結紀がルヴィアと話をしてしたのを美遊は偶然にも聞いてしまった。
何を話しているのか気になり、美遊はこっそり耳を澄ませて会話を聞くことにした。
「世界の修正力・・・抑止力・・・守護者、狙われてる自分が普通じゃないことなんて分かってました。自分は異物なんて分かってます。だからこそ人と関わりたくない、それだけです」
世界の抑止力、守護者をよく分からない美遊だが、一つだけ理解できた事があった。
それは、世界が結紀を消し去ろうとしている事。
この事だけは唯一理解できた。
「・・・結紀」
「いつ世界から消されるか分からない・・・そんな辛さはルヴィアさん達には分からないでしょう。別に分かってもらわなくて良いです、どうせ一人で消えますから」
美遊には隠し事をみんなにしている。
だがそれ以上に結紀は辛いものを背負っていた。
そしてそれを一緒に背負えることは出来ないという現実が美遊には分からされた。
「・・・帰ります」
話を無理矢理終えた結紀は部屋から出ようとした。
それに気付くと美遊は身体強化をしてその場から逃げるように移動する。
幸いにも結紀にはばれなかったようだが、美遊は先程の聞けた会話を思い返す。
「・・・結紀・・・私じゃ・・・駄目なのかな」
結紀の事を多く知れない美遊はただ、自分の無力さを嫌というほどに分かってしまった。
結紀にとって美遊は完全に信用出来ないと。
美遊では結紀を救えないと。
「・・・結紀・・・」
結紀が目を覚ますと、夜中だった。
本来ならば今日は最後のクラスカードを回収するはずだった。
だが、イリヤは戦うことを止め凜に辞表を出した。
結紀はただ巻き込まれただけなので戦う意味がなくなった。
「・・・美遊が・・・一人で・・・やってるのかな」
凜とルヴィアにとって戦力だったイリヤと結紀が抜けてしまった。
だからといって回収を止めるというわけではない。
しかし、結紀は先程から何とも言えない感じが体を這いずり回っていた。
「・・・別に・・・美遊とは・・・回収が終わればの・・・」
「それでも、気になるのではないですか?」
「・・・楓」
ベッドにいた結紀の後ろから聞こえて来るのは結紀のメイドとも言える楓だった。
「美遊とは・・・カード回収が終われば・・・それまでの関係だよ・・・」
「主様がどう思うと私には図りかねます。ですが美遊様は今までの方とは違うと思われますよ」
「・・・異端者に・・・何を求めるの」
「主様も美遊様が主様に抱いている特別な感情に気付いていらっしゃるでしょう?」
「・・・」
「ならば、今度は主様の番です。美遊様はあれほど頑張ったんですから、今度は主様が応えて上げてください」
「・・・良いのかな。俺でも」
「それを聞くために美遊様の所へ向かっては如何です?」
「・・・それ狙い・・・?」
「さあ?どうでしょう?」
我ながら良い従者を持ったと結紀は思った。
「・・・楓。飛ばしてくれる?」
「ええ、貴方様の為ならば、何時でも」
楓は一冊の本を取り出す。
その瞬間本が独りでに動きだし、パラパラとページが自動でめくられていく。
そして一つのページで動きが止まった。
そのページに書かれた単語を楓は述べていく。
そして述べ終えると結紀に向き直る。
結紀も頷くと楓は本を閉じて両手をあわせて叩く。
すると結紀の体の輪郭がぶれて光の粒子となって消え散った。
「頑張ってくださいね、主様」
自分の想い人の所へ向かったであろう結紀に楓はただ無事を祈る事にした。
結紀が気がつくと目の前に大きな廃墟ビルが建っていた。
周りには工事用の壁が作られており、撤去するのだろう。
「・・・ここ・・・かな」
見渡しつつ歩いていると小さな魔力の残滓があった。
それは結紀がよく知るイリヤの魔力の物だと分かると結紀は胸に手を当てて目をつぶる。
そして頭の中でイメージをした。
「桜神・・・封印完全解除。顕現・・・最大顕現」
自身の体に宿る力の封印を解くと、結紀の手には真っ白な鞘に納められた刀があった。
そして服装も巫女装束へと変わっていた。
「・・・ん・・・」
元より結紀は女寄りの顔に体つきなので、女装をしても問題ないぐらいに似合っていた。
恥ずかしさもあったが、それを振り払う。
そして鞘から虹色の光を放つ日本刀を引き抜くと、魔力の残滓の場所を切り付けた。
それだけで別の世界へと繋がる穴ができる。
「・・・待ってて。美遊、イリヤ」
結紀はその中へと入ると、切り付けた場所は何もなかったかのように消えた。
そして結紀は戦っているであろう美遊達の所へと急ぐのだった。