IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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既に仲がいいです


四人の訓練

 放課後になり、セシリアは千冬と箒相手に訓練を行っていた。最近はこの三人で訓練を行う事が多く、セシリアだけではなく千冬と箒の実力も上がってきている。

 

「ふーん、あんたたちもしっかり訓練してるんだ」

 

「鈴? 何の用だ」

 

「あたしも混ぜてもらおうと思って。二対二の方が訓練の幅も広がるでしょ?」

 

「私たちは構わないが、お前ちゃんと許可貰って来てるのか?」

 

「その辺は抜かりないわよ。さっきおどおどした眼鏡教師を捕まえて許可貰ってきたから」

 

「あの人か」

 

 

 鈴が言う教師が誰の事か、三人はすぐに理解した。あの人ならば少し語気を強めれば許可せざるを得ないという事は、転入生である鈴にも分かってしまうようだと。

 

「それじゃあ、どのペアにするか決めましょう」

 

「普通に考えれば、あたしと千冬、セシリアと箒よね。近距離と遠距離で組んだ方が良いでしょうし」

 

「鈴は近距離主体なのか?」

 

「どっちでも出来るけど、基本的には近距離で斬り捨てる方が性に合ってるから」

 

「何となく分かる」

 

 

 鈴の性格を知っているからなのか、千冬と箒は鈴の言い分を聞いて頷く。まだ付き合いの浅いセシリアには分からない何かが、この三人にはあるのだ。

 

「そう言えば鈴、さっき弾と数馬にお前が日本に帰ってきたってメールを送ったんだが、二人には連絡してなかったんだな」

 

「会う機会も少ないだろうし、別にいいかなって思ってただけよ」

 

「二人とも久しぶりに会いたいって言ってたが」

 

「それじゃあ、今度の休みにでも遊びに行こうかな。もちろん、千冬や箒も一緒にだからね」

 

「当たり前だろ、私たちだって久しぶりに遊びたいと思っていたんだからな」

 

「あの、そろそろ訓練を再開しませんと、アリーナの使用時間が来てしまいますわよ」

 

「おっと、そうだったな。それじゃあ、遊びの計画はまた後で」

 

 

 セシリアに指摘され、三人はひとまず遊びの計画を立てる事を中断し、急ぎ開始位置に移動する。近くクラス代表選で戦うセシリアと鈴だが、この時だけはそんなこと関係なく、友達として訓練に励むのだった。

 

「そう言えばあたし、他国の代表候補生とこうして訓練するの初めてかもしれない」

 

「そうなのか? 候補生の集まりとかで、訓練もあるんじゃないのか?」

 

「あたしはいろいろとイレギュラーだからね。中国政府も簡単にあたしを外国に出したくなかったんだと思う」

 

「イレギュラー? 年の割に全く成長しない身体の事か?」

 

「身体的特徴は関係ないだろうが!」

 

 

 わざと鈴の逆鱗に触れた千冬は、その怒りを相手にぶつけるよう指示しようとしたが、既に鈴は千冬相手に振りかぶっていた。

 

「隙だらけですわ!」

 

「ちょっ!? 今は攻撃仕掛けてくるな!」

 

「これで終わりだ!」

 

 

 セシリアに気を取られていた鈴は、接近してきていた箒に気付けずに一撃喰らい、撃沈扱いとなった。

 

「相変わらず鈴は身体の事を指摘されると周りが見えなくなるんだな」

 

「まさか三対一だったとは思わなかったわよ……そんなことより千冬、後で覚えておきなさいよ」

 

「ところで鈴、お前がイレギュラーというのは?」

 

 

 その事が気になっているのは紛れもない事なので、千冬は鈴の気を紛らわせるためにも質問で鈴の気を逸らす。怒りに息を荒げていた鈴だったが、説明するために自分の気持ちを落ち着かせて、一つ息をついてから視線を千冬たちに向けた。

 

「あたしがあんたたちと親しくしてたという事は、中国政府の連中も知っているのよ」

 

「それがどうした?」

 

「つまり、あたしを介してあんたたちとの関係を深めれば、織斑一夏、篠ノ之束と縁が出来るんじゃないかと考えてるのよ。そうすれば中国の技術力や選手の能力が大幅に上がる、なんて皮算用をしてるわけ。だからあたしが外国に亡命しないように中国国内に縛り付けようとしてたのよ。今回の転校だって、かなり政府と喧嘩して漸く認めさせたんだから」

 

「一夏兄や束さんが一国に肩入れするわけないだろうが」

 

「そもそも一夏さんはIS学園で教鞭を振るってる訳だから、中国の候補生を大勢IS学園に通わせた方が底上げになるんじゃないのか?」

 

「底上げになっても、その後自由国籍とかで他国の代表になられるのを恐れたんじゃないの? 現に今のロシア代表は自由国籍を使って日本から国籍を変えたわけだし」

 

「生徒会長だな。まだ私たちは会った事がないが、一夏兄の知り合いらしい」

 

 

 千冬の言葉に、鈴が少し驚いた表情を見せたが、すぐに納得したように小さく頷く。

 

「一夏さんの知り合いなら、そんなトリッキーな行動に出ても納得出来るわね」

 

「どういう事ですの?」

 

「恐らく一夏さんが裏で手を貸したから、簡単に国籍変更が出来たって事。普通なら有力な自国の候補生を簡単に手放したりしないでしょ?」

 

 

 鈴の言葉に、セシリアはハッと息をのんだ。普通ならすぐに考え付きそうな事を失念していた自分に驚いたのと同時に、そんなことを簡単にやってのける一夏に驚いたのだった。




一夏ならそれくらい簡単でしょうし
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