IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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みんないい子です


和解

 腰を下ろして早々に立ち上がり、セシリアは二人に頭を下げた。

 

「お二人の事を見くびり、見下して傲慢な態度を取ってしまい、申し訳ございませんでしたわ!」

 

「「………」」

 

「謝って許していただけることだとは思っていませんが、謝らなければ私が私を許せませんし、これから先クラスメイトとして付き合っていくことも難しくなってしまいますもの。謝罪は受け入れなくても構いませんが、謝らせてくださいませ」

 

 

 意を決しての謝罪。セシリアとしても受け入れられるとは到底思えない今までの態度だったので、ある意味自己満足の謝罪だと分かっている。だが謝らなければこれから先、ずっと他人として過ごす事になる。親しい間柄にはなれなくても、普通のクラスメイトとしては付き合っていきたいと思っているので謝罪したのだ。

 

「何を勘違いしているのかは知らないが、私たちは別に怒ってなどいない」

 

「私たちがIS素人なのは紛れもない事実だし、それを言われたからと言って激昂するほど狭量ではないつもりだったんだがな……気にしてたのなら、こちらも謝らなければならないな」

 

「えっ……」

 

「最初から言っているように、私たちはクラス代表に興味など無いからな。人気投票で選ばれた人間より、実力がある人間が代表を務めた方が良いだろ」

 

「ですが、織斑一夏は私に対して憎悪を懐いているように思えましたが……」

 

「一夏兄が?」

 

 

 千冬と箒は互いに顔を合わせ、そして噴き出した。何故二人が噴き出したのかが分からないセシリアがきょとんとした目を二人に向けると、二人はなんとか笑いを抑えて説明を始める。

 

「一夏さんがあの程度で人を憎むわけないだろ」

 

「あれは、一夏兄がお前に反省させるためにした演技だ。さっき聞いた話だが、あの決闘はお前を反省させるために一夏兄が決めたものだ」

 

「私を反省させるために……?」

 

「一夏兄曰く『家の為に必要以上に気を張っていなければいけない』らしいお前は、無意識のうちに他人を見下し、自分を上に見せようとする傾向があったらしい」

 

「………」

 

 

 一夏に家の事情を知られていた事にも驚いたが、たかが数回顔を合わせただけで自分の悪癖を見抜いた一夏に、セシリアは驚いていた。

 

「とにかく、私たちはお前に対して怒りなんて覚えていない。それを気にしているなら、お前の思い込みだ」

 

「まぁ、一夏さんに怒られるかもとは思ったがな」

 

「怒られる? 代表候補生の私に善戦したのですから、褒められるのではありませんか? まぁ、私の実力程度では、褒めるに値しないかもしれませんが……」

 

「今度は随分と卑屈だな……闘ったから分かるが、お前の実力はかなりのものだ」

 

「お前は殆ど自爆だがな」

 

 

 箒がセシリアを褒める横で、千冬が茶々を入れた。その言葉に箒はムッとした表情で千冬を睨んだが、セシリアはそのやり取りに噴き出してしまう。

 

「お二人は本当に仲がよろしいのですね」

 

「生まれた時からの付き合いだからな」

 

「所謂腐れ縁だ」

 

「どうせ幼馴染がつくなら、一夏さんのように聡明でカッコいい男の方が良かったがな」

 

「私だって、お前のような猪武者より、一夏兄のような人の方が良かったさ」

 

 

 互いにいがみ合うと、もう一度セシリアが噴き出した。意図せず笑いを取った二人は、恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「と、とにかくだ! 私たちはオルコットに対して怒ってなどいないし、必要以上に気にするな。まぁ、一夏兄が言っていたことを反省できれば、私たち以外とも話せるだろうしな」

 

「私の事は『セシリア』で構いませんわ」

 

「そうか。じゃあ私たちの事も『千冬』と『箒』で構わない。あまり苗字は好きじゃないしな」

 

「そうなのですか? あの『織斑一夏』と『篠ノ之束』と同じ苗字なのですから、自慢できこそ嫌な思いはしないと思いますが」

 

「その二人と比べ続けられるんだ。嫌にもなるだろ……まぁ、一夏兄も束さんも『気にするだけ無駄』だと言ってくれたし、私たちはあの二人ほど才能に恵まれなかったから、卑屈になることも無かったんだがな」

 

「どういう事ですの?」

 

「張り合うだけ無駄だと思えるだけの差があるから、必要以上に相手にライバル心を懐く事が無かったんだ」

 

「なるほど……」

 

 

 一夏も束も、比較対象としては不適当なほどの実力を有している事は、セシリアにも理解出来る。だからこの二人が必要以上に卑屈になっていない理由にも納得出来たのだ。

 

「一夏兄や束さんのように『気にするな』と言ってくれる人間はそうそういなかったが、セシリアの周りにもいなかったのか?」

 

「いたかもしれませんが、耳を貸してこなかったのかもしれませんわ」

 

「そうか……じゃあ、これからはあんまり気負わないで、気楽にやって行ったらどうだ」

 

「そうしますわ」

 

 

 最後に三人で笑い合って、セシリアは二人の部屋から自分の部屋に帰って行ったのだった。




これでセシリアは落ち着くかな
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