IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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どっちも簪がハブられてる……


疎外感

 特別講義一日目が終わり、千冬と箒は部屋に戻るとすぐベッドに横たわり、消灯時間少し前まで動けずにいた。

 

「まさかこれほど疲れるとはな……」

 

「いかに普段から勉強に身が入っていなかったかという事か……」

 

 

 真耶の授業中に身が入っていない事は自分でも自覚していたのだが、いざ集中して授業を聞くとここまで疲れるのかと、二人は今までの自分の行動を反省し、明日からの講義への憂鬱を募らせた。

 

「これが定期試験まで続くとなると、さすがに体力がもたないかもしれないな」

 

「普通の授業もあってさらにだからな……自業自得とはいえ、これはなかなか辛いな……」

 

「こんな時は、ゆっくりと風呂に浸かって疲れを解かすしかないな」

 

「それは良い考えだが、大浴場まで行くのが大変だろう……私は今、一歩も動きたくない」

 

「それは私もだが……このまま寝たら制服が皺になるし、そうなれば一夏兄に何があったのか一瞬で覚られて怒られてしまうだろうが。多少無理でも鞭打って起き上がった方が良いと思うぞ」

 

「そうかもしれないな……よし!」

 

 

 千冬の言葉に頷いて、箒は自分の身体に鞭を打って立ち上がり、風呂の準備を始める。その隣では、千冬も似たように声を上げてから立ち上がり、多少ぎこちない動きで風呂の準備をしている。

 

「ずっと座って授業を聞いていただけだというのに、ここまで全身に響くとは……」

 

「それだけ普段の授業に集中していなかったという事だろうな……」

 

「こんな時、一夏兄や束さんの頭脳が羨ましいと思うよな」

 

「姉さんも一夏さんも、勉強出来るからな……一夏さんに関しては、勉強以外も凄いが」

 

 

 勉強以外にも、家事、剣術、体術、指導力と、一夏の優れている部分を挙げるとなるときりがないのは箒にも分かっているので、あえて具体例は出さなかった。それは千冬も分かっているので、彼女たちは一夏の凄さを再確認し頷きあう。

 

「姉さんも凄い事は凄いんだが」

 

「あの人はいろいろと残念な部分があるからな……よし、準備出来た」

 

「行くか」

 

 

 風呂の用意が済み、二人は痛む全身にもう一度鞭打って大浴場へ向かう。さすがに誰もいないだろうと思われたが、脱衣所に二人分の服が置いてあるのを見て、千冬と箒は顔を見合わせた。

 

「そろそろ消灯時間だというのに、随分とのんびり風呂に入ってるヤツがいるものだな」

 

「私たちのように、さっきまで死んでたんじゃないのか?」

 

「そんな奴がそうそういるとは思えないが」

 

「まぁ、まだ時間があるわけだし、風呂にいても問題はないんだがな」

 

「それもそうか」

 

 

 自分たちも風呂にやってきておいて疑問視するのもどうかと考えたのか、二人はそれ以上気にすることなく服を脱ぎ始める。

 

「やはり、箒の方がデカいな」

 

「何処を見ているっ!?」

 

 

 途中そんなやり取りが行われたが、何時も以上に疲れているのでそれ以上の事は起こらなかった。

 

「あれ? 千冬に箒……こんな時間からお風呂?」

 

「簪に本音? お前たちこそ、こんな時間にどうしたんだ?」

 

「本音に勉強を教えてたらこんな時間だったんだ」

 

「私たちは、特別講義が終わってからさっきまで、部屋で死んでたんだ」

 

「死んでた? そんなに大変だったの?」

 

「いや、普段から授業に身が入っていなかったつけが回ってきただけだ……」

 

 

 悪いのは自分たちだと自覚しているので、二人は素直にそう表現する。簪も何となく理解出来たので、それ以上は何も聞かなかった。

 

「ところで、何で本音はそこで死んでるんだ?」

 

「ほえ~……口から何かが出そうだよ~……」

 

「テスト範囲の殆どが分からないって言うから、一から教えてたからね。私としては問題ない程度だったんだけど、本音のキャパシティーを超えちゃったみたいだ」

 

「今英単語は聞きたくない……」

 

「ゴメン」

 

 

 どうやら本音が教わっていたのは英語かと、千冬と箒は顔を見合わせて頷きあう。

 

「私たちも似たようなものだからな……」

 

「今数字や化学記号は見たくないな」

 

「そんなものなの?」

 

「簪は普段から勉強しているから分からないだろうが、成績下位者にとってテスト前というのはそういう感じになるんだ」

 

「普段ならこんな時から勉強しないんだが、さすがに補習――下手をすれば留年といわれたらな……」

 

「そんなになの? 確かにちょっと前から二人が勉強してるのは知ってたけど」

 

「勉強って単語も聞きたくない……」

 

「分かる! 分かるぞ!」

 

「本音、お前も同士だったか!」

 

「えっと……私がおかしいの?」

 

 

 本音の言葉に共感出来なかった簪は、何故かそんな事を思ってしまった。どう考えても自分の方が正しいと頭では理解出来ているのだが、そう思わずにはいられない雰囲気がこの場に充満していたからだ。

 

「兎に角、今は風呂でゆっくりと疲れを取るとしよう」

 

「肩凝りも酷いからな」

 

「分かる~」

 

「………」

 

 

 三人の胸と自分の胸を見比べて、簪はこっそりとため息を吐くのだった。




まだまだ成長期だから……
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