Language of love   作:千α

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第四十九話 Лицом вы не знаете,

「Отец .......」

 

冬樹はいっこうに服を離してくれない女の子を寝かしつけていた。

 

「そもそも、どうしてこうなった……?」

 

はっきり言おう、冬樹にはこの女の子にお父さんと言われるような事は一切していない。そんな事をしていたら、ヤンデレ先輩こと春媛がその女を殺す事だろう。

よくよく考えてみたら女の子も危うい……下手をすれば春媛が噴火する。

 

「………何で、俺なんかをそう呼ぶんだ……?」

 

冬樹にとって親と言うものにはろくな思い出が無い。

冬樹の育ての親は酷い人達だった。

夜には必ず何処かへ出掛け、帰ってこない事もしばしばあった。ご飯はろくに与えられず毎日が空腹との戦いだった。

 

正直、冬樹は女の子にお父さんと呼ばれる事に少し戸惑いを感じていた、それと同時に……本人は気付いていないが嬉しいとも感じていた。

 

「………とりあえず、起きたら交番に届けるか……。」

 

冬樹は寝かしつけた女の子を部屋に置いて新羅達のいる部屋へと戻る。

すると「ニー」と言う何処かで聞いた事のある声が聞こえた。

 

 

「………あれ、静雄さん?」

 

「冬樹、お前も来てたのか。」

 

「あ、幽さんも……おひさしぶりです。」

 

「久しぶり、冬樹くん……背が伸びたね……。」

 

冬樹は幽がここに来るなんて珍しいと視線を向けた時……彼の時は止まった。

 

「………聖辺……ルリ…さん?」

 

すると静雄は「しまった」と言う顔をする。

冬樹は聖辺ルリのファンだ。ちなみにこの前出た写真集は春媛の目を盗んで買っていた。

 

「ファンです……サイン…良いですか?」

 

「え……は、はい……。」

 

冬樹はその言葉に「ぱぁっ」と今までで一番嬉しそうな顔をする(相変わらず付き合いの短い人には解らない)。

冬樹は鞄の中に入っていた聖辺ルリの写真集を取り出してサインを書いてもらっている。

 

「そういえばファンだっな……。」

 

「はい、とっても嬉しいです。」

 

「なら、もうちょっと他の人にも解るような顔しなよ……。」

 

「………?充分顔に出してますけど……?」

 

「うん、ごめん。冬樹くんに表情云々の話しは通用しないんだった。」

 

この部屋では先ほどまでピリピリとした雰囲気だったのだが冬樹が来た事でそれが少し和らいだ。

 

(冬樹にストーカーの話しはしないようにしねぇと……。)

 

聖辺ルリは今、ストーカー問題に直面している。

しかし、そんな話しを冬樹にすれば……。

 

(キレるだろうな……。)

 

「あ、独尊丸……元気にしてたか?」

 

冬樹の足元にやって来た幽のネコの独尊丸を冬樹は持ち上げる。

 

「あ、冬樹くん。あの子は?」

 

「あー……寝ました。」

 

「あの子?」

 

「聞いてよ、冬樹はお父さんだった……っ!」

 

「岸谷先生……?」

 

「うん、ごめん。冬樹くん……というかそのカッターどこから持って来たの?」

 

冬樹は新羅の背後に一瞬でまわりカッターを首に当てる。

 

「迷子の女の子が俺の事を親だと思い込んでるんですよ。」

 

冬樹は新羅の言葉を撤回するように静雄に今の冬樹の状況を説明する。

 

「………あー……冬樹。」

 

「なんですか?」

 

「後ろ。」

 

静雄が冬樹の後ろを指差す、そこには……。

 

「冬樹……っ!まさか貴方……浮気を……っ!?」

 

「げっ……先輩……。」

 

何故か春媛がいた。

 

「ちょっと、その女の住所教えなさい!!」

 

「浮気って……そもそも、俺ら付き合って無いですから。付き合ってる女もいないし……。」

 

『まて、春媛ちゃんは何処から入ってきたんだ!?』

 

「窓からに決まってるじゃない!」

 

『いや、おかしい!』

 

「冬樹…いっつも思うけどこいつは何者なんだ?」

 

「決まってるじゃないですか、変態です。」

 

「Отец〜!!」

 

春媛が叫んだせいでせっかく寝かしつけた女の子が起きてしまったようで部屋の奥から女の子の泣き声が聞こえる。

 

「あー……起きた……。」

 

冬樹は遠い何処かの未来を見つめて現実から逃避したい思いになった。

 

 

 

──────────…

 

 

 

「やっと寝た......。」

 

冬樹はまた奥の部屋で女の子を春媛と共に寝かしつけていた。

 

「この子...本当に冬樹の事をお父さんだと思い込んでいるのね。」

 

「そうなんですよ……やっと理解しましたか……。」

 

冬樹は女の子が寝付いた後、全く理解出来ていない春媛に今までの経緯を教えていた。十回ほど。

 

「冬樹がお父さんなら………私はお母さんね!」

 

「あー……はいはい。」

 

冬樹は適当に返す。

 

「そういえば、この子の名前は?」

 

「……知りません。」

 

「え、冬樹……ロシア語得意でしょ?名前聞くくらいできるんじゃ……?」

 

「と言うより、この子自身が自分の名前を知らないようなんですよ。」

 

「知らない?」

 

冬樹は女の子を見つめる。

 

「解っているのは……ロシア人って事だけです。」

 

「他にもこの子から聞かなきゃいけない事があるわね……どうして、冬樹の事をお父さんって呼ぶのか……。」

 

「とりあえず……明日、この子を交番に連れて行きましょう。」

 

「そうね……この子の親御さんも心配しているでしょうし……あ、でも…それまでこの子の事を預かるんでしょ?名前が無いと不便よ……。」

 

「犬猫じゃ無いんですから…そんな簡単に名前なんて……。」

 

「ソーニャがいいわ。」

 

「なんでソーニャ?」

 

「診断メーカーでやってみたら出てきたの。」

 

「名前の付け方適当だなおい。」

 

春媛が見せてきた携帯には『あなたの名前をロシア人女性風にしてみったー』と書かれている。元の名前は何故か池袋になっていた。

 

「そうね……この子この交番に連れて行く前に、知り合いにこの子を紹介するのもいいわね。娘ですって!」

 

「頼むからやめてください。そんな事されたら俺の評判ガタ落ちじゃないですか。」

 

「え?……どうして?」

 

「ここでその天然を発動しないでください。腹立つんで。」

 

そこまで言った時、冬樹に今までの疲れがドッと押し寄せてくる。

 

(そういえば、今日はずっとソーニャの相手してて……本当に疲れたな……眠い。)

 

すると春媛が冬樹の頭を撫でてきた。

 

「先輩?」

 

「疲れたでしょ?ゆっくりもう寝てて……。」

 

「…………そうですね…なら、お言葉に甘えて……。」

 

「あ、そうだわ…冬樹!なんなら私が膝枕でも……っ!」

 

「キモいです。ちょっと先輩が女の人に見えたけど気の所為のようでしたね。」

 

「え?今まで女の人と見てくれてなかったの?……つまり、冬樹のお嫁さんとして見ててくれたの!?」

 

「なんで、そうやって自分の頭の中で都合の良いように話しを作り変えるんですか!?」

 

 




診断メーカー云々の話しは実際に名前を池袋にしてやりました。
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