オーバーロード~不滅の心臓~ 作:ノック
周辺国家最強だというガゼフがレベル30台だと判明した。
なので、モモンガは外出の際に必ずレベル70以上のシモベを二体連れて行くのと、行き先と外出を必ずギルメンへ伝える事と名簿にチェックを入れること。
外出中は目立つことは絶対しないこと、伝言には必ず出ること、伝言が来ても出られない時はその日のうちに必ず返事をすること、必ず
まず最初に外出したのはブルプラだ。
名簿が出来るまで待つことにはなったが、待っている間にハンゾウを二体召喚し、名簿が出来るなりトブの大森林に行くと言って、指輪を置いて出て行った。
それから何人も外出していった。
その後、ブルプラが外出する前に、決めておいたナザリックの移転場所に移転することになり、外出しているギルメンたちに手分けして伝言をしてその旨を伝える。
「ブルプラさん了解でーす」
最後の一人が終わり、モモンガは頷く。
「では、ナザリックを移転します」
ギルド武器を握り、コアの力を使う。
目の前に世界地図が出現し、場所を指定した。
「はい、終わりです」
「え、もう?」
「早くね?」
地響きもなにもなく、移転が終わり拍子抜けする一同。
「では、外に出て見ましょうか」
モモンガの言葉にギルメンたちは頷き、指輪で一瞬で表層に転移する。
表層と周囲100m以内はギリギリ外出ではないので、何の問題もない。
各々、飛行またはそれに準ずる行為をし、少し離れたところでナザリックを見る。
「うん、いい感じですね」
転移門のような巨大な黒い渦の中に浮かぶナザリックの表層。
眼下には雲海が広がっている。
高度12kmに、ナザリックは存在した。
「この高度まで来れる生物もいないでしょうし、何の問題もありませんね」
「うん。これなら攻め込まれる心配もないだろうし」
「元あった場所がどうなっているかも確認しないとな」
「それは、ブルプラさんにお願いしようぜ。近くにいんだろ」
「やまいこさんでもいいんじゃね?カルネ村にいるだろ」
「そうするか」
ギルメンたちは色々と話しており、モモンガはそれを無言で眺めていた。
「どうしました?」
「あぁ、たっちさん」
たっちが話しかけると、モモンガは笑みを浮かべた。
「もし、一人できていたらどうなっていたんだろうって考えちゃいまして。終了一ヶ月前まで、名実ともに俺一人でしたから」
「モモンガさん・・・」
「でも、今は違う」
モモンガは両手を広げて静かに言う。
「ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」は誰一人欠けることなく、この世界にいる。中にはリアルに帰りたい人もいるかもしれない。でも、今は・・・今だけはそうだ」
いつの間にか静まり返るギルメンたち。
「るし★ふぁーさん、ウルベルトさん、ベルリバーさん、ばりあぶる・たりすまんさん。この四人が前に言っていましたよね。世界の一つぐらい征服しようって」
「モモンガさん、まさか・・・」
たっちが少し驚いたような、感心したような声を漏らす。
「ギルメンが、リアルに帰りたいギルメンが、リアルに帰ったとしても。ずっと誇りに思えるように。アインズ・ウール・ゴウンを永久不変の伝説として名が残るように・・・誰もが成し遂げたのことのない偉業を成し遂げましょう。困難だろうと、何があろうとも、アインズ・ウール・ゴウンなら不可能はありません」
モモンガはそこで言葉を切り、息を吸って、力強い口調で宣言した。
「しましょう。世界征服」
魔王の宣言。
それに付き従うのは神すら超越せし四十の異形たち。
そしてそれらの命令なら犠牲になることすらこの世で最高の幸福と言わんばかりの忠誠を捧げる数千の化物たち。
神すら超越せし異形たちは空中で胸に手を当て、頭を垂れて声を合わせて言った。
「「「仰せのままに。我らが王よ」」」
外出していたギルメンたちを呼び戻し、世界征服を発表した。
すると、外出していたギルメンたちは目を瞬かせた。
「世界征服?いいじゃんいいじゃん!やろう!」
「今のままだと自然はいずれ消えます。その前に世界を我々の物にしましょう!」
「面白そうじゃん」
「世界征服かぁ。うんうん、楽しそうだ」
「では、世界征服に賛成の人は挙手を願います」
肯定的な意見が出て、多数決を取る。
全員が手を挙げ、モモンガは頷いた。
「全員賛成ということで、世界征服をしましょう」
そして世界の命運は決まる。
「作戦立案はぷにっと萌えさん、お願いします」
「分かりました。実は既に一つ考えてあるんです」
「流石、アインズ・ウール・ゴウンの諸葛亮孔明」
「それでそれで?どんな作戦?」
「そうですね。まずは・・・」
ぷにっと萌えが考えた作戦。
それは。
「ラララ・ミントさん」
「うーい」
吟遊詩人のような服を着た蟷螂人とでも言うべき異形が軽く手を上げる。
「ミンストレルをとっていましたね。適当にアインズ・ウール・ゴウンを賛美する歌を作って、とりあえず帝国で歌いまくってください。お金稼ぎも兼ねていますが、お金よりは歌の方を重視してください」
「りょうかーい」
「次にあまのまひとつさん」
「ん」
「とりあえずギルメンの倍の数の人間化アイテムを作ってください。材料は宝物庫から出したいと思いますが・・・」
ぷにっと萌えがモモンガを見る。
「そうですね・・・いずれ必要になるでしょう。必要経費です。皆さんはどう思いますか?」
「人間の街にも行きたいし、いいんじゃね?」
「そうだな。人間化アイテムならデータクリスタルだけで、レア度が低い金属を使えばいいだろ」
「それで行こう」
全員が賛成の意を示したので、人間化アイテムを作ることが決まる。
「次は音改さん」
「ほいな」
「王国の王都に商人として行ってください。使用人が居ないと舐められると思いますので候補は・・・そうですね、私としてはセバスと戦闘メイドらへんを推薦したいですね」
「セバスと戦闘メイドなら問題ないだろう。レベル100とレベル50以上だからな」
「シズは許可できない。彼女はナザリックのギミック全てを知っている」
「エントマもだな。観察力がある奴が居れば表情が動かないと気づく奴がいるかもしれない」
「ユリも駄目かな。首が落ちたら言い逃れできない」
「オーレオールは絶対に無理。彼女は転移門の管理がある」
「となると、ナーベラル、ルプスレギナ、ソリュシャンか」
ギルメンたちは、候補を作ったギルメンたちに目を向ける。
「ナーベラルは・・・割と融通が利かない面がある。ぶっちゃけ、演技とか無理」
「ルプスレギナは演技は出来るな。でも、絶望の表情とかが好きだから、ちょっとなぁ・・・快活な性格にもしてあるから無理かな」
「となると、ソリュシャンですか」
「彼女は完璧ですよ。演技とかも出来るし、暗殺者ですから逃げれる可能性もあります」
「じゃあ、ソリュシャンで」
「異議なーし」
音改の同行者が決まる。
ぷにっと萌えはその後もギルメンたちに様々な指示を与える。
計画の詳細は知らされていないが、第一段階の目標は知らされた。
「とりあえず国を一つ傀儡国家にします。本格的に動くのはその後ですから、それまで大きく動くのはやめてくださいね。特にるし★ふぁーさん」
「え、俺?」
「防衛組、監視は頼んだぞ」
「任せろ」
るし★ふぁーは、ナザリックで低位のゴーレムを作成する事を頼まれたためにナザリックから出ることは少ない。
だが、問題児なので監視の為に何人ものギルメンを割いていた。
因みに、防衛組の防衛は、るし★ふぁー防衛組のことである。
「では、次に大事な事を言います」
ぷにっと萌えの言葉にるし★ふぁーですら真面目な顔で瞬時に聞く準備を整えた。
「全員に世界級アイテムの装備を提案します」
「「「なっ」」」
全員が絶句する。
世界級アイテム。
ユグドラシルで最高位のアイテムだ。
それをギルメンたちに持たせようと提案したのだから、驚きもするし、絶句もする。
「この世界に来たのは我々が最初だと思いますか?」
「なるほど。先客がいる可能性もあるということか」
「つまり、世界級アイテムを持つプレイヤーが?」
「もしくはプレイヤーの遺産の中に世界級アイテムがあるか、だな」
「
「後はアンデッドにも通用する
「ははは、なんだそれ。ありそうでこえぇわ」
「あったら叫ぶか。クソ運営が!ってよ」
軽口を叩くが、その顔は全く笑っていない。
「となると、レベル100NPCにも持たさないといけませんね」
「そうですね。とりあえず、外に出る可能性があるNPCだけにしても・・・合わせて50ですか」
「大量だな。まぁそれでも何個か残るけど」
「絶対に奪われないようにしろよ」
「わかってるって」
公式チートである世界級アイテムは世界級アイテムかワールド・チャンピオンの次元断層をタイミングよく発動しない限り防げない。
「では、レベル100NPC分も含めて世界級アイテムを持たせるという事で」
「「「異議なし」」」
世界級アイテムを出すことも決まり、ぷにっと萌えの計画の準備が確実に進んでいく。
「以上です。質問がある人はいますか?」
ぷにっと萌えの問いに全員が首を横に振る。
それを見て、モモンガが口を開いた。
「では、解散しましょう」
そして、動き出した。
数日後。
バハルス帝国帝都アーウィンタール。
中央に皇帝の居城である皇城があり、そこから放射状に国の重要施設が並ぶ形の帝国の首都だ。
そこに吟遊詩人一行がたどり着いた。
「うっへー。しょっぼぉ」
緑髪の吟遊詩人風の男が、帽子のつばを持ちながら王都を眺めていた。
「ラント様、あまりそのようなことは言わない方がよろしいかと」
「おー。そうかねぇ」
それを嗜めたのは、淡い紫が混じった銀髪の美女。
もう一人、羽の髪飾りを付けた銀髪の美女に似た───恐らく姉妹だろう───銀髪の少女がコクコクと頷いていた。
「さーて。お仕事お仕事っとぉ」
緑髪の吟遊詩人は、ラララ・ミント。
共の銀髪の姉妹は、ユグドラシル金貨で召喚した傭兵モンスターだ。
今は、人間化アイテムと気配を消すアイテムを装備させているのでただのか弱い人間にしか見えないが、それでもレベル70以上の実力はある。
何故、こんな高レベルのモンスターを連れているかというと、仕事でも外出と見做され、レベル70以上の共を二体連れて行かないと駄目だったためだ。
ミントは、ちょうど歌手と踊り子が必要だったのでハルピュイアたちを選んだのだ。
「んじゃー。広場に行って歌いますかっとぉ」
「はい」
ミントの言葉に頷き、ハルピュイアの二人はミントと共に広場へと向かっていった。
そして時同じくして。
豪華な馬車がリ・エスティーゼ王国王都リ・エスティーゼへと入った。
その中には、八重歯が似合う茶髪の青年と、剣を思わせる老齢の執事。そして天上の美を体現したが如くの美貌を持つメイドが乗っていた。
「アラタ様、まずはどこに参りましょう」
「せやなー・・・まずは此処にある商会を回らんとな。筋は通さんとあかんさかい」
「畏まりました」
八重歯の青年こと音改は笑みを浮かべる。
「この世界の商人がどんなもんか見てやるさかい。楽しみや」
くつくつと笑う音改は、まるでネズミを前にした蛇のような雰囲気を持っていた。
リ・エスティーゼ王国城塞都市エ・ランテル。
帝国との軍事拠点となるエ・ランテルは、三つの壁に囲まれた都市だ。
「冒険者とは名ばかりのモンスター専門の傭兵ですね・・・」
「ガハハハハ!そう気を落とすなって!」
「キヒヒ。そうそう。モンスターを殺して金をもらえる。いい仕事じゃねぇの」
「こういったほうが楽だな」
「色々あって目移りしちゃうなー」
「だよね!」
小柄でひ弱そうな男性が銅で出来たプレートを手の中でいじり、大柄で豪快な男性が大口を開けて笑う。
真っ黒なフードを深くかぶった怪しい男が狂気的な笑みを浮かべながら大柄の男性に同意する。
格闘家風の男性が少々的外れな事を言い、見慣れない法衣を着た女性と修道女風の女性が街のものを見てわいわいと騒いでいた。
小柄な男性はぬーぼー。
大柄な男性が武人建御雷。
怪しい男がばりあぶる・たりすまん。
格闘家風の男性は獣王メコン川。
法衣を着た女性がやまいこ。
修道女風の女性は餡ころもっちもちだ。
全員は先ほど冒険者に登録したばかりの新米冒険者だ。
それでも、注目の的になっているのは全員の装備が見たこともない程立派なこと。
そして、やまいこと餡ころもっちもちがとてつもなく美しかったからだ。
やまいこは、メガネをかけて長い髪をそのまま垂れ流しており、餡ころもっちもちは短くカットされた髪を後ろで束ね、快活な印象を与えている。
六人の共通点は、全員が黒髪に黒い瞳だということだ。
「翻訳アイテムを作ったのはナイスな考えでしたね」
「だな」
提案したぷにっと萌えと作ったあまのまひとつには感謝しかない。
「おーい、二人共。置いてっちまうぞー」
メコンが呼ぶと、女性二人はパタパタと駆け足で付いてくる。
「タリスさん、暴走だけはやめてくださいね」
「あぁ、大丈夫さ」
「ガハハハ!」
狂気的な笑みで答えるたりすまんに、大口で笑う建御雷。
常識人である女性二人は盛り上がって話を聞かない。
貧乏くじを引いた。
ぬーぼーはそう思いながらも、勧められた宿屋へと向かっていった。
ナザリック地下大墳墓第十二階層にあるギルメンの自室の一つ。
そこでぷにっと萌えはお願いをしていた。
「ボクの絵を売りたい?」
「はい。お願いできますか?ガーネットさん」
ガーネット。
吸血鬼系の最高位種族であるザ・ワンをとっている魔法詠唱者。
とある条件下であれば、ゲーム内屈指の実力者であるたっち・みーや魔法職最強であるワールド・ディザスターを持っているウルベルト相手にすら完封勝利できる程の実力を持っている。
とはいえ、その条件を満たせる時間が短いためにかなり実力に波があるが・・・。
「ホワイトブリムさんに頼んでみたらどうだい。彼も絵が上手いだろう」
「それも考えましたが、この世界には合わないので没になりました」
「そうかい」
これだけを伝えるなら、他のギルメンでも構わない。
だが、ガーネットはクセの強いギルメンの中でも特にクセが強い。
その上、頭も良い───流石にぷにっと萌えや大学教授の死獣天朱雀ほどではないが───ので世話がない。
それに、彼に絵を頼む最大の理由がある。
「ホワイトブリムさんもダヴィンチの再来と言われる貴方が一番だって言っていましたよ」
「はっ!モナリザを描いている時に言われるとは・・・皮肉にも程があるね」
リアルで世界最高と謳われる画家が彼なのだ。
彼の描く絵は最低でも数千万で売買され、富裕層で彼の絵を持っている事が一種のステータスでもあった程だ。
「この世界でまた頂点を極めてみませんか?」
「頂点・・・」
ガーネットは筆を弄びながら目を細める。
「・・・・・悪いけど頂点になんて興味はない。だが」
「だが?」
「魔王の城に調度品は必要か」
「はい。その通りです」
「条件がある」
「なんでも言ってください」
「この世界の絵を見たい。美術品ならなんでもいいけど、一番は絵だ」
「分かりました。用意します」
「頼んだぞ。絵は適当に・・・いや、とりあえずこれを持っていくといい」
そう言われて渡されたのは葉と数種類の果物が入った籠が描かれた絵。
「確かカラヴァッジョの果物籠でしたか」
「よく知ってるね。そのまま」
ガーネットはそう言うと、ぷにっと萌えにそれを持たせたまま絵画に何かを書き込む。
「サインですか」
「この世界で果物籠を知っている存在はいないだろうからね」
もし居たとしたらそいつはプレイヤーだ。
「用件が済んだのなら出て行くといい。まだやることがたくさんあるのだからね」
「了でーす。あ、売る時に相手の感想も聞くように言っておきますね」
「任せるよ」
ぷにっと萌えは渡された絵をアイテムボックスに入れ、部屋を出た。
次にすることを考えながら、円卓の間へと向かっていった。