最後のクラスカードのバーサーカーを回収し終えた四人は自宅に戻ることになり、イリヤは家に、ルヴィアと凜はこれからの事を。
そして結紀は美遊におぶられて家に運ばれていくことに。
「美遊、後悔はないのですね?」
「・・・はい」
「なら良いでしょう。オーギュスト」
「はい、お呼びでしょうか」
ルヴィアが名を呼ぶと光の早さで執事であるオーギュストがとんでくる。
「少し付き合いなさい」
「・・・畏まりました」
長年の主従関係だからかルヴィアの意図を汲んだオーギュストはルヴィアと共に美遊たちから席を外す。
「・・・結紀」
「・・・すー・・・すー・・・」
美遊は未だに眠っている結紀を見つつベッドに寝かせた。
見た目は女の子にしか見えない容姿だからか、美遊の中で結紀の唇を奪いたいという感情が芽生えつつあった。
(だめだめ・・・はしたない子に思われる・・・)
バーサーカー戦が終わったあとの結紀の強引なキスが美遊の中で強く残っていた。
(・・・どうしよう)
「ん・・・」
悩んでいると結紀から小さいながらも声がしたため、寄り添う。
「結紀・・・?」
「んぁ・・・美遊・・・?」
「う、うん」
「みゆ~・・・」
「ふぇ?」
寝ぼけているのか美遊の名前を呼びながら結紀は手を広げて美遊に抱き着く。
よく分からずにされるがまま、抱き着かれた美遊は頭の中がパニック状態となった。
「あうあうあう」
「ん・・・」
「ひゃう!?」
結紀の小さな声が美遊の耳にかかり、変な声をあげた。
恥ずかしいのか美遊は口を抑えていると結紀はそのまま美遊と向かい合いながら手を握ってまた寝てしまった。
「ゆ、結紀・・・?」
「みゅ・・・」
また寝てしまった結紀に美遊は少し残念な気持ちを持ちつつも意外な一面を知れて嬉しいのか結紀の頭を優しく撫でる。
(・・・少し・・・意外な一面)
「ん・・・」
(・・・結紀が悪いんだから)
「あむ・・・れろ・・・」
「・・・んむ・・・」
「んっ・・・」
無防備に晒していた結紀に我慢が出来なかったのか美遊はキスをするとそのまま手を繋ぎながら寝付いた。
そのあと戻ってきたルヴィアが仲良く寝ている二人を見て微笑ましい表情を浮かべながら布団をかけなおして部屋をあとにした。
気がつくとそこは真っ白な世界だった。
下を見ると雲が動いており、上を見れば雲が通る。
ここは一体どこなのか、それは俺の中の神様が教えてくれた。
かつての英雄達がたどり着いた最後の場所・・・天上の世界、英霊の座。
何故俺はここにいるのだろう。
ここに来るほど俺は偉業を成していないし、恐らく俺は拒むはずなのに。
「ほう・・・これはまた珍しい者が来るものだな」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、見たことある青年が立っていた。
俺を世界から消そうとした守護者である英霊・・・なのだろう。
「私はエミヤ。幼き頃見たことがあるだろう?」
「・・・ああ」
「何故ここに君が来ている?ここは世界に認められた者しか来れないはずだが」
「・・・知らない」
必ず意味があるはずとは思う。
しかしそれは何なのかが分からなかった。
「そういえば君と同じ名字を持つ少女がいたな。英霊として迎えられた訳ではないが記録されている以上特殊なのだろう」
「・・・それはどこに?」
「分からん。私の管轄外だからな。だが・・・求めれば辿り着けるのではないか?」
エミヤはそういうとどこかへ去って行った。
求めれば・・・か。
俺と同じ名字なんて夜々しか知らない。
多分夜々に会うことに意味があるのだろう。
俺はそう考え、夜々の場所を求めた。
すると気がつけば雲の世界から一つの部屋に移っていた。
そこは俺の部屋の隣・・・夜々の部屋の内装と全く同じところだった。
「・・・だぁれ?」
酷く懐かしいその声は二度と聞けないと思えた。
何者かによって魔術的に殺されてしまった自分の妹の声。
「夜々・・・?」
部屋は真っ暗で見えなかった。
自分の五感を信じて歩いているとふかふかの感触に当たった。
恐らくベッドかなにかだろう。
「・・・ぁ・・・こ・・・ないで・・・」
「・・・結紀。結紀だよ、夜々」
自分の名前を言うと俺はベッドの縁に座って夜々から近づくのを待つ。
こういう子はこっちからではなく相手から近づいてもらう事が良い。
「おにい・・・ちゃん?」
「そうだよ。なんでかね」
「・・・ふえぇぇ・・・お兄・・・ちゃん・・・!」
久々に会えたのか夜々は泣きながら俺に抱き着く。
俺も優しく抱き返してあげると、しばらくして離れた。
「お兄ちゃん・・・どうしてここに?」
「さぁ・・・俺はまだ生者のはずなのにな」
「・・・私の事で呼ばれたのかな」
「どういうこと?」
「私という存在。それは何もお兄ちゃんの世界だけではなくて平行世界としても存在してるの。その中にはお姉ちゃん的存在もいるんだよ」
「・・・そうか」
「うん・・・そして私はそのお姉ちゃんから引き継いだ力が天上の世界の私に記録されてる。それを恐らくだけど・・・お兄ちゃんに渡すのかな」
「出来る?そんなこと」
「私は天上の世界にいるだけで英霊としてはいないの。まぁ・・・真ん中の立場なのかな。だからこうして会えてるのかもしれないね」
「・・・難しい」
「あはは、私もよくわかんない。でもお兄ちゃんにこの力を引き継ぐことは私も嫌じゃない。それどころか・・・大事な人を護るという事なら喜んで受け渡すよ」
夜々は気付いているのだろう。
俺の大事な人が美遊だと。
そして小聖杯としての夜々なら美遊の事も理解してる・・・ってことかな。
「夜々・・・お願いしていい・・・?」
「もちろん。でもね、これは元々平行世界の私とお姉ちゃんだけが持つ異能。扱いを間違えれば自分を滅ぼす事になるよ」
「構わない。それで美遊を護れるなら」
「・・・そういうところ、私は好きだったな」
夜々が何かを唱えだすと空間が一気に捻れるような感覚に陥る。
これは夜々自身が持ちうる魔力が放出されたものなのだろう。
それほどまでに絶対的魔力量と回路を持ち合わせていたのも事実。
力の本流が収まると何もなかったかのように戻った。
「・・・これで終わり。お兄ちゃんが元の世界に戻ったら自分の身体がどう変わったか分かると思うよ」
「・・・ありがとう」
「ううん、お兄ちゃんのためだから。美遊お姉ちゃんを護ってあげて」
「・・・うん。絶対に護る」
「それじゃあ・・・ね。お兄ちゃん」
「・・・ああ、また」
受け渡しが終われば元の世界に引き戻されるような感覚を感じた。
その時、夜々と同じような雰囲気で白銀の髪を持つ少女の姿が見えたような、そんな気がした。
それは・・・まるで、自分自身に宿る神様に似ている感じだった。