オーバーロード~不滅の心臓~   作:ノック

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困惑と捕縛

声の方を見ると、そこには涙を流すセバスと「プレアデス」の面々。

 

モモンガは隣に立つアルベドを見て、同じように涙を流しているのを見て顎が外れんばかりに口を開いている。

 

「え、なに。どういうこと?」

「サービス終了はドッキリでしたー・・・とか?」

「いや、お前じゃあるまいし・・・」

「大々的に宣伝してましたし、それはありえないかと」

「もしくは、ユグドラシルⅡに強制移行とか」

「ありえない・・・とは言い切れない運営が怖い」

「いやいやいや、それ以前にNPCが涙を流すとか色々とありえない事が起きてますよ」

 

ギルメンの言葉に全員がそれに気づいた。

 

NPCにまるで生きているかのように表情があり、涙を流していること。

 

そして、匂いなどもあることに。

 

「セバス!」

「はっ!」

 

モモンガの声が響き渡り、全員がそちらに目を向ける。

 

「プレアデスを一人連れて、外を探索せよ!時間は二時間。範囲は周囲一キロだ!残りのプレアデスは第十二階層へ上がり、侵入者を迎え撃て!行け!」

「「「はっ」」」

 

セバスとプレアデスたちが玉座の間を去り、モモンガはアルベドに目を向ける。

 

「アルベドは玉座の間に第四・第八・第十一階層守護者を除く全守護者たちを集めよ。時間は二時間後だ。真なる無は置いていけ」

「畏まりました」

 

アルベドから真なる無を受け取り、モモンガは頭を下げて玉座の間を出るアルベドを見送り、ようやく息を吐いた。

 

「はぁー・・・緊張した」

「お疲れ様です、モモンガさん」

「あぁ、ぷにっと萌えさん」

「的確な指令でしたよ」

「ありがとうございます」

 

ぷにっと萌えに言われ、モモンガは照れくさそうに頭を掻く。

 

「さて・・・まずは、モモンガさんがお疲れのようなので、此処からは私ぷにっと萌えが進行を務めさせていただきます。異論はありますか?」

 

ぷにっと萌えがそう言うと、ギルメンから異論の声はなく「賛成」や「ぷにっとならオケ」など賛同の声が聞こえた。

 

「では、まずはペロロンチーノさん」

「はーい」

 

ペロロンチーノが手を上げる

 

「18禁用語をシャウトしてください」

「よっしゃ来た!・・・・はい?」

「18禁用語をシャウトしてください」

「え・・・あ、はい」

 

二度の有無を言わさない言葉に、ペロロンチーノは押されて息を吸う。

 

「ち○○!」

「うわっサイテー」

「ほんとほんと」

「愚弟が・・・」

「うわぁ・・・」

「いや、もっとオブラートに包めよ」

 

ギルメンから引き気味の声が出て、ペロロンチーノが膝をつく。

 

「やっぱりダメですかー」

 

ぷにっと萌えは予想していたのかため息を付く。

 

「え?どういうこと?」

「いえ、ペロロンチーノさんがBANされても文句の言えない言葉を言ったのに存在し続けている。つまり、これはゲームではない可能性が高いです」

「あぁ、確かに」

 

ギルメンが項垂れるペロロンチーノを見る。

 

「そして電脳法で禁止されている匂いも感じる。突拍子のない───いえ、ありえない───話ではありますが、ゲームが現実になった可能性が高いです」

「「「・・・・・」」」

 

ギルメンたち全員が黙る。

 

「結論を出すのは後にしましょう。まずは検証をしましょう」

 

モモンガの言葉にギルメンたちが我に返る。

 

「まずは身を守るためにスキルや魔法が使用可能かどうか。後はフレンドリーファイヤが解禁されている可能性もあります。その次はNPCが敵になり得るかどうか。コア・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効果の中にNPCの絶対服従がありましたが、アイテムの効果がちゃんと発揮されているかも不明ですのでそっちも確認しましょう」

「・・・・そうですね。そうしましょう」

 

ぷにっと萌えも頷き、様々な検証を行う。

 

それによって、スキルや魔法は使用可能。

 

フレンドリーファイヤ解禁。

 

アイテムも使用可能という事が分かった。

 

「とりあえず、身を守る位は出来ると分かりましたね」

「そうすると、NPCは絶対服従なのか?」

「いや、そう思うのは早計だろ」

「そう思って寝首を掻かれちゃ世話ないしな」

「そろそろ時間ですね。皆さん、階段を上って整列してください」

「うーい」

「りょっ」

「へーい」

 

ギルメンたちが階段を上り、玉座の隣に並び立つ。

 

その数分後、玉座の扉が開かれ、階層守護者たちが入ってきた。

 

入ってきたのは八つの異形の者たち。

 

それらは玉座の階段の目の前で立ち止まった。

 

「皆、至高の御方々に忠誠の儀を」

 

まず最初に前に出て跪いたのは銀髪紅眼の美少女。

 

「第一・第二・第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン。御方々の前に」

 

次はコバルトブルーの甲殻を持つ虫の異形。

 

「第五階層守護者コキュートス。御方々ノ前ニ」

 

次は金髪に左右の瞳が違う闇妖精(ダークエルフ)の男装少女と女装男子。

 

「第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ。御方々の前に」

「お、同じく第六階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレ。お、御方々の前に・・・」

 

次は三つ揃えのスーツに浅黒い肌の悪魔。

 

「第七階層守護者デミウルゴス。御方々の前に」

 

次は全身真っ黒の歌舞伎における黒子のような服装の存在。

 

「第九階層守護者ノウ。御方々の前に・・・」

 

次は茶髪に青い瞳の騎士風の美女。

 

「第十階層守護者アイン。御方々の前に」

 

次は黄金色の戦隊ヒーローなどで怪人として出てきそうな者。

 

「第十三階層守護者ディバイン。御方々の前に」

 

そして最後はアルベド。

 

「守護者統括アルベド。御方々の前に。第四階層守護者ガルガンチュア、第八階層守護者ヴィクティム、及び第十一階層守護者イルミスールを除き、各階層守護者御方々の前に平伏し奉る。御命令を、思考なる御方々よ。我らの忠義全てを、御方々に捧げます」

 

全員が跪き、頭を下げ続けている。

 

「・・・・面を上げよ」

 

モモンガが許可を出し、全員が頭を上げる。

 

「まずは集まってくれたことに感謝をしよう」

「感謝などもったいない!我らは思考の御方々にこの身を捧げた者たち。至高の御方々にとって、取るに足らない者でしょう。しかしながら、我らの造物主たる至高の御方々に恥じない働きを誓います」

「「「誓います」」」

 

それらを見て、反抗はないと判断してモモンガは頷いた。

 

「素晴らしいぞ!守護者たちよ!お前たちならば、失態なくことを運べると強く確信した!」

「「「おぉ・・・!」」」

「それでだ。現在、ナザリック地下大墳墓は原因不明の事態に巻き込まれている。何かしらの予兆やそれに気づいた者はいるか?」

 

モモンガの言葉に全員が首を振る。

 

「そうか。であるなら・・・」

 

モモンガの言葉の途中で玉座の間の扉が開かれる。

 

守護者たちが殺気を込めて扉を開いた者を睨み付けるが、モモンガが杖で床を叩く。

 

「よい」

 

その言葉で殺気は消え去る。

 

入ってきたのはセバスだ。

 

セバスは玉座の間に入り、守護者の隣に跪いた。

 

「遅くなり、申し訳ございません」

「よい。それで、外はどうだった」

「はっ。かつてナザリック地下大墳墓があった沼地とは全く異なり、草原でした」

「何?」

 

ギルメンたちがざわつくが、すぐに静かになる。

 

「続けろ」

「はっ。周囲一キロに人口建築物、人間などの知的生命体、モンスターの類の存在は一切確認できませんでした。空は夜空が広がっており、何かが浮いているということもございません」

「・・・・そうか」

 

モモンガはそう呟くと、考え込む。

 

「どうやら、何らかの原因でどこか不明のちに転移してしまったようですね」

「となると、警備を厳重しないとな・・・」

「隠蔽に関しては、コアを使えば問題ないだろうけどな」

「外にどんな存在がいるかも分からない今じゃ、大規模調査は出来ないしな・・・」

「どうするべきか・・・」

 

ギルメンたちが声を出して話し出す。

 

モモンガは何かを思いついたのか頷いた。

 

「スーラータンの意見を採用しよう。デミウルゴス、アルベド、アインの三名で階層守護者語社内の情報共有システムをより高度にし、警備のレベルを最高レベルまで上げよ」

「「「はっ!」」」

「次にニグレドとぬーぼーに魔法を使用して周辺を探索をさせよう。それまでは我々の許可無く外はもちろん表層部に出るさえ禁止だ。無論、これはギルメンたちにも適用される」

「「「はっ!」」」

「仕事を与えられていないものは、任せられている階層に異変が起きていないかを調査。デミウルゴスとアインの階層は副官に命じよ」

「「「はっ」」」

「では、仕事に戻れ」

 

モモンガの言葉で階層守護者たちは立ち上がり、一礼してから玉座の間を出る。

 

「・・・・・・うへぁ」

 

その直後にだるんっと力を抜くモモンガにギルメンたちは賛辞を送る。

 

「モモンガさんマジ魔王!」

「痺れたぜ・・・」

「さっすが我らがギルド長!」

「素晴らしい采配でしたよ」

「うんうん。すごかったよ」

「あ、ありがとうございます・・・」

 

モモンガはお礼を言うと、姿勢を正して立ち上がる。

 

「とりあえず、これでNPCが反乱することはないと思います」

「だね。やっぱりコアの効果は発動してるから大丈夫だね」

 

うんうんと頷くギルメン。

 

「さて、これから忙しくなりますよ。円卓の間に移動して話し合いましょう」

「だな」

「指輪を使おうぜ」

「んじゃ、先に行ってまー」

 

先走ったギルメンたちが指輪で円卓の間に転移する。

 

「全く、気が早い人たちですね」

 

ぷにっと萌えはそう呟き、自分で転移した。

 

「待たせたら暴走するでしょうし、皆さんも行きましょう」

「りょうかーい」

「て・ん・い!」

「失敗したら壁に埋まったり・・・」

「怖いこと言うな!」

 

そして続々と転移していく中、最後に残ったモモンガは誰もいないことを確認して、自分も転移した。

 

 

 

「さて、それではぬーぼーさん。お願いします」

「はい」

 

探知魔法を使用し、ぬーぼーは外の光景を水晶の画面(クリスタル・モニター)に映す。

 

「ふむ。確かに草原のようですね」

「となると、遮蔽物がないから丸見えですね」

「幻術を使いますか」

「表層部分にだけかけて、後は移転先しだいだな」

「素晴らしい!」

 

一人のギルメンが突如叫んだ。

 

そのギルメンを見て、全員が納得した。

 

「汚染されていない自然が広がってるじゃないか。素晴らしい、素晴らしいぞ」

「確かに素晴らしいことですね。でも、今は耐えてください。安全が確認できたら許可しますから」

 

モモンガにそう言われ、叫んだギルメン───ブルー・プラネットが「むぅ」と言って大人しくなる。

 

「ぬーぼーさん、生物は探知できますか?」

「んー・・・あ、ナザリックのすぐそばに凄い一杯いますね。後は南西に10kmくらいの所にも」

 

探知魔法を使用したぬーぼーが報告して、水晶の画面にそれを映す。

 

「も、森!」

「どうどう。ブルプラさん」

 

また興奮しだしたブルプラをギルメンが嗜める。

 

「森はいいです。南西に10kmの所を」

「はーい」

 

そして映ったのは小さな寒村。

 

「文化レベルは中世だね。うーん、ぬーぼー君、家の中が見たい」

 

最年長の死獣天朱雀がそう言うと、ぬーぼーは魔法で感覚器官を作って家の中を覗く。

 

「ランプがある。中世にはなかったはずだし・・・うーん。ちぐはぐだね」

「つまり、我々のような存在がいると?」

「その可能性が高いね」

 

死獣天朱雀の言葉に、ギルメンたちは警戒すべき相手を見据える。

 

「警戒すべきは、プレイヤーとこの世界特有の強者。後はいるならドラゴンですかね」

「いや、もしかしたらこの世界の平均レベルが1000とかかもしれないですよ」

「もしそうなら、俺らマジ雑魚じゃん」

「うわー。それは困る」

「最優先にすべきなのはこの世界の平均的な強さを調べる、ですかね」

「そうなりますか」

「では、採決を取ります。この世界の平均的な強さ。可能であれば最高位の強者についても調べる。これを目下の最優先事項にすることに賛成の人」

 

全員が手を上げる。

 

「では、可決です」

 

基本方針を固め、ギルドメンバーたちは少し話し合った後、数日は自由時間として───ほとんどは私室を整理するために───解散した。

 

 

 

ナザリック地下大墳墓第十二階層。

 

「フンフフ~ン♪」

 

ロイヤルスイートと呼ばれる階層は、ギルメンの私室や娯楽施設などで構成された階層だ。

 

その一室。

 

ギルメンの私室の一つで、それは一般メイドと呼ばれるレベル1のNPCに手伝ってもらいながら部屋の物を整理していた。

 

この部屋の主の名はるし★ふぁー。

 

至高の問題児であり、それはギルメン大好きなモモンガですら「正直あまり好きではない」と言わしめる程だ。

 

「るし★ふぁー様、これはどちらにしまいましょう」

「ん?あ、それはそっちに置いといてー」

「畏まりました」

 

るし★ふぁーに言われてメイドは言われた場所にそれを置く。

 

「お、あったあった」

 

整理のはずが、いつの間にか何かを探すことになったようで、るし★ふぁーはそれを取り出した。

 

「後は適当に片付けといて」

「畏まりました」

 

そして、それを持って私室を出て行った。

 

 

 

食堂。

 

「うめぇ・・・」

「何という美味しさ・・・」

「こんなに美味いものがあったとは・・・」

 

ギルメン三人が食事をして、そのあまりの美味しさに恍惚としていた。

 

「もがふががっ」

 

口いっぱいに含み、一心不乱に食べているギルメンもいる。

 

「ぶとうの風味と甘味を強く感じる。素晴らしいワインだ」

「この日本酒も味わい深いぞ」

 

他にも何人もギルメンがいる。

 

「お、お食事中失礼します!」

 

そこへ、「プレアデス」の一人ナーベラル・ガンマがやってきた。

 

急いでいたのか、肩で息をしている。

 

「どうした?」

「た、たっち・みー様とぷにっと萌え様が!」

「たっちさんがどうしたって?」

「ぷにっとが?」

「とりあえず、息を整えなさい」

「は、はい」

 

ナーベラルは息を整え、もう一度報告した。

 

「たっち・みー様とぷにっと萌え様がご出陣されました!」

「「「・・・・・・はぁ!?」」」

 

 

 

数分前。

 

円卓の間。

 

「うーん。家畜も飼ってないからそんなに余裕のある村じゃないのかな」

「という事は付け入る隙あり、ですか」

「あの、俺ご飯食べに行きたいんですけど・・・」

「あぁ、すみません。もうすぐ終わりますから」

 

死獣天朱雀とぷにっと萌えがぬーぼーを付き合わせ、村の様子を探っていた。

 

「おや、何をしてるんですか?」

「あ、たっちさん」

 

そこへたっちがやって来た。

 

そして水晶の画面の映像を見て目を見開いた───つもり───。

 

そこには、騎士のような者たちが村人を追いかけて虐殺をしているところだった。

 

「これは、どういうことですか?」

「いや何。我々の変化と干渉の最高のタイミングを探っていました」

「つまり?」

「襲われているのを見ていました」

 

ぷにっと萌えがそう言うと、たっちが拳を握る。

 

「何故、すぐに助けに行かなかったんですか?」

「そうですね。正直に言えば、先程までショックを受けていたんですよ」

「ショック?」

「はい。私はこれを見つけた時に「あぁ、これで価値がなくなったから別の村を探さないと」と思いました。人間が殺されているというのに、人間であれば吐いて同然の光景なのに、私が最初に思ったことはそんな損得勘定の物でした」

「私はまるで実験動物を見るかのように冷静に観察していたよ。思ったことと言えば「あ、これは致命傷だな」とか「健康そうな色の内蔵だな」だとかだったよ」

「俺はどうでもよかったです」

 

三人がそう言うと、たっちは拳の力を抜く。

 

「そして、その後も冷静に皆さんの意見を聞こうかと話していたんですよ。それでようやく異常性に気づいて混乱。冷静を保つために論議を交わして、今に至る、です」

「なるほど」

 

学者気質の二人が冷静になろうとしたのなら、論議をかわそうとするだろう。

 

「それなら、私も冷静になるために行動を起こしてもいいですよね」

「「「え」」」

 

アイテムボックスから超位魔法以外を封じ込める魔封じの水晶を取り出し、発動する。

 

封じ込められていたのは、転移門。

 

「あ、ちょっ」

 

止める間も無く、たっち・みーが転移門に入っていく。

 

それを見て、ぷにっと萌えはため息をついて頭をかく。

 

「仕方ないですね。朱雀さん、皆にこの事を伝えるのをお願いしてもいいですか」

「行くのかい?」

「はい。たっちさんなら戦闘は大丈夫でしょうが、交渉になったら私がいたほうがいいでしょう」

「分かった」

「じゃ、よろしくお願いします」

 

ぷにっと萌えもたっちを追って転移門へと入っていった。

 

「やれやれ、皆が怒るのが目に浮かぶよ」

「あ、あのー・・・俺は怒られないですよね」

「あぁ、可能な限り擁護するとも。だけど、ぷにっとさんが行っちゃったからなぁ・・・」

「うぅ・・・俺、ほとんど悪くないのに」

「ごめんね、巻き込んじゃって」

 

そして、ナザリック中にたっちとぷにっと萌えが出陣したことが直ぐに知れ渡った。

 

 

 

「弐式炎雷さんとぶくぶく茶釜さんは私と一緒に!ペロロンチーノさんはウルベルトさんと一緒に完全不可知化して上空で監視を!残りの人は後詰を考えて送り出してください!それと、アルベドに完全武装で来るように伝えておいてください!朱雀さんはたっちさんとぷにっと萌えさんを連れ戻したらお説教ですからね!」

 

モモンガの転移門に五人が入ったのを見送り、ギルメンの一人が口を開いた。

 

「じゃ、私がアルベドに伝えてこよう」

「じゃあ、後詰は我々が考えよう」

 

モモンガの指示に従い、ギルメンたちは動き出した。

 

 

 

「弱い」

 

たっちはそう呟き、村を襲っていた騎士だったものを見下ろす。

 

まるで始めからそうだったかのような綺麗な切り口で死んでいる騎士。

 

「私でも殺せるとは・・・レベル一桁くらいですかね」

 

ぷにっと萌えは騎士たちを植物の蔦のようなもので縊り殺している。

 

此処は村の広場。

 

そこに集められていた村人たちの前で、二人は一方的に殺していった。

 

「ぅ・・・」

 

ぷにっと萌えの持つ騎士の何人かはまだ生きているようで、うめき声を漏らしている。

 

「殺さないんですか?」

「えぇ。鎧を着ている事からどこかの国の騎士なんでしょうが、偽装かもしれません」

「なるほど」

 

たっちはぷにっと萌えの考えに納得する。

 

すぐにでも殺してやりたいところだが、偽装工作の可能性もある。

 

蘇生アイテムは試していないので、殺しても蘇生出来るかどうかも分からない。

 

それなら殺さずに生かしておいたほうがいいだろう。

 

そう思っていると、すぐ近くに黒い闇が出現した。

 

そして、そこからピンク色のスライムと忍者風のハーフゴーレムが現れた。

 

ぶくぶく茶釜と弐式炎雷だ。

 

「大丈夫っぽい」

 

ぶくぶく茶釜がそう言うと、さらに闇の中からそれは現れた。

 

七つの蛇が絡みついたような黄金の杖を持った死の支配者。

 

「言いたいことがやまほどありますが・・・用件は分かっていますね?」

 

我らがギルド長であるモモンガだ。

 

その声は、完全に怒っている時の声だ。

 

滅多に怒らないモモンガが怒っている。

 

それだけで、たっちとぷにっと萌えは少し後ずさる。

 

「すまない。村が襲われているのを見て・・・つい、飛び出してしまった」

「たっちさん一人では色々とマズイと思いまして・・・すみませんでした」

 

頭を下げて謝る二人に、モモンガはため息を付く。

 

「お説教は戻ってからですよ。それで、戦った感じはどうですか?」

「極めて脆弱です。恐らくはレベル一桁かと」

「私でも一方的に殺せたり、捕まえたり出来ていますから、その辺かと」

「なるほど。そいつらが特別弱いという可能性・・・いや、一方的にこの村を蹂躙できるからその可能性は皆無。防御は低いのに攻撃が高いという事は?」

「ないですね。わざと当たったら、逆に剣が粉々に砕けました」

「私は流石に砕けませんでしたけど、概ね同じです」

「ふむ」

 

モモンガは少し考えて、生き残った村人を見る。

 

「本当はもっと後でやるつもりでしたが・・・仕方ないですね」

 

骸骨の顔を晒しながら、モモンガは村人に近づく。

 

村人たちは震えながら、身を寄せ合う。

 

「初めまして、我々は「アインズ・ウール・ゴウン」。私はその長をしているモモンガという」

 

村人は反応せず、ただただ震えている。

 

困ったように首をかしげるモモンガに、ぶくぶく茶釜が突っ込んだ。

 

「いや、アンデッドが自己紹介をしても怖いだけでしょ」

「あぁ、なるほど」

 

モモンガはそう呟くと、たっちとぷにっと萌えを指差す。

 

「我々は彼らの仲間だ。彼ら───特に騎士の方───は正義感が強い人でね。この村が襲われているのを見つけて助けに来たようなんだ。それで、独断で動いたことについてのペナルティは後で話し合うとして」

 

たっちが肩を竦める。

 

「我々は貴殿らの味方だ。我々は貴殿らに害はなさない。それどころか守護しよう」

「そ、それで・・・わ、私たちに何をさせようと・・・」

「心配はいらない。我々が貴殿らに要求することは少ない」

 

要求、と言われて村人たちが息を呑む。

 

どんな要求を求められるのかと恐怖して。

 

「一つ、我々のことを口外しないこと。一つ、我々の質問に全て素直に答えること。一つ、我々と仲良くして欲しい。今の所は以上だ」

「そ、それだけ・・・ですか?」

「今の所は。だが殺したり、怪我をさせたりすることは絶対にしないと約束しよう」

「し、信用出来ません」

 

村長らしき人物がそう言うと、周りを見る。

 

「では、騎士たちを退治した報酬をもらいたい。そうだな・・・生き残っている村人×金貨百枚でどうだ?」

「そ、そのような大金。この村にはございません!」

「そうだろう」

 

モモンガは分かっていると言う風に頷く。

 

「だからこそ、先ほどの要求だ。この様になってしまった村から大金を払えるほど余裕がないことはすぐにわかるからな。ただでも構わないが、そっちの方が恐ろしいだろう?」

 

モモンガが笑い混じりにそう言うと、村長は頷いた。

 

「そ、それでしたら・・・」

「納得してくれたようだな。では、たっちさん、弐式遠雷さん。崩れた家に生存者がいないかどうかの探索を。遺体も掘り起こさないといけないでしょう」

「分かった」

「了解」

 

二人が崩れた家へと向かう。

 

「お待たせしました、至高の御方々」

 

そこへ、アルベドがやってきた。

 

「ぶくぶく茶釜、アルベドに後詰の事を聞いておけ。俺は情報を聞いてくる」

「あ、私も行きます」

 

ぷにっと萌えも付いてきて、村長らしき男の案内で彼の家へと向かった。

 

 

 

「なんじゃそりゃ」

 

モモンガは思わずそう呟いた。

 

ある程度の常識と呼べる知識を教えてもらい、地理について聞いた。

 

その結果、森はトブの大森林。

 

それを中心として、逆さのTの字を書いて区切った三つの国が近隣諸国だ。

 

左が、リ・エスティーゼ王国。

 

今いるカルネ村が所属する国だ。

 

右がバハルス帝国。

 

襲った騎士たちの鎧がそうだ。

 

下がスレイン法国。

 

偽装であれば、この国に決定だ。

 

遠くにもいくつか国があるらしいが、詳しくは知らないらしい。

 

そして、騎士たちの着ていた鎧から、おそらくバハルス帝国の騎士だろうとのこと。

 

「では、人間種以外のことをお聞きしても?」

「申し訳ありません。詳しいことは・・・ですが、この村の南にカッツェ平野という王国と帝国の戦場があり、そこでは常にアンデッドが彷徨っていると聞いております」

 

ぷにっと萌えの問いにそう答えた村長は、申し訳なさそうに頭を下げる。

 

つまり、周辺以外の場所の情報は知らないということか。

 

あまり使えないと言えなくもないが、知ってそうな人物はそれなりの知能があるだろう。

 

そんな相手に無知を晒すことがなくなったことを考えれば、今回のたっちの暴走も良い事だったと考えるべきか。

 

「では、次に・・・」

 

ぷにっと萌えが質問をしようとした時、モモンガに伝言が繋がった。

 

『モモンガさん。謎の部隊がそっちに向かってる』

『ウルベルトさんですか。数は?』

『四~五十人。武装はバラバラだが、全員同じ紋章がある鎧を着ている。傭兵っぽい。そしてそれを追いかける形で百人近くの魔法詠唱者部隊がいる』

『分かりました。傭兵っぽい部隊はそのまま通してください。魔法詠唱者部隊は一時的にほうっておきましょう。ですが、ペロロンチーノさんに合図をしたら爆撃できるように準備をお願いしてください』

『会うのか』

『えぇ。傭兵っぽい部隊恐らく味方でしょう。魔法詠唱者部隊は敵だと思います』

『分かった』

 

伝言を切ると、モモンガは口を開いた。

 

「村長、部隊がこちらに向かっているようです」

 

モモンガの言葉で村長が目を見開き、震えだし、縋るように此方を見てきた。

 

「ご安心を。仲良くしたいと言ったでしょう?守って差し上げますよ」

 

モモンガがそう言うと、ホッと息を吐いた。

 

「村民を一箇所に集めてください。そして村長は我々と共に」

「は、はい」

 

村長夫人が村中の人々を家に入れ、モモンガたちは村長と共に村の広場に立つ。

 

弐式炎雷は隠密を行って隠れ、たっちとぶくぶく茶釜とアルベドがモモンガとぷにっと萌えの前に立つ。

 

ぶくぶく茶釜が言うには、後詰として隠密系のモンスター三十とアウラとマーレがいるらしい。

 

最悪、勝てなさそうならこの村を捨てなければならないが問題はない。

 

どうせ情報は全て吸い上げた後。

 

出来れば姿を見られていない今のうちに逃げたいが、そうしないのはたっちが嫌がりそうだからしないだけだ。

 

待つこと数分。

 

地平線の向こうから砂煙が見え、そして部隊が見えた。

 

「襲い掛かって来た場合は、殺さずに無力化しろ」

 

アルベドがいるので、魔王ロールを行いながらそう言うと全員が頷く。

 

馬に乗ったそれらは、少し離れた場所で剣を抜いて向かってくる。

 

「はぁ・・・」

 

予想していた事なので、モモンガは遠い目をする。

 

「ぷにっと萌え。指揮は任せた」

「分かりました」

 

ぷにっと萌えが頷き、指示を出す。

 

「たっちさん、ぶくぶく茶釜さんは敵を通さないようにしてください。殺さないのなら倒しても構いません。アルベドはもし二人の壁を突破してきた時の護衛を」

「畏まりました、ぷにっと萌え様」

 

頷く二人とアルベドは、言われたとおりの布陣を取る。

 

「モモンガさん、まずは挨拶をお願いします」

「では、失礼して・・・集団標的(マス・ターゲティング)・睡眠《スリープ》」

「え」

 

ぷにっと萌えが驚きの声を出すが、既にモモンガが複数人に状態異常魔法を放った後。

 

そして魔法は面白いようにかかって魔法にかかった男たちが落馬する。

 

「たっちさん。彼らのレベルを」

「レベル30台が一人。後はレベル10台ですね」

「え」

 

たっちの答えを聞いて、やっちゃった感が否めないモモンガ。

 

『なんで言ってくれないんですか』

『いや、知ってるかなと思いまして・・・すみません』

『いえ、別にいいんですが・・・どうしましょう、攻撃しちゃいましたよ』

『まぁ、話し合えば大丈夫でしょう』

『そんな簡単に行きますか?』

『・・・・大丈夫ですよ、きっと』

 

たっちの言葉を信じ、ぷにっと萌えの凝視に気づかないふりをしてモモンガは口を開いた。

 

「双方、少々誤解があるようだ。話し合わないかね?」

「部下を魔法で攻撃しておいて何を言う!」

 

先頭の男がモモンガを睨んで怒鳴る。

 

ですよねー。

 

モモンガたちはそう思いながら、ぷにっと萌えが咳払いを一つ。

 

「我々は見ての通りの異形種。ですが、我々はこの村の人間を救った者たち。貴方がリ・エスティーゼ王国の兵士なのであれば感謝されど、攻撃を受ける謂れはないと思いますが?」

「何?」

 

先頭の男がたっちたちに隠れるようにして立っている村長を見つける。

 

村長は目が合うと、強く頷いた。

 

「そして、先に攻撃の意思を示したのはそちら。攻撃されるとわかっていながら何もしないというのはおかしな話でしょう?」

「む・・・全員、納刀!」

「ですが!」

「納刀!」

 

全員が男の指示に従い、納刀する。

 

「話し合いの準備が出来ました、モモンガさん」

「うむ」

 

おおように頷き、モモンガが頷く。

 

「初めまして、我々は「アインズ・ウール・ゴウン」。この村が襲われているのを見つけて、助けに来た者です」

 

男は村中を見回して尋ねる。

 

「他の住民は?」

「村長の家に集めてあります。守るのであれば一箇所に固めてあったほうが楽なので」

「なるほど」

 

男は顎に手を当てて少し考えると、馬から降りた。

 

「名乗りが遅れて申し訳ない。私はリ・エスティーゼ王国王国戦士長ガゼフ・ストロノーフだ」

 

村長が「王国戦士長」と呟いたので聞くと、なんでも周辺国家最強の戦士だという。

 

レベル30台で周辺国家最強か。

 

たかが知れているな。

 

そう思っていると、ガゼフが気を付けをした。

 

「この村を救っていただき感謝する。そして、早とちりで無礼を働き、申し訳なかった」

 

そう言い、頭を下げた。

 

「せ、戦士長!」

 

部下から声が上がるが、ガゼフは手を挙げて制止する。

 

「人外だろうと何だろうと、目的がどうであれ救ってもらったのだ。感謝するのは当たり前だろう」

「ほう?」

 

たっちから感心するような声が出る。

 

それはモモンガたちも同じで、このガゼフという男に好感を得る。

 

「そこでお聞きしたい。何が目的でこの村を救っていただけたのだ?」

「数千年前、我々はこの世界を統治していた」

「何?」

 

モモンガの言葉にその場にいる全員が───ぷにっと萌えたちも含めて───驚く。

 

「少々眠りについて、起きたら街が消え、森があり、不愉快なことが起きていた。だから、助けた。そしてその報酬として今の常識などを教えてもらう事と友好関係を築く。これが目的です」

「数千年前・・・気が遠くなる話だな」

「我々異形種には寿命がない。だから我々にとっては瞬きのような一瞬ですよ」

 

モモンガはそう言うと、村の外を見やる。

 

「それはそうと、ガゼフ殿。貴殿はバハルス帝国の騎士がこの辺の村を襲っているから来たのではないですか?」

「その通りだ」

「では、後ろの彼らに見覚えは?」

 

ガゼフたちが後ろを向き、村を囲むように浮かぶ天使たちを見た。

 

「天使・・・スレイン法国の特殊部隊群「六色聖典」か!」

「なるほど。その「六色聖典」とは?」

「詳しくは知らないが、裏で暗躍するスレイン法国の切り札だ」

「では、敵ですね?」

「その通りだ」

「そうですか・・・」

 

そう言い、モモンガはウルベルトに伝言を送った。

 

次の瞬間、空から光の雨が降り、村の外に展開する全ての天使が消え去った。

 

「なっ・・・」

 

更にモモンガはアウラに伝言をし、外に展開する連中を殺さずに捕らえ、数人はこちらに連れてくるように命じる。

 

ナザリックへの輸送はウルベルトの転移門を使うので問題ない。

 

唖然とするガゼフたちを他所に、モモンガは口を開いた。

 

「では、戦士長殿。村長殿の家で今後のことをお話しましょう」

 

 

 

ガゼフを見送り、モモンガは息を吐いた。

 

ガゼフにはスレイン法国特殊部隊の隊員数人と騎士に化けた兵士を数人引き渡した。

 

他は死んだか跡形もなく吹き飛んでお渡しできないと伝えたら、「あれではそうなるだろうな」と苦笑いして頷いた。

 

そして、ガゼフには口止めを依頼し、ガゼフは王などの信頼できる者以外には話さないと誓って王都へと戻っていった。

 

「では、村長殿。我々から復興の支援をしたいのですが・・・」

「よ、よろしいので?」

「もちろんです」

 

モモンガが頷くと、村長は「おぉ」と感激したように崩れ落ちる。

 

「これからは我々が安全を保証します」

「ですが、ですが、我々には貴方がたにお渡しできるものは何も・・・」

「いいえ、たくさんありますよ」

 

モモンガは崩れ落ちた村長の肩を掴んで立たせる。

 

「我々に人としての光を見せていただきたい。眩しいほど綺麗な光を」

「そ、そんなことで・・・」

「えぇ、そんなことでいいんです。何せ我々は異形種ですからね」

 

いたずらっぽく笑い声を漏らすと、村長は泣きそうな顔で笑った。

 

 

 

第五階層「氷河」拷問室「真実の部屋(Pain is not to tell)」。

 

そこの主人は、六本の触手を持つタコの頭部の溺死体のように膨れ上がった白い体の異形。

 

ニューロニスト・ペインキル。

 

ナザリック特別情報収集官。またの名を拷問官だ。

 

ネイルアートを施した四本指で拷問器具を撫でながら、送られてきた愚者たちを眺める。

 

「どれがいいかしらん」

 

全員が動けないように手足を縛られ、猿轡を噛まされている。

 

動かれては厄介だし、舌を噛んで自害など以ての外だ。

 

ニューロニストは、初仕事とも言うべき今回に相応しい相手を拷問するつもりだ。

 

何せ、拷問を見たいと至高の御方々がなんと四人も見学しに来てくださったのだ。

 

あまりお待たせするのも不敬。

 

だが、お見せするに相応しいであろう獲物のヨーコーセーテン隊長は絶対に最初に尋問してはいけないと言われているのだ。

 

他は似たような連中ばかり。

 

「誰がいいかしらん・・・あらん?」

 

悩んでいると、一人だけ異色の人物を見つけた。

 

「ふふふ。いいわねん、その顔ん」

 

小物っぽくて・・・いい声で歌ってくれそうねん。

 

ニューロニストは笑みを浮かべ、それを引っ張り出した。

 

初仕事は大成功。

 

獲物は面白いようにぎゃーぎゃーと騒ぎ歌う。

 

何やら「おがねっおがねあげましゅっ」と歌っていたが、ニューロニストは笑いながら続けた。

 

この世の全ては、至高の御方々の為だけにあるのだから。

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