戦姫絶唱シンフォギアXD ~ギャラルホルンの先で~ 作:白滝
~並行世界~
カルマノイズ自体はカ・ディンギル城址を根城にしている。フェンスを乗り越えて市街へ侵攻しているのは、奴に呼び出された通常のノイズだった。
数にして50体は超える。響とクリスなら余裕の相手だが、あのカルマノイズを前に悠長に構えている暇はない。ならばここは、長距離・広範囲が得意レンジのイチイバルの出番となる。
「3秒でぶっ飛ばす!!」
クリスの握るボウガンが大型クロスボウへと変形する。番われたのはクリスタル状の二本の矢。ノイズではなく天へと射出されたそれらは空中で分割され指数関数的に増殖する子弾となる。
――――GIGA ZEPPELIN
軍用のフレシェット弾と全く同じ原理である。しかし、それをシンフォギアの力で再現するとどうなるのか。
破壊の雨が死の弾幕となって降り注いだ。
放物線を描く事なく頂点でピタリと停止していた無数の矢が、地球の重力を今更思い出したかのように一斉に地上へ向けて自由落下を開始する。まるで忍者屋敷の針付き天井。
回避も何もなかった。辺り一帯が無数の矢に爆撃され、一瞬でノイズの大群が制圧される。
――――ただ一個体を覗いて。
「いやがったな、シンフォギアノイズ……!!」
二人はフェンスを乗り越えてカルマノイズに対峙する。
カルマノイズは巨大な盾を……いや、盾かと見紛う程に大きな剣を傘代わりし、クリスの放った死の雨を遮り無傷で佇んでいた。
全長3メートル程で背中から翼を生やした漆黒のノイズ。体表面にはまるでカサブタのように黄・青・赤の破片が張り付いている。
あまりに特異な個体である事から『シンフォギアノイズ』というコードネームが与えられいた。名前の通り、このカルマノイズはシンフォギアのアームギアの運用が可能なのだ。
「ギィィィィイイイイイイイイイイイ!!」
シンフォギアノイズが拳を構えた。肘の関節がガクリとズレたかと錯覚する。腕ごとまるでガングニールのガントレットのように変形したのだ。後部のブースターが点火し、奴の足が地面を踏みしめた。
(くる……!!)
身構え、さてどちらに避けようかと思考しようとしたその瞬間には、もう既に響の鼻の5cm前にシンフォギアノイズの拳が迫っていた。
速すぎる。
思考を置き去りに脊髄反射で首を振るが、躱し切れずに左顔面に拳が食い込み撃ち抜かれた。ビキキキ!と首の骨が嫌な軋み方をして、一撃で響の平衡感覚が狂った。左顔面を撃ち抜かれ、コマが回転するように錐揉み状に吹き飛ばされる。
しかし、
「――――ぬ、らァぁぁぁぁぁああああッッ!!」
このまま宙へ吹き飛ばされてなるものか。
響のシンフォギア『ガングニール』には脚部ユニットにパワージャッキが装備されている。片足のパワージャッキで地面を噛み、それを軸足にその場で響がコマのように一回転する。
敵のパンチの威力を受け流して遠心力として纏い、全てのベクトルを乗せた響の回し蹴りがカウンターとなってシンフォギノイズにヒットした。
シンフォギアノイズの頭部に突き刺さる。今まで一度も傾いだ事のなかったその巨躯の重心が、メキリと揺らいだ。初めての有効打だ。
そして、立花響のガングニールはそれだけじゃ終わらない。
制動用のパワージャッキをパイルバンカーのように射出し、シンフォギアノイズの顔面を撃ち抜き返す。
目には目を、歯には歯を。ならば、顔には顔を狙うべきだ。
「どうだ!!」
響の格闘術はアクション映画を題材にして弦十郎によりアレンジされた我流だが、その本質はそれほどオリジナルからはかけ離れていない。パンチやキックといった物理攻撃、いわゆる『剛拳』が派手で目立つが、先程の回し蹴りのように力を受け流し利用する『柔拳』も響は習得しているのだ。
例え出力で劣っていても戦いようはある。ただの時間稼ぎではなく、響はシンフォギアノイズの打倒をまだ諦めていなかった。
一拍出遅れたクリスだったが、彼女も彼女で無策ではない。
巨大なミサイルを両肩から形成し、シンフォギアノイズではなく地面へ向けてミサイルを撃ちつけた。粘質な炎が地面にこびりつくような黒煙を刻み付けるナパーム弾。爆炎と共に土砂を巻き上げ、砂埃と黒煙で周囲一帯の視界を奪った。
敵味方を問わず戦況を妨害してしまったが、クリスの真の狙いのここからだ。アームドギアをガトリングアームに変形させ、音響スピーカーを弾丸のように周囲へ発射した。
彼女のシンフォギア『イチイバル』は射撃による遠距離攻撃を主兵装として扱うが、そもそも彼女の歌声が届かないほどノイズが遠くにいた場合は、シンフォギアによる次元調律はきちんと作動せずにノイズの位相差障壁で攻撃が無力化されてしまう。そのため、彼女の射撃には音響スピーカーが付属しているのだ。その機能をオミットして単独で稼働させればこのような応用もできる。クリスの高いバトルセンスが成した咄嗟の機転だった。
「10メートル先だ!!」
「分かった!!」
クリスは複数の音響スピーカーから発される歌をソナーのように重ね合わせてレーダー波として操った。視界を封じらてもコウモリやイルカのように響とシンフォギアノイズの位置取りを正確に把握していた。
言うなれば管制官。クリスの指示を受けた響が、砂埃と黒煙を突き進んで攻撃を繰り出す。
指示には一分の狂いもない。拳を突き込んだ先でメシリと重い感触が乗り、その巨躯を思い切り殴り抜く。
(……やれてる!……戦えてる!!)
格下の乱戦が通じたが、実際にはそれだけが要因ではない。二人は無自覚であったが、奇しくもこの時の二人はユニゾン状態へと移行し出力が上昇していた。
絆のユニゾン。
ギア特性としてのユニゾンではなく、装者の心象を重ね合う事で生じる疑似ユニゾン。出力の上昇は目立ったものではないが、シンフォギアノイズに瞬殺されるレベルさえ超えれば二人にも戦いようはある。奇策を繰り出す余裕を捻り出せる。
この好機を逃さないように、後ずさるシンフォギアノイズへ追撃をかける。
立花響は止まらない。
助走で前進、拳を振りかぶって前進、殴って前進、殴り終わっても前進。
敵に殴られても前進、敵に斬られても前進、敵に撃たれても前進。
脚部のパワージャッキで地面を噛んで打ちつけ、その反動で加速し続ける。背部のバーニアは噴射しっぱなし。二足歩行の人体構造では理論上不可能な『ブレーキをかけたまま加速する』という変速直線常加速運動。
シンフォギアノイズがその巨躯から闇雲にボウガンを発射するが、まるで馬鹿の一つ覚えかのようにひたすら一直線に飛び込み続けるガングニールの拳が槍の如く何度も突き込まれる。
「ギ、ィィィィイイイイイイイイイイ!!」
遂にその巨躯が宙を舞い、砂埃と黒煙が舞うフィールドを突き抜けて後方へ吹き飛ばされた。地面を転がるその体は数カ所が欠け、血を流すように炭素の塵が風に流れている。
ただの前進程度では収まらぬ、前々々々々々進。
加速し続ける響がもう一度拳を振りかぶり、脚部のパワージャッキで地面を噛みしめる。クリスもボウガンで狙いを定め、その引き金を引こうとした。
「……って、え!?」
「な、なんだ!?体が、急に、」
動かなくなった。
まるで全身を針金で縛り上げられたかのように、二人の体が不可視の魔の手に拘束される。身動き一つ取れやしない。
クリスの位置からは困惑する響の足元を伺う事ができた。彼女の影に、一本の小刀が突き刺さっていた。
――――影縫い
「ば、馬鹿な!?先輩のその技はシンフォギア自体の機能じゃなく、忍法の対人戦技だったはず!!どういうこった!?」
「あのシンフォギアノイズは、装者の心象や経験まで反映されてるっていうの……!?」
ノイズには厳密には発声器官はない。だから、返事は殺意で返ってきた。
シンフォギアノイズはゆらりと立ち上がると、その体表面に張り付いているギアの欠片が七色に輝き始める。
決着を付ける。そういう意志を感じる。
「この、エネルギーは……絶唱……ッッ!?」
「絶唱の聖詠もなく、そんな事が……!?」
厳密には違う。
かつてギアと融合していた響は、アームドギアを形成するエネルギーを転用して絶唱級のパンチを放つ事で無限の再生力を有するネフシュタンの鎧を半壊して見せた。あの現象とほぼ同じ。アームドギアを形成させずにそのエネルギーを転用して射出しようとしているのだ。
あの時と今回の攻撃が異なるのは、ギアはガングニール1つだけではなく天羽々斬とイチイバルを併用した三連唱。その上、あのカルマノイズはエクスドライブ級のフォニックゲインを有している点。
「あ、あんなの喰らっちまったら蒸発してもおかしくねえぞ!?どうすんだよ!?」
「……わたしたちもやるしかないよ、クリスちゃん!!」
「な、何をだよ!?」
「S2CA……!!真正面から、わたしたちも迎撃しよう!!」
「ば、馬鹿野郎!!お前はもう融合症例じゃねえんだぞ!あたしの絶唱のバックファイアまでお前が負担したら、体がどうなるか――――」
「でももう、これしか方法がないよ!!わたしなら大丈夫だから、急いで!!」
クリスは唇の端を噛みしめる。
確かに、現状ではこれしか打開策はない。
影縫いで身動きは封じられているため回避は不可能。カルマノイズの放つ呪いにより、イグナイトモジュールも起動させられない。言わずもがな、エクスドライブのような都合の良い奇跡に縋る訳にもいかなかった。
彼女達が動かせるのは、口だけ。
できる事は、歌を歌う事だけだ。
「畜生……!!すぐに病院に連れていくから、我慢しろよ!!」
覚悟を決めて、一度目を瞑る。
精神のスイッチを切り替える自意識を以て、瞑想のように嫋やかな明鏡止水へと手を伸ばす。響とクリスの唇の間から、魂が奏でる音色が紡がれていく。
――――Gatrandis babel ziggurat edenal
――――Emustolronzen fine el baral zizzl
とても綺麗な、澄んだ音が響いた。それはまるで楽器のようでもあったし、あるいは音を編んでいるようにも聞こえた。
――――Gatrandis babel ziggurat edenal
――――Emustolronzen fine el zizzl
発散されるフォニックゲインを、強引に引き留める。まるで毛穴から吹き出す汗をもう一度吸い込み直すようなめちゃくちゃな感覚。
じわじわと浮かび始める激痛が全身へ広がっていく。遠のきそうになる意識を、けれど響は必死に繋ぎ止めていた。
必死に言葉を紡ぐ。
「――――Superb Song!!」
「――――Combination Arts!!」
「――――セット!ハーモニクスッッ!!」
絶唱の二重唱。
クリスのギアから増幅されるフォニックゲインが響のギアへと流入していく。ガングニールが可変し、その体から漏れ出づるエネルギーが虹色に発光した。
響の左腕ユニットが巨大化し、まるで自動車のように四足が地面を踏みしめる。変形したのは攻城戦用のバリスタだ。思い切り引かれた弦に、響が腰かける形となる。
同様に、右腕ユニットも巨大化していた。しかしそれはバリスタに番える矢というより、巨大な投げ槍と表現した方が正しいかもしれない。直径60cmは越えようかという丸太ほどの太さの投げ槍の後部に、響の腕が一体化している。
S2CA・ツインブレイク type-
実戦で使用するのは初めてだったが、なんとかうまく起動している。
「ギィィィィイイイイイイイイイイイ!!」
「いっけええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
シンフォギアノイズが真っ正面からフォニックゲインを射出する。
同時、真っ正面から攻城戦用バリスタが投げ槍を投射する。
中間地点で衝突し、爆発の余波が大気を押し退けるように炸裂した。
「いっけええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」
ナスターシャもF.I.S.本部で戦況をモニターしていた。
「急いで救護班を回しなさい!」
「し、しかし装者達の護衛無しでシンフォギアノイズの行動圏内に救護班に向かわせると、二次被害が予測されます!!」
「くっ……!民間人の避難はまだですか!?いつまで時間がかかっているんですか!?」
「地下の『オーケストラシステム』が乗っ取られている限り、対象は永続的に現界し続ける事ができます。時間稼ぎは意味がありません!」
「くそ……私は、あの子たちも救う事が叶わないのですか……!!」
ナスターシャが拳を固めて壁を叩いた。
責任者としての悔しいのだろう。制止を聞かずに勝手に戦場へ向かった響とクリスだったが、それを彼女は責めなかった。事実、二人の尽力により街へのノイズの侵攻は阻止できている。
結局の所、誰かを犠牲にしなければ誰かを守れない。
その事実にナスターシャが苦虫を噛み締めるような表情を浮かべた、その時だった。
「な、なにこれ……」
安藤・寺島・板場の三人が、発令室のドアを開けて中継映像を見て驚愕していた。
「あ、あなた達、どうしてここに……!?アラートは鳴らしていないはずです!!体内洗浄はどうしたのですか!?まだ完了していないはずです!」
「なんか胸騒ぎがしたからベッドから起きてきたら、こ、こんな事に……!?」
「司令!どうしてビッキー達が二人だけで戦ってるの!?どうしてわたしたちを呼ばなかったの!?」
「それ、は……」
言い淀むナスタージャに、寺島が詰め寄った。
「わたしたちへ言えない作戦があるんですね?ナスタージャ司令は意味もない嘘をつく人じゃないです。きっと、立花さんかわたしたちの誰かが無茶な事をする羽目になるから、黙っていたんですよね?」
「…………」
ナスターシャはそれでも口を閉ざしたままだった。
きっと、響達が立案した作戦を知ってしまったら、身を粉にして実行しようとしてしまうから。
子供の命を守りたい。ナスターシャのその意志は揺らがない。
しかし、安藤達の決意も揺らがなかった。
中継モニターには、絶唱を発動し歯を食いしばる響の姿があった。発せられる雄叫びは、喝を入れるというよりは激痛に呻く悲鳴のようにも聞こえた。見ているのが辛い。
「司令の気持ちは分かります。けれど、わたしたちを守ろうとしてビッキーたちを助けられなかったら本末転倒じゃないですか。やらせてください!わたしたちに本来の作戦を、教えて下さい!!」
「死ににいくような事はしません!生きるのを絶対に諦めません!だから、どうか教えて下さい!!」
訴えかける三人の押され、ナスターシャは何度か逡巡するように目を閉じて深呼吸した。
「……いいでしょう。作戦の概要だけなら、ですが」
アームドギアが共用の『モイライクラブ』には、絶唱を収束する特性がある点。加えて、その絶唱特性が『運命に干渉する』という反則技である可能性がある、という推測。
「わたしたちのギアに、そんな力が……」
「もうLiNKERの在庫はなく、効果時間も限度ギリギリ。どころか薬害の除染も完了しておらずオーバードース症状は脱していません。絶唱を発動させれば即死。採用はできませんでした」
「……いや、できますよ!!アニメみたいに、一発逆転の方法があるよ!!」
板場のその発言をナスターシャは即座に否定した。
「命を粗末にしないと約束したはずです。許可できません!」
しかし、板場の意図を察したのか安藤や寺島も顔を綻ばせた。
「あぁ、そっか!!できます!わたしたちが絶唱しても生き残る方法が、たった一つだけ存在します!」
「そ、そんな事が!?」
「はい!……もちろん、絶唱特性が本当に『運命に干渉する』だったらですけど。でも、賭けてみる価値はあると思います!」
「そんな希望的観測や願望の仮説にあなたたちの命は賭けさせられません!」
「友達が困ってるんです!それだけで命は張れます!かつて、ビッキーたちがそうしたように!」
「…………」
「お願いします!わたしたちをカ・ディンギル址地にヘリで運んで下さい!絶対に生き残ってみせます!!」
響の放ったS2CA・ツインブレイク type-
衝突地点を中心にドーム状の爆心地が出来上がり、クレーターと化している。
「や、やったのか!?」
煙が晴れた先には、シンフォギアノイズが佇んでいた。ダメージは見られない。
相殺をできた。けれど、そこが限界だったのだ。
「う、ぁ…………」
クリスの眼前で響が崩れ落ちた。絶唱の反動で激痛が体を蝕んでいる。その動きは鈍かった。
シンフォギアノイズは容赦をしない。
――――千の落涙
一瞬にして背後に展開した無数の刃を弾幕として響を狙い撃つ。
「畜生が!!」
地面が砕けているせいで小刀は吹き飛ばされ、影縫いの拘束は解けている。クリスは射線に割り込み、リフレクターを展開して刃の弾幕に身を晒す。
「ぐ、く……!!おい、馬鹿!!大丈夫か!!」
「だ、大丈夫だけど……ちょっと体が……」
痛みを堪えるように響は笑顔を浮かべたが、それが空元気でしかない事はすぐに察した。
(くそ、こいつを抱えてあのノイズから逃げるのは無理だぞ!!)
眼前にシンフォギアノイズが飛び込んできた。
このまま殴り飛ばされたら無防備な響は危ない。慌てて背後の響を庇うように抱いた。
シンフォギアノイズの拳がクリスの背中に突き刺さり、抱えた響もろとも吹き飛ばした。
「ぐ、ぁぁぁああああああああああああああああ!!」
二人して地面を転がり、一体を封鎖しているフェンスの金網にぶつかって止まる。
「く、クリスちゃん……!!」
「……まずい……!!」
クリーンヒットした。シンフォギアノイズの渾身の一発を防御も取らずにまともに被弾した。背骨が軋み、激痛で体が上手く動かない。
(畜生……!!ここであたしら、終わっちまうのか!?こんなところで、殺されるってのか……!?)
思わず瞼を閉じかけたクリスの頭上から、見知った声が飛んで来た。
「「「――――Paravil Pepromes Moira zizzl」」」
思わず頭上を見上げた。
空から迫るVTOL機のドアを開けて、三人の装者がカ・ディンギル址地を見下ろしていた。
「な、!?ど、どうしてここに来た!?お前ら、戦えないんだろう!?絶唱を使ったら死んじまうんだぞ!?分かってんのか!?」
自分の状況すら棚に上げて身を案じてしまう。
けれど、三人は揺らがなかった。
「わたしたちには、拳を固める勇気も、」
「刃を振るう覚悟も、」
「矢を番える度胸もありませんでした」
装者となった経緯は、少女たちからすれば理不尽の一言に尽きた。
訳も分からず背を押され、望まずに戦場に放り出された、平凡な高校生だった。
喧嘩なんて嫌いだし、それが命を奪うものならもっと嫌いだ。
「「「けれど、」」」
少女たちが抱くその感情は、まさしくかつてこの並行世界を救った立花響・風鳴翼・雪音クリスと同じものだ。
その真剣な眼差しは、眼下の敵を見据えて揺らがない。
「「「だからと言って、守りたい人がいない訳じゃない!!」」」
揺らがぬ意思が、其処にある。
――――Gatrandis babel ziggurat edenal
――――Emustolronzen fine el baral zizzl
とても綺麗な、澄んだ音が響いた。その音色は、上空の三人の唇の奥から奏でられたものだった。
――――Gatrandis babel ziggurat edenal
――――Emustolronzen fine el zizzl
絶唱。
命を燃やして放つ、シンフォギアの最後の灯火。
「「「――――これが、わたしたちの――――!!絶唱だ――――ッッ!!」」」
次話で最終回になると思います。