四重奏の引き金(カルテット・トリガー)   作:エキストラ

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勉強しなきゃいけないのに、書いちゃった。


プロローグ②

 自己紹介というか名前さえ言ってなかったな。貸し一なんて言っておいてなんだか恥ずかしい。なんだろう、ここ数十分で恥を大量生産している気がする。まあ、深くは考えないことにしよう。……ここで反省しないからいつまでも成長しないんだろうな、うん。少しは心に留めておこう。

 よし、()()()()()()も結果的に今回で終わらせることが出来たし、さっさと帰ろう。開発室へと足を運びながら今日使ったものについて考えをめぐらす。今回、防衛任務がてらに実験していた試作品の()()()()は俺が独自に開発中のトリガーだ。開発といっても、既存の基本トリガーであるレーダーの性能を拡張させようと勝手にいじくっただけなんだけど。

 既存のものと比べて、改良できたとこは精度だけだったな。レーダー範囲内だったらトリオンであろうとトリオンでなかろうと、全てを把握することができる。先ほど、隠れていたクサナギくんを発見できたのもこのトリガーのおかげである。いやあ、持ってて良かったレーダー(改)!

 ……そんで改良出来なかったとこ、いやむしろ悪化してしまった改悪点は……。うん、すっげぇある。まずレーダー範囲がかなり狭い。ぶっちゃけレーダー使うより直接見たほうが早いんじゃないかってくらいだ。もちろん死角になってるとこをノータイムで確認することはできるが、それを差し引いても狭い。

 次に、サブトリガーを()()使用してしまうこと。レーダー範囲が狭いのでその機能を使用するために前線に出なければならない。っていうのに戦闘に使えるトリガーはメインの一つだけ。欠陥にもほどがある。これは元々基本トリガーのレーダーの機能を拡張させるためにサブトリガーの枠をつぶしてしまったことが原因だろう。

 そんでもって、最大の問題がコスト。トリオン消費量がそれはもう尋常じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にしか使えないくらいだ。他の人ではトリオン体に換装してすぐに活動限界になるだろう。

 ようするに、精度を高めることしか考えなかった結果、それ以外の部分が笑えるほど低下したのである。ぶっちゃけ、メリットに関しても、それオペレーターいればよくね? となってしまう。費用対効果を考えれば確実にマイナスだ。開発室の雑用の合間に作ったとはいえ、かなりの時間を無駄にした。……まあ、トリガーの調整を自分一人で出来るようになったと思えば無駄じゃなかった。無駄じゃ……なかったはず。はぁ……。

 

 

 そうこうしているうちに開発室にたどり着いた。

 

「お疲れ様です。防衛任務もとい試作品のテスト終わらせてきました」

「お疲れ様。結果はどう?」

 

開発室に入るとともに挨拶する。すると部屋にいた雷蔵さんがモニターの前で作業中のまま確認してきた。

 

「全然でした。自分で言うのもなんですけど、実用性皆無です」

「そっか。改良はまだ続けんの?」

「いえ、実用化を狙うなら根本から見直しが必要になるので諦めることにしました。正直改良しなくても十分な性能ですし」

 

 改良し始めたときはここまで使えないものに仕上がるとは思わなかった。こんなことになるならもっと別のアプローチをしていれば。後の祭りってやつか。ちょっと違うような気もするけどまあいいや。

 

「そういえば、鬼怒田さん来てませんか? この後会う約束してたんですけど」

「さっきまでここにいたんだけど、急用だとかで出て行ったよ」

 

まじか。メッセージでも送ってまた今度、時間作ってもらおうかな。うーんと……。あれ?

 

「鬼怒田さんからのメッセージきてました。ラウンジ行ってきます」

 

 いまだモニターと睨めっこ中の雷蔵さんは体勢を変えずに軽く手を振った。俺なんかでは手伝うことすら出来ない難解な作業なのだろう。軽く頭を下げ退出する。

 さてメッセージでは、とりあえずラウンジに来てくれとしか書いてなかったけど急用はもう終わったのかな? 待たせてるかも知れないし急がなくては。

 

 

 ラウンジにはちらほら人がいる。まだそんなに遅い時間でもないしこんなもんか。ええと、鬼怒田さんはもう来てるかなっと。

 きょろきょろと周りを見渡していると、不意に後ろから名前を呼ばれた。

 

「吉良くん、あなたが吉良英雄くんであってるのよね?」

 

振り返るとそこには俺より少し身長の低い同じ年齢と思われる女の子がいた。

 

「そうだけど、君は?」

「草薙愛佳。あなたのオペレーターになるよう鬼怒田さんに頼まれたの。気軽にアイちゃんと呼んで」

 

……早く鬼怒田さん来ないかな。

 

 

 ・・・・・・

 

 

ラウンジに着いたばかりの吉良くんと二人用のテーブルに座り、私がここに来た理由を説明した。

 

「鬼怒田さんは今日はもう来られないけど、こっちの用事に関しては俺と君の二人で十分だから、済ませておいてってこと?」

「そうよ。私がオペレーターを担当することさえ伝えれば、他のことは吉良くんが教えてくれるともおっしゃってたわ」

 

 私が直接教えてもらったのは、私に吉良英雄という隊員がこれから作るチームのオペレーターを担当してくれということのみ。詳しい話は今日聞かせてくれる予定だったのに。

 

「では、改めて。はじめまして私は六頴館高校1年、草薙愛佳よ」

「ああ……。えっと、はじめまして三門市立第一高校1年、吉良英雄」

「知ってるわ。さっき鬼怒田さんからあなたの資料もらったのよ。とりあえずこれに目を通しておけってね。まだ顔と名前くらいしか確認できてないのだけれどね」

 

 これを受け取ってすぐにラウンジに来たから、まだ全部見れてないのよね。……それよりもどうしたのかしら。何だか落ち着きがないように見えるけれど。同い年の女の子と二人きりでいるのが恥ずかしいだとかそんな理由? まあなんでもいいわ。

 

「資料とか貰ってんなら自己紹介しなくても良かったじゃん……」

「そんなことないわよ。自分の事を勝手に知られているのを不快に感じる人もいるでしょう? 念のためよ」

「そういうもんか」

「ええ。納得してもらえたところで、私について知りたいこと確認しておきたいことはある? 必要なことなら何でも教えてあげるわよ」

「特にないよ。オペレーターやってくれるってんならそれで十分だし」

「あら、つまらないわね。ならこれを見ながら質問してもいいかしら。ちょっと気になることもあるの」

 

 名前と顔のほかに確認していたこと、パラメーターについて。これには目を疑ったわね。資料のミスとも考えたけれど。

 

「答えられる範囲なら別にいいよ」

「ありがとう。それじゃあさっそく、何故今までエンジニアの雑用なんてやっていたの? これほどのトリオン量なら即戦力ではないかしら」

 

 この資料によれば彼のトリオン量は現ボーダー隊員トップ、次点の二宮隊員の約二倍の数値と記されている。

 

「それはね。単純になるべく戦いたくなかったから。なんか怖くない? 未知の敵との戦闘とか」

 

 ……なんだか気軽に答えてくれたわね。ひょっとしたらトラウマを抱えてるかも知れないとも考えてたのだけど。まあ結局、今回チームを作ろうとしている時点でその可能性は低かったかしら。

 

「……まあ、そうよね。強いからといって恐怖しないとは限らないわね」

「俺強くないよ?」

 

……え? 聞き間違いかしら。それとも謙遜しているのかしら。そんなことする人には見えなかったけれど……。

 

「吉良くん、あなたそれほどのトリオン量で強くないと言ってるの?」

「いや、そりゃトリオン量に関しては我ながら引くほどあるけどね。戦うってんなら別だよ。センスがまるでないからさ」

「センス?」

「そう、センス。アタッカーやると隙を突かれまくってシールド頼りの防御一辺倒で反撃できなくなるし。ガンナーとかスナイパーやったら何故か全く狙いに当たらないしで散々な結果だったよ。唯一なんとか戦闘になるのはシューターだったな。それもトリオン量にものをいわせた数撃ちゃ当たるの物量戦法しかとれないけど」

 

……あら、資料にも書いてあるわ。でもそれを差し引いても戦闘員として望まれているのよね。ということはシューターとしては認められているのかしら。

 

「でもそれなら、どうして今チームを作ることになったの? 戦いたくないのでしょう?」

「ああ。それはね。ええと……ね」

「言いたくないことなら強要はしないわよ。気にはなるけど……」

「いや、話したくない訳じゃないんだけど、どこから説明したらいいかなって。長くなるけど最初からでいい?」

「構わないわ。お願い」

「俺の父さん金持ちなんだよ、社長やっててさ。それでここのスポンサーでね。そのコネを最大値利用して、戦闘はしたくないけどトリガーは欲しかった俺は頼んでみたんだよ。『戦闘用のトリガーは欲しいけど、エンジニアやりたいです』ってさ。でいろいろ話し合って、条件付きで了承してもらえたわけだよ」

「ちょっと質問してもいいかしら。戦闘用のトリガーをほしがったのはどうして?」

「それはあれだよ。もしものときに自分の身は自分で守れるようにしたかったから。利己的すぎるとは思うけど、他人じゃなくて自分が守れれば良かったんだよね」

 

 なんとも言いづらい……。ここまで正直に話してくれるなんて。いや、少し笑いながら話しているところを考えると開き直っているだけかも知れないわね。

 

「そう。話を遮ってしまってごめんなさい。続けて」

「おっけー。それで条件付きで了承してもらえてね。その条件ってのが『開発室で利益になること、鬼怒田さんの役に立つこと』になったわけ。もしダメだったらチームを組んでA級隊員を目指せってさ。これには期限があったんだけど、それが今日なんだよ」

「なるほどね。つまり、あなたは開発室で利益にもならず、鬼怒田さんの役にも立てなかったのね。可哀想に」

「はっきり言うね……。本当なら今日鬼怒田さんにこれまでの成果として改良してたトリガーを見てもらう予定だったんだよ。その成果で決める約束のはずだったんだ」

「でも私に声がかけられていたってことは、成功しそうになかったのでしょう。本当に可哀想ね」

「あんまり可哀想を連呼しないでくれる? 惨めな気持ちになる」

 

少し言いすぎちゃったかしら。それにしても不利な条件を飲んだのね。

 

「そんなに落ち込まないで、揶揄っただけよ。ごめんなさい。でもどうしてそんな条件にしたの? 吉良くんがどんなに役に立ったとしても、鬼怒田さんがダメと言えばそれまででしょう。あなたに不利じゃない」

 

私が聞いてみると、彼はあっけらかんとした口調で言った。

 

「別に良かったんだよ、戦うことになってもさ。どうしてもエンジニアやりたかった訳でもないし。出来れば戦いたくないってだけだから。それにA級目指せってのも、あくまで努力しろってだけで何が何でも絶対にならなくちゃいけない訳でもないし」

 

怠惰というか消極的な人のようね。同じ隊になる人としてはどうなのかしら。

 

「……そうなの。やっぱり積極的に行動するつもりはなさそうね」

「うん、まぁね。隊員もやる気満々で絶対A級になる、みたいな人入れちゃうと悪いから募集じゃなくて、適当な人に声かけようかな……。戦闘員は他にもいたほうが通常任務が楽になりそうだし……」

 

隊員が増えても隊に見合った任務を担当することになるだけでそこまで楽になるとは思えないけれど……。黙っておきましょうか。

 

「他の隊員ね。スナイパーなら心当たりがあるわよ。まだC級……というかこれから入隊するのだけれど。断られる可能性は考えなくていいわよ」

 

隊員にさえなれたらそれでいい、なんて言ってたし断らないでしょう。

 

「……草薙……C級かぁ……」

「あら? どうかしたの?」

「大したことじゃないよ、うん。それじゃあ、その人にしよう」

「そう? ならいいわ。声かけておくわね」

 

なんだか様子がおかしいわね。まぁ初対面だし、もともとこういう人の可能性もあるわ。気にすることもないでしょう。

 

「あとアタッカーが欲しいな。バランス良くなるし。こっちもC級から探そうかな」

「それはどうして?」

「だってさ、今B級でソロってことはチーム組むつもりがないか、組みたくても組めないかでしょ? だったら、青田買いって訳でもないけど良さそうな子を選んでスカウトすればいいかなって」

 

……やけに積極的ね。それっぽいこと言ってるけれど、本当かしら?

 

「……最初にC級の勧誘を提案した私が言うのもどうかと思うけれど、もしかしてスカウトした隊員が全員B級に上がってからチームを作るつもり? それまではチームバランスが悪いとか言って誤魔化して時間を稼ぐ、なんて考え?」

「正解。良くわかったね。面倒だから出来るだけ先延ばししようかと思ってさ」

 

大丈夫かしら、この人。初対面だけどクズ人間と断定して問題なさそうね。

 

「はぁ……。別にいいわ。理由はどうかと思うけど、やる事には賛成よ。明日はまず二人でアタッカーの訓練を見学しましょう」

「うん。良さそうな人をピックアップしておいて、訓練が終わったらスナイパー候補の人と合流。で、三人で勧誘するアタッカーを決める。こんなながれかな」

 

とりあえず、今決めるべき事はこのくらいかしら。細かいことは明日でも大丈夫よね。行き当たりばったりも悪くないわ。

 

「うん。今日はここまでかな。明日の入隊式が始まるまでにどんなアタッカーが欲しいかお互いに考えておこう」

「わかったわ。……そうね、入隊式の始まる30分前にここで集合しましょう」

「え? 早くない? 5分前の現地集合でいいでしょ……」

「いいえ。チームとしてアタッカーに求めるものは共有するべきだわ。となると事前の打ち合わせは必須よ」

 

吉良くんはあまり気にしてないみたいね。でもこれから一緒に行動するのだから、誘う人はしっかり考えるべきよね。

吉良くんは気怠そうに頷いた。

 

「わかったよ。30分前にここね。……今日はもう終わりでいいよね?」

「……帰りたいのね? 重要なことは決めたからいいわよ」

 

今日は任務もあったらしいし疲れているのかも知れないわね……。ちょっと配慮が足りなかったかしら?

 

「じゃ、また明日」

「ええ。さようなら」

 

そこで歩き出そうした吉良くんは、動きを止めこちらを見て口を開いた。

 

「言い忘れてた。これからよろしく」

 

こちらを向きつつも視線は揺れている。

……もしかして、照れてるのかしら。

 

「ふふ。……こちらこそよろしくね」

 

最後にほんの少しだけ好感度が上がったわね……。

 




やっぱり文章書くのって難しい。後半、会話文ばかりで地の文での描写少ないし。

ちなみに最後に上がった好感度は次回で元に戻る予定です。
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