簡単な救済劇ですか?   作:moti-

4 / 6
戦闘一瞬だけあります




 それは唐突にやってきた。

 

「ふ、ぅ……ぁ、っ?」

 

 背中に指を突き込まれている感覚。

 

 痛い、と思えば何かに引き摺られた。

 

「あ、ぅ」

 

 呪い……呪い。

 

 直感した。

 

 ヤツは、ヤツは『俺』を殺そうとしている……!

 

 それは精神的な物だ。どうにかして俺と言う存在を消し、壊し、潰し、捨て俺を俺として機能させなくする。

 

 つまり、男だったと言う自覚を消そうと。

 

「は……クソが、俺と言う個体自体の在り方を許容しながら性別については否定すんのかよ……それが歪めば、俺は、俺はーーー」

 

 どうなる?

 

 どうなると思う? 

 

 思った?

 

 

 ◇

 

 

 事態は急激に動いた。

 

「わ、俺は、ーーー?」

 

 それはきっと起動してはならない歪み。彼女は首を自分で折ろうと指を這わせた。

 

「ーーー親友!」

 

「わかってる」

 

 友人がその指を停止させる。筋力は拮抗しているのか、細かい振動が止まらない。彼女は友人に任せ、とりあえず家を出て行った。

 

 赤。

 

「……わーお」

 

 死体だ。どれもこれも見覚えのある形をしている。大質量で潰されたような物が多い。ただ外傷無しで死んでいる物もあったため、そこから敵は推測出来る。

 

 故にこちらはーーー

 

「ちくしょう、村人ごときにここまで酷い仕打ちは初めてだ」

 

 ゴッ!! と。

 

 恐らくは自分たち以外の村人を静かに殺したそいつを殴り付けた。

 

 

「厄介な敵だーーー霞龍」

 

 

 ◇

 

 

 ……気付けばベッドに寝かされていた。

 

 どこだここ? とわたしは思い……そして愕然とする。

 

「……わたし、わたし、わたし……何で? なんでわたしは、思い出せない!?」

 

 何か大切な意識が途絶えた。わたしの前任としていた誰かか、それともただのわたしか。

 

「やだ、やだ、やだよ、やだ……忘れないで」

 

 すがるように掛けられていた布団を掴み、こうしていてもはじまらないとベッドを降りる。

 

 小さい部屋。そこから出ると、

 

 

 たくさんのめがあった。

 

 

 めがあった。

 

 目が合った。

 

 眼が有った。

 

 わたしを睨み付けるように、たくさんの眼球が今えぐり出したかのような綺麗さを保って置かれていた。

 

 今。

 

 えぐりだされたような。

 

「………………!」

 

 口内の水分が一瞬で蒸発したような錯覚。

 

 同時にそこにいるのが怖くなって、恐ろしくなってその部屋からも飛び出した。

 

 

 ◇

 

 

「バトルパートだよ、たぶんこっから命を懸けた」

 

「解ってらぁ! 武器ほしいなぁ! できれば龍属性!!」

 

「無いよ頑張れ生存欲欠乏人間」

 

「るせぇ黙っとけ自己認識不全症!」

 

 酷いなぁ、と言う声を耳に入れつつそれに反応することは出来ない。向こう、案外余裕そうだなぁ、と思いはしてもそれを口に出せる分の余力はない。

 

 ともあれ確殺するには代償が必要だろう、

 

 故に脳のセーブを外す。

 

 ステルスで自身の後ろに現れた霞龍ーーーオオナズチを無理矢理視界にいれる。飛び掛かってくるのを相手の左側を取るように回避し、そうして相手が振り返るのに合わせるようにしてこちらが相手の角に掴みかかる。

 

「う、ぎ、りゃぁぁぁああああ!!」

 

 そうして掴んだ手で体を跳ね上げるようにして空中へ体を投げ出し、一時的に練気を体へまとわせ、その能力を著しく上昇させ、

 

 体を全力で捻りその巨体を蹴り飛ばす。

 

 何とか着地し、直ぐに攻撃を仕掛けにいく。生命力を無理矢理龍属性エネルギーに変換し身体強化にあて、相手が混乱している状態、その間に殺し切るつもりで四撃を放ち、

 

 一撃目が角を破壊した。

 

 二撃目が眼を潰した。

 

 三撃目が首の肉を半分切り裂いて、

 

 四撃目が完全に首を切断した。

 

 そうして完全にオオナズチを殺しきった。

 

 そうして同時に右腕が動かなくなった。

 

 

 ◇

 

 

 部屋から出て。

 

 そうして人の憎しみを一身に浴びた。

 

 そしてそれを向けた者はみんな死んだ。

 

 死んだ。

 

 死んだ。

 

 何故?

 

 ころした。

 

 

 ◇

 

 

「疲れた……」

 

 そうして辺りに漂っている血臭に気付く。そういえば村人たちはみんな殺されていたのだった。つまり今村にある生存者は自分ら三人しかいないと言うわけであり、

 

 そのうち自分の戦闘力もかなり削がれている。

 

 生命力を代償に古龍を殺し切る力を得たのはいいが、流石に万全とはいかなかったようだ。とはいえ自身の命日が限りなく近くなり、右腕が完全に使えなくなっただけ、未だ戦えないわけではない。

 

「外付けパーツもほしいよな」

 

 龍気活性に扱う龍属性エネルギーを外から集める為の貯蔵器。欲しいのはそれかなぁ、と簡単に候補を脳内で探っていく。

 

 ついでに言えばそろそろ武器も欲しい気持ちはある。

 

「お疲れ、親友」

 

「お疲れ、友人」

 

 そうして言葉を交わし、そこから会話を広げていく。

 

「喜べ友人、俺の右腕は死んでしまった」

 

「相変わらず人格破綻者だね、正直ここから何かのパート入って右腕復活するんじゃないかなと僕は予想してる」

 

「主人公なんて皆が皆マトモじゃねぇだろ。平凡な高校生って付けられたタグは剥がしてくに限るぜ」

 

「じゃあ君が自称している只の村人も返上して唯の村人を名乗ればどうかな? オオナズチ蹴り飛ばすとかなろう系とかじゃないと許されないよ」

 

「じゃあ俺はなろう系主人公ってことなんだろ。派生系列的に性質近似ってとこか」

 

「主人公最強物はいつになっても廃れないね」

 

「わたしが起きた……」

 

 会話に割り込むように意識の覚醒を伝える少女におはようと告げる。現状村の生き残りがここ三人、よくもまあ一万文字にも達していないのにここまで極限的な状況になるもんだ、と思いはするが、とまぁそれはさておき、

 

「多分明日には別の襲撃イベが来るんだろうなぁ……」

 

 その時。

 

 恐らくは終幕だろう。

 




第一人格死亡済み(
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。