戦姫絶唱シンフォギアXD ~ギャラルホルンの先で~ 作:白滝
プロローグ
~並行世界~
「急げ!この世界のカルマノイズがもう発生しているかもしれねえ!」
「うん!」
シンフォギアを纏った立花響と雪音クリスが、道路を無視し街の屋根を跳ねて一直線に駆ける。
目的地は明確だった。爆炎と砂埃が舞い上がり、遠くからでも一目で騒乱が生じているのが分かった。
通称、『カ・ディンギル址地』。
一年前のルナアタックの惨劇を経て、その場所は東京番外地・特別指定封鎖区域として定められていた。移転前の旧・私立リディアン音楽院、すなわち、フィーネによって建造された荷電粒子砲『カ・ディンギル』が二人の視界の大きく屹立している。
「あれがあるってことは、ルナアタック事変はあったってことだよね、クリスちゃん?」
「かもな……けど、それ以外の街並みの変化は見当たらねえ。フロンティア事変や
「どっちにしろ、この世界にもわたしたちみたいな装者がいるだろうから、会って話すのが手っ取り早いよ!ノイズをやっつけるついでに、二課まで案内してもらおう!」
「そう上手く話が運べばいいんだが、まぁ、今はそれしかないかもな。乗れ!」
クリスのギアが拡張し、どこからともなく形成された巨大なミサイルが点火する。
「ありがとう、クリスちゃん!これなら一っ飛びだよ!」
発射されたミサイルの背に乗り、二人は一直線に目的地へ向かった。
~元の世界~
「搬送を急げ!二課医療施設ではなく、民間の病院で構わんッ!機密など気にするな、人命優先だッ!!」
S.O.N.G.の発令室で檄を飛ばす風鳴弦十郎は、苛立ちを隠し切れずに唇の端を噛みながらギリギリと拳を握りしめていた。
苦虫を噛み潰した表情はオペレーター達も同様であり、その切迫した空気こそが事態の深刻さを物語っていた。
オペレーターの一人、
「隣接地域の病院との手続き、完了しました!私立リディアン音楽院高等科の生徒、約720名、全員の搬送が無事に完了しました!」
「これで大事には至らずに済む、か。よくやった……!」
弦十郎も思わず安堵の息を漏らす。
事は数時間前に遡る。
私立リディアン音楽院高等科の生徒、約720名。彼女達が突如、一斉に気を失って高熱を発し、意識不明に陥る事態が発生した。その場に居合わせたS.O.N.G.所属のエージェント、立花響・雪音クリス・暁切歌・月読調の四名が事態の異変を察知し、S.O.N.G.へ通報。市内の病院では700名近い救急外来を受け入れるベッドのキャパシティがないため、隣接地域の病院にも協力を仰いで緊急搬送される事となった。
当初は「食堂で食中毒でも起きたのですか?」という対応を取られて病院側の優先度は低かったが、S.O.N.G.の政治的バックグラウンドを以てして強引に搬送させた形となる。今頃、原因不明の熱にうなされた生徒達を前にして医者達も困惑しているかもしれない。
「師匠!只今、装者四人、到着しました!」
「おっさん、一体こりゃあどうなってんだ!?」
動揺のせいか青い顔をした四人が発令室に飛び込んできた。
「着いたか。それでは即時ブリーフィングに移る!君達には緊急任務を言い渡す……と言っても、原因は分からないから、その原因究明の調査なのだが」
「わたし、学校のみんなの容態に見覚えがあったんです!あれ、前にわたしが夢でうなされた時と同じ感じでした。今回も、もしかしたら……」
「ああ、残念ながら悪い予感は的中している。つい先ほど、ギャラルホルンがアラートを発した。君達から通報を受けたのも直後の事だ」
「それってつまり、今回も並行世界でカルマノイズが関係してるってことデスか……!?」
突如発生した私立リディアン音楽院高等科の大規模な意識障害。そして、同時期に発生した聖遺物『ギャラルホルン』のアラート。関係ないと考える方が難しい。
「現状、翼とマリア君は海外にコンサートで遠征中だ。現在の戦力はここにいる四人のみ。ただし、カルマノイズはこの世界へ悪影響を及ぼす可能性があるのは知っての通りだ。今回は2対2に分かれて、調査組と居残り組に分かれて欲しい」
「わたしが行きます!」
真っ先に手を挙げたのは響であった。
「クラスのみんなが倒れました。
「あたしも行くぜ!あいつはあたしの恩人だ。それにお節介なクラスの連中にも、普段から世話になって借りがあるしな」
「分かった。では今回の件は、響君とクリス君に並行世界の調査に当たってもらう。切歌君と調君は通常通りに出動に備えて待機していてくれ」
「了解デース!」
「うん、わかった」
事態は一刻を争う。響とクリスはそのままギャラルホルン保管室に飛び込み、ギアのコンバーターを掲げた。
二人して一度目を瞑り、胸の内から浮かぶ旋律に言葉を乗せて歌にする。
「――――Balwisyall Nescell gungnir tron」
「――――Killiter Ichaival tron」
シンフォギアシステムのコアとなる聖遺物の欠片を共振・共鳴させるこのコマンドワードこそが聖詠。生み出されたエネルギーはプロテクターへと固着され、 適合者を戦士たらしめる強化外装となる。
マフラーをたなびかせ、煌めく黄のフォルムを纏った響が、ガツンと両のガントレットをぶつけて気合を入れた。
「待っててね、みんな!わたしがみんなを、早く楽にしてあげるから!!」
~並行世界~
カ・ディンギル址地を囲うフェンスを飛び越え、響とクリスは敷地へ侵入する。
爆発は今なお続いていた。
足を踏みしめる度に砂埃を舞わせる巨大なヒューマノイズノイズへミサイルをぶつけて爆破し、二人は地面に緩やかに着地した。
「ざっと見て50匹。そこそこの数だね」
「こういう戦況ならあたしの独壇場だッ!死にたくないなら地面にキスでもしてなぁッッ!!」
クリスのギア、太腿付近のギアがスライドするようにしてミサイルポッドへと拡張される。同時、両手に握るボウガンが変形し、対戦車想定でもしていそうな程の巨大な2門の三連装ガトリング砲へと姿を変える。
「全発全中!持ってけ全部だーーッッ!!」
――――MEGA DEATH PARTY
噴射煙の尾を引きながらミサイルを全弾一斉発射、そして両のガトリングアームを一帯を凪ぐように斉射する。
爆炎と銃声で音と景色が塗り替えられた。
銃火に体を抉られて炭素の塵と消えていくノイズ達に悲鳴も絶叫もない。しかし、砂煙の先で「あああああああああ!?」という激痛に呻く悲鳴が響いた。
「な!?ご、誤射!?ここは民間人の立ち入り禁止区域のはずだろうッ!?」
動揺して攻撃の手が止まるクリス。慌てて響が砂煙に飛び込み、悲鳴の元へ駆けつけ救助しようとした。
しかし、
「え、………ビッキー……?」
「え、なんで……嘘……!?」
眼前の光景に響が硬直した。
砂埃が風で吹き散らされて視界が晴れる。クリスの目にも、驚きの事態が飛び込んできていた。
確かに、この世界にも装者はいた。この場のノイズを鎮圧するために居合わせていた。
しかし、その人物は並行世界の立花響でも、風鳴翼でも、雪音クリスでもない。
その場に居合わせたのは、
「どう、して、生きてるの……!?ルナアタックの時に、ビッキー達は死んだんじゃ……!?」
安藤
寺島詩織。
板場
くすんだ青銅色のシンフォギアを纏った三人組が、驚いた表情でこちらを見つめていた。
という訳で、3人組がシンフォギアを纏う並行世界編です。