人とはなんと愚かなことか……
それが長の口癖だった。
俺達は白い髪を携えた鬼、誇り高き強き鬼。どんな者も俺達を恐れ崇めた。しかし俺達の繁栄は今からもう何年も前に終わった。人の手によって。
俺達は人を呪った、またこの世に復活するために人の身体を選びそれに取り憑き生活していた。
しかしそれがそもそもの間違い。
俺達は人の心の悪意を読み間違えそれに飲み込まれてしまった。俺達は1度取り憑いたらその身体から抜け出す事が出来なかった。次々に仲間が飲み込まれて行く中、こいつはどうも変だった。俺の存在に気づいたと思えば俺を気遣い話し掛けてくれた。大嫌いだった人の中で唯一好きになれた。この世に復活出来なくていい、こいつと一緒にいたい。でも、こいつはいつか死んでしまう。俺は一つ方法を考えた。
こいつが死んだら転生させよう。俺の存在を忘れていてもいいから、そうした方がきっとこいつは幸せに人生を歩んで行けるはずだから。
──────────…
「もしもし?」
突然鳴った着信を止め冬樹は携帯に耳を当てていた。電話を掛けてきた主は冬樹の先輩であり現在勝手に自分の家に転がりこんできた春媛だった。
ああ、出なきゃ良かったと内心後悔していると春媛は混乱したように話し始めた。
『冬樹!ソーニャちゃんが、ソーニャちゃんが!』
「は?先輩、ソーニャがどうかしましたか?」
『ソーニャちゃんが眼鏡にセルティさんと眼鏡にソーニャちゃんがぁぁ!!』
「……落ち着いてください。」
冬樹は春媛の言っている意味がわかないと頭の上にはてなを浮かべ春媛に落ち着くようにと声を掛ける。
春媛は冬樹の言葉に我を取り戻し落ち着きを取り戻すために数回深呼吸をした。
『そ、それがね……。』
春媛は恐る恐る話し出した。
春媛の話しによるといきなり現れた眼鏡の女性がソーニャと現在春媛がいるマンションの一室の家主・新羅を連れ去ってしまったらしい。冬樹以外の人物ならば何度も聞き直してしまうかもしれない話し方をしていたが、春媛がどれほど混乱しているのかがよくわかった。
「眼鏡の女?………先輩、もしかしてその人はアイドルの聖辺ルリさんに似てましたか?」
『え?………うん、眼鏡でよくわからなかったけど……雰囲気はなんだか似てたような……。冬樹、私どうしたらいいの?』
春媛は相変わらず混乱している様子で今にも泣き出しそうになっている。
「先輩、とりあえず今日は外に出ないでください。」
『で、でも……っ!』
「俺が何とかしますから。
大丈夫ですよ、先輩は安心して待っていてください。」
『………。』
「先輩?」
『やっぱり、私の事を頼ってくれないのね……。』
「………すみません。」
『謝らなくていいのよ!私が、頼りないから……。』
冬樹は少し返答に戸惑った。そういえば最近春媛を頼っていなかった、黄巾賊とのいざこざから春媛を危険な事から遠ざけていたからだ。
-「私、冬樹くんの事を命がけで守るから!」-
始めて会った時に春媛から言われた言葉を思い出す。
感情がまだ戻っていなかった頃ならば彼女に何のためらいもなく辛辣な言葉を掛けていただろう、何も春媛に対する気持ちがなければ彼女の事など気にかけなかっただろう。
-そうか、俺はあの時から……
だからこの人に甘えてみよう。この人が強いのは自分がよく知っている。
「先輩、白爛のみんなの事は、頼みます。」
『ふ、冬樹?』
「俺は今、自分の事で手一杯です。だから、白爛をお願いします。それが、今一番俺のためになるんです。」
『ほ、本当に?』
「はい、とりあえず「悠々」で皆と合流してください。そこで皆を守ってください。今日は多分、何かが起こるはずだから。」
『それが冬樹のためになるなら!』
「ありがとうございます。それじゃ、俺はもう行くので……。」
『うん!冬樹、愛してるわ!」
冬樹はいつもと変わらない春媛に安心して電話を切った。その刹那襲ってきた心の穴を愛おしく思いながら地を蹴った。
「とりあえず、鯨木かさねは殺す!」
冬樹には似合わない声を張り上げ普段は使わない|あの〈・・〉|携帯電話〈・・・・〉を取り出した。そして慣れた手つきで携帯電話のボタンを押す。
検索項目:デュラララ!!
《仕方ねぇから返してやるよ、お前のチカラを。》
ちなみに冬樹とかさねさんが戦う予定はありません。