というのも新小説であるリリなのにモチベが上がってしまったので・・・。
更新速度は不定期ですが、せめて一期分を終えたいです。
結紀が鏡面世界へと移動すると範囲が狭い事に気づく。
「・・・カードが最後だから・・・」
魔力反応がないか探知を行うと近くで大きな魔力の反応があった。
イリヤと美遊の物だろうと察した。
「今行くから」
魔力を変換して瞬発力へと変えるとイリヤや美遊のところへ一直線に向かった。
その勢いは壁をも破壊して。
「なっ、なに!?」
イリヤの声が聞こえると結紀は詠唱をした。
「・・・
しかし役に立つことが少ないこの魔術を結紀は使った。
様々な代償を使って。
「投影完了・・・十二投影発射」
結紀が投影した物は鋭い剣で、イリヤと美遊が相対していた相手へと発射された。
それはすべて相手へと突き刺さり、動きを止めた。
結紀の攻撃はかなりの大打撃ではあったが、同時に血を吐いた。
「げっほ・・・う・・・」
「ゆ、結紀・・・!?」
「あんたなんで・・・って血・・・!?」
「大丈夫・・・それより戦闘に集中・・・」
血を吐いた結紀に美遊達が驚いていたが、結紀によって意識は先ほどの相手へと向けられた。
「・・・・・まだ死んでない。それどころか傷が癒えてる」
「あれは・・・どういうことよ?」
「多分、呪いの類の蘇生能力」
結紀は自身の記憶を探りそのような英霊を検索した。
導き出されたのは、かつて神に認められし大英雄。
十二の試練を超え、それにより神に迎えられた英雄ヘラクレス。
「・・・蘇生能力ごと削り切る」
「結紀・・・?」
「美遊・・・」
「無茶・・・しないで・・・」
「・・・死んでも戻るから」
結紀は鞘から刀を引き抜くとそれだけで一気に結紀の身体に秘められた魔力が溢れ出した。
「・・・すごい魔力量」
美遊やイリヤ達の魔力量も破格なのだが、4人合わせても届かないであろう量に驚愕を覚える。
「・・・幻想刀・・・」
結紀は自身に宿る神が扱った刀を見やる。
刀は結紀を主として認めているのか、きらりと少しだけ輝く。
「・・・よし」
ヘラクレスの傷は完全に癒えて自分の真っ正面にいる結紀を見た。
それは一人の剣士として見ているのか分からなかったが、先ほどの佇まいとは違って厳かな雰囲気も感じ取れた。
「・・・バーサーカーとしてではなく違うクラス・・・セイバーとして貴方と戦ってみたかった」
バーサーカー・・・狂った戦士としてのクラスで召喚されると英霊の理性を代償として大幅な身体強化が施される。
「・・・行く」
ヘラクレスが持つ大きな剣が結紀へと降り注ぐ。
それをたった一本の刀で受け流し、反撃に身体を捻ってヘラクレスの身体に傷を与える。
ヘラクレスは小さな傷であったが、己が持つ宝具が効果を成していない事に気付いた。
結紀が持つ幻想刀には宝具の効果を無効化する能力がある。
ヘラクレスのような身体に溶け込んだ宝具は幻想刀によって止めをさされた瞬間効果を発揮する。
「さあ、ヘラクレス!」
「ウオォオオオオオオ!!」
大きな剣の重みをものともせず、ヘラクレスはひたすら振り回す。
しかしそれは狙いを定め、結紀にたいして敬意を持って戦う意思も篭っているかのような。
結紀もそれに応え、受け流しつつ、攻撃を受けないように立ち回る。
「・・・致命打は・・・ある。でも・・・」
結紀は自分と戦うヘラクレスを見て不要な思考を捨てた。
「貴方の前でこのような考えは侮辱。ヘラクレスよ、俺の奥義、その身を持って受け止めろ!」
結紀は自分の妹がいつの日か送ってくれた刀を投影する。
たった数分しか持たなくとも、懐かしさを覚える刀を。
「奥義・・・」
結紀が放つ剣技の奥義。
幻想刀と彼の妹が創りし【夢想刀】。
そしてその二つが揃ったときのみ放つ、結紀の切り札の一つ。
「・・・百華閃嵐!」
幻想刀と夢想刀を交差させ、持ち方を逆手に変えて放つ。
かつて彼の妹は六の斬撃を放った結紀にこう言った。
「お兄ちゃん、究極の一と贋作の一って何が違うの?」
「・・・贋作の一は様々な一を扱うんだ。刀・剣・弓・槍・・・色々とね。しかし究極の一には敵わない。何故なら究極の一は様々な一よりも強いから」
「そうなんだ」
「そうだよ。究極と贋作は言わば・・・そうだね、やり込みの違いかな」
「そっかぁ・・・じゃあお兄ちゃんは究極の一だね!」
あの時結紀へと向けた表情はとても眩しく感じれた。
彼の刀の動きをよく見ていたからこそ、そういったのだろう。
結紀がヘラクレスへと放った剣技は二つの太刀を巧みに扱い、常人とは思えない動きで百の連撃を嵐のように四方八方から切り付ける。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
全ての斬撃がヘラクレスの宝具を上回り、ヘラクレスもそれを全て受け流さず、受け止めた。
そして斬撃が終わる頃には。
空からバーサーカーと描かれたカードが舞い降りてきた。
「・・・回収・・・完了」
カードを回収した結紀の姿を確認すると全員ほっとしたが、すぐに駆け寄る。
しかし、美遊だけは焦るような表情で向かっていた。
「結紀!」
「・・・ははっ、きっついな」
結紀がそういうと口から大量の血を吐き、血溜まりが出来るほどまで吐いていた。
それを見てただ事ではないと駆け寄った。
「結紀!なんで!」
「・・・俺が・・・望んだ事だ。遠明寺の家系を終わらせるちょうどいい機会だった」
「嫌だよ!結紀!」
イリヤと美遊は大量の涙を流しながら結紀に言う。
しかし血を出しすぎたのか、瞼を閉じようとしていた。
「・・・眠たいな」
「結紀・・・!嫌だよ・・・嫌だ・・・」
「・・・我が儘は・・・嫌われるぞ」
「嫌だ!我が儘でいい!」
今までこんな事を言わなかった美遊にルヴィアや凜も驚いていた。
しかしそれは全て結紀のものだと分かると目線は結紀へと注がれる。
「結紀、女の子をここまで言わせておいて先に死ぬっての?」
「・・・良いじゃないか・・・もう、疲れたんだ」
結紀から言われた言葉の真意は美遊にしか分からないのだろう。
自身がどのような存在なのかを理解していた美遊だからこそ。
世界から狙われつづけた結紀は生きる事すら疲れていたのだから。
「・・・結紀・・・嫌だよ・・・せっかく・・・」
「・・・美遊、言うな」
「せっかく・・・初めて・・・好きに・・・なれたのに・・・」
美遊の想い人が結紀だと美遊も結紀も理解していた。
それはルヴィアですら。
「・・・俺は・・・・・・」
結紀もはっきりと言われて、決めていた事が不安になった。
このまま美遊を泣かせて自身の生を終えるのか、生きて美遊と生きるのかを。
己に宿る神に望めば、それは叶う。
それほどまで強い力を持つのだから。
「・・・美遊」
「ぇ・・・?」
クールで可愛い顔をしていた美遊の表情は涙でぐしゃぐしゃで、瞳には結紀の事しか映っていなかった。
「・・・てめぇら・・・ちと・・・後ろ・・・向け・・・」
言葉の意味を理解した凛とルヴィアはイリヤの目と耳を塞いで後ろを向いた。
しかし美遊は分からなかったようで涙をためながら結紀を見ていた。
「結紀・・・?」
何が何かわからない美遊を抱き寄せるとその無防備な唇を自分のと重ねる。
「ゆう・・・ん!・・・んっ・・・」
美遊の唾液から魔力を吸い上げ、結紀の傷も治っていく。
そのことが一体何を指したかを理解した美遊は結紀に抱き着いて唾液を結紀のと交換しあった。
「ん・・・れろ・・・」
「はむ・・・ん・・・」
結紀が美遊を離すと、物足りなさそうに美遊の目は据わっており、顔も赤くなっていた。
「ぁ・・・」
「・・・好きにしろ・・・もう眠い・・・」
「えっ・・・?」
その眠りは戦闘による疲れだと分かると安心したのか美遊は愛おしそうに結紀の頭を撫でる。
「美遊。もう終わりましたの?」
「・・・っ、はい・・・」
ルヴィアには看破されており、美遊も一段と顔を赤くする。
凜も分かったのかあえて何もいわず立ち上がる。
「帰りますわよ。美遊、イリヤ」
「は、はい」
「結紀は・・・美遊が運ぶ?それとも私が運ぼうか?」
「私が運びます!・・・はっ」
凜の申し出に美遊が盗られまいと自分が運ぶと言った事に、さらに赤くする。
ルヴィアと凜はしてやったり・・・といった表情で優しい表情を浮かべるとイリヤを連れて先に通常世界へと戻っていった。
次からは自分の彼氏になるのだと思うと初めての事だったが、相応に嬉しさが込み上げて来る。
「・・・結紀・・・だ、・・・だい・・・すき・・・」
寝ている結紀に聞こえているわけでも無いのに顔を一瞬で赤くした美遊はすぐさま立ち去ろうと結紀を背中におんぶする。
男の子だとは思えぬ軽さに慣れない驚きを感じつつ、美遊も結紀と一緒に鏡面世界を後にした。