IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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これでも暗部所属ですから


本音の用事

 生徒会室に本音が呼ばれたのは、生徒会の仕事では無かった。

 

「それじゃあ、かんちゃんが狙われる可能性が高いって事ですか?」

 

「そういう事ね。学園にいる限りは安全でしょうけども、しびれを切らした連中が攻め込んできて、一番狙われる可能性が高いのは簪ちゃんよ」

 

「お嬢様や私、本音は最悪の場合が想定されますが、簪お嬢様はそのような事は無いと思われているでしょうから」

 

「私だって経験ないよ~?」

 

「ですが、その覚悟は何時でも出来ていますよね?」

 

「そりゃ、かんちゃんを狙う悪い奴ら相手に容赦するつもりは無いけど」

 

 

 何時もののほほんとした空気ではなく、本音の周りにも真剣な空気が流れている。彼女はそれだけ簪の事を大事に思っており、いざという時は相手を消す覚悟も出来ているのだ。

 

「そういえば、織斑せんせ~に話さなくて良いんですか~?」

 

「一夏先輩には既に話してあるけど、あの人も家の事情とかで忙しいの。ウチの事情に巻き込むのもね……もう十分巻き込んでるんだけど」

 

「ですけど、織斑せんせ~ならそれくらい簡単に出来そうですけどね~。おりむ~のお兄さんとは思えないくらい、要領が良いですし」

 

「織斑さんも貴女には言われたくないでしょうけど」

 

「おね~ちゃん、今はそんな事気にしてちゃダメだって」

 

「本音と千冬ちゃん、どっちが要領がいいかは今は気にしなくてもよさそうね。それじゃあ、くれぐれも簪ちゃんに万が一が無いようにね」

 

「分かりました~!」

 

 

 余っている袖をぱたつかせながら敬礼をし、本音は生徒会室から出ていこうとした。

 

「そういえば、放課後に簪お嬢様と約束があるとか言ってましたが、ちゃんと断りの電話をしたんでしょうね」

 

「……あっ、すっかり忘れてた~」

 

「貴女って子は……」

 

「生徒会の仕事だって言っておけば、とりあえずは信じてくれるし、かんちゃんは必要以上に追及してくる子じゃないから大丈夫だと思うけど」

 

「貴女は友達感覚なのかもしれませんけど、本来私たち姉妹とお嬢様姉妹の関係は主従です。けじめはしっかりとつけるべきです」

 

「おね~ちゃんは真面目過ぎるんだよ~。楯無様だって、おね~ちゃんみたいな態度で四六時中側にいられるより、私のような態度の方が良いですよね~?」

 

「場合によるわね。警戒しなきゃいけないような場面で、本音のような態度でいられると気が散りそう。でもまぁ、普段なら本音のような態度でも良いのかもしれないわね」

 

「私だって警戒してるときは真面目ですよ~?」

 

「貴女は、警戒しててもだらけてるように見えるんです」

 

「それが私の特技だもん」

 

 

 緊張感が走る場面でも、何処か弛緩した空気を纏えるのが本音の特技なのだが、楯無や虚はそんな時くらいはしっかりとして欲しいと願っているのだ。

 

「かんちゃんに不必要な不安を懐かせないための配慮なんですけどね」

 

「その考え方は素晴らしいけど、本当に危ない時くらいはしっかりしてね? 貴女の実力を疑うわけじゃないけど、どうしても心配になっちゃうから」

 

「分かりました~。ですけど、ここで襲われても織斑せんせ~がいてくれますし、私はかんちゃんを安全な場所で守るだけになりそうですけどね~」

 

「ですから、あまり織斑先生を更識の問題に巻き込めないとさっき――」

 

「IS学園が襲撃されるなら、織斑せんせ~だって無関係じゃないでしょ~? あの人はこの学園の教師で、私たちは織斑せんせ~の教え子なんだから。せんせ~が生徒を守るのは当然でしょ~?」

 

「貴女、考えてないようでちゃんと考えてるのね……でも、あんまり一夏先輩に頼るの前提なのも困りものよ? 一夏先輩の方もいろいろと忙しいんだし、一夏先輩の力が借りられない可能性だってあるんだから、その事をしっかりと頭に入れておいてね」

 

「分かってますよ。それじゃあ、私はかんちゃんに謝りに行かないと」

 

 

 廊下をパタパタと走って行った本音を見送り、楯無と虚は同時にため息を吐いた。

 

「本当に分かってるのかしらね、あの子……」

 

「いざという時の覚悟はあるようでしたので、簪お嬢様の身にもしものことがある、という事は無いと思いますけども……」

 

「心配、よねぇ……」

 

 

 先ほど楯無が言ったように、本音の実力を疑っているわけではない。ただ日ごろがあまりにもだらしがないので、いざという時に役に立つのか、という不安が常に付きまとっているのだ。

 

「お嬢様、やはり織斑先生に簪お嬢様の事を気に掛けていただけないでしょうか?」

 

「碧さんがいるんだし、そこまで心配しなくてもいいと思うけどね。一夏先輩だって、生徒全員を気に掛けてくれてるみたいだし」

 

「それはどういう……」

 

「一夏先輩は、常に生徒の気配を把握しているようで、何処で何をしているかだいたいは分かるのよ。もちろん、プライベートを覗き見するような人じゃないから安心して」

 

「それは、お嬢様に言われるまでもなく信頼しておりますので」

 

「虚ちゃんも一夏先輩の事は信じているのね」

 

 

 嬉しい反面、自分もここまで信頼されたいものだと、楯無はこっそりとため息を吐いたのだった。




一夏並みの信頼を勝ち取るには、相当努力しなきゃ……
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