マリオブラザーズの旅 〜the Wonderful World~ 作:ガリュウ432
ある国の城壁の前にワゴン車(四輪車の中でも多数の人数を載せれるもの。空を飛ばないものを指す。)が止まっている。
ワゴン車のスサタの持ち主であるマリオとルイージ、モトラドのエルメスがエンストしてしまい、途中乗せてもらうことになったキノは入国審査を受けていた。
するとマリオが、なにか違和感を感じとる。
どうやらキノも感じ取ったようだ。
「・・・どうやらこの入国審査官にありそうだな。」
キノが気づきます。
「あっ!?この女性、薬指がない・・・?」
「もしかしてヤクザの国?」
スサタがシャレにならない冗談を言う。
「それは小指じゃないかな?」
「エルメス君そこじゃない・・・。」
ルイージが静かにツッコミを入れる。
「あの・・・、どうして貴女は薬指がないんですか?」
キノがどストレートに聞く。
女性の入国審査官はとくに困った素振りも見せず、淡々と答えた。
「あら?この国について何も知らずに来たの?じゃあ気を付けて。あなた達も何かを失うかもしれないわ。この国はね。『人間が生み出したもの全て、何かが足りていない、若しくは足りていない状態にしなくてはならない』国なのよ。」
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国の中で詳しい説明を受けれると聞き、マリオ達は入国した。
滅多に見ないワゴン車に国の住民は興味津々だ。
「しかし、どういう事なんだろうね。何かが足りない国って。」
エルメスが疑問を口にする。
「この国の王が決めたとか?」
ルイージがそれっぽいことを言うが、おそらく違うだろう。
「分かるのは人間のどこかを足りなくさせるってことだろうな。あの人の場合は指が足りていない。元からなのか切り落としたのかは別としてな。」
「どちらにせよ、あまり考えたくないですね。」
「同感。」
マリオとキノが少し笑う。
不思議な国に来たことが少し楽しいのだ。
1人旅になれたキノとはいえ、やはり気の合う人がいると少しは楽しくなるもの。性格云々というより、人間の性。
「・・・ホテルはここしかないって言われたけど。」
目の前に建つのは豪華絢爛なホテル。
「あってるよな・・・?」
「まさか後でバカ高い金を・・・。」
「あ、そういうところが足りなくなる感じ?」
「いえ、分かりません。」
「知ってる。」
車を停め、エルメスを下ろす。
スサタは入れないので此処で待ってもらおう。
マリオがホテルのドアに手をかけようとする。
しかしおかしなことに気づいた。
「・・・あれ?この扉、両開きなのに片方ノブがねえぞ?」
「足りないってこういうこと・・・?」
ルイージが首を傾げる。
「まさか。そんな簡単な事じゃないだろ。」
するとマリオが明ける前に扉が開いた。
「お待ちしていました。旅人さん。私はここのホテルのオーナーです。以後、お見知りおきを。」
中から出てきたのは若い女性のオーナー。
彼女も何か足りないのかと思い、キノは観察した。
しかし彼女はなにも足りていない所はない。すべて完璧。
「いえ、私も足りていないのですよ。」
すると、左眼が隠れている髪の毛を上げた。
そこには抉れたあと。とても痛々しくそこには傷痕が残っていた。
「すみません。痛い思いを思い出させてしまって。」
「いえ、いいんですよ。ところで、あの車はどちらの方のものでしょうか?」
「ああ、あれは俺のだが・・・。どうかしたか?」
「でしたら、今すぐ地下駐車場をご利用ください。この国の性質上、すべて完璧が状態なものは何か足りなくさせられますので。そうですね。この車だと、サイドミラーをどちらか切り取られますよ。」
「うひぃ、それは困る。マリオ、移動頼むよ。」
流石に愛車が壊されては困るので、移動させる。
するとエルメスとキノも気になることが出てきた。
エルメスを『ちゃんと』直してくれるところはあるかだ。
「でしたら、わたくしが修理いたします。モトラドの知識はありますので。エントランスで立ち話もなんです、談話室を用意します。そこで詳しいことをお話します。」
マリオが地下駐車場にスサタを停め、戻ってきた。
「うわぁ・・・中も豪華だね。」
ここには居ないはずのスサタの声。
「どうしてスサタの声が聞こえるの?」
エルメスがマリオに聞く。
「スサタを譲り受けた時、このメガネももらったんだ。このメガネはスサタが俺が見てる視界を共有出来るもんだ。」
「じゃあマリオがスサタの視界になってるわけだ。」
「そういうこと。」
「皆様、談話室でオーナーがお待ちです。どうぞこちらへ。」
男の人に連れられ、全員で歩く。もちろんエルメスも。
その男の人は当たり前の如く、右眼がなかった。
「どうぞ旅人さん。お入り下さい。」
オーナーに促され、入る。
そして、席に座る。机の上にあるコーヒー。
コーヒーカップではあるが、取っ手がない。
湯呑みみたいな形になってる。机の面は4分の1くらいない。テトリミノみたいな形になっている。よく見たら座ってる椅子の足も3本だ。キノのは背もたれがない。ルイージに用意されてたのは座る部分がなかった。流石に変えてもらった。
「さて、聞かせてもらえないか。この国の現状を。」
「ええ、勿論です。この国はとても神を信仰しています。無論、その王も王女もです。いわば、宗教の力で国を治めていました。その王も常にある一族か継いでいました。しかし、どんなに優秀な王がいたとしても、その子供は無能かも知れません。突然、ある代の王がこのようなことを言い出しました。」
「まさか、神は完璧であるが故にその下僕である私たちが整った形なのはおかしい。なんて言い出したのか?」
「その通りです。それに賛同して喜んで身体の一部を失い出す人もいましたが、そうじゃない方が大多数です。しかし、その代の王は嫌がる民を捉え、無差別に身体のどこか一部を無理やり切り落としたのです。ですが、そのような独裁をした結果、ボロが出ました。」
「・・・自分たちはしてなかったとか?」
「その通りです、モトラドさん。言い出しっぺの王とその親族は身体の一部を失おうとしなかったのです。これに怒った反対派の民は王家に攻め、切り落とすだけでなく、その代の王は殺し、親族は身体の殆どの部分を失いました。それも生きる意味がなくなるくらいまで。そんな中、やはり宗教国家だったのか教えに、子を大切にというものがあったせいか王政が崩れたあと国は民主政治になりましたが、民の殆どが王の幼き愛娘は殺せなかったのです。ですが、その愛娘までも許せない民もいました。王族の血が流れているが故に。ですが、ほとんどの人が守ったので無傷だったそうです。・・・しかし、育ったその娘はやがて真実を知ります。自分の親がしでかしたことを。その娘はナイフで左眼を抉りました。まあ、それに家の人がすぐに気づき何とか一命を取り留めましたが。」
「ストップ。まさか、王族の娘って・・・。」
「おや、勘がいいですね。そうです。私がその生き残りです。ですがまあ今でこそ宗教国家ではありませんが、この風習が続いているのは、この悲劇を忘れないためです。ですがまだその宗教を信仰し、すこし、頭のネジが外れている人もいます。そんな人は旅人にまで強要するのです。それにより、旅人がこの国で命を落とすことも多くありません。ですから、国のホテルもここしかないんですよ。」
「この国の歴史を知っている人が、このホテルのオーナーだとは。」
キノが感心する。
「いえ、今でこそこの風習が残っていますが、正直私はこんな風習早くにでも消えて欲しいです。こんな方法で、悲劇を忘れないようにするだなんて・・・。それこそ、人間として、足りていないじゃないですか。」
国家の生き残りの娘は悲しそうに呟いた。
この回は出国の描写はありませんが、次回の最初はこの国を出た後の話です。