Fate/hologram   作:G-pro

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第2話 自身に自信を。

ーーー

 

夜は深くなる。

「……帰ろう」

 

どうしようもないほどの脱力感と倦怠感、共に無駄な後悔を抱いた私は疲れ切っていた。

 

そうして、私は帰路につく。

足取りは重く、どうしようか考えることすらできない。

 

……私には、何かできるのだろう。

 

いくら、封印指定(ふういんしてい)級の魔法を使えたって、あの『泥』(人の悪性)には、勝てない。

 

いくら、『法政科』(ほうせいか)のロードに認められる才能があったって、魔術の根源には勝てはしない。

 

悔しかった。情けなかった。

そんな、弱い自分が憎かった。

 

そんな時、

 

………プルルルッ。

 

「……!」

私は携帯を取り出した。

 

それは、師からの電話だった。

(……出るのは、気分が重いなぁ……)

 

あんなメールを見て、きっと怒っているのだろう。

 

〈それじゃあ、あなたを送った意味がないじゃない!〉

 

それを言われてしまうと、私は多分泣いてしまう。

精神的に弱っている時にそんなことを言われたら、瞬間ノックアウトだ。

 

(……でも、出なかったら物理的ノックアウトなんだよね)

私はそちらの方が怖かったので電話に出た。

 

『……もしもし?侑李?』

「……、はい。夜枯 侑李です」

 

『……あなたねぇ……』

ため息混じりの声が電話越しに聞こえる。

きっとがっかりしているのだろう。

 

「ごめんなさい、私がふがいなっ……」

『違うわよ!そういうことが言いたいんじゃないの!』

 

「……ごめんなさい」

『なんですぐに謝るのよ、叱りにくいって言ってるじゃない』

(だって、師の叱りかたが強いから……)

こんなこと言ったら次会った時にもっと怒られる。

 

『……侑李、ひとまずその自信のなさをどうにかしなさい』

「……でも、でもでもですよ」

『でもでも五月蝿い!あんたは言い訳が多いのよ!』

「……はい」

『あんたはいちいち自分のことを卑下しすぎなのよ』

 

これは昔から師に言われていたことだ。

なんとなく、いつも人から距離を置かれていたからか自分に対して自信なんてもてやしなかった。

そのせいで師は結構イライラしていることが多い。

……いや、申し訳ないとは思うけど、癖なんだもん。

 

『……自信を持ちなさい。それじゃあ、貴方の名前も泣いてしまうわよ』

「………」

『貴方は、あなたが思っているよりも、ずっと『あなた』を守れる強い人なの。わかる?』

「……わか、りません」

『そうね。わからないから自分を卑下するのだもの』

そう言うと師ははっきりとした口調で言った。

 

『あなたはね。思ってるよりも強いのよ。弱いのは信じる力。あなた自身を信じる自信』

 

私は、何も言えなかった。

その言葉は、私に強く突き刺さる。

 

『……もう少し自分を信じなさい。あなたは、誰かを救える存在よ』

自然と、涙が溢れていた。

声すら出ない、それほど自然と涙が出ていた。

 

悔しくもない。ただ嬉し泣きとも言えなかった。

何か、私の中で吹っ切れた感じでもなかった。

それが何か私にはわからなかったが、

 

『心』が満たされたのだけは、わかった。

 

『……2週間よ』

「……え?」

『2週間待ってなさい。それまであなたなりに捜査を続けて』

そう聞こえると共に、先生の方からガタガタっと音がした。

 

『2週間後、そっちに行くわ』

 

「………」

唖然とした。

「……ええっ!?」

『何を驚くのよ。1人よりも2人の方が対処しやすいでしょう?』

「で、でも!師は時計塔での仕事が山積みなのに……』

『そんなの直ぐに終わらせられるわよ』

 

「嘘です!師はそう言っていつも仕事に時間をかけて私の講義の時間に遅れるし、II世先生とは直ぐにもめるし、しかも今まで自分の家系の宝石作りに没頭してて仕事溜まってるじゃないですか!!2週間で出来るはずなっ……」

 

そして、私はハッとする。

 

(やばい、これは2週間後に締めにくる……)

 

『……侑李さん?』

師の不機嫌な笑みを作っている姿が簡単に想像できる声。

「……はい」

 

『2週間後までに、覚悟を決めておきなさい?蜂の巣になりたくなかったら、その素晴らしい動体視力を更に鍛えておくことね。よろしくて?』

 

「……申し訳ありません。許してください」

『それで許せば警察はいらないのよ!いい!?私がそっちに行くまでに何か情報を掴んでおきなさい!』

 

「…………はい」

『返事が小さい!』

「はい!!」

私は全力で叫んだ。

 

そして、いつのまにか家の前に着いていた。

『……それじゃあ、切るわよ。少し疲れたわ』

「はい。おやすみなさい」

『こっちはまだ昼よ。おやすみ、侑李』

そういうと電話は切れた。

 

「……がんばろ、」

ぼそっとそう呟いて私は息を吸い込んだ。

 

もう少し、自分を信じるのもありなのかもしれない。

やれるだけ頑張ってみよう。

 

 

「………あれ?なんで家の電気が付いてるの?」

ふと、私は家が明るいことに違和感を感じた。

 

(もしかして、誰かいるの?)

私はそう思い、そっとドアを開けようとする。

 

だが、開ける直前。

私の視線は物置の方に行っていた。

 

(物置のドアが開いてる……?)

私は静かに物置に向かい、中を確認する。

 

「……嘘、」

そこには、聖遺物がなかった。

 

魔法陣も使われた痕跡がある。

「……なんで、なんで?」

私は混乱を隠せなかった。

 

(……なんで?もしかして、もう既に英霊(サーヴァント)が召喚されたってこと?でも、監督役とか、まだこっちに来てないはず。だって監督役の人は明後日こっちにくる予定なのに)

 

聖杯戦争は監督役無しには行えない。

だからこそ、

 

(もしかして、聖遺物が盗まれた……?)

 

この線が妥当であった。

「……なら、電気が付いてるのは、聖遺物を奪った人が中にいるってこと?」

独り言のように呟くと、それが本当のように思えてきた。

 

(……、ひとまず捕獲。話はゆっくりと聞けばいい)

私はそう考えて物置を後にして、家に入った。

 

玄関には靴が几帳面に揃えておいてあった。

私も静かに家に上がり、人の気配のする方に向かった。

 

(……台所)

気配がするのはそこだった。

 

そっと音を立てないように台所に向かう。

それと共に心拍数は跳ね上がって行く。

 

(大丈夫、大丈夫。私ならできる、私ならできる……はず)

自信はまだしっかりと持たなかったが、今はやれることをするしかない。

恐れていてはいけない。

前に進まなくては。

 

(……よし、行こう)

台所は居間のところにある。

 

居間の襖を開けてガンドを撃つ準備をして、姿を確認。

攻撃を仕掛けてきたら相手の魔法の系統により順次対応変更。

第1目標は意識のあるままでの捕獲。

不可の場合は戦闘不能にして気絶させる。

 

そうしよう。

私は息を呑み、襖を開けた。

 

「……止まって」

 

運良く相手は後ろを向いていた。

茶色いフードを被った180後半くらいの……多分肩幅などを考えて男。

まるで旅人のような格好をした相手は茶色い布をコートのように身体に巻いていて体格はあまりわからない。

 

「フードを取ってこちらに手を上げて振り返りって。無駄な抵抗はしないように」

「……わかった」

 

やはり、男だ。

声からわかった。渋めの声をしている。

そうすると、その男はフードを降ろして手を上げてこちらを向いた。

 

そして、私は絶句した。

 

「……あなたが、私のマスターですか?」

 

そこにいたのは赤い髪をした夢に出てくるあの優しそうな男だった。

 

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