IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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最終回です。最期詰め込みました


これからのIS学園

 学年が変わり、千冬と箒は相変わらず同じクラスであることを嘆いたが、新しいクラスメイトたちを見て、とりあえず安心していた。

 

「まさか簪と鈴も同じクラスになるとはな」

 

「この学年の専用機持ちは、全員このクラスらしいからね」

 

「てことは、担任は一夏さんか?」

 

「一夏兄は学長代理としていろいろと忙しいから、担任は持たないはずだが」

 

「じゃあ誰が……」

 

 

 千冬と箒が首を傾げたタイミングで、簪と本音にとって見知った気配が教室に近づいてきた。

 

「いきなり担任を持つとは、さすがとしか言えないね」

 

「まぁ、それだけ期待されてるんだと思うよ~」

 

「何の話だ?」

 

 

 千冬が二人に尋ねたのと同時に、教室の扉が開かれ、担任と思われる教師が教壇に立つ。

 

「席に着いてください」

 

「の、布仏先輩っ!?」

 

「皆さんのクラスの担任を務める事になりました、布仏虚です。新米ですが、よろしくお願いします」

 

「副担任の山田真耶です。私はあくまで補佐ですので、分からない事は布仏先生に聞いてくださいね」

 

「せんせ~。クラスメイトのはずのラウラウとシャルルンの姿が見えませんが~?」

 

「ボーデヴィッヒさんとデュノアさんは生徒会として、入学式の準備をしています。というか、貴女も生徒会メンバーのはずではありませんでしたかね、布仏さん?」

 

「お、おね~ちゃん、目が怖いよ?」

 

「学校では布仏先生です」

 

 

 何だか一年前の自分と一夏のやり取りを見ているようで、千冬は懐かしい思いを懐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年の教室でそんなやり取りが行われている頃、新入生代表として一日早く学園にやってきた蘭は、生徒会メンバーや主要教員と顔合わせをしていた。

 

「入学おめでとう、五反田蘭。私がIS学園生徒会長のラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「副会長のシャルロット・デュノアです。よろしくね」

 

「五反田蘭です……」

 

 

 ラウラの威圧感に若干引いている蘭に、背後から大人の声が掛かる。

 

「あんまり新入生を威圧したら駄目ですよ」

 

「ハッ! 失礼しました、学長」

 

「えっと……初めまして、五反田蘭さん。私がIS学園学長の織斑千秋です。貴女のクラスメイトの織斑マドカ、先輩になった千冬、そして教師総責任者である一夏の母親です」

 

「一年の学年主任を務めます、小鳥遊碧です。貴女のクラスの担任でもあるから、困った事があったら相談してちょうだいね」

 

「五反田蘭です! よろしくお願いします」

 

「ところで御母堂様、一夏教官はどちらに?」

 

「あぁ、一夏なら刑期を早めに終えた二人を迎えに行ったわ。実技担当として雇うから、その手続きも済ませるって」

 

「相変わらず織斑先生は大変そうですね」

 

「その苦労も、これで終わりだと思うけどね。さて、早いところ最終確認を済ませちゃいましょう。どうせ本音ちゃんは来ないでしょうしね」

 

「本音が一番流れを分かってるはずなんですけどね……」

 

 

 シャルロットが零した愚痴に、千秋と碧は揃って苦笑いを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特殊刑務所から出た途端に一夏に捕まったスコールとオータムは、学園に造られた特殊空間にやってきていた。

 

「ここは?」

 

「この間まで米軍から匿っていた人間が住んでいた場所だ。ここなら必要以上に生徒と接触する事も、余計な恐怖心を懐かれる事なく過ごせるだろうしな。誰も来ないから、何をしてても問題は無い」

 

「相変わらず抜かりのネェ野郎だな。っと、雇い主様にこんな口調はマズいか?」

 

「気にするな。雇ったのはあくまでもIS学園で俺個人ではない。さて、スコールは新入生の授業を、オータムは二、三年の授業を担当する事になっているから、時間割をしっかりと確認しておくように」

 

「オレ一人で二つの学年かよ」

 

「もう一人いる」

 

 

 一夏が背後を振り返ると、そのタイミングでその場に気配が生まれた。

 

「同じく新任のナターシャ・ファイルスよ。ついこの前までここで生活してた者でもあるわ」

 

「ナターシャにはオータムの監視も兼ねてもらってるから、くれぐれも迷惑を掛けないように」

 

「分かってるっての! てか、もうあんな場所で生活するのはこりごりだからな」

 

「あら、人に見られながらするってのもなかなか良かったじゃない?」

 

「お、オレはお前と二人っきりが良いんだよ……」

 

「あらあら」

 

「……一夏、この人たちって」

 

「愛の形は人それぞれだ」

 

 

 一夏のその言葉だけで、ナターシャは二人の関係を正確に理解し、なるべくなら近づかないでおこうと心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式も無事終わり、部屋割りが発表され、マドカのルームメイトは蘭だった。

 

「よろしくね、五反田さん」

 

「マドカさんも、よろしくお願いします」

 

「こんにちはー! って、五反田蘭ちゃんで合ってるわよね?」

 

「えっと……?」

 

 

 突如部屋に入ってきた女子生徒に、蘭は困惑する。

 

「怪しいものじゃないわよ。元生徒会長で、今はロシア代表の更識刀奈よ」

 

「えっと、何の御用でしょうか?」

 

「元生徒会長として、生徒会のノウハウを――」

 

「お嬢様!」

 

「う、虚ちゃん!? 何もしてないからね!」

 

「布仏先生です! そして、更識さんは今、廊下を走りました!」

 

「ご、ゴメンなさーい!」

 

「待ちなさい!」

 

 

 

 慌ただしく去って行った二人を見送ってから、誰かに見られている事に気付き、蘭はそちらを振り返る。

 

「最上級生と教師になっても、騒がしいのは相変わらずだな」

 

「一夏さ――織斑先生」

 

「一夏兄様!」

 

「まぁいい。蘭ちゃん、マドカと仲良くしてやってくれ」

 

「はい、もちろんです」

 

「マドカもちゃんと勉強するんだぞ」

 

「はい、一夏兄様!」

 

 

 一夏に期待されていると知り、二人は満面の笑みで部屋の中に戻る。二人が部屋に戻ったタイミングで、一夏の両隣に気配が生まれる。

 

「いっくん、お父さんみたいだったよ」

 

「ウルセェ」

 

「織斑君はお兄さん気質なのかしら?」

 

「さぁな」

 

「いっくん、この雌と束さんとで、随分と態度が違わないかい?」

 

「当たり前だ!」

 

「痛いよいっくん」

 

「少しは反省しろ!」

 

「楽しくなりそうね、ここでの生活」

 

「……お前も相当ズレてるよな」

 

「そうかしら?」

 

 

 この光景を楽しめている碧を見て、一夏は今後の生活にも一抹の不安を懐いたのだった。




これ以上だらだら続けるのもどうかと思ったので、これで終わりです。一年とちょっと、ご愛読いただき、誠にありがとうございました!

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