てもらおうと――」

 

「そんなことしたら、一夏さんに怒られるに決まってるじゃないの。というか、あんたもそれくらい気づきなさいよね!」

 

「そう言われればそうだな……だが、あの時は妙案だと思ったんだ」

 

 

 何故そう思ったのか、千冬本人も理解していないが、箒が全力で止めた為にその案は却下され、結局普通の写真を送っただけにとどまったのだ。

 

『失礼する。千冬はいるか?』

 

「ラウラか? 開いてるから入ってこい」

 

『お邪魔します』

 

「シャルロットも一緒か」

 

 

 気配で二人が近づいてきている事には気が付いていたが、いったい何の用だと千冬は首をひねる。その横では箒が何となく察しがついている表情を浮かべている。

 

「一夏教官の誕生日に何をプレゼントすればいいかの相談に来たのだが」

 

「何故お前が一夏兄の誕生日を知っている?」

 

「ドイツでお世話になっていた時にお祝いしたから。まぁあの時は大したお祝いも出来ずに申し訳ない気持ちでいっぱいだったが」

 

「私がいない間に一夏兄の誕生日を祝った、だと……」

 

「落ち着け千冬。ラウラだけじゃなく、一夏さんが指導していた軍全体がお祝いしたという事だろ」

 

「確か一夏兄が指導していた部隊は、女性だけで編成されていたんだよな?」

 

「あぁ。我が黒兎部隊は女のみで編成されている。それがどうかしたのか?」

 

 

 特に悪びれた様子の無いラウラの返答に、箒は頭を抱えたくなった。せっかく誤魔化したのに、ラウラがあっさりと燃料を追加した事に頭痛を覚えたのだろうと、鈴は同情的な視線を箒に向けた。

 

「ちょっと出かけてくる」

 

「何処に行くつもりだ」

 

「束さんと協力して、世界地図からドイツという国を消してくるだけだ。なに、一日もかからないだろうから、心配するな」

 

「そんな心配はしていない! というか、どれだけ一夏さんに女性が近づく事を許せないんだお前は!」

 

「一夏兄に相応しいかどうかを私と束さんで決めると昔約束したんだ!」

 

「その約束、一夏さんは知らないだろうが! どうせお前と姉さんが勝手に決めて、そして理不尽な評価を下してるだけだろうが」

 

「それの何が悪い! 一夏兄に近づこうとする害虫は駆除するに限る! これが私と束さんの正義だ」

 

 

 ここまで言い切られると、さすがの箒も開いた口がふさがらなくなってしまう。ラウラは何故か千冬の意見に共感しており、鈴とシャルロットは我関せずの姿勢を貫き通す為に、わざと三人の方とは違う方に視線を向け、何もない虚空を見つめていた。

 

「一夏さんの事よりまずは自分の事だろうが……姉さんもだが、お前だって何時までも一夏さんの側にいられるわけじゃないんだぞ?」

 

「私は一生一夏兄の側で生活する! これは決定事項であり、何人たりとも犯す事の出来ない権利だ」

 

「いい加減兄離れしたらどうなんだ? お前が立派に自立すれば、一夏さんの悩みの種が一つなくなるんだ。こんないい兄孝行は無いぞ?」

 

「一夏兄のためになるのは良いが、私が一夏兄から離れたら一夏兄に悪い虫が沢山集るではないか! そうなったら余計に煩わしい思いをさせる事に――」

 

「一夏さんならそれくらい自分の力で払えると思うが。というか、お前や姉さんよりよっぽど人を見る目が備わっていると思うぞ」

 

「あっ、それはあたしもそう思うわね」

 

「ボクも」

 

 

 無関心を貫き通していた二人ですら、箒の意見に賛同してきたので、千冬は反論しようとして言葉が見つからず口をパクパクさせるだけになってしまった。

 

「兎に角だ。一夏さんに迷惑を掛けて嫌われたくないのなら、大人しくお祝いだけに留めておくんだな」

 

「一夏兄に嫌われる、だと……そんなことがあっていいわけ無いだろうが!」

 

「はぁ……毎年言ってるのに、何でこの時期になると忘れるんだか」

 

「大変ね、あんたも」

 

「だから同情するなと言っている……」

 

 

 鈴に肩を叩かれ、箒は盛大にため息を吐きながらガックシと肩を落とすのだった。




同情したくなる箒の立場……
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