IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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ブラコンにとって最重要ですからね……


上の空な千冬

 一夏の誕生日を数日後に控え、千冬たちはそわそわと落ち着かない様子で授業に参加していた。

 

「あの、織斑さん? 何かありましたか?」

 

「いえ、山田先生にはあまり関係ない事ですので、気にしないでください」

 

「そう言われましても……さっきから視線をあちこちに動かしてますし、かと思えば虚空を見詰めてますし、気になりますよ」

 

 

 今が授業中だという事を差し引いても、千冬の態度は年上を前にする事ではないだろうと箒は眺めながらそんなことを思っていた。思っているだけでツッコまない辺り、箒も浮かれているのかもしれない。

 

「と、とにかくですね、今は授業中ですから、考え事なら後にしてくれませんか? 織斑さんや篠ノ之さんは、前回の試験でも赤点すれすれだったんですから」

 

「それは分かっていますが、今は勉強に身が入らないんです」

 

「何か悩み事ですか? 私で良ければ相談に乗りますよ?」

 

 

 真耶の申し出は、善意百パーセントなのだが、千冬はそうは受け取らなかった。

 

「貴女に相談して、余計な敵を増やしたくありませんので」

 

「て、敵?」

 

 

 何故自分が千冬の敵になるのか分からない真耶は、泣きそうな表情で千冬から距離を取り、授業を再開しようとして段差に躓き顔面から床に倒れた。

 

「ふにゃっ!?」

 

「ちょっ!? マヤヤ、平気?」

 

「い、痛いです……」

 

「あーあ、真耶ちゃん、鼻血出てるよ」

 

 

 顔面を強打した事で、真耶の鼻から赤い液体が垂れだしているのを、クラスメイトの一人が指摘する。当事者の真耶にとっては笑い事ではないが、その言葉でクラス中に笑いが生じた。

 

「何事だ、やかましい」

 

 

 騒ぎを聞きつけて一夏が教室にやってきたが、真耶の顔を見て何事かと言葉を失ってしまった。

 

「お、織斑せんせぃ……」

 

「何で泣きそうになってるんですか、山田先生?」

 

「うぅ……」

 

「オルコット。何故こうなったのか説明しろ」

 

 

 真耶に説明は無理だと判断して、一夏はセシリアに説明を求めた。一夏に指名されて、セシリアは背筋を伸ばして立ち上がり、状況の説明を始める。

 

「千冬さんが心ここにあらずといった感じだったのを山田先生が心配し、相談に乗ると申し出たのですが、千冬さんがそれを断り、動揺した山田先生が段差に躓いて顔面を強打。立ち上がったところで相川さんが山田先生の鼻血を指摘したところ、笑いが生じてしまったという感じですわ」

 

「ご苦労。ではまず、織斑」

 

「は、はい!」

 

「授業中に心ここにあらずとは、随分と教師をなめているようだな」

 

「そ、そんな事はありません!」

 

 

 一夏の視線に曝され、千冬は背筋に冷たいものを流しながら、何とか怒られないように答えていく。

 

「では、授業よりも大事な事を考えていたというのか?」

 

「はい。この世の何よりも大切な事を考えていました」

 

「学生であるお前が、何よりも大事にしなければいけないのは勉学だと思うのだが? 学費などを自分で出しているならまだしも、私が出しているんだ。三年間でしっかりと卒業してもらわなければ困るのだが?」

 

「仰る通りです! 私が間違っていました」

 

 

 金銭的な問題を出されると、千冬は一夏に頭が上がらなくなる。早く卒業して一夏に恩返しをしたいと常々考えているのに、このままでは余計な負担を掛ける事になると千冬も分かっているので、これに関しては全面的に自分の非を認めたのだ。

 

「それから、教師が鼻血を出したのがそんなに面白いのか? お前ら全員、山田先生をバカにしていると受け取って良いんだな?」

 

「あっ……申し訳ございませんでした、一夏教官! 以後このような事が無いよう、しっかりと指導しておきますので」

 

「ら、ラウラさん? 急にどうしまいましたの?」

 

「黙れ。お前らも今すぐ頭を下げろ! このままでは……」

 

「ボーデヴィッヒ」

 

「は、はひぃ!?」

 

 

 上ずった声で返事をするラウラに、一夏は苦笑い気味に表情を崩して、若干呆れた声音で話しかける。

 

「ここにいる連中は黒兎部隊ではない。お前が全ての責任を感じる必要は無い」

 

「で、ですが……」

 

「山田先生の状況を見て笑ったヤツは、放課後までに反省文五枚。不服のヤツは校庭二十周だ」

 

「そ、そこまでしなくても大丈夫です。私に貫録が無いのは、自分自身が理解してますので……」

 

「そうやって甘やかすからなめられるんです。生徒に近い存在というのはある点から見れば良いのかもしれませんが、山田先生は近すぎてなめられているんですよ。少しは厳しさを見せるべきではありませんか?」

 

「す、すみませんでした……」

 

「オルコット。山田先生を保健室まで。山田先生が戻ってくるまでは自習とする。監視は私がするから、山田先生は安心して治療してきてください」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 一夏の決定に逆らえるはずも無く、真耶はセシリアに支えられながら保健室に向かった。またしても一夏に迷惑を掛けてしまったなと、真耶は保健室までの道中、しょんぼりと肩を落としていたのだった。




ラウラのトラウマが発動しかかったな……
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