IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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また物騒な話題だ……


パーティーの裏で

 代表決定パーティーで千冬たちが盛り上がっている頃、アリーナ側に数人の人影があった。

 

「一夏さんは参加しないんですか?」

 

「俺がいたら遠慮して盛り上がれないだろうし、騒がしいのは得意じゃないからな」

 

「あの場には本音がいますし、行き過ぎたことにはならないと思いますよ」

 

「お嬢様が何故そこまで本音を信頼しているのか、私には理解出来ません」

 

「あの子、やる時はやる子だから」

 

 

 楯無の答えに、虚は疑っている事を隠そうともしない目で見つめる。なんだか自分が疑われているような気がして、楯無は一夏の背後に隠れる。

 

「それで、何で俺と真耶をこんな時間、こんな場所に呼び出したんだ」

 

「ウチで調べたんですが、篠ノ之束博士をアメリカが血眼になって探しているらしいんです」

 

「それは今更じゃないんですか?」

 

「今まで以上に、ということか」

 

「はい……今のIS学園には箒ちゃんという、篠ノ之博士の身内がいますので、警戒していた方が良いかと思いまして、箒ちゃんのクラスの担任と副担任であるお二人をお呼びしたんです」

 

「他の生徒に聞かれといろいろと面倒になると思い、オルコットさんのクラス代表就任パーティーが行われているこの時に織斑先生と山田先生のお耳に入れようと、お嬢様と決めたのであります」

 

「黛の取材を許可させたのも、それが狙いか」

 

「気づいてたんですね」

 

 

 普通なら薫子の取材に対して一夏が許可を出す事はない。それほどまでに信用していないのだが、今回は少し考える素振りを見せただけですぐに許可したのだ。真耶はその事に引っ掛かりを覚えていたのだが、楯無の言葉で一夏が簡単に許可した理由に納得がいったのだった。

 

「それで、何故今になって束を必要としているんだ?」

 

「そこまではまだ……憶測で良いなら」

 

「構わん」

 

「アメリカのIS開発技術は、ヨーロッパなどに比べると劣っていますから。世界の警察を名乗っている以上、それが認められないのではないかと」

 

「束がそんなことに協力すると思っているなら、アメリカも馬鹿だということだな」

 

 

 自分が興味を持った事にしか手を貸さない束が、そんなくだらない理由でアメリカに手を貸すはずがないと断言出来る一夏は、一瞬にして興味を失った。

 

「一夏さんがそう言うのなら、警戒を強める必要はないですかね?」

 

「あのシスコンが箒に手を上げようとした相手を許すとは思えんしな。何か動きを見せた時点で、世界地図からアメリカが消えてなくなるかもしれん」

 

「……それはそれで警戒すべきなのではありませんか?」

 

「そんなことすれば、俺に怒られると分かっているだろうから、実際にはそこまでしないだろ」

 

「一夏さんは篠ノ之博士の居場所を知っているんですよね? そうならないように釘を刺しておくことは出来ないんですか?」

 

「言って聞くやつなら苦労しない」

 

 

 心底疲れ切ったような雰囲気に、三人は束の傍若無人ぶりに振り回されてきたのだろうと一夏に同情の眼差しを向ける。

 

「話しはこれで終わりか? なら、俺は部屋に戻るが」

 

「もし警戒を強めた方が良いと言われたら、もう少し相談する事があったんですが、一夏さんが気にしないのであれば、このままでいこうと思います」

 

「そうしろ。どうせ実行するだけの度胸など無いのだからな」

 

 

 束と一夏を同時に敵に回す度胸など、アメリカに限らず無いのではないかと真耶は思ったが、それを口にしたら一夏に睨まれるのが分かっていたのか、何も言わずに頷くだけに留めた。

 

「それじゃあ、おやすみなさい、一夏さん」

 

「あぁ。それから、中国からの転校生が近々来るみたいだ」

 

「この時期に転校生ですか?」

 

「また一癖も二癖もありそうなヤツだからな」

 

「もしかしたら、ウチのクラスなんですか?」

 

「それは俺にも分からん」

 

 

 恐らく知っているのだろうが、一夏から物事を聞き出す難しさを身をもって知っている真耶は、気になるという気持ちに強引に蓋をして自分も寮長室に戻ることにした。

 

「……真耶さんを不安にさせて面白いんですか?」

 

「少しは俺に頼るのを止めさせるためにも、自分で考える事を覚えてもらわないとな。何時までも後輩気分では困るんだ」

 

「それはお嬢様にも言える事ですね。最終的に織斑先生が何とかしてくれるという考えは捨てていただかないと」

 

「布仏の言う通りだな。お前も国家代表であり暗部の当主、加えて生徒会長という立場なんだから、必要以上に甘えるのは止めるんだな」

 

「こんな姿虚ちゃんと一夏先輩にしか見せませんけどね」

 

 

 普段気を張っているのだから、少しくらい甘えさせても良いじゃないかと開き直る楯無を見て、一夏と虚は同時にため息を吐いた。

 

「簪が見たらどう思うだろうな」

 

「簪ちゃんの前ではしっかりとしたお姉ちゃんだから大丈夫ですよ」

 

「しっかりとはしていないと思いますがね」

 

「虚ちゃん!? なんか今日毒強くないかな?」

 

 

 虚の毒吐きに驚いたふりをする楯無の頭を軽く撫でて、一夏は部屋に戻っていくのだった。




そろそろ鈴にたどり着くかな……
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