いきなり教員試験を受けろと言われ、スコールとオータムは戸惑っていた。もちろん、刑事罰を受けてからなのだが、一夏がいろいろとしてくれたお陰で、大した罰には問われない事になっているので、割とすぐに試験を受ける事になるだろうと二人は焦っていたのだ。
「オレたちがしてきた事があの程度で済むのは驚きだが、勉強なんてしてきてねぇぞ」
「それは私も同じよ。まぁ、私はオータムみたいに学校に通ってた時もグレていたわけじゃないけどね」
「どうせオレは落ちこぼれ学生だったよ! 教師なんてみんな同じカスだとしか思って無かったし、親もオレの事なんて見限ってたからな」
「はいはい、あんまり大きな声を出さないの。一夏が便宜を図ってくれたから同室だけど、一応反省中なんだからね、私たちは」
「分かってるっての」
見た目こそ普通の部屋だが、四方八方を監視されており、今の二人には自由は無いのだ。
「しかし国際警察を混乱に貶めるとか、どんだけだよ……」
「一夏だけじゃなくて、篠ノ之束も手を貸したって噂だし、その二人が手を組めば出来ない事は無いって言われてるくらいだしね」
「というか、その二人に出来ない事なら、地球上の誰にも出来ねぇと思うんだが」
「そうかもしれないわね」
二人が聞いていたらツッコミを入れそうな会話だが、スコールはオータムの言い草を笑って受け入れた。
「学園の経営権を手に入れ、使える人材を確保するために私たちの処罰する権利を手に入れるなんて、一夏も無茶をしてるわよ……普通なら私たちのような犯罪者を利用しようだなんて考えないでしょうに」
「それだけオレたちの事を評価してくれてるって事なんだろうけど、餓鬼に物を教えるなんてしたことねぇんだがな……」
「亡国機業で小隊を率いていた貴女の実力をしっかりと評価してくれての事じゃないのかしら? 私は元々軍人だし、鍛える事に関してはそれなりに知識はあるわけだし」
「というか、落ちこぼれのオレが教師だなんて、同級生の奴らが知ったらどう思うだろうな」
「もしかしたら、一番の出世頭になるんじゃないかしら? IS学園の教師なんて、ある意味勝ち組だしね」
「チゲェねえな。これから先も生徒はじゃんじゃん入学してくるだろうし、そこで教鞭を振るっていれば、いずれは世界最強が教え子とかになるかもしれねぇし……考えたら面白くなってきたぜ」
やる気になったオータムを見て、スコールは底意地の悪い笑みを浮かべて現実を叩きつけた。
「その為にはまず、教員採用試験に合格しないとね。さすがに入試と違って、実技だけ出来れば合格って訳にはいかないでしょうし」
「そうなんだよな……ISの操縦だけなら合格出来る自信があるってのによ……やっぱり一夏はかなりのサドだな」
「普通の事だと思うけど? 何をするにも試験はあるわけだし、私たちの過去を考えれば、試験を受けさせてくれるだけでもかなりの恩情だと思うけど」
「反論出来ないくらいの正論だな……頭では分かってるんだが、どうも割り切れなくてな……試験なんてまともに受けた覚えが無いわけだしよ」
「貴女、そんなのでよく学生が出来てたわね……」
「落ちこぼれ学校の中の落ちこぼれだから、テストなんてサボってたに決まってんだろ。というか、親がウルセェから一応受験しただけで、オレに学校に通うつもりなんて無かったんだっての」
「まぁ、Mも入試に向けての勉強で苦労してるようだし、元亡国機業で本当の意味での勝ち組はあの女だけかしらね」
「傀儡学長だろ? それって勝ち組なのか?」
「傀儡とはいえ、学長って地位が手に入るのよ? 勉強する必要もないし、面倒な事は全て一夏が処理してくれるわけだし、一日をのんびり過ごすだけなんて、ある意味最高の贅沢だと思わない?」
「でもよ、それって要するに暇人だろ? 常に一夏に殺されるために動いてたアイツには、ある意味拷問じゃねぇのか?」
「それを見越しての人事なんじゃないかしら? 一夏が素直に許すとは思えないし」
「やっぱり相当なサドだな……」
オータムが一夏の事をSだと評価するのを、スコールは複雑な思いで眺めている。オータムも相当なSなのだが、その彼女が一夏には敵わないと思ってそう言っているのが理解出来るからだ。
「貴女、教師になってMを虐めるつもりじゃないわよね?」
「それも面白そうだが、そんなことすれば一夏と篠ノ之束に殺されるかもしれねぇしな……」
「指導の範囲なら何も言われないかもしれないけど、行き過ぎは駄目よ?」
「というか、オレが採用されるとき、Mがまだ学生なのかが怪しいけどな……」
「そんな弱気でどうするのよ。早ければ来年には採用試験を受けられるはずなんだから」
来年から教師になることはさすがに無理だが、再来年からなら可能性があるので、スコールはオータムを鼓舞して、自分も教員採用試験に向けての勉強に身を入れるのだった。
更に物騒になりそうな予感……