「ハア…ハア…………先輩っ。」
あの後冬樹は三人と別れ自宅へと戻って行った。
「おいおい……なんだよ、これ。」
今はまだ取り戻してもいない"驚愕"を口にして家を見る。
家の錠は外されておりドアは蹴破られている。
「…………先輩の仕業、じゃないよな…。」
冬樹は家の中へと入って行く。
すると、ふと足元に赤い何かがついている事に気がつく。
「先輩?」
いつも呼べば飛んでくる春媛が来ない。
赤い何か……冬樹が連想できるものは──。
「血…。」
その後をたどっていくとクローゼットへと辿り着いた。
「…………先輩?」
クローゼットを開けると、
血まみれの春媛が倒れるように出てきた。
「せ、先輩!?」
「ふ、冬樹……くん?」
「大丈夫ですか?」
「良かった、貴方が無事で良かった…なのにあんなメール送って…ごめんなさい。」
冬樹は倒れている春媛の頭を持ち上げ支える。
「誰にやられたんですか?」
「解らないわ………けど、黄色い布を巻いていて………。」
─────黄巾族か!!
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
「もういいです。」
「冬樹くん?」
冬樹は春媛を抱きかかえると直ぐに走り出した。
春媛はその時初めての冬樹の"怒り"の表情を見た。
雨が降ってきたと同時に春媛は意識を闇へと落とした。
「岸谷先生!岸谷先生!」
「ふ、冬樹くん!?ちょっと、今の世の中にはインターホンって言う便利な物があるんだから!」
「そんな事より早く先輩の治療してください!」
──────────…
「宇野原くん?」
「………園原?」
『新羅、どうしてここに冬樹くんがいるんだ!?』
春媛を新羅に治療してもらった冬樹は春媛が目を覚ますまでの間新羅とセルティの家にいる事にした。
「セルティ、それよりちょっと話したい事があるんだ。」
『?』
新羅とセルティは部屋の奥へと行ってしまい、リビングには先程やって来た杏里と冬樹が取り残される。
「………宇野原くん、どうしたんですか?」
「ごめん。ちょっと頭の中ゴチャゴチャしてて話しかけないで……いや、話していたほうがいいのかもしれない…。」
「え?」
「さっき、先輩が大怪我して…そんで、それからなんかおかしいんだよ。痛いっていうか、なんというか頭の中がゴチャゴチャになって。」
「宇野原くん…。」
「園原にこんな話しても意味ないのに…ごめん、やっぱり、そっとして置いてくれ。」
一方その頃新羅とセルティは…。
『どういう意味だ?冬樹くんの感情が全部取り戻されてる!?』
「さっきから観察していると、どうらやそうらしいんだ。けど感情が一気に戻って来てしまっているせいかまだ感情が不安定っていうか、使い方がよく解っていないっていうか……。見た感じはいつも通りの冬樹なんだけど感情が戻ってる分今までの関係が保てるかどうか…。」
『よっぽど、春媛ちゃんが傷付いた事がショックだったのかもしれないな…。』
「うん。彼にはまだ言っていないけど…正直、春媛ちゃんが目を覚ますかどうかも解らなくて。」
「園原はどうしてここに?」
「その……ごめんなさい、言えません。」
「…………紀田の事?」
「え?」
杏里はその冬樹の言葉に驚きを隠せずにいた。
「…園原は罪歌じゃん化け物って呼ばれるような存在かもしれない。」
杏里の頭はどんどんと下がってゆく。化け物という単語に少し傷付いたからだ。
「けどさ、俺もある意味化け物なんだよ。」
「ある意味、化け物ですか?」
「だからかもしれない。静雄さんや運び屋さん、新羅さんより先にこの事を伝えたいと思ったのは……。俺は、転生してるんだ。」
冬樹はこの世界の事を知っているという事を伏せて自分の事を全て話した。
「つまり、前生きていた記憶があるって事ですか?」
「ああ、前生きていた世界とこの世界は違う。俺たちみたいな化け物なんかいない。平和な世界だよ。」
「えっと……まだ、あんまり理解できていないんですけど…けど、宇野原くんは化け物なんかじゃ。」
「ありがとう。ちょっと気が楽になった。
……先輩の所にいってくる。」
そう言うと冬樹は春媛が寝ている部屋へと行く新羅とセルティが使っていない部屋がちょうどあったらしく、春媛はそこに寝かせてもらっていた。
「……………本当にどうしよう。」
ー『友達だからじゃね?』ー
黄巾族のリーダーである正臣の顔が冬樹の脳裏にチラつく。
「紀田に手は出したくない………。
まてよ…そもそも奴らは本当に紀田の指示で動いていたのか?」
すると、冬樹のケータイが鳴る。
「……黄巾族に潜らせといた奴からか…………………っ!これってまさか…。」
冬樹は今の気持ちを抑え込むのに必死だった。
『さっき、表リーダーをやったと思われる奴が自慢気に表リーダーの事を話していました!
後を着けていたから家がわかったそうです。ソイツの写メを撮ってあるんで。
他になにかできる事があれば言ってください!』
「…………この写メ、白爛の奴らにばら撒くか……。」
冬樹の顔は笑っていながらもその目は怒りそのものだった。
イミフ!!すみませんでした。本当にすみませんでした!