しかし、そんな私には秋の第一関門がやって来ました……その名も体育大会………。
※この話しには体育大会は関係しません。
「さーさーのーはーひーらひーらー………。」
「何歌ってんだ?」
「平和島さん…明日は七夕ですよ。」
来神高校 屋上
「あー…もうそんな時期か。」
「はい。なので短冊を用意してみました。」
「へぇ……冬樹くんって意外とこういうの信じるタイプなんだね。」
「テメェ、臨也!どっから湧いて来た!?」
屋上で冬樹と静雄が七夕の話しをして座っていると臨也が冬樹の隣に現れた。
「あー……俺達よりも先にここに居ましたよ。」
「なんで気付いてたのに知らせなかったんだよ……。」
「だって知らせたら
冬樹は静雄と臨也の
何せ、自分が少しでも心を開く事のできた人物がいつ死ぬかわからないからだ。と言ってもこの場合、死んでしまうのは確実に臨也だ。
一方、静雄と臨也はそんな冬樹の気持ちを知っていた。しかし、二人共殺す事は諦める事が出来ない。それならと新羅は「冬樹の居る間はお互いに手を出さない」という案を出した。
静雄も臨也もはじめはそれでやって行こうと思ったのだが……我慢するのは少し…ではなくとてつもなく辛い。しかも、お互い冬樹の事を弟のように思っており、冬樹がやって来ると一目見たい気持ちが湧いてくる(臨也はそれプラス観察対象)つまり必然的に虫酸の走る顔を見合わせるような形になってしまうのだ。
「本当、シズちゃんと違って冬樹くんは優しいよね。」
「そうですか?」
「で?この短冊には何を書くつもりなの?」
「せっかくなんで、平和島さんと折原さんも書いてください。」
「五枚って事は……新羅とドタチンにも渡すの?」
「はい。」
「冬樹はもう決まってんのか?」
「決まってますけど、教えません。」
冬樹は短冊を守るように自分の胸に短冊を押し当てる。
「でも、その短冊何処に飾るの?」
「秘密です。」
静雄と臨也は少し不思議に思った。
ここまで冬樹が自分達に隠し事をするなんて……。
──────────…
七夕当日
「はい、これは俺の短冊ね。」
「ありがとうございます。」
冬樹は臨也の短冊を見ないようにして封筒の中に短冊を入れる。
「シズちゃんのはもうもらったの?」
「はい、岸谷先生と門田さんのも書いてもらいました。」
「そっか、良かったね。」
臨也は冬樹の頭を撫でる。
「それじゃ、俺はこの短冊を飾って来ますね………あ、来ないでくださいよ。」
「はいはい、解ってるよ……いってらっしゃい。」
「いってきます。」
「……なんで、シズちゃんまでいるの?」
「そりゃこっちのセリフだ、このクソノミ蟲……目的が一致してなかったらここで即殺してたぞ……命拾いしたな。」
「ハハッ、言うね……。」
静雄と臨也の二人は冬樹の事が気になり冬樹の後をつけていた。
その光景は一般人が見れば二人は仲の良い友達に見えるのだが、この二人の関係を知る者ならば背筋を震え上がらせるだろう。
「ところで、冬樹くんは何処に向かうつもりなんだろ?ここら辺で行われてる七夕のイベント会場は全部通り過ぎちゃってるし……死ねシズちゃん。」
「だから後をつけてんだろうが……死ねクソ蟲。」
「こっちの方向は……人通りの少ない公園だね…木とかも生い茂ってるせいで、人が寄り付かないんだよね……消えてよシズちゃん。」
「……俺はそろそろキレてもいいのか……手前が消えろノミ蟲ぃ。」
「シズちゃんってば野蛮〜……あ、アレって……。」
「?」
臨也が指差した方向には不良と思わしき男達が冬樹の後ろを自分達と同じようにつけていた。
「確か、この前……俺がぶちのめした奴ら……のはず。」
「曖昧過ぎるよ、シズちゃん……あと、シズちゃんが言った事は正解だよ。」
「じゃ、なんで冬樹の後をつけてんだ?」
「多分、シズちゃんに仕返しでもしようとしてるんだよ。ほら、冬樹を人質にするつもりなんだと思うよ……………。」
「…………成る程なぁ……なら、臨也…手前は手ェ出さなくていいぜ…俺一人でやるから、そのナイフしまえ。」
静雄が臨也を見ると臨也の手にはナイフが握られていた。
「あのね、シズちゃん……この際言わせてもらうけど。冬樹くんの事を大切に思ってるのはシズちゃんだけじゃ無いんだよ……俺だって、冬樹くんが大切だ。」
「……チッ。解ったよ……勝手にしろ。」
「シズちゃんに言われなくても……。」
「お、おい……なんで、平和島静雄がここに!?」
「手前らよぉ……冬樹に手ェ出したらどうなるか解ってんだろうなぁ……?」
「ヒッ!?」
「おっと……逃げるなんて考えないでよ……はぁ…シズちゃんと共闘なんてしたくないのになぁ…。」
「それはこっちのセリフだクソ臨也……。」
「まあ、この話の続きはこいつらをやってからで良いよね?」
「当たり前だ……。」
池袋に悲鳴が木霊した。
──────────…
「よし、後は……この短冊をここに吊り下げて……くっ、届かない……っ」
冬樹は暗くなった公園で一人何かの用意をしていた。五枚の短冊を木に引っ掛けようとしているが冬樹の身長では無理な高崎だった。
すると、冬樹の手から短冊が消える。
「ここで良いのか?」
「へ、平和島さんと折原さん……なんでここに……?」
静雄は短冊を木に引っ掛ける。
無表情ながら、冬樹は驚きを隠しきれないようだ。
「ごめんね。後をつけてたんだ。」
「えー…それじゃ、意味がないじゃないですか……招待状も書いたのに……。」
「招待状?」
「あ、いたいた!」
すると公園の入り口から新羅と門田がやって来た。
「こんな場所にこんな所があるなんてな……。」
「なんで、ドタチンと新羅が?」
「招待されたんだよ、静雄くんと臨也も貰っただろ?」
「……何を?」
「招待状だよ、ほら。」
門田は静雄と臨也に冬樹が書いたであろう手紙を見せる。
『七夕会のご案内。』
静雄と臨也は家に帰らずに冬樹の後をつけたため、気付かずにいたのだが、冬樹は一人一人の家にこの手紙を届けていた。
「簡単なバーベキューですけど……。」
冬樹が用意していたのはバーベキューのセットだった。
「これ、一人で用意したのか!?」
「駄目だろ!」
「これ、お金はどうしたの?」
「はい、お金は自分で銀行からおろしたし……ここ、実はバーベキューしてもいい場所なんで、問題ないです。」
「冬樹くんの行動力には時々驚かせられるよ……。」
「えっと……とりあえず、来てくれてありがとうございます…。」
冬樹は嬉しそうに四人に言った。
暗い公園に街灯が灯る。
空には天の川が綺麗に流れていた。
木に引っ掛けられている短冊の一つが地面に落ちた。
『平和島さんと折原さんが喧嘩をしないようになって、池袋がずっと平和でありますように。
宇野原冬樹。』
この冬樹の願いはあと数年した後に脆く崩れ去る事になる。
何故、今七夕ネタをやったんだろうか……。