母親は、ついにこの時が来たかと心を踊らせていました。
王さまが、長く国を留守にするというのです。
そして、その留守の間は、女の子と、王さまの奥さんに国を預ける、との事でした。
『ついに、ついに私の息子が王になる。この島を、わが手中に取り戻すことが出来る。』
女の子は、ますます立派になりました。
他の円卓の騎士たちと比べても、なにも遜色はないくらいです。
母親は、ついに女の子を呼び出します。
女の子は、固い決意に満たされていました。
『母親は、王さまが留守にする間に、この国を乗っ取らせようとするだろう。』
それは女の子も分かっていましたし、王さまもそうだろうと踏んでいました。
王さまは、女の子にある短剣を貸しました。
なんでも、王さまが死地に向かう時に、必ず持っていくものなのだとか。
女の子は、それを大事に受けとりました。
女の子の力は、騎士になってからずっと使い続けている白銀の剣と、王さまから貸し受けた短剣、そして、女の子たちが元々持っていた、赤と白の雷です。
王さまは、留守の間に国を女の子に任せる、と言いました。
これは、きっとお膳たてなのでしょう。
女の子は、王さまに深く感謝しながら、静かに全ての牙を研ぎ終えました。
母親から、呼び出しがかかりました。
運命は、もうすぐそこまで。
母親は、女の子に聞かせました。
あなたは、王さまの息子です。
この国を統べる資格があります。
さぁ、剣を取りなさい。
あなたが、この国の王となるのです。
女の子は、静かに剣を取りました。
王さまが帰ってきました。
女の子は、静かに迎えます。
王さまは問います。
終わったのか、と。
女の子は答えました。
はい、と、短く。
女の子の剣は折れ、鎧も最早形は無く。
そこには、王さまにそっくりな、一人の女の子がいたのです。
女の子は、短剣を大事に抱えていました。
『これがなければ、私は勝つことが出来ませんでした。』
女の子は、王さまにその剣を返します。
王さまはその剣を受け取りました。
お花の魔法使いさんは、もうどこか遠い塔に閉じ込められていました。
女の子は、騎士としてあることが出来なくなりました。
女の子のやってしまった事は、どのような事情があれ、騎士としてあるまじきものでした。
円卓の騎士たちは、女だと知って尚、女の子を惜しみました。渋面の騎士は、何も言うことはありませんでした。
女の子の傍らには、一人の少女が居ます。
二人の間には、相変わらず言葉はありません。
けれど、二人はただ真っ直ぐに、歩いていきました。
二人の女の子のお話は、これで一先ずおしまい。
けれど、これにはきっと、続きがあります。
それは、また今度に。
やりたいだけやりました。多分続きはありません。
追記(10/15)
その後について、ある程度考えてみました。詳しくは活動報告をご覧くださいな。