IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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真耶は仕方ないか……


教師としての威厳

 千冬たちが去った職員室では、一夏が心底疲れ果てたようにため息を吐きながらお茶を啜った。

 

「お疲れですか?」

 

「真耶だって疲れてるんだろ? さっきから眠そうにしてるの、バレバレだ」

 

「織斑さんたちには気づかれなかったんですが、やっぱり一夏さんにはバレてましたか」

 

「それから、盗み聞きとは感心しないな、更識姉」

 

「え?」

 

 

 誰もいないはずの場所に声をかけた一夏を見て、真耶は驚いた表情を浮かべる。声をかけられた側も驚いたようで、思いっきり頭をぶつけた音が聞こえてきた。

 

「うわぁ……痛そうです」

 

「机の下に隠れて盗み聞きとは、随分と古典的な手を使ったな」

 

「バレない自信あったんだけどな~……やっぱり一夏先輩には敵わないですね」

 

「それで? わざわざ職員室に忍び込んで盗み聞きした理由を聞こうか?」

 

「怖いっ!? 一夏先輩、その顔怖いですから!」

 

「俺は普段からこういう顔だ」

 

「いや、普段はもっとカッコいいですから!」

 

 

 満面の笑みで迫ってくる一夏に、楯無は恐怖しながら机の下から飛び出す。前から一夏が迫ってきているのだが、兎にも角にも机の下から抜け出さない事には、逃亡もままならないのだから仕方がない。

 

「別に説教するつもりじゃないから安心しろよ。お前もお茶で良いか?」

 

「あっ、はい……ありがとうございます」

 

「とりあえず、授業をサボった件は、布仏姉に報告させてもらうがな」

 

「うっ!」

 

 

 いくら一夏の手助けをしたからといって、授業をサボった事には変わりはない。すっかり忘れていた事だが、自分がサボった事は事実なので、楯無は反論する事が出来なかった。

 

「それで、あの議員の不正献金の流れは把握出来たのか?」

 

「とりあえずは証拠集めに成功しましたので、後は地検に任せておけば大丈夫でしょうね」

 

「仕事が早くて助かる。さすがは暗部組織という感じか」

 

「こういうのが仕事なわけじゃないんですけどね……まぁ、一夏先輩の美味しい料理が食べられるなら、これくらいしますけど」

 

「その報酬で更識さんを釣ったんですか?」

 

 

 若干非難めいた視線を向ける真耶に対して、一夏は悪びれた様子もなく答える。

 

「金銭を渡すわけにもいかないだろ」

 

「まぁ、今回は虚ちゃんにも手伝ってもらったので、報酬は二人分でお願いします」

 

「分かっている。刀奈だけじゃ、これほど早く調べ上げる事は出来ないだろうしな」

 

「反論したいですが、実際そうなってたでしょうから何も言えません」

 

 

 襲撃事件は学園中に知れ渡っているので、当然二、三年生の授業もストップしていた。校舎内に被害は及ばないだろうと分かっていても、万が一に備えるのが決まりになっているのだ。

 

「と、いうわけでして、何とか虚ちゃんに言うのだけは勘弁してもらえませんかね?」

 

「仕方がないな。今度補習を受けるのなら勘弁してやる」

 

「一夏先輩の補習って、超スパルタで有名じゃないですか!?」

 

「なに、ちょっと身体が鈍っててな。模擬戦に付き合ってくれればそれでいい」

 

「……それだったら素直に虚ちゃんに怒られますよ」

 

 

 一夏の強さを間近で見てきた楯無と真耶は、一夏の模擬戦相手に指名されることがどれだけ恐ろしいことかを知っている。だから楯無は素直に虚に怒られることを選んだのだった。

 

「ちゃんと手加減するぞ?」

 

「一夏先輩レベルの手加減じゃ、私たちにとってほとんど意味をなさないんですよ!」

 

「まぁ、更識さんの言う通りですね。一夏さんの手加減って、殆ど本気と変わらないですし……」

 

「そんなこと無いと思うんだがな……ところで、刀奈は何時まで俺の事を『先輩』呼びなんだ? もうお前は日本の候補生じゃないし、俺も現役を退いた身だ」

 

「いろいろとお世話になってるので、気を抜くと昔のままの呼び方になっちゃうんですよね……何せ小学生の頃からお世話になってますし」

 

「でも、私のことは昔から『真耶さん』って呼んでますよね?」

 

「真耶さん相手なら緊張しませんから」

 

「うぅ……どうせ私は威厳なんて持ち合わせていませんよ」

 

「でも、それが真耶さんの良いところなんですから。生徒に近しい教師がいてくれるのって、結構助かるんですよ」

 

「まぁ、舐められない程度に気を引き締めていればいいんじゃないか?」

 

 

 一夏のフォローと思えないセリフに、楯無は思わず笑いだしそうになった。それを見て真耶がますます機嫌を損ねた。

 

「とにかく、真耶さんはいい意味で私たちに近しい存在なんですから、無理に変わろうとしなくて大丈夫ですよ」

 

「そうなんでしょうか……一夏さんみたいに尊敬されたいです」

 

「うん、それは無理ですよ」

 

「断言しちゃうんですか!?」

 

 

 バッサリと楯無に切り捨てられ、真耶は教師としての自信が失われていくように感じていたが、一夏が珍しく笑っているのを見て、複雑な気持ちながらもまぁいいかと思えるようになったのだった。




楯無も大概か……
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