5月3日
「ゴールデンウイークか……。」
「冬樹!私、冬樹となら何処へでも行くわ。ねえ、どこへ行く?ねえ、冬樹!!」
「先輩、うるさい。」
「お前ら変わらねえなあ……。」
「大河兄さんもゴールデンウイークどっか行くんすか?」
「行かねえけど……行ったらお前ら好き勝手やるだろ?」
「嘉真幸は六条千景のところか……うまく噛んでくれればいんだけどなあ…。」
池袋 サンシャイン60通り
「あれが六条千景かあ〜…。」
ツインテールの少女がストローハットの青年を見る。
「けど、怪我してるな〜。写メと大分違うや。」
少女の名前は嘉真幸耀華。
輝かしいという意味の『耀』の持つ少女だ。
名前の通り少女はさまざまな輝かしい成果をあげてきた。時には絵で、時には体操競技で。
少女が取った賞は数多く存在する。
そんな少女はとある職業でも輝かしい成果をあげようとした。
スパイ。
少女はその職業に魅力を感じた。
もともと白爛のメンバーだった少女は真白こと宇野原冬樹と接触し、その事を伝えた。
「そうか、なら…頑張れ。」
その言葉に耀華は心を打たれた。
「耀華は何でもできて当たり前」周りの人間はそう思って耀華を応援する事はなかった。
始めて白爛の為にスパイをし終えた時。
「よくやったな。」
そう言ってくれた。
「耀華はできて当たり前」なのに冬樹は褒めてくれる。誰にも褒めてもらえなかったのに褒めてくれる。
「耀華はなんでも出来るな。」
「また?もう良い加減にしてよ。」
そんな呆れてるような言葉ではなく、嫉妬の言葉ではなく。純粋に褒めてくれる。
そしてそんな耀華は冬樹を心の底から崇拝していた。
「ん〜…どうやって近づこうかな?」
ゲームセンターで女の子に囲まれている六条千景を見つめながら考え込む耀華。
「きっかけが大事よね。彼の人がほおっておけないきっかけ。どれにしようかな〜?」
まるでオモチャを決める子供のような声色で呟く。
と、その時だった。
「どけっつってんだらぁが!」
興奮し息を切らした男はが呂律が回らぬ調子で次々に人々を突き飛ばして行く。
「?強盗か何かかな?」
そう思ったところで耀華は良い事を思いついた。
耀華はすぐに男の存在に気付いていない先程ゲームセンターから出てきた少女のフリをする。
「きゃっ!?」
「どけコラぁ!」
案の定男と耀華は接触し、耀華はその場に倒れ込む。
(うわっ最悪。足怪我しちゃった、しかも服破れたし〜。せっかく真白さんに選んで貰ったのに〜!)
「あ、ろっちー、危ないよ?けがしてんだから。」
一人の女が呟いた。
(ろっちー?あぁ、確か六条千景のあだ名だっけ?)
「っけぁオラァ!」
六条千景は男の逃走ルートのど真ん中に立っていた。
そして、ギャリという歪な摩擦音が響き渡る。
(うそっ!この人片足立ちなのに……倒れずに蹴った!?)
足の裏で相手を思い切り踏みつける形の蹴り。相手を突き放す為に使われている。
しかし、この男はまるでアメフト選手のような体格をしている。
「片足立ちならば吹き飛ばされるのがオチ」と踏んでいた耀華の予想を上回った。
(なるほど、踵を口の中にねじ込む形で男の顔面にめり込ませたのか〜。それなら、あの男もタックルをかける時踏み込むことができないもんね〜。)
耀華はすぐに冷静になって解析をする。
「今……三人女を、突き飛ばしたな?」
「かぶ……が。」
前歯は確実に折れている。
「三回だ。」
男の顔面に体重をかけながら、足で男の顔面を踏みにじる。
「あああぁぁっぁああああぁっぁぁぁぁ!あーッ!あーッ!」
男の顔から血が噴き出す。男は顔面を押され転げ回っている。
(こいつ、ヤバイ……もしかしたら真白さんよりも喧嘩慣れしてるかも!)
「あ、ありがとうございます…。こ、この人、万引きをして……。」
男を追ってきた女性店員が言葉を紡ぐ。
「いえいえ、僕はただ、人としてできることをしたまでですよ。
怪我しちゃってるじゃないですか、お姉さん。」
「えッ……あ、いえ……さっき、その男の人を止めようとして突き飛ばされて……。」
「……。」
六条千景は唐突に踵を返し──飛んだ。
跳躍後の落下地点には万引き犯がおり、全体重をかけて、その膝を踏みつけた。
「だばぁぁぁッ!あッ!だッ!ああががががががだだだッだッ!」
「黙れ、ゲス野郎。」
六条千景は男の股間を思い切り蹴り上げた。
「──────────ッッッッッッッ」
(あー…そこまで痛いんだ。真紀方ごめん。)
耀華はこの間股間を思い切り蹴り上げた真紀方一に心の底から謝った。
(はっ⁉こんなところでぼけっとしてちゃいけない!六条千景…あいつの情報を手に入れなきゃ!)
六条千景達は警察がやってきたのを見て逃げ出す。
耀華はその六条千景達より前へ出て。
「あの!こっちの方がいい逃げ道ですよ!」
耀華は恩返しがしたい少女になりすました。
喫茶店「悠々」
「────で。この子を探せって?」
「そうだ。」
悠々の奥の部屋に白い髪の少年、宇野原冬樹といかにもという雰囲気の四木が言葉を交わしていた。冬樹の実の父親である四木はいきなり悠々に現れ話しがしたいと言ってきた。その為冬樹は奥の部屋を借りる事にして二人きりで話をしている。
「ところでこの子だれ?」
「
「マジで?」
「この事は内密に頼むぞ。」
「えー……人使うのダメ?」
「駄目だ。」
「面倒。」
冬樹がそう呟いた瞬間、四木は思い切り冬樹を投げつける。
「イダっ。くそ、この合気道の黒帯め……。」
「そこまで痛そうには見えないぞ、お前。」
「……信頼できる奴なら使っていい?もう、聞いてるかもしれないし。」
冬樹は立ち上がり部屋のドアを開けると。
「「うわっ!?」」
「真紀方………それに先輩と小早川さんまで。」
真紀方と春媛が倒れ込むように部屋の中に入ってきた、小早川はドアの前でコーヒーの乗ったトレイを持っている。
「だって、冬樹のお父様が気になって!」
「仲良くできてるか心配で!」
「俺はコーヒー持ってきただけなんだが……。」
すると少しうんざりしたような顔をして冬樹は四木を見た。
「ね。」
「はあ……わかった。」
四木は諦めたようにため息をついて人を使う事を了承した。
こうして冬樹たちは粟楠道元の孫娘、粟楠茜の散策に出掛ける事となった。
グッタグダ。
四木さんの口調がよくわかりませんので、そこは目をつむってください。