IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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怒られるわけではありません


呼び出し

 千冬たち四人の活躍で突如襲いかかってきたISは停止し、簪の活躍でどさくさに紛れて学園内の情報を得ようとしていた技術者は捕まり、その技術者を連れ込んだ議員に一夏が交渉すると言い楯無から身柄を引き取った。

 

「一夏兄、本気で怒ってるっぽかったな……」

 

「生徒に危害を加えるつもりだったのなら、一夏さんは容赦しないだろうな……」

 

「あたしたちの事をちゃんと守ってくれてるもんね、一夏さんは」

 

「普段突き放したような態度を取っているが、ちゃんと私たちの安全は確保してくれているからな」

 

「当たり前だろ! お前ら、一夏兄をバカにするのか?」

 

「そんなことしてないだろ」

 

 

 一夏がバカにされたと勘違いした千冬が激高しかけたが、箒が冷静にツッコミを入れたお陰で大人しくなった。

 

「というか、さっきから静かだけど、疲れたの?」

 

「いえ……織斑先生の怒気に耐えられなかったのですわ……というか、お三方はよく平気ですわね」

 

「まぁ、私たちは慣れてるからな」

 

「まだ小学生の頃だったかしら? あれだけ怒られれば反省もしたわよ」

 

「とにかく、私たちの中では、一夏兄を怒らせたら無事じゃすまないという認識だから、まだ全力で怒ってないくらいなら大丈夫だ」

 

「あれで全力じゃないですの? どれだけ恐ろしいんですの、織斑一夏という人間は……」

 

 

 一夏を完全に怒らせたことがあるとすれば束くらいだろうと、千冬と箒は視線で語り合った。鈴も一夏が全力で怒ったらどうなるか、モンド・グロッソ決勝での出来事で知っているだけなので、生身の一夏がどれほど恐ろしいのかは知らない。

 

「とにかく、今日はもう何もしたくない……」

 

「それには同意する……あのISを相手に大立ち回りをしたからな。風呂にでもゆっくり浸かってぐっすりと寝たいな」

 

「良いわねそれ。早速大浴場にでも行きましょうか」

 

「残念だけど、それはちょっと待って」

 

「簪? 何か問題でもあったのか?」

 

 

 千冬、箒、鈴の三人の気持ちは既に大浴場に向いていたのだが、簪がその気持ちに待ったをかけた。

 

「山田先生からの伝言。四人には職員室に来てほしいって」

 

「職員室に?」

 

「まだ何かあるのか?」

 

「えっと……私を含め五人には織斑先生から事情説明があるって」

 

「一夏さんから? 事情説明って、もう背後関係が明らかになってるの?」

 

「どうせ姉さん絡みだろうが、一夏さんから説明してくれるならそれでいい。というか、一夏さんはあの技術者を連れ込んだ議員を問い詰めるんじゃなかったのか?」

 

「もう終わったみたい。今後学園に介入しようとすれば、家族ごと消し去るって脅したら大人しくなったって」

 

「「「「………」」」」

 

 

 一夏以外が言えば笑い飛ばせる内容だが、一夏なら本当にそれが実行出来そうだなと、四人は無言で頷きあったのだった。

 

「ところで、簪は何処で一夏兄の脅しを聞いたんだ?」

 

「直接は聞いてないよ。どうやらお姉ちゃんが織斑先生がどうやって脅すのか興味があって盗み聞きしたらしいって、さっき本音から聞いた」

 

「生徒会長が? それで、会長さんは一夏兄が脅すところを見てしまったのか」

 

「なんか後悔してるみたいだけど、自業自得だって」

 

「随分と辛辣ですわね。お姉様なのでしょ?」

 

「織斑先生が怒ってるのはお姉ちゃんだって分かってたんだから、見に行ったお姉ちゃんが悪いよ」

 

 

 簪としても、楯無が盗み聞きなどしなければそのような恐怖体験はしなかったのだからと、楯無が悪いと切り捨てた。

 

「まぁ、一夏さんを待たせるわけにはいかないし、さっさと職員室に行くか」

 

「そうね。一夏さんから事情説明してもらえれば、今回の問題について全て理解出来るでしょうし」

 

「全て教えてくださるのでしょうか?」

 

「一夏兄の事だから、事実から巧妙に重要部分を削って説明するかもしれないが、それは私たち学生に必要ない情報だからな。全ては教えてくれないだろうが、納得のいく説明はしてくれるだろう。ところで、さっきのISはどうなったんだ?」

 

「回収したISは、織斑先生が解析するって言ってた」

 

「一夏兄以外で解析出来る人間など、学園にいないから当然だろうな」

 

 

 一夏がISの操縦技術だけではなく、解析にも長けている事は学園にいる全員が知っている事なので、千冬のセリフを大袈裟だと思う人はいなかった。

 

「この学園は、織斑先生にどれだけ苦労を掛ければ気が済むのでしょうか?」

 

「その分ボーナスに加算されるんじゃないの?」

 

「どうなんだ、千冬?」

 

「私が一夏兄の収入を知っているわけないだろ」

 

「使えないわね……」

 

「何だとっ!」

 

 

 鈴が呟いた言葉に千冬が掴み掛りかけたが、箒がすぐに千冬を抑えて鈴を非難する視線を向けたお陰で、大事にならずに済んだ。

 

「とにかく、職員室に行けば大体の疑問は解決するから」

 

「簪の言う通りだな」

 

 

 さらに簪からの助け舟のお陰で、とりあえず千冬は落ち着き、鈴は事なきを得たのだった。




簪は辛辣だな……

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