IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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何故そんな見解になるんだか……


職員室での噂

 職員室に顔を出した一夏は、他の教師が複雑な思いを込めた視線を向けてきている事に気付いたが、なにも聞くことなく自分のデスクに向かい腰を下ろした。そのタイミングを待っていたかのように、真耶が同僚から背中を押されて一夏の隣に腰を下ろす。

 

「お、おはようございます、織斑先生」

 

「あぁ、おはようございます、山田先生」

 

「えっと……なんだか不機嫌ですか?」

 

「いえ、特にそういう事はありませんが、何故そう思われたのでしょうか?」

 

「それは……」

 

 

 自分に対して丁寧な口調を使ってる時点で、一夏の機嫌がよろしくない事を把握したなどと言えない真耶は、テキトーにお茶を濁して本題に入ることにした。

 

「織斑先生が更識さんを――あぁ、妹さんの方ですが、抱っこして部屋に連れていこうとしたという噂が流れているのですが、実際のところどういう事なのでしょうか?」

 

「何故そんな噂が流れているのか、甚だ不思議ではありますが、更識妹を抱き上げたのは、ISを展開した状態とはいえ高速で壁に激突すれば、今後のIS生命に関わると判断して受け止めたにすぎません。貴女方が思っているような邪な事は一切ないので」

 

「べ、別にそんな事思ってませんよ! って、IS生命に関わるかもしれない事故って、そんなことが起こるものなのですか?」

 

「これもそれもあの馬鹿ウサギの所為だからな。普通に考えればありえない」

 

「馬鹿ウサギって……篠ノ之束博士っ!? 何で更識さんの事に篠ノ之博士が関係してるんですか?」

 

「あの馬鹿の考えなど、俺にも分かるわけないだろうが」

 

 

 ほとほと参っているというような表情で首を左右に振る一夏を見て、真耶はそれ以上何も言えなくなってしまった。そして、漸く一夏が紙の束を持っている事に気が付き、興味はそちらに向いた。

 

「その紙の束は?」

 

「昨晩あの阿呆に書かせた反省文です。更識妹の専用機の完成の手助けをした理由として、これがあれば日本政府の人間も納得してくれるだろうと思い書かせました。読んでみたいなら構いませんが、途中謎理屈を展開しているので、読んでもあの阿呆の考えは理解出来ませんよ」

 

 

 真耶が反省文に興味を示したのを簡単に見抜いて告げる一夏に、真耶は慌てて手を左右に振って否定するが、相手の心が読めるのではないかと噂される一夏の前では、その行為に意味など無かった。

 

「し、失礼します……」

 

 

 一夏から反省文の束を受け取り目を通していく真耶だったが、束の特殊な文字を解読するだけで一苦労だというのに、一夏が言っていた「謎理論」の部分に差し掛かってからは、なにが言いたいのかがさっぱり理解出来なかった。

 

「えっと、これって本当に篠ノ之博士の文字なのですか?」

 

「アイツは昔から独特な文字を書くからな……慣れない人間が目を通しても読むのに時間がかかる」

 

「それもありますが、昔篠ノ之博士が発表したISの理論などが書かれていた論文を見たことがあるんですが、あの論文の文字はこんなに酷くは無かったんですが」

 

「当たり前だろ。あれを書いたのは俺だ。まぁ、束の字のまま発表しても世間から相手にされないだろうと手伝ってやったんだが、それが失敗だったようだ」

 

「なるほど、だからどこかで見たことがあるような文字だと感じたんですね……」

 

 

 真耶が束の論文に目を通したのは、一夏と付き合いが出来た後だったので、だからそう感じたのだろう。実際一夏の書く字も特徴的なのだが、一夏の場合は解読が難しいとか、そういった事ではない。

 

「とりあえず、一夏さんが更識さんを襲おうとしたという事ではないという事が分かったので良かったです」

 

「おいおい、何でそんなことになってるんだ? そもそも俺が更識妹を襲うように見えるのか?」

 

「見えませんけど、双方同意で『そういった事』になったんじゃないかって噂でしたから」

 

「俺は兎も角更識妹に失礼だろうが。アイツはまだ十五、六の少女だ。そんな風に思われてるなどと知ったら、周りから隔離するかもしれないぞ」

 

「万が一そんな事になっても、一夏さんが何とかしちゃうから大丈夫だって思いますけどね」

 

「お前も教師なんだから、少しは心配してやったらどうなんだ……というか、俺が否定しても逆効果になるんじゃないのか、こういう噂は」

 

「そうですかね? 前にお姉さんの方ともそういった噂になってましたし、一夏さんが『お願い』すれば大体の噂は消えますから」

 

「教え子を恫喝するのは避けたいんだがな」

 

 

 一夏が冗談で言っているのは真耶にも理解出来たが、一夏のお願いは断れる人間がいないと言われるくらい恐ろしいものなのだ。

 

「とにかく、この噂はさっさと片付ける必要があるな……出所と思われるヤツを問い詰めるか」

 

「出所、ですか?」

 

「アイツとしては妹の快挙を知ってほしかったんだろうがな……アイツのルームメイトは曲解が好きだから」

 

「なるほど……」

 

 

 それだけで真耶は、一夏が言う『出所』が誰なのかを理解したのだった。




立派なジャーナリスト、なのだろうか……
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