IS学園・一夏先生   作:猫林13世

231 / 368
怒られると分かってるだろうに……


二人の暴走

 真耶から泣きつかれていた一夏は、こんなことで敵を欺けるのかと心配していたが、本音同様真耶もやれば出来るという事は知っているので、とりあえずはその事を口にはしなかった。

 

「それで、何が原因でこうなったんだ? オルコット、説明しろ」

 

「は、はい……ラウラさんと千冬さんがノリノリで店内の飾りつけをしていたらこうなりまして……」

 

「ボーデヴィッヒ、織斑」

 

「「は、はい」」

 

「弁明があるなら言ってみろ。聞くだけ聞いてやろう」

 

 

 一夏が怒っている事は誰が見ても明らかで、対象となっている千冬とラウラもその事は理解している。だが本人たちは自分が悪い事をしたとは思っていなかったのだ。

 

「私は暗器の素晴らしさを知ってもらおうと思っただけです」

 

「私は一夏兄の素晴らしさを知らしめるためにこうしただけです」

 

「それで教室中に暗器と人の写真を飾ったと?」

 

「「っ!」」

 

 

 底冷えのする殺気を向けられ、千冬とラウラは気を失いそうになったが、一夏がそんな簡単に解放してくれるはずもなく、意識を失わないギリギリのところで殺気を収めた。

 

「即刻片付けろ。それが出来ないなら、俺がお前たちを片付けてやろう」

 

「「はっ! 直ちに片付けます」」

 

 

 軍人のラウラは兎も角、千冬までもが踵を鳴らし、直立不動で敬礼をしたことに真耶は驚きの表情を浮かべ、一夏はため息を吐いた。

 

「オルコット」

 

「は、はいですわ」

 

「こいつらには当日の給仕をやらせろ。また余計な事をされたら準備が滞るだろうしな」

 

「そうさせていただきますわ。ラウラさんは給仕、千冬さんには調理を担当してもらった方がよろしいでしょうし」

 

「そもそも、そういう割り振りじゃなかったのか? 報告書を見た限りでは、そうなっていたが」

 

「暇だから手伝うと言ってくださったのですが、まさかあのような事になるとは……」

 

 

 手伝いたかったのか邪魔をしたかったのか分からない二人の行動に、セシリアは心底疲れ切った笑みを浮かべている。それを見た一夏も、セシリアにつられるように疲れ切った笑みを浮かべ、教室の隅にいた箒とシャルロットに視線を向けた。

 

「篠ノ之、デュノア」

 

「「はい」」

 

「二人の監視と、オルコットの補佐を頼む。恐らくあの二人を御せるのはお前たちだけだろうからな」

 

「ですが、織斑先生が一睨みすれば大人しくなるのでは?」

 

「私は忙しい。この場所に常駐する事は出来ないからな」

 

「分かりました。千冬は私が、ラウラはシャルロットがきっちり制御してみせます」

 

 

 箒の返事にシャルロットも力強く頷いた。それを見聞きした一夏は、二人に対して小さく頷いてから視線を外に向けた。

 

「あの、織斑せんせ~」

 

「何か用か、布仏妹」

 

「ちょっと確認したい事があるので、少しお付き合い願えますか~?」

 

「良いだろう」

 

 

 本音を連れて廊下に出た一夏は、何事かと興味津々で覗いていた生徒たちを一睨みし、大人しく作業に戻らせてから本音と向き合った。

 

「それで、何を確認したいんだ?」

 

「私は本当にかんちゃんの側にいるだけで良いんですか? 護衛として、かんちゃんの身を守る為に何か出来る事は無いかと思ってるんですか」

 

「アイツの安全は楯無が全力で保障するだろうから、お前はいつも通り簪を落ち着かせる役割を全うすればそれで良いんだ。下手に動いたら逆に簪を危険に曝してしまう可能性もあるからな」

 

「ですが……」

 

「小鳥遊やナターシャも裏で動いてくれるんだ。お前が気負う必要は無い。そんなに心配なら、今からアリーナに行って簪の動きを見てくればいい」

 

「かんちゃんの? というか、何で織斑先生はかんちゃんがアリーナにいるって知ってるんですか?」

 

「さっき使用許可を出したからな。廊下で暇そうに黄昏ていたから、そんなに暇ならと提案しただけだ」

 

 

 あっさりとネタ晴らしをした一夏に、本音は敵わないと言いたげに両手を上げて首を振った。

 

「それじゃあちょっとアリーナに行ってきますので、セッシーたちには上手く言っておいてください。生徒会の件で呼び出されたとかなんとか言って」

 

「お前の場合はサボりだが、今回だけは見逃してやる。だから、さっさといって安心してこい」

 

 

 一夏に見送られアリーナへ向かう本音だが、さすがに教師の前で廊下を走るわけにもいかないので、出来る限りの早歩きで廊下を進んでいったのだが、一夏にはのろのろと歩いてるようにしか見えなかった。

 

「本気でサボりたかっただけなんじゃないだろうな?」

 

 

 そんなことを考えながら教室に戻ると、千冬とラウラが飾っていた物が綺麗に無くなっていた。そして箒とシャルロットに指示されながら資材を運ぶ二人の姿を確認してから、一夏は教室を後にした。

 

「とりあえずはこれで大丈夫だろうな。後は当日にどうなるかだ」

 

 

 襲撃されることが分かっているのだから中止にすればいいと進言したのだが、それは出来ないと言われたのでこうするしかないと、一夏は若干の不甲斐なさを覚えながらも意識を集中するのだった。




ラウラは兎も角、千冬は……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。