簡単な救済劇ですか?   作:moti-

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簡単な救済劇。短編。


凄く曖昧なプロローグ

 ーーー何故、わたしは死肉の中心で佇んでいるのだろうか。

 

 まわりを見れば血で水溜まりが出来ていた。真っ赤に濡れているのは自分の体。けどその赤はわたしが散らしたものではなくて、

 

「ぁ」

 

 欠けた。

 

 何か致命的な物が欠けた。人格の基となっていた物が、わたしと言う存在に入り込んだ異物が、わたしと言う存在が残した遺物が、わたしと言うその存在の基礎が死んでなくなった。

 

「あ、あ、ぁぁ ?」

 

 そうして漸く理解したーーーわたしと言う存在は人と相容れることが出来なかったことを。昔の私が遺したたくさんの呪いのせいでわたしは最悪なまでに狂ってしまって、

 

 わたしと言う存在が生き、

 

 生き残るために必要な物を他が支払う。

 

 生きているだけではた迷惑。存在としての欠陥。人間で表せばそうなるのだろうが、わたしは既にそのさいあくの象徴をしっている。

 

「りゅう」

 

 存在的に人間失格。人類文明崩壊の立役者。まっとうにさいあくな、さいあくで、禁忌の領域に突っ込んだ狂気。

 

 禁忌。

 禁忌。

 龍。

 全部。

 

「ーーーわたし」

 

 

 ◇

 

 

「……あ? 森丘に幽霊が出るぅ?」

 

 友人が持ってきた語り話は些か非現実的な物だった。そんなのあるわけがない……実際そのはずである。だが真剣な表情でそれを語る友人はふざけた様子を見せない。ちょっとわからなくなってきた。頭が痛い。

 

 頭が痛いで頭痛が痛い。

 

「まあ、あくまでも噂なんだけどね。けれどちょっと怪しいよ。それを見た、って証言をくれた人はたくさんいるーーーけど全員が死んでる。幽霊に叩き殺されたのか、単純に下手を踏んだのか、それとも何か触れてはいけない神秘の類いだったのかーーー僕は気になって仕方ないよ」

 

「神秘、ってったらモンスター自体超常の次元だろ、俺らからしたら。古龍とかは自然の法則を用いるんだろ? 既に超常だ。ここらへん人理が及んでない。それを説明できるんならいいけどもうちょっと物理法則で説明出来るアクションを起こせよ」

 

 そういえばまったくモンスターを超常だと、こちら以外の存在は考えていないらしい。馬鹿なのか、それとも既に認識で定着してるのか。まあ、神秘は既に我々の隣にあると言われれば普通納得出来ない物なのだろう。

 

 それはそれとしてG級ハンターの存在もこちらからすれば神秘の部類に入る。

 

「ま、僕は深入りしないさ。物語で言えば僕の位置付けは主人公の親友、友人、所謂お助けキャラだからね。基本的にそういう廻りは君に向く。だから僕は君を超常の生き証人だと思ってるし、物語の主人公だと思ってるし、故に君のそばにいるんだけどね。ーーー神秘の解明に取っ掛かりがないんじゃどうも難しいだろ?」

 

「うっせぇ、小難しいこといってんじゃねぇよ」

 

 確かに俺には運が向く。

 

 天運、運命力とでも言うのだろうかーーー何かの、何らかをきっかけとしたタイミングで何かを発想したり、偶然の巡り合わせが多いことも否定しない。だが自分自身真っ当な人間の類いだと思ってるし、人間を卒業もしたくない。神秘なんか秘めているはずもなくーーーだがそれが本当にあるのなら面白い、

 

 試してやろうじゃないか。

 

「んじゃ、行くか」

 

「どこにだい?」

 

 そうして、言った。軽いノリで、テンションで、だが真面目にふざけて、

 

「ーーーちょっと美少女幽霊を探しに」

 

 

 ◇

 

 

 そうして森丘を目指して歩けば、そこには数十分で辿り着いた。当然だが普通はここまで早くつく、と言うわけではない。早く着いたのは我々が住んでいる村が森丘に限りなく近い位置にあるからだ。

 

 狩り場の外ではあるがある意味では森丘と合体している我々の村は相応にモンスターの襲撃も多い。といってもあまり大型モンスターは現れないらしい。それは何かに恐れている風でもある、とは友人から教えられたことだ。

 

 さて、ここから危険領域である。なるべく淡々と移動していこうか、と考えていると、

 

 

 人が倒れていた。

 

 

 木に寄りかかるようにして人ーーーそれも少女が倒れていた。インナー一つしか身に付けていない。だが、ハンターなのかはわからないが地面に大剣が突き刺さっていた。

 

「………………」

 

 本当に美少女がいた、とか、何でこんなところに、などとは思わなかった。けれど、ただ、一つ。

 

 

 ーーー大剣……それには強い呪いが見えた。

 

 

 「…………マジで居たよ」

 

 そう言って少女へと近付いていく。顔が明瞭な位置まで歩み寄って、漸く彼女が寝ていることに気付いた。

 

「起きてるか? おーい?」

 

 そう声を掛け手を触れた瞬間、

 

 

「ゃーーーだめ」

 

 天が鳴り響いた。

 

 

「な、ぁ……!?」

 

 雷。

 

 それが降ってきた。それは此方を照準して降ってきている。何故だ? 切っ掛けがあったとすれば彼女に触れたこと。そうして、自身の意識が高速思考余裕時間をオーバーすると同時、彼女が此方を突き飛ばし、

 

 雷はそのままーーー彼女を焼き焦がすように落ちた。

 

 けれど彼女は無事だった。見た肌には傷一つ存在していない。

 

 人間がそれを耐えられるはずがないのにーーーそれを耐えた。

 

 もうひとつ。

 

 直感で理解したが。

 

 彼女はーーー大剣なんか比にならないほどの呪いを負っていた。

 

 

 そのことが、やけに腹立たしい。

 

 

 

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