駅から出ると、大きな建物が多く立ち並んでいた。
「……やや、凄い。思っていた以上に都会なんだ」
私はつい言葉が出てしまう。
私は日本生まれである。
でも、田舎の方で生まれたのでこういう人の多いところは苦手なのだ。
ちなみに時計塔にいた時もあまり周りに馴染めなかった。
人も多いし、言語も違うし、色々と環境適応に困ってしまったのだ。
あとは、外見である。
私は女、ではあるが。
ボーイッシュな外見のせいで日本にいた時に銭湯の女湯に入ろうとして止められたこともある。
別に親に文句を言いたいとは思わない。
まぁ、文句も言える親すらいないのだが。
私は、捨て子だったらしい。
田舎ではよくあることだ。
子供ができたのはいいのだが、育てるほどのお金がない。
そうなれば、捨てるほかないのだろう。
そうして私はその田舎町の教会で育てられた。
その時に教えてもらったのが『魔術』であった。
私はもともと魔力回路がしっかりと存在していて、そのおかげで魔術を使えるのだ。
教会ではいろんな魔術を教えてもらって、時計塔に行ってからは師から名前をもらって。
魔術のおかげで私は『私』として存在出来ているのかもしれない。
そう思うほどに大切なものだ。
「ええ……っと、『大きな橋を渡って住宅街を通りながら北上していくと武家屋敷がある。そこが貴方の家よ』ってメールが来てる」
それは師からのメールだった。
その武家屋敷は私の師の夫さんのお家だったらしい。
ちなみに夫さんは行方不明らしい。
もしくは、既に他界している。
こんな曖昧なのは私の師も具体的に知らないからである。
夫さんは辛い環境に生きる人たちや苦労している人たちを助ける活動をしていたらしくて師は時計塔の先生になったことで同行できなくなり、夫さんは1人でに行方をくらませてしまった。
ということだ。
「……じゃあ、買い物しながら目的地に向かおう」
よく考えてみると今日の夕食などを作るための食材がないのに気づきそんなことを考えながら私は武家屋敷に向かうことにした。
特に変わりのない街並み。
人が多く、高いビルがそこそこ立ち並ぶ普通の街。
こんなところで昔、
まぁ、事実なのだからしょうがない。
そんな風に呑気に考えながら街を歩き、買い物を済ませて武家屋敷に向かい始めた。
ーーー
「……大きな橋って、この橋のことかな……?」
大きな赤い鉄橋を見ながら私はそんなことを呟いた。
ここは
左右に歩道があり、その内側を車が通るという普通の作りだ。
「ここを渡って住宅街を北上、ここを渡って住宅街を北上」
忘れないように呟きながら私はトボトボ1人で歩いた。
携帯は途中で電池が切れてしまった忘れてしまったら大変なことになる。
充電器はあるが、コンセントがそこらにポンポンとあるわけではないので覚えて道を進むしかなかった。
「……うぅ、こういうときに電気の系統の魔術が使えたらきっと楽なんだろうなぁ」
そんなことを考えながら、私は橋を渡り終え住宅街に向かって行った。
冬木は自然が多い。
もっと都会的な感じかと着いたときには思ったが、自然も多くしっかりと緑もあり落ち着きを感じる。
私は田舎生まれのせいか緑に安心感を感じる。
コンクリートや鉄などのあの無機質な感じよりも、どこか優しさを滲ませる淡い緑の方が好きだ。
「で、こっちの道を北上する……で、あってるはず」
多分この道だろうと地図をもとに歩いた。
そうして私は無事に武家屋敷にたどり着いた。
まぁ、言わずともわかるだろうがとても大きい。
どこに寝ればいいかわからなくなるほどに。
「……ここで寝よう」
私は適当に荷物を置き、客室っぽいところを探して畳に寝転がってみる。
「……あー、懐かしい」
私は畳の感覚を久しぶりに味わい堪能すると、食事をして風呂に入り早めに寝ることにした。
今日は、特に何もなかった。
何も置きない平和な1日だった。
明日から本格的に調べ始めよう。
『泥』を回収するために、頑張らなくちゃ。
そう思い、私は眠るのだった。
ーーー
また同じ夢を見た。
赤い髪の人が花園に1人立っている夢。
けど、今回は少し違った。
彼は何かを恐れるような目をしていた。
いつもの満ち溢れた目ではなく、何かに怯えているようだった。
手を伸ばしても届かないことをわかっていた。
けど、私は彼に近づいていた。
「……大丈夫?」
ぼそっと呟いてみる。
だけど、それは彼には聞こえない。
そのまま、夢は少しずつ覚めていくのだった。