IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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いい先生だ


文化祭準備期間

 学園内が文化祭の準備で盛り上がっている中、簪は一人ぼんやりと外を眺めていた。簪が所属している四組の出し物は、ISについての説明の展示という、全く盛り上がらない内容の出し物に決まっており、簪の仕事はその展示物を作る事だった。それも既に終えてしまい、展示を手伝おうとしたのだが、クラスメイトから「休んでていい」と言われてしまったので、こうして廊下から外を眺めているのだった。

 

「退屈だな……一応授業中って事になってるから何処かに行くわけにもいかないし……」

 

 

 クラス代表でもあるので、この場から離れるのは得策ではないと簪は思っている。今はある意味自由時間でもあるのだが、根が真面目である簪にとっては、普段通り授業時間だと感じているのだった。

 

「随分と暇そうだな、更識妹」

 

「織斑先生……」

 

「確かお前のクラスは展示だったな。手伝わなくて良いのか?」

 

「私の分の仕事はもうないそうです」

 

 

 一夏が視線で理由を聞いてきたので、簪は自分の仕事が展示物を作る事だったと説明する。

 

「なるほどな。専用機を一から組み立てたお前なら、分かり易い解説が出来ると考えたわけか。やる気がないように見えて、四組も考えているというわけか」

 

「どうなんでしょうね。当日は遊びたいから展示にしたんだと思いますけど」

 

「文化祭なんだから遊んでもいいとは思うが、簪は何がしたかったんだ?」

 

 

 急に名前で呼ばれ、簪は少し焦ったが、一夏が周囲への警戒を怠るとも思えなかったので、気にしないことにした。むしろ名前で呼んでもらえてうれしかったのだ。

 

「特に何がしたかった、という思いは無いのですが……当日暇だと、お姉ちゃん辺りに連れまわされそうで怖いんですよね」

 

「あれでも生徒会長だからな。当日暇してるとは思えないが……刀奈なら虚の目を盗んでサボる、くらいしそうだからな。こちらでも監視の目を増やしておこう」

 

「織斑先生が目を光らせていれば、さすがのお姉ちゃんもサボれないと思うんですが」

 

「ずっと付きっ切りというわけにもいかないからな。来賓の相手などをしなければいけないから」

 

「クラスの出し物のチェックなどはしないのですか?」

 

「そっちは真耶に任せてあるからな。メイド喫茶のチェックなど、男の俺がやっても気づかない点が多いだろうしな」

 

 

 一夏の言葉に、簪は「そうかな」と首を傾げた。確かに一夏のように真面目に生きている人間には縁がないかもしれないが、メイド喫茶の客の大半は男なのではないかと思い、そう考えるとメイドの駄目な部分などは、女性より男性の方が気づくのではないかと。

 

「何か言いたげだな」

 

「いえ……織斑先生に見てもらいたと思ってる子たちも、いるんじゃないかなって」

 

「元々人をダシに使おうとしていた連中だからな。付き合ってやる筋合いはない。それに、一年一組の出し物はメイド喫茶(織斑先生には手伝ってもらわない)だからな。俺がクラスに顔を出した時点で、この申請がウソになりかねない」

 

「そこまで厳しくは無いと思いますけど……まぁ、織斑先生が顔を出したら騒がしくなったり、一気に客が増えたりしそうですからね……」

 

 

 一夏がIS学園に勤めている事は、少し調べればわかることだ。それ目当てでやってくる人間も少なくないだろうと簪は思っている。いくら招待状が無ければ入れないとはいえ、内部に知り合いがいれば結構簡単に入れるのだから。

 

「そういうわけで、文化祭期間はこうして見回りに時間をさけるというわけだ」

 

「私も似たような状況だから、声をかけてくれたんですか?」

 

「単純に窓の外を見ていたから声をかけただけだ。まさかする事が無くて黄昏ていたとは思わなかった」

 

「黄昏てたわけじゃないんですけどね……でもまぁ、似たような状況でしたし」

 

「する事が無いなら、アリーナで特訓してても良いぞ」

 

「でも、今は授業時間ですし」

 

「今の状況を授業時間と考えるとはな。簪は少し真面目過ぎるようだ」

 

 

 恐らく楯無と比べられているのだろうと、簪は少しムッとした顔を見せたが、一夏にはそのような意図はなく、簪がムッとした理由を別の事だと受け取っていた。

 

「本音が不真面目だとは言わないが、もう少し簪も自由に動いて良いと思うぞ。アリーナの使用許可は俺が出す。誰かに聞かれたらそう答えろ。どうせ誰もアリーナになんていかないだろうがな」

 

「織斑先生、助けてくださーい!」

 

「はぁ……それじゃあな」

 

 

 真耶の叫びにため息を吐きながら、一夏はクラスの方へと向かっていった。残された簪は、頭をポンポンされた事で顔を真っ赤にしながらも、一夏の背中をじっと見つめていた。

 

「もう少し自由に、か……」

 

 

 簪自身も少し思っていた事なので、自分の中で反芻しながらアリーナへと向かう事にしたのだった。




自分がどれだけ想われているのか分かってないのが玉に瑕
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