オーバーロード~不滅の心臓~ 作:ノック
DMMO-RPG「ユグドラシル」。
北欧神話を題材としたファンタジー系オンラインゲームだ。
仮想現実世界で冒険やモンスター討伐など、自由に楽しめるゲームだ。
その可動年数は12年。
だが、その歴史に幕が下ろされる事が決定した。
「ユグドラシルが、終わる?」
そう呟いたのはモモンガ。
ユグドラシルの廃課金プレイヤーだ。
そんな彼はユグドラシルでは、「魔王」や「非公式ラスボス」と言われるユグドラシル最強最悪のギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド長だ。
「嘘だろ・・・」
彼の種族は
瞳がある場所に真っ赤な光が灯った白骨死体をイメージすれば分かり易い。
「・・・・」
モモンガが目を手で覆い、項垂れていると警告音が鳴り響いた。
「なんだよ、侵入者・・・?」
ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド拠点「ナザリック地下大墳墓」。
かつて1500人のプレイヤーたちの侵攻を跳ね返したユグドラシル最高の拠点だ。
そこへ、何人ものプレイヤーが侵入し、その命を散らしてきた。
とは言っても、大侵攻後は疎らになっているから、侵入者は珍しい。
「・・・・あ、死んだ」
どうやら、ただの馬鹿か初心者だったようで、第一階層のデストラップに引っかかってすぐに死んだ。
ポーンッ
それと同時にポップ音が鳴った。
「今のはメール?」
コンソールを開き、届いたメールを確認する。
差出人は運営だ。
「何だよ、終了に対してのお別れイベントの知らせか何かか?」
モモンガがグチグチと呟きながらメールを開く。
「何々?」
『ギルド拠点での侵入者撃破数が3000人を超えましたので、それを祝ってアイテムを贈呈します。
今後もユグドラシルをお楽しみください』
「さっきの奴で3000人目だったのか。それで何をくれたんだ?」
プレゼントを受け取り、アイテムボックスを開く。
「ちーっす。モモンガさんいるー?」
「あ、ペロロンチーノさん。こんばんわ」
「こんこん。あれ?どうしたの、それ」
「これですか?」
具現化したプレゼントボックスを見るペロロンチーノ。
「さっき、ナザリック地下大墳墓で撃破した侵入者が3000人になったんですよ。それを祝って運営が送ってきたんです」
「ふーん?何を送ってきたんだろうな。クソ運営は」
「じゃあ、開けますね」
「うーい」
モモンガはプレゼントボックスを開くと、中からデータクリスタルと本が出てきた。
「データクリスタルと本?」
「何ですかね。これ」
とりあえず、データクリスタルを置いておいて、本を開く。
「なんて書いてあるん?」
「えーと・・・名前:コア・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。概要:世界級アイテム。二十の一つ・・・・ふぁっ!?」
「二十!?」
世界級アイテム。
その名の通り、一つの世界と同等の価値を持ち、公式チートと言われるゲームバランスを崩壊させるアイテムだ。
その数、全部で二百。
その内、使いっきりだが他の世界級アイテムとは一線を画すのが二十だ。
「こ、効果は!?」
「え、えーと!使用方法はギルド武器と融合させること。効果は、NPC制作可能レベル10倍。拠点データ量無限化。ギルド拠点維持費無料化。NPCのギルメンに完全服従化。システム・アリアドネ対象外化。拠点のあるワールド内であればどんな場所にだろうと何度も移転可能。他にも滅茶苦茶いっぱいありますよ!」
「流石二十!ありえない効果ばっかりじゃねぇか!」
それもそうだろう。
運営としても、手に入れられるギルドがあるとは思ってもいなかったのだ。
このアイテムの取得条件は、ギルド拠点を踏破されたまたは壊滅したギルメンがギルドに所属したことがない事。
ギルド拠点のNPC製作可能レベルが2000以上であること。
ギルメンの人数が常に最大数の半分である50人以下であること。
ギルド武器の能力がある一定以上であること。
そして、ギルド拠点で侵入者を3000人撃破することだ。
到達出来そうで出来ない数字である3000人。
それほどのプレイヤーの屍の上に立つことで手に入れられるアイテム。
そんなに攻められて存在し続けられるギルドがあるとは思ってもいなかったのだ。
そして、その上、幾つもの厳しい条件をクリアできるとも思ってもいなかった。
二十の中でも最高の効果を込められたそれは、もし入手できたのであれば最大の賛辞を贈るつもりで、運営に生み出されたのだ。
効果はギルドに関する事だけだが、効果だけで言うのなら、最強の世界級アイテムであった。
「そ、それでどうしましょう」
「どうするって・・・そりゃ、使うしかないでしょ」
「そ、そうですけど、一応世界級アイテムですし、二十ですし・・・皆さんの意見を聞いてからでも」
「絶対に満場一致で使用に賛成ですって!それに俺ら以外いないでしょ!俺は使うに賛成!モモンガさんは!?」
「え、あ、俺も賛成です」
「はい、可決!ほら、モモンガさん!ギルド武器持って!」
「は、はい!」
ペロロンチーノに言いくるめられ、モモンガはギルド武器であるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取る。
七つの蛇が絡み合った形の黄金の杖だ。
データクリスタルの形のコア・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取る。
コア・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに当てると、ポップアップが出現する。
使用するかどうかを聞いてきたそれに、Yesのボタンをタッチする。
すると、コア・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが消え、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに様々な能力が付与された。
データ容量ギリギリまで詰め込んであったはずだが、それを無視してコア・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは使用できた。
「・・・・そう言えば、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは世界級アイテムと融合したんですよね」
「そうですね」
「世界級アイテムって壊れないですよね」
「そうですね」
「という事は、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは壊れない?」
「・・・・そう、なりますね」
「・・・・」
「・・・・」
「う、うぉおおおお!!!という事は!持ち出しても何の問題もないってことですよね!」
「ですです!やべぇ!マジでヤベェ!」
元々、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは世界級に匹敵するほどの強力な武器だった。
だが、ギルド武器であるスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンは、破壊されるとギルド拠点が崩壊するのだ。
だから、ずっと拠点の奥へ封じ込められていた。
破壊できなくなった今、封じ込めておく意味はない。
「ま、まずは。移転可能っていうのを試してみましょう」
「で、ですね」
ギルド武器を振り、移転の能力を使うと目の前に地図が浮かぶ。
「えーと、今はここだから・・・なんだ、この地下空間」
「うへー。それがヘルヘイムの全てかー」
ペロロンチーノが珍しそうにそれを見る。
「空にも浮かばせる事とかできるんですかね?」
「やってみます?」
「みましょう」
ペロロンチーノの呟きにモモンガは応え、何もない空中に拠点を移転させた。
「完了しました」
「外、行ってみますか」
「そうしましょう」
そう言い、二人は指輪を使用した。
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。
転移を規制しているナザリック地下大墳墓の中を、一部の例外を除いてどんな所だろうと無限に転移できるアイテムだ。
そのアイテムを使い、表層に移動した二人は歓声を上げた。
「うぉおおおお!」
ペロロンチーノはバードマンの特性である翼による飛行を行って、ナザリック地下大墳墓の周りを飛ぶ。
「すげぇ!すげぇ!異空間から表層だけが出てて、他は外から見えない感じになってる!」
「凄いですねそれは!」
二人はわいわいきゃっきゃっと騒ぎ、手に入れたアイテムの能力で遊びだした。
「此処、だったはずだ」
ナザリック地下大墳墓の跡地。
そこに一人のプレイヤーがいた。
プレイヤーの名はウルベルト・アレイン・オードル。
ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のメンバーで、今は引退した身だ。
ギルドからも脱退したので、ホームポイントはヘルヘイムの異形種の始まりの街となっていた。
そこから移動して、何とかやってきたらギルド拠点が消滅していた。
「おかしいだろ」
ウルベルトはそう呟き、考える。
ギルドが敗北し、ギルド武器が破壊された。
違う。拠点は崩壊するが、元はダンジョンだったナザリックは消滅しない。
なら、何故ない?
ウルベルトはフレンドリストを開き、ログインしているであろう人物のログインを確認する。
案の定、ログインしていた。
ついでにかつての仲間の一人もだ。
伝言を使用して連絡する。
『もしもし、モモンガさん?』
『もしもし、モモンガさん?』
『その声・・・ウルベルトさんですか?』
『あぁ。そうだ』
「どうした?モモンガさん」
突然固まったモモンガに首をかしげるペロロンチーノ。
「ペロロンチーノさん、ウルベルトさんです。伝言でチャットが来ました」
「おぉ、ウルベルトさんか!」
「ウルベルトさん、聞いてください!」
そう言い、モモンガは興奮しながらウルベルトに手に入れたアイテムの事を話した。
「マジか」
ウルベルトは唖然としながらモモンガの話を聞いていた。
二十の一つを手に入れたことは喜ばしいことだ。
だが、その能力は常軌を逸したものだった。
少し考えてもわかる。
どんな相手だろうと落とす事のできない難攻不落の要塞を生み出せるアイテムだったのだ。
「それで、今はどこに?」
『謎の地下空間にいます。多分、隠し鉱山かと』
「マジか」
ヘルヘイムに隠し鉱山があるとは思っていなかったので驚くウルベルト。
『探索は下見程度で、そろそろ帰ろうと思っていたので戻りますね』
そうチャットが来ると同時に、目の前にナザリック地下大墳墓が出現した。
「ウルベルトさん、お久しぶりです」
「あ、あぁ。久しぶり、モモンガさん」
「おひさー。ウルベルトさん」
「あぁ、そうだな。ペロロンチーノ」
こうして、ギルドメンバーのほとんどが引退したギルド「アインズ・ウール・ゴウン」。
それがまた最盛期へと向かって動き出した。