Language of love   作:千α

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第五十七話 звезды мерцают

冬樹の病室に黒がやって来た。

その黒は耀華の仕掛けた黒板消しの餌食となり、頭を真っ白にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、災難だったね。」

 

「まぁ……はい。」

 

冬樹の病室に来たのは折原臨也だった。

 

「ところで、「アンフィスバエナ」について、なにか解った事はあったんですか?」

 

「まあね。

それより、さっきの事について何の謝罪も無し?」

 

さっきの事とは耀華が病室の扉に挟んでいた黒板消しが臨也の頭にヒットした事についてだ。

 

「それは嘉真幸と真紀方に言ってください。」

 

「その二人は何処かに逃げたけどね。」

 

春媛とソーニャはしぶしぶ飲み物を買いに行き、耀華と真紀方は逃げるように帰って行ってしまった。

 

「………それにしても、凄い量の見舞いの品だね。」

 

「白爛の皆からです。まあ、普段なら全部断るんですけど。今回は折原さんが来るだろうなと思って、ありがたく頂戴しました。」

 

「え、嫌がらせ?」

 

「いえ、折原さんも友達を多く作ってたほうがいいですよーって言うアドバイスです。」

 

「白爛の皆は友達じゃないだろ?アレは君に対しての一種の宗教だよ。」

 

臨也は白爛の状態を見てそう判断していた。

 

冬樹………真白に対しての異常なまでの信仰心。

白爛はこの信仰心のおかげで今の結束力を強めていた。

 

「………真白教?」

 

「真面目な顔してなに言ってるの?」

 

真面目な顔と言っているが、もちろん冬樹は無表情だ。

 

「ところで、犯人は解ったの?」

 

「いえ、全く。」

 

「今回はミンナも予想外の展開だったわけだ。」

 

「そうなりますね。」

 

冬樹は口元は笑っているが、目が笑っていない臨也を見て少し疑問を感じた。

 

(この人は人間を猫のように見るような人だ。

なのにどうしてここまで俺のためにその犯人に怒りを感じているんだ?)

 

冬樹は臨也の本質を知っていたし、人間を愛している事も知っていた。

だからこそ、冬樹は臨也を理解できなかった。

 

 

臨也は確かに人間を平等に愛している。

臨也を例えるなら、猫好きの人間。どんな猫好きの人間でも、猫が喧嘩をしたりしている姿を見ると「可愛い」と言うだろう。しかし、そんな中で飼い猫はどうなのだろうか。

もっと違う言い方をすれば、ゲームで一番使いやすいキャラクター。つまり気に入っているキャラクター。

それが、もしも攻撃を受け負けて、フィールド上からいなくなるとする。その時、そのキャラクターを気に入っていたプレイヤーは怒ったり、仇を取ろうと奮闘したり、やる気をなくしたり、リセットボタンを押したりと様々な事をするだろう。

 

今の臨也はそれと同じだったのかもしれない。

 

冬樹は人間ではない、かと言って化け物でもない。

どっちつかずで微妙な存在。だからこそ、臨也は人間として見れず、化け物としても見れず…そんな心境を押し殺すために冬樹の事をとりあえず弟として見る事にして様子を見ていた。

 

しかし、とりあえず弟として見ていた冬樹の事を本当に弟のように見ていた。それは、臨也も、もちろん冬樹も知らない事だ。

 

 

「なら、その犯人は俺が調べておくよ。」

 

「え、良いんですか?」

 

「もちろん。弟を轢いた奴の顔も見てみたいしね。」

 

(嘘ばっかり……俺も人間の一人としてしか見てないんだろ?)

「ありがとうございます、折原さん。」

 

「………。」

 

「どうしたんですか?」

 

「俺たちって結構一緒にいるのに。冬樹くんって俺の名前って呼んでくれた事ないよね。」

 

「そうでしたっけ?」

 

「シズちゃんのことは名前呼びなのに……。」

 

「臨也さん。」

 

「………っ!」

 

「──で、良いんですか?」

 

「まさか、呼んでくれるなんて思って無かったよ。」

 

「なら、呼び方戻して良いですか?臨也さんってなんかむず痒い。」

 

「いや、戻さなくて良いよ。」

 

「………えー……。」

 

「まあ、冬樹くんが元気で良かったよ。」

 

「………なんか、すみませんでした。」

 

「なんで冬樹くんが謝るの?」

 

臨也は冬樹の頭を撫でながら笑う。

 

「何ででしょうね?」

 

冬樹は少し照れ臭くなって顔を背けた。

 

 

 

──────────…

 

 

 

折原臨也は病院の廊下を歩いていた。

 

すると、見かけたのは見覚えのある黄色。

 

「やあ、紀田くん。」

 

「っ!い、臨也……さん?」

 

「知り合いか?」

 

冬樹の病室から出て、いきなり紀田正臣に会うとは思っていなかった臨也は一瞬驚くとすぐにいつもの笑顔で正臣をみつめる。

 

「……まあ、知り合い……です。」

 

「へぇ……。」

 

「俺は折原臨也です。」

 

「そうか、よろしく。」

 

正臣の隣にいた大河は正臣の様子が変わった事に少し戸惑った。

臨也は大河に自己紹介をする。どう見ても大河の方が年上のため、臨也は敬語を使っていた。

 

「どうして……ここに?」

 

正臣は大河と臨也に関係が出来てしまう前に会話を変える。

 

「お見舞いだよ。白爛のリーダーの真白…紀田くんも知ってるだろう?その子のお見舞い。」

 

「真白………。」

 

正臣は突然、その人物の名前が出た途端言葉が詰まっていく事が解った。

 

「ああ、なるほど……道理でお前の名前に聞き覚えがあるわけだ。」

 

大河は短くなったシュガレットを口に放り込んでもう一度臨也を見る。

 

「そうですか……まさか、あの子が俺の事を誰かに話すなんて……。」

 

もちろん、臨也は大河の事を知っていた。

暇つぶしのために冬樹がリーダーを務めていた白爛で遊んでいた頃、冬樹の一番の心の支えとなっていた男性。臨也はそんな大河に少し嫉妬を覚えていた。「なぜ嫉妬をしていたのか」それは臨也でもわからない。

 

「………なら、お前か?あの時、真白を折ったのは(・・・・・)……。」

 

大河は直感で解った。

折原臨也があの時、暇つぶし程度で冬樹を壊した犯人だと……。

臨也と大河の間に妙な空気が流れる。

 

「何の事ですか?」

 

「………行きましょう……。」

 

「そうだな……おい、真白は確かに優しいけどよ……だからこそ、俺らが(・・・)居るって(・・・・)事を(・・)忘れんなよ(・・・・・)。」

 

「………。」

 

そう言って立ち去る正臣と大河を見て、臨也は一瞬笑みを消した。

 

そして、二人の姿が小さくなったところで臨也は吐き捨てるようにこうつぶやく。

 

「あの人は何年経っても気に入らないな……。」

 

臨也や静雄でも、冬樹の()を壊すのに何年も要したのにも関わらず。大河はたった数日でその壁を壊したのだ。それが臨也にとって腹立たしく思えて仕方なく無いと言えば嘘になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも、俺は人間を愛している。」

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