最後に事件は起こったが、無事に文化祭も終わったという事で、一年一組のメンバーは食堂でお疲れ様会を開いていた。もちろん、簪の看病に勤しんでいる本音は不参加だが。
「最優秀賞は逃しましたが、私たちの出し物は大いに成功したと言える成果を収めました。これも皆さまのお陰ですわ。では、文化祭が終わった事を祝しまして――」
「「「「乾杯!」」」」
セシリアの音頭に合わせてコップを持ち上げ、全員で一気にオレンジジュースを飲み干す。悪ノリでお酒でもという案も出たのだが、学園内で学生が酒など買えるわけもなく、無難にジュースに落ち着いたのだった。
「一夏兄も、今日くらいは見逃してくれるらしいから、思う存分楽しもうではないか」
「おい。一夏さんは『度が過ぎなければ』と言っていたが、全てを許すとは言ってなかっただろうが。お前はどれだけ都合のいい耳をしてるんだ」
「まぁ一夏教官が側にいるというのに、悪ふざけなどする輩はいないだろう。ところで、山田先生は何故涙目なのだ?」
「いえ……結局こういう許可をもらいに行くのは、私ではなく織斑先生なんだと、ちょっと情けない思いをしてるだけですから……」
「た、たまたま織斑先生の方が側にいらっしゃったのでお願いしただけで、山田先生が側にいらしたなら、もちろん山田先生にご相談致しましたわ」
「良いんです、そんな慰め……私だって、私と織斑先生のどちらに相談するかと聞かれれば、織斑先生を選びますから」
泣きながらオレンジジュースを飲む真耶を見て、クラスメイトたちはなんだか居たたまれない気分になり、無理矢理話題を反らした。
「それにしても、まさか四組の出し物が最優秀賞に選ばれるとはね」
「完全にやる気が感じられないから、早々に脱落したと思ってたのに」
「職員室内からの評価が高かったと聞いたけど、マヤヤ、それ本当なの?」
「は、はい……更識さんの作った資料は、そのまま授業で使えるレベルの物でしたし、ISの仕組みなどを詳しく説明してありましたので、新入生獲得に大いに貢献したという判断がされたようです」
「でもさ、こういうのを決めるのって生徒間投票とかじゃ無いわけ? 私たち何も聞かれてないけど」
「今回のは学園外から招かれた人が決める事になってましたから。その中には国家に属している人も多分に含まれてますので、あの資料の評価は妥当かと思われますし、入学希望の学生さんたちからも、更識さんが作った資料は高評価でしたので」
「それじゃあ仕方ないか。まぁ、四組に負けたというよりかは、更識さんに負けたって思えば、いくらか諦めもつくしね~」
「現役の国家代表候補生で、専用機を一人で組み上げるだけの技術力まであるんだもんね」
「それで美少女とか、神様は不公平だよ」
最後のはどうなんだと思ったが、千冬や箒もおおむねクラスメイト達と同じ思いだった。
「簪になら、私たちが勝てなくても仕方ないか」
「何せ一夏兄の後釜として期待されている逸材だからな。我々凡人では歯が立たないだろう」
「千冬や箒が凡人なら、ボクたちはどうなっちゃうのさ」
「お前たちは人とは違った才能がある。そんなお前たちが凡人なわけないだろ」
「そう言われてもな……」
「私たちは昔から、ハイレベルな人たちと比べられて生きてきたからな……自分たちの実力など、あの人たちと比べたら、と思ってしまうのは仕方ないだろ」
「織斑先生と篠ノ之博士が身内って、思ってるより大変なんだね」
世間から見れば、IS界の重鎮の身内など羨むステータスでしかないのだが、実際はかなり苦労しているのだなと、シャルロットはしみじみとそんなことを思ったのだった。
「まぁ今日くらいは忘れて、大いに盛り上がろうではないか。ほら、コップが空だぞ」
「あぁ、すまないな」
「ところで、一夏教官の誕生日だが、そろそろではないのか?」
「文化祭が終わって一週間くらい後だから、確かにそろそろだな。各自、作戦は覚えているな?」
「本当にやるのか? 一夏さん相手にどっきりなど、やる前から失敗だと分かりそうなものだが……」
「こういうのは結果ではなく気持ちが大事なのだ。一夏兄を祝おうとする私たちの気持ちが一夏兄に伝われば、それはすなわち成功と同義なんだ!」
「その考え方もどうかと思うけど……というか、あんな格好して織斑先生が本当に喜ぶと思ってるの?」
「妹の成長を見られるんだ、嬉しいと思ってくれるに決まってるだろうが!」
「じゃあボクたちがする意味は何なのさ……」
千冬が提案してラウラがそれに同調してしまったので、シャルロットではそれを止める事が出来なかった。唯一出来そうな箒だったが、彼女はああなった千冬を止めるのがどれだけ大変かを知っているので、早々に諦めの境地に至っていたため、結局千冬たちの意見を実行しなければいけなくなってしまったのだ。
打ち上げに参加した事なんて無いな……