「あ、あ、あ、ぁ、ああ、あああああああ!!」
雷を受けた少女は目を見開き、痛みに悶え、自身の首を握り潰すようにして抑えている。その瞳は濡れており、複雑に歪んでいた。
「痛い、いたい、いたい、いたいよぉ……いたぃ、いやぁ、ごめんなさい、ごめんなさい、ゆるして、あやまってるからぁ」
……呪い。
おそらくそれはハンターとして殺したモンスターが祟っているのだろう。あの大剣の奇妙さ、気持ち悪さを見れば彼女は恐らく古龍を狩った経験がある。そしてそれは禁忌のモンスターだろう。
あれほどの龍属性を見れば推測も容易だ。
飢餓イビルジョーと言う可能性もある。
ーーーそして、不意に怒りが込み上げてくる。
少女も少年も青年も男でも女でも関係なく、その呪いをただの個人に押し付けている存在に腹が立つ。それを望んで背負ったというわけではないだろう。それならば嘆くわけがない。
狩人は狩った者に対する敬意がある。
死んでもいいと言う覚悟がある。
ならば彼女は? 彼女はハンターかもしれないが狩人ではない。
だからこそ苛立ちが強く、
けれど今それについて何かが出来るはずがない。
だから。
「なぁ、俺の家に来ないか?」
呪いで殺されてもいい。
だから、今は寄り添おう。
◇
「それで本当に連れてきちゃった! 地雷って目に見えてるのに連れてきちゃったよ!」
「あはっ「あははっ「あははは「あはははは!!」と笑う友人にため息をはきだしつつ自身のベッドで眠る少女に目を向ける。目を揺らし、見開き、そうして拒絶をして意識を失った少女を抱き抱えて来たのは事実だが、流石に馬鹿扱いは黙ってられない。
「おい。普通、独り何かを抱えてる人がいたら助けてやるだろ。なんで俺が頭おかしいように言われてるんだよ」
「いや、馬鹿だよね」
友人はそう断じた。
「馬鹿、或いは英雄気質。主人公体質と言ってもいいし、つまり明確に破綻者だ。そんな無償の救済を振り撒いてたら君はすぐ死ぬよ。断言しよう。そういう体質であったところで、竜は、龍は法則を噛み殺しながら襲ってくる。そうだね。君が英雄格としての能力を持っていたら大丈夫だろう。少しは長く生きられるだろうさ。それは外付けでも自前でもいい、」
そこで言葉を切り、
「いいよ、でも嫌いじゃあないーーーそもそも、君の破綻自体はもう避けられないからね。あの少女に救いの手を伸べた。その時点で君の一般人生は特別な物へ昇華した。さて、一騒動が起こるだろうけど君は果たして生きてられるかな?」
「お前は」
お前は一体どこまで何を知っている? そう問おうと思ったが、こいつがそれを語るわけがない。だから言おうとしていた言葉を飲んで、
「馬鹿野郎、言ったのはお前だろう? そういう天運の類は俺に回るってさーーーだから死なないさ。俺が死ぬのは死ぬと決めた時だ。死んでもいいと考えた時だ。それ以外で絶対死んでやるもんかよ……!」
そうかい、と友人は言った。
「ああ、そうかい、そうかいそうかい爽快……! いいよ、君ならやってくれそうだ! ああ、お願いだ、見てる、力添えだって何時でもしよう! だから、」
そうして、爛々とした瞳で、興奮を明確に感じさせる瞳で、もしくは発情しているような瞳で、
友人は、
「だから、見せてくれ! そして僕を魅せてくれ! 英雄が起つ、その瞬間を以てーーー!!」
ーーー妖しく、艶やかに、凄絶に、笑った。
◇
友人は自らの領域、容量を興奮が超過したのか糸が切れたように、死んだように眠りを迎えた。
それを自身が眠る筈だった予備のベッドに寝かせ、そうして少女の方を向いて口を開く。
「……いつまで寝ようとしてるんだ? 絶滅少女」
目と目が合う。そして少女はゆっくりと上体を起こし、開口一番にこう言った。
「……いきて、る?」
「そりゃあ生きてるだろうよ、そう簡単に人が死んでたらとっくに絶滅してるぜ」
まあ、絶滅普通にするんだろうなぁと言う心を込め歪んだ少女、或いは不純物少女と言うニュアンスで絶滅少女と称したわけだが。
手を見つめるようにして少女は瞳を虚空へ揺らす。それは過去への帰想か、呪いの音を聞いているのか。単純に身近の死の胎動に震えているのかもしれない。
「なんで、わたしを拾ったの?」
「馬鹿野郎お前、死にそうな少女一人見捨てて何が人間だ。例えそれで死んだとしても俺は悔いはないな……ない……いや、あるわ。普通に悔いあるわ」
「……だいじょうぶ? 壊れてない? きゃらくたー」
「うるせえ誰がなろう系だ。いや、俺も重複矛盾優柔不断な箇所はあるんだろうがな。でも曲がんねぇよ。これはもう曲がるはずもない。だからなーーーたった一人、少女を見捨てた日に旨い飯は食えないだろ? なら、見捨てておくわけもねえよ」
言葉が意外だったのか、目をぱちぱちと瞬かせ少女は言う。
「それで、しんでもいいの?」
「生憎だが俺が死ぬのは死んでいいって決めた時だけなんだ。ってのは置いとき、別にいいってわけじゃあないな。けど見捨てるよりかはそいつ誘って飯食った方が数段旨いだろ。こんな極小村じゃ楽しみは囲って食う飯くらいしかないんだしよ」
「……わたしは、やだな」
何が? と問えば、直ぐに返事が来る。
「わたしがいることで迷惑がかかるのも、わたしがいることで人がしぬのも、わたしがいることでだれかが笑うのも。そいつはもしかしたらいまもわたしをみて、私を、おれを、俺を見て笑ってるのかもしれないって思ったら……殺したくて、殺したくて、そんで、死にたくて」
「そっか」
「うん、そうなんだ」
「お前、一人称俺だったんだな……」
「別にいまそこはどうでもいいとおもうよ」
尚今回についてはハンターと狩人が逆かなぁ、と思ったんですが独自ってことで
原作ハンター→今作『ハンター』+『狩人』
因みにハンターと言うのは実機プレイヤーって気分で使ってました。覚悟も何もないですね