IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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そう言えば始めて一ヶ月経ってたな……


夜中の転校生

 クラス代表が決まってからしばらくたち、世間はもうすぐゴールデンウィークという時期に彼女は日本にやってきた。

 

「えっと、事務室ってどこにあるのかしら……」

 

 

 政府の人間ともめにもめた末に転校を許可してもらったまではよかったのだが、いざ出国という時に手続きやら色々とやらされた所為で、日本に到着したのは既に日も堕ちて辺りが暗くなってからだった。

 

「とりあえずテキトーに歩いてればそれらしい場所に着くわよね」

 

 

 学内地図を持たない彼女は、とりあえず敷地内をうろうろする事にした。後で考えれば、入場ゲートで聞けばよかっただけなのだが、この時の彼女にそのような考えはなかった。

 

「何だか無駄に広いわね……でもまぁ、ISを扱う場所だから、これくらい広い方が良いのかしら」

 

 

 しばらくうろうろした彼女の前に、関係者以外立ち入り禁止の看板が現れる。普通ならここで踵を返して別の場所に行くのだろうが、彼女は好奇心の塊といって良い程、こういうところに入りたがるのだ。

 

「学生は関係者よね……」

 

 

 辺りに人がいないのを確認してから、少女は立ち入り禁止区域に足を踏み入れようとした。

 

「そこで何をしている」

 

「っ!?」

 

 

 誰もいないのを確認したというのに、少女が一歩立ち入り禁止区域に足を踏み入れた途端に声がかけられる。少女は慌てて周辺を見回すが、やはり人の気配はない。

 

「気のせい? それともどこかにスピーカーでも設置されてるのかしら?」

 

「どちらもハズレだ。久しぶりに見たと思ったら、相変わらずだな、凰鈴音」

 

「誰っ!? って、一夏さん」

 

「今は許すが、学校では織斑先生だ。それで、こんな所で何をしている」

 

「いや~、事務所探してたら立ち入り禁止の看板が目に入って……」

 

 

 素直に戻っておけばよかったと、鈴は今更ながらに反省したが、彼女の興味は別の事に向けられたのだった。

 

「ところで、一夏さんこそこんなところで何をしてるんですか? IS学園は女子しかいないはずですよね」

 

「いろいろあってここで教鞭を振るっている。お前も怒られたくなければ大人しくしているんだな」

 

「一夏さんが先生……なんだかあまりしっくりこない、かな……」

 

 

 鈴の中では、一夏は教師というよりも師範の方が似合っていると思われているので、彼女は一夏の姿を上から下までじっくり見てしみじみ呟いた。

 

「くだらんことを言っていないで、事務室にいけ」

 

「えっと、事務室ってどこですか?」

 

「……こっちだ、ついてこい」

 

 

 一夏に先導してもらい、鈴は漸く事務室に到着した。事務員に鈴を任せた一夏は、そのまま姿を消してしまい、鈴は少し残念そうにその姿を見送った。

 

「ようこそ、中国代表候補生・凰鈴音さん」

 

「入学に必要な手続きって、もう終わってるのよね?」

 

「はい。先ほど中国政府から必要なデータは送られてきましたので。後はこの書類にサインをしていだたければ完了です」

 

「はいはい、何処に書けばいいの?」

 

 

 事務員に差し出された書類にサインをする前に、鈴はしっかりとその書類内容に目を通す。

 

「何だか誓約書みたいな内容ね」

 

「こちらとしても、各国が介入してくるのは避けたいですからね」

 

「IS学園は、日本にあるがどの国にも所属しない中立の立場だものね……はい、これで良いのかしら?」

 

 

 サインした書類を事務員に手渡し、鈴は事務員の横に置かれている分厚い冊子が視界に入り顔を顰めた。

 

「はい、これで凰鈴音さんは正式にIS学園の生徒という事になりました。つきましては、このIS学園の生徒の心得という冊子に目を通しておいてくださいね」

 

「その分厚いのを……冗談でしょ?」

 

「目を通しておいてくださいね」

 

 

 有無を言わさぬ態度の事務員に、鈴は気圧されて頷く。どうせ読んだかどうかなんて調べようが無いのだから、とりあえず受け取って後は部屋の隅にでも置いておけばいいか、なんて考えているのは事務員にも見透かされているようで、もう一度事務員は念を押した。

 

「絶対に目を通しておいてくださいね。後で織斑先生に確認してもらいますので」

 

「織斑先生って、一夏さんに!?」

 

「はい」

 

「分かった、ちゃんと目を通しておくから……っと、ところで織斑千冬と篠ノ之箒って子がいるはずなんだけど、何組なの?」

 

「お二人とも一組ですね」

 

「あたしは?」

 

「凰鈴音さんは二組です」

 

「ちなみに、一夏さんは何処かの担任なの?」

 

「織斑先生は一組の担任を務めていますが、それが何か?」

 

「いえ、何でもないわよ」

 

 

 分厚い冊子と部屋の鍵を受け取り事務室を後にした鈴は、心の中で友人たちが苦労しているのだろうと決めつけて同情していた。

 

「(一夏さんが担任だなんて、あの二人も大変ね……まぁ、一番大変なのは一夏さんなんだろうけど)」

 

 

 部屋に到着した鈴は、ルームメイトに軽く挨拶をしてから、仕方なく分厚い冊子に目を通し始めたのだった。




てなわけで鈴登場です
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