Fate/hologram   作:G-pro

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第1章 ー来たるは7つの影ー
第1話 (いびつ)な怪物


「……んんっ」

眩しい朝日が目に差し込むと共に私は目を覚ました。

鳥のさえずりが心地いい。そう感じたのは久しぶりな気がした。

 

「……何時だろ?」

目覚まし時計もなかったので起きるのは自然に任せた。

 

今は午前8時半過ぎ。

「……大学なら授業が始まるギリギリ前か」

ひどい寝癖のついた髪を手櫛で直しながら私は布団から出る。

顔を洗うと私は簡単な朝食を作り、支度を整えて出かけた。

 

 

「でも、どこから探したものか」

うーん、と腕を組んで考える。

 

「……片っ端から行くしかないか」

結果こういう考えに至ってしまうところ、やはり私は馬鹿なのだろう。

 

まぁ、それは置いておいて。

今回調べるように言われているのは『冬木教会』(ふゆききょうかい)『遠坂邸』(とおさかてい)の2つである。

 

その2つのうちどちらかに聖杯があるとされている。

これは私の師からの連絡に入っていたものだ。

 

「……あ、そう言えば」

私は急ぎ家に戻り、木箱を物置らしき場所に持って行った。

 

「ここに置いておくように師に言われてたんだった」

この物置には魔法陣の跡がある。

それは昔、使い魔(サーヴァント)の召喚に使われたものらしい。

 

前に話した師の夫さんはここでセイバー、かのアーサー王伝説の主人公、『アルトリア・ペンドラゴン』を召喚したらしい。

 

ちなみに私のこの聖遺物は、どの英霊のものかわからない。

II世先生から渡されただけで具体的な詳細は知らされていないのだ。

 

 

「じゃあ、向かうとするか」

聖遺物を魔法陣跡の中心にセットして、私は改めて探索を開始した。

 

ーーー

 

まず、私が最初に訪れたの遠坂邸である。

理由は1番近いというものだ。

 

「ここも広いなぁ……。師は昔こんな豪邸に住んでいたのか……」

そう。ここは師の日本の家である。

師は『遠坂家』の現当主だ。

 

遠坂家は魔術の名門である。

『常に余裕を持って優雅たれ』を家訓に常日頃から美しく生きる一家である。

 

遠坂家といえば、宝石魔術(ほうせきまじゅつ)が有名だ。

宝石魔術とは、宝石の中で魔力を流転させ、本来保存できないはずの魔力をストックしておき、宝石に宿った念に乗せてそのまま魔力を解放することにより魔弾として戦闘に転用するものだ。

17年間休み無く織り上げた十の宝石が切り札だである。

 

魔力が切れると宝石を新しく買わなくてはいけないので、お金のコスパは悪いが師は色々とやりくりしてどうにかしている。

 

師は基本的に『ガンド撃ち』である。

ガンドは初等呪術である。

『指差しの呪い』(ゆびさしののろい)とも言い換えられる。

 

ガンドは物理的破壊力を持たないはずなのだが、師は高い魔力密度により拳銃並みの破壊力を持っている。

普通は『フィンの一撃』と呼ぶらしいのだが、II世先生は、

「あれは、一撃なんかではない。言うなればガトリング砲の方が近いだろう」

といって師に殺されかけていたのはまだ記憶に新しい。

 

 

「……ここは、特に何もなさそうかな」

私は一通り調べ終えると次の目的地へと向かいだした。

 

 

冬木教会。

そこはごく普通の教会だ。

 

『言峰教会』(ことみねきょうかい)とも呼ぶらしいが、師はあまりその呼び方が好きではないらしいので冬木教会と呼んでいる。

 

「ええっと、失礼します………」

特に誰もいないとわかっていながら少し緊張してしまう。

 

そうして、私は調べ始めた。

しかし教会はあまり調べる箇所が多くなく、それらしきものはなかった。

 

 

「……あ、夜になっちゃう」

ふと調べ終わって時計を見ると午後6時を指していた。

 

「というか、もう夜だね。帰るか」

私は教会を後にした。

 

ーーー

 

「わぁ、暗くなっちゃったよ」

時は秋。夜は冷え込むので早めに帰りたかったが、これも仕事。しょうがない事だと割り切ろう。

 

「……にしても、他にどこを調べればいいんだよ……」

ぼそっとそんな弱音を吐く。

 

調べろと言われた場所には聖杯の破片らしきものや、魔力反応は一切見られなかった。

 

あると言われたはずなのに、そこにない。

これは一体どうしたものか。

 

「……一応、師には連絡を入れておこう」

そう思い私は師にメールを送った。

 

どうしたものか。

……まぁ、師から指示があるまでは待機かな。

そんなことを呑気に考えながら川沿いを歩いた。

 

 

その時だった。

 

ゾワッ……、

背筋が凍るような感覚。

これは、明らかに異常だった。

 

「……ッ!?」

おかしなほどの魔力反応を私は察知した。

 

人ではない。確実に。

だが、何か、発する魔力が人のものとは違っていた。

 

この、川の下流沿いの方だ。

私はそれがわかると、焦らず、それでもなるべく早くそこへ向かった。

 

 

そして、下流に向かうと、

「……いた」

 

そこには人の形をした『何か』がいた。

 

人、ではない。

だが……。

 

(何か、明らかに『命』とは違っている)

 

大きさは2メートル近くだろうか。マネキンのように顔はなく、性別を見分けられもしない。

 

あれは、(いびつ)な怪物だ。

 

人ではなく、異常なほどの魔力を発する化け物。

 

そう言い表すしかなかった。

 

 

(……もしかして、あれが、『泥』(人の悪性)?)

 

 

ふと、そんな考えが脳裏をよぎる。

あれは、もしかしたら『泥』で出来た人なのかもしれない。

 

ならば、一刻も早く対処をしなくては。

 

私は自らが職務を行おうとした。

 

 

すると、

 

『……Aaaaaaaaーーaaaa!!』

 

その黒い『何か』は奇声を発した。

 

「……っ」

私はその奇声を聞くと耳を塞がずにはいられなかった。

 

うるさいわけではない。

ただ、

 

あの奇声には、何かわからぬ『呪い』があることを察知したのだ。

理由は簡単だ。

 

あいつが奇声を発した瞬間、

 

あいつの足元の地に生えていた草が、枯れたのだ。

 

明確な理由はわからないが、

あれは、確かに『呪い』だ。

 

これで確信した。

あれは、あの歪な怪物は。

 

聖杯の『泥』だ。

 

それが、わかったが、

私はやつに向かって歩を踏み出せなかった。

 

なぜなら、恐れているからだ。

あいつは、確かに『泥』だ。

 

だが、私には近づけなかった。

近づいたら、『死』を目の当たりにしそうな気がしたからだ。

 

足の震えが止まらない。

恐怖が、抑えられない。

今進んだら、死ぬ。

絶対に。

 

悔しかったが、無理だった。

私には、あいつは倒せない。

なぜかわからないが、そうわかったしまった。

 

 

そうしていると、あの『泥』は霧になり、どこかへと消えていってしまった。

 

「……れ、連絡、しなくちゃ」

私はあいつがいなくなったことで緊張が抜け、そこにぺたんと尻餅をついてしまう。

 

そうして、私は師に連絡を入れた。

 

[『泥』を発見しました。しかし、こちらでは確保することができません。そちらから、誰かを助っ人として呼んでもらえますか?]

 

 

ーーー

 

その頃、

武家屋敷では、奇妙なことが起きていた。

 

物置にある魔法陣跡が、赤く光る。

聖遺物は確かに魔法陣の上にあり、

そして、誰もいない無人の物置で、

 

名も無き、1人の英霊(サーヴァント)が召喚された。

 

「………また、始まってしまったのか」

英霊は、呟いた。

 

「聖杯戦争が……。あの悲劇が、また、」

 

 

「始まってしまった」

 

 

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