母親は、とてもいい気分でした。ついに、双子がひとつになったのです。
そして、そのひとつになった後の女の子は、母親に従順でした。
身空を隠し、キャメロットに入り込み、円卓の騎士となり、内側から崩壊を促す、という母親の指針に、女の子は一切逆らうこと無く従ったのです。
すべて、すべてが自分の思い通りになっていく。母親は笑いが止まりませんでした。
女の子は、姉さんと共に在りました。
かつて女の子に融けていった、双子の姉さん。彼女の聡明さと大人しさは、女の子へと受け継がれました。魂も、私と共に在ると、女の子は信じていました。
女の子は既にキャメロットに入り、円卓の騎士として名を連ねていました。決して兜を外す事の無かった女の子は一時期他の円卓の騎士たちからは反感を買いましたが、戦場に赴く女の子を何度も見る内にそれも無くなって行きました。
女の子の道は、騎士道とは言えないかもしれませんでした。顔を見せない時点で、正直さとはかけ離れてしまいます。
けれど、必ず先陣を切って突撃する勇猛さ、戦況を冷静に分析、その状況で最も適した決断をする判断力、そして敵だった者たちへの弔いを忘れないその姿に、心を打たれる人が増えていったのです。
次第に、女の子は「勇猛で栄誉ある騎士」と言われるようになりました。
女の子は、牙を研いでいました。
己の不倶戴天の敵と見定めた人を、必ず討ち果たす為に。
そのためには、誰よりも前に出る必要がありました。
誰よりも早く、誰よりも多く、女の子は戦う必要があったのです。
けれど、焦る必要もありませんでした。
女の子は、お花の魔法使いさんから
『君は王さまの息子だよ』
と言われたのです。女の子は女の子ですから、最初は何を言っているのか分かりませんでした。けれど、今の自分の状況を照らし合わせて、つまりはそう言うことなのだと合点しました。
その身に溶け込んだ姉さんが、女の子の身体は作り物だと教えてくれていましたが、その理由が女の子に漸く分かったのです。
『双子を殺し合わせるような親に、ロクな奴はいない。』女の子は後にそう語ります。
女の子はすぐ王さまの元へ行き、己の身空を全て話しました。
そして、あることの許可と、それを実行した後に女の子が払う対価の条件を約束しました。王さまも、この事は秘密にしてくれるとの事でした。王さまの口の固さは、これまででもよくわかっていました。
ある時、女の子は、とても懐かしい感覚を抱きました。
かつて女の子の姉さんが側に居たときに抱いた、全てが繋がっていたような、あの感覚です。
少しづつ、手繰り寄せて行きました。
感覚の糸は、己の奥底へと通じていました。
自分の中へと埋まっていく。そんな不思議な感じを覚えながら、女の子は奥へと進みます。
女の子の中は、真っ暗でした。姉さんが溶け込んでからの女の子の世界と、同じように。
白く輝く糸をたよりに、奥へと進んでいきました。
白い糸は、女の子と同じ大きさの光輝く玉から伸びていました。
女の子の、あの懐かしい感覚も、ここから強く発せられているように感じられました。
頼ってきた糸を、少しずつ引っ張っていきます。すると、少しずつほつれていきました。繭のようなものでした。
だんだんと、中身がなんなのかが分かって来ました。女の子は、糸を引き続けます。より強く、より早く。
やがて、全て糸が取り払われ、真っ暗だった心は、真っ白な糸が敷き詰められていました。
真っ白な原っぱには、赤い花はなく。
そこには、言葉もなく、ただただ抱き合う双子の姿がありました。