Language of love   作:千α

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過去ノ十

そもそも、冬樹を弟思い始めたのはいつからだろう………。

臨也はミミズに拷問されながら考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来神高校 校門前

 

 

「あれ、キミまた来てたの?」

 

「こんにちわ。」

 

臨也が家に帰宅しようと校門へ向かうとそこには小さな陰が見えた。

その招待は宇野原冬樹だった。

始めて出会った頃とは何も変わらず、相変わらず顔などに怪我をしている。

 

(虐待だけじゃ、なさそうだ……。)

 

臨也は直感的にそう感じていた。

 

「またシズちゃんと会いに来たのかい?」

 

「あー……まあ、そうなんですけど………あ。」

 

冬樹は臨也の後ろを指差す。

 

「?」

 

「標識。」

 

「い〜ざぁ〜やぁあ〜!!」

 

臨也はその冬樹の言葉を聞くと同時に後ろへ飛ぶ。

そこには、標識を持っていた静雄がいる。

 

「ちょっと、シズちゃん……いきなりだね。

本当、俺の事見た途端にそれはやめてって言ってるのに。」

 

「ウルエェ、手前がすぐに死ねば俺もこんな事しなくて済むんだからよぉ……。」

 

「キミはシズちゃんのどこや憧れたの?」

 

臨也はそんな静雄を見て隣にいた冬樹の方を見る。

が、そこに冬樹はいなかった。

 

「………冬樹は?」

 

「それはこっちが聞きたいって……シズちゃん、標識。」

 

臨也が視線を少し逸らして静雄の持っていた標識を指差す。

そこには標識に吹っ飛ばされたであろう冬樹が倒れていた。

 

「冬樹────っ!?」

 

「ほとんどシズちゃんのせいだよ。」

 

静雄は倒れている冬樹の前に膝を着いて抱きかかえる。

 

「し、新羅だ!とりあえず新羅を呼んで………っ!」

 

「………あー…大丈夫ですよ。」

 

冬樹は何事もなかったかのようにむくりと一人の力で起き上がる。

 

そういえば、この子はどうしてこんなにも頑丈なのだろう……。

始めて会った日の事を臨也は思い出す。

つい数日前、冬樹はたまたま臨也と静雄の喧嘩に巻き込まれ、ポストが冬樹の身体に直撃し、病院に送られたという苦い思い出がある。

にも関わらず冬樹は当たり前かのように臨也と静雄を嫌う事はなかった。むしろ、臨也と静雄の喧嘩を見るたびに、その喧嘩に巻き込まれるたびに冬樹は二人の事を好きでいる事ができた。

 

「キミって……よくこんな化け物と一緒にいれるよね。」

 

「なんだと!?」

 

冬樹を抱きかかえていたため、静雄は臨也につっかかることはできなかったが、迫力はそれに負けていない。

 

「………あの……化け物に憧れちゃいけないんですか?」

 

冬樹は言葉を紡ぐ前に少し言葉を考える癖があり、感情が無いという事はその意味が解ればすぐにわかることだった。もちろん、臨也はその意味を理解できていた。

 

「憧れねぇ………化け物じゃなくても、キミは何回もシズちゃんに殺されかけてるんだよ?なんで、一緒にいれるの?」

 

「怖く無いし。それに………あー……えっと………死んでないし?」

 

「俺に聞かれてもね……。」

 

冬樹は首を少し傾げて臨也に問う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、臨也には理解できなかった。

家に帰っても、その次の日も、理解できなかった。

そして、臨也は気付くとこのことばかりを考えていた。

 

 

「本当にキミは不思議だよね。」

 

「そうですか?」

 

静雄が不良達と喧嘩をしている最中、臨也と冬樹はそれを見て一度も目を合わせずに会話をする。

 

「俺とシズちゃんの喧嘩は止めるくせに、こういった喧嘩は止めないし……まさかだけど、キミも化け物だったりする?」

 

「………えー…と……俺は化け物じゃないと思います。平和島さんも化け物じゃないです、ちゃんとした…一人の人間だと思いますけど?」

 

「思うって……キミの答えはいつも曖昧だね。で?喧嘩はどうして止めないの?」

 

「………喧嘩は……二人に喧嘩はして欲しくないんです。」

 

そんな冬樹の言葉に臨也は珍しく思考が停止した。

 

「折原さん?」

 

「………俺達に喧嘩をして欲しくないってどういう意味?」

 

「………んー…好きだから?」

 

「それって、俺も含まれてるの?……….キミが好きなのはシズちゃんだけかと思ったよ……。」

 

冬樹は臨也の問いに首を振った。

 

「…初めは平和島さんだけでした……けど……お兄ちゃんってこんな感じなんですね。」

 

「え?」

 

お兄ちゃんとはいったいどちらの事を言っているのだろうか。

 

「折原さんと平和島さんってお兄ちゃんみたいで、なんか………安心?します。」

 

その言葉を聞いて、臨也はよくわからない感情が自分の中で膨れ上がっている事に気が付いた。

 

(なんで、シズちゃんと同じように見るのかがわからない……どうせ、兄として見るなら俺にすれば良いのに……。)

 

そんならことを思っていた自分に臨也は驚いた。

 

「……あー…折原さん。」

 

「何?」

 

「……えー…と……ちょっと、逃げた方が……。」

 

冬樹が臨也の後ろをいつものように無表情で指差す。

臨也の後ろには先ほどまで不良達と喧嘩をしていた静雄が立っていた。

 

「手前ぇ……まさか冬樹に変な事を、吹き込んでねえだろうな……。」

 

「…やだなあ……そんな事するわけないじゃん……ところで、その標識……さっきまで持ってなかったよね?」

 

「お前を殺すためにわざわざ引っこ抜いて来たんだよ……。」

 

「シズちゃんさぁ……他人の迷惑でも考えたら?」

 

「それは、手前が考えたほうが良いんじゃねぇか?冬樹、ちょっとどいてろ。」

 

「はい。」

 

「さっきと言ってる事違くない?」

 

冬樹はすでに姿が少し小さく見える位置で傍観する事にしていた。

 

そして、喧嘩を始める二人を見て、いつもの無表情でこう言う………。

 

「ああ………今日も平和だな………。」

 

 

たまたま、臨也はその言葉を聞いてしまう……。

その冬樹の声が、いつもの淡々とした声ではなく、どこか……悲しそうな声だった事に気付いたのは、それから何年も先、今ミミズに拷問されている時だった。

 

そして、考える……どうして、あんなにも悲しそうなのか……冬樹にとっての平和とは、いったいなんなのか……。

 

 

 

 

 

 

〜冬樹のメモ〜

 

 

 

自分にとっての平和

 

・平和島さんとイザヤさんがけんかをすること。

 

・それをみんなで止めること。

 

・好きな人たちがき好きなように生きていること。

 

・自分が一人じゃないこと。

 

・悲しいことがないこと。

 

・いけぶくろの中で羽をのばすこと。

 

・いけぶくろが生きていること。

 

・いつか、あの二人(・・・・)がどんな形でも良いからおたがいのことをみとめ合ってくれるのを待つこと。

 

・みんなに─────ここから先はメモが破れていて読む事ができない。────

 

 

 




グダグダ。

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