「ちょっと…キミ、宇野原冬樹くんだよね?」
冬樹に見た事こない男が話しかけてくる。
「………そうですけど?なんか用ですか?」
「先輩?」
「ワリィ、真紀方……先に行っといてくれ。」
「りょーかいっす!ソーニャさん、行きましょうか!」
「はーい!」
真紀方とソーニャの姿が小さくなった頃、冬樹は口を開く。
「で、俺に何か?」
「いやね、キミが折原臨也とよく一緒にいるって聞いた事があってね。ちょっと彼について詳しく聞かせてもらえないかな?」
無表情の冬樹に対して男はニコニコと人の良さそうな顔をする。
「………折原……さんですか?」
「そう、何でも良いんだ。」
「………何故、見ず知らずの貴方に折原さんの情報を無償で提供しないといけないのかが全く解らないんですけど……。」
冬樹は無表情だが、誰が見ても不機嫌に見えるようになった。
「あ……いや、今度…仕事を頼もうかと思ってね……ほら、相手の事をよく知っていた方が良いだろう?」
「………確かにそうですけど……。
折原さんとは本当に行き詰まった時とか、奥の手にした方が良いですよ。」
「え?」
「……仕事、頼むんでしょ?」
「あ、ああ……そうなんだ!いや〜、話しが早くて助かるよ!」
冬樹がこの話しを聞く事について了承してくれていると解った男は苦笑いを浮かべた。
(全く、どうしてこんなガキに頭下げなきゃいけないんだよ。)
男は冬樹を舐めていた。が、それをすぐに後悔する事になった。
冬樹は指を三本立ててズィッと男の目の前に持っていく。
「?」
「情報料は三万円からです。内容によってわ三万以上になります。」
「……っ!」
冬樹は男が思っている以上にちゃっかりしていた。
男は顔を顰める。
「何が聞きたいんですか?」
「えっと……じゃあ。キミは折原臨也とどんな関係なのかな?」
それでも、ここで引くわけにもいかず男は三万円くらい…と冬樹に質問を投げかける。
「なんで仕事を頼む気なのにそんな事を聞くんですか?まあ、良いですけど………折原さんは知りませんけど、俺は兄のような存在……あとは、そうですね…俺の持ってる情報を売ったら結構くれますしね……客であり情報屋でありって感じです。」
「えぇっと……それってキミも情報屋をしているのかい?」
「………趣味で集めているだけです。
あと、さっきの情報と今の情報で料金は七万です。」
まさか増えるとは思っていなかったため、男はまた顔を顰める。
「………っ。」
「……えーと……ところで、あんた等はどっちの人間ですか?」
「は?」
一瞬、冬樹が何を言っているのか解らなくなる。
「………殺そうってんなら、やめといた方が良いです。」
冬樹が男を睨む。
ずっと不機嫌な無表情が今度は怒りの無表情が切り替わった彼を見て男は少しだけ後ずさる。
「えっ……と。それっていったいどういう意味……?」
「あの人はそれを許してもおれが許せないんで。」
男は「何故、殺すなんて単語が出てきたのか」を冬樹に問いかける。
しかし、冬樹は男の問いかけとは少しずれた回答をした。
「いや、だって……あの人は俺の兄みたいなもんですし。
ところで、あんたの後ろは『アンフィスバエナ』だろ?」
確信づいた言葉を今度は冬樹が投げかける。
「あ……ああ!も、もうこんな時間だ!そ、それじゃあ!」
すると男はカオをさらに顰めて立ち去っていった。
「………チッ……七万もらい損ねた……まあ、良いか……。」
冬樹は舌打ちをして「悠々」へと向かおうと路地裏へ入る。
すると、後ろから足音が聞こえる。
数は一人、恐る恐る後ろを振り向くと……そこには白い髪の男がこちらへ向かって来ている。その時は対して気には止めていなかったが、冬樹がまた前に進むと男の足音がだんだんと早くなっている事に気が付く。
そして冬樹はまた、後ろを振り向くと………男の顔がすぐそこまで来ていた。
「────っ!」
冬樹は反射的に後ろに飛び退く。
男の手には出刃包丁が握られている。
「ぅう…ううぅ………。」
男の口からはうめき声が聞こえる。
「………何だ……お前……。」
「うぅう……ううぅう……。」
しかし、男は答えない。
冬樹は後ずさりし男との距離を保とうとする。
それと同時に、男が一歩前へ歩んだかと思いきや一気に加速し冬樹に出刃包丁を向ける。
(なんだよ……こいつは!?)
冬樹は持ち前の運動神経と反射神経を利用しすぐに走りだす。
冬樹がクラスでもトップに入るほどの足を持っているにも関わらずオトコはピッタリと冬樹の後ろをついてくる。
(……っ!あの白髪……いったいなんだ?……いや、白髪って俺が言っちゃいけないな……。)
冬樹は出る事にして路地裏から飛び出す。
キキ─────ッッ!!
冬樹は出るところを間違えたらしく……。
目の前に車が迫って来ていた。
一瞬のはずが、何故かスローモーションのように景色が見えている。
「あ、俺死んだ。」
跳ねられる直前……ふと、後ろを見ると白髪の男は
ゴキッ
バキッ
ブチッ
車とぶつかった音、ブレーキの音の方が大きな音のはずなのに、冬樹の耳にはしっかりとその音が張り付いていた。そして、嫌な予感がする跳ねられた時にその人物を見ると……口元がニヤついた白髪の女だった…。
(どこのホラーだよ……。)
『先ほど入ったニュースです。
えー…池袋在住の高校生が轢き逃げにあい、命に別状は無く、かろうじて意識はあったものの骨を折るなどの重体です。
また、この轢き逃げの犯人は────………』
「轢き逃げねぇ……。」
「あ、ここの近くっすね。」
「もしかしたら、うちの奴らかもね。」
「だとしたら、真白が黙ってねえな……。」
「ねえ、冬樹は?」
「え?まだ、来てないっすか?」
「あ、大河さん!電話!」
「おう………もしもし……え!?……はい、はい……すぐに親の方に連絡します!」
「ん?どうしたんすか?」
「……大変だ………さっきのニュース……の轢き逃げにあった高校生………
真白だ。」
《………面白くねぇ……手ェ出すんじゃねぇよ……なんでこうもおれのオモチャを取ろうとするんだよ。
それにしても……なんで
轢き逃げ………こんな事になるなんて私も予想していなかった。