IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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流すのは当然あの人


噂の出所

 自分たちが全く知らないところで学園が襲われかけていたという事は、何処からか噂を聞きつけた黛薫子が発行した校内新聞で全校生徒に知れ渡った。

 

「あの噂って本当なのでしょうか?」

 

「噂って、ここが襲撃されて、織斑先生が一人で片付けちゃったって話?」

 

「織斑先生なら何でもありっぽいけど、新聞の内容を見る限り、爆撃や銃撃があったわけだし、織斑先生だって無傷では済まなかったんじゃない?」

 

「でもでも、織斑先生は専用機を持ってるわけだし、生身でも生徒会長を圧倒するくらいの実力だって言われてるし、あながち黛先輩の誇張ってわけでもなさそうだよね」

 

 

 様々な憶測が飛び交う中、真実を知る内の一人である簪は、何処で薫子があの内容を知ったのかが気になり、生徒会室を目指していた。

 

「あっ、お~いかんちゃ~ん!」

 

「本音……貴女も生徒会室に?」

 

「おね~ちゃんが黛先輩を訊問するって聞いて」

 

「虚さんを怒らせるなんて、お姉ちゃんでも滅多にしないのに……」

 

 

 更識勢の中で、虚を怒らせてはいけないというのは共通の認識であり、妹の本音も本気で怒られた事は数えるくらいしかない。そんな虚を本気で怒らせた薫子に、簪と本音はある種の尊敬と、ちょっとだけ虚の本気の説教が見られる事への楽しみが混ざった表情を浮かべていた。

 

「更識妹、布仏妹、何処かに行くのか?」

 

「あっ、織斑せんせ~。おね~ちゃんが黛先輩を訊問するところを見に行こうかと思いまして~」

 

「訊問って、別に内緒にしなければいけない事でもないと思うんだが……正門が爆破された事は事実で、復旧作業が行われているんだ。何故壊されたのかを知る権利は、学園で生活している全員にあるとは思う。まぁ、何処から盗み聞きしたのかは、知っておいても損は無いだろうが」

 

「織斑先生が情報を流したわけでは無いんですか?」

 

「私が? 黛に?」

 

 

 簪の質問に、一夏は驚いた表情で問い返し、すぐに真面目な表情に戻る。

 

「発表するなら更識姉からした方が良いという事は本人には言ったが、あの時黛の気配は側に無かったからな。ましてや小鳥遊もいたわけだし、黛が盗み聞きをしていればすぐに分かっただろうし、その場で布仏姉に怒られていただろうな」

 

「じゃあやっぱり、お姉ちゃんがうっかり部屋で言っちゃったんでしょうか?」

 

「さぁな。更識姉ならやりそうだが、腐っても暗部当主だろ? その辺りの情報管理はしっかりしてるんじゃないのか?」

 

「……どうなんでしょう」

 

 

 簪も断言出来るだけの自信が無かったので、曖昧な返事になってしまい、それが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして俯く。

 

「まぁ、布仏姉の訊問ではっきりとするだろうし、お前がそこまで恥じる必要は無いだろう」

 

「織斑せんせ~って、かんちゃんの扱い方上手ですよね~」

 

「布仏妹、今のままでは補習確定らしいから、もう少し気合いを入れて勉強するんだな」

 

「ほえっ!?」

 

 

 一夏をからかおうとして手痛いカウンターを受けた本音は、オロオロとその場で慌て始めたが、一夏はそれについては相手せず、そのまま去って行った。

 

「とりあえず生徒会室に急ごう。もう終わっちゃってるかもしれないけど」

 

「かんちゃん、補習は嫌だよ……」

 

「なら、もうちょっと危機感を持って勉強しようね。あんなだらだらとした空気のままじゃ、身に付くものも身に付かないんだから」

 

「分かってるんだけど、勉強は嫌いなんだよ~」

 

「碧さんだって、勉強は嫌いだったみたいだけど、本音と違ってちゃんと点数は取れてたって言ってたけど?」

 

「根本的に優秀な碧さんと、自堕落な私とじゃ比べ物にならないって~」

 

「分かってるんなら、何とかしようとしたらどうなの?」

 

「だって~」

 

 

 何時も通りののほほんとしていた空気が、生徒会室が近づくにつれて緊張感を伴った物へと変化し、簪も生徒会室から物凄い殺気が放たれている事に気が付く。

 

「どうやら、まだ終わってなかったみたいだね……」

 

「このピリピリとした感じ……私でも滅多に味わった事ないよ……」

 

「私は初めて……虚さんって、こんな殺気を放つんだ……」

 

 

 思わず視線を外に向けると、道場で発散していた千冬と箒の姿が目に入り、あの二人も生徒会室に視線を向けていた。

 

「やっぱりあの二人も殺気を感じ取れるんだ……」

 

「おりむ~とシノノンも、いろいろと規格外だからね~。というか、あの二人って特別補習だったんじゃないのかな?」

 

「そろそろ始まるから、教室に戻ろうとしてたのかな? 織斑先生も、一組の教室に向かってたみたいだし」

 

「まぁ、今は二人の事よりおね~ちゃんの殺気だよ……楯無様、一緒にいるのかな?」

 

「どうだろう……お姉ちゃんの事だから、逃げ出してたりして」

 

 

 顔を見合わせて苦笑いをし、二人は覚悟を決めて生徒会室の扉を開いたのだった。




怒らせちゃいけない人を怒らせた
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