煉とクルゼレイ・アスモデウスが一触即発状態のとき、そこに転移用魔方陣が現れ、そこから、魔王サーゼクス・ルシファーが現れた。サーゼクスを視認したクルゼレイは憤怒の表情となる。
「サーゼクス!忌々しき偽りの存在ッ!直接現れてくるとわなッ!貴様が、貴様らさえいなければ、我々は・・・・ッ!」
怒るクルゼレイにサーゼクスは説得するかのように話しかける。
「クルゼレイ。矛を下げてはくれないだろうか?いまなら話し合いも用意できる。前魔王の血筋を表舞台から遠ざけ、冥界の辺境に追いやったこと、いまだに私は『他の道もあったのでは?』と思ってならない。前魔王の子孫の幹部たちと会談の席を設けたい。何よりも貴殿とは現魔王アスモデウスであるファルビウムとも話して欲しいと考えている」
「ふざけないでもらおう!堕天使どころか、天使とも通し、汚れきった貴様に悪魔を語る資格などないのだ!それどころか、俺に偽物と話せというのか!?大概にしろッ!」
激高するクルゼレイにアザゼルは嘆息しながら三大勢力の危険分子と集まっているというとクルゼレイは利用していると言い、自分たちで世界を滅ぼし、新しい悪魔の世界を創りだすと言い出す。
そんなクルゼレイをサーゼクスは寂しげな目でつぶやいた。
「クルゼレイ。私は悪魔という種を守りたいだけだ。民を守らなければ、種は繁栄しない。甘いと言われてもいい。私は未来ある子供たちを導く。いまの冥界に戦争は必要ないのだ」
「甘いッ!何よりも稚拙な理由だッ!それが悪魔の本懐だと思っているのか!?悪魔は人間の魂を奪い、地獄へ誘い、そして天使と神を滅ぼすための存在だッ!もはや、話し合いは不要ッ!サーゼクスよ!偽りと偽善の王よッ!ルシファーとは!魔王とは!すべてを滅する存在だっ!滅びの力を持っていながら、何故横の堕天使に振る舞わない!?やはり、貴様は魔王を名乗る資格などないッ!この真なる魔王であるクルゼレイ・アスモデウスがおまえを滅ぼしてくれるッ!」
サーゼクスはオーフィスにも語りかけるが、交渉はできなかった。サーゼクスは天を仰ぎながら瞑目する。そして、次に目を開けたとき、その瞳には背筋が凍るほど冷たいものが映り込む。それを確認したクルゼレイは距離を取り、両手に巨大な魔力の塊を作りだしていく。
「そうだ!それでいい!そのほうがわかりやすいのだよ、サーゼクスッ!」
サーゼクスは右手を突きだすと手の平を上にかざした。そこに魔力が圧縮していき、その魔力が徐々に異様なオーラを放ち始める。
「クルゼレイ、私は魔王としていまの冥界に敵対する者を排除する」
サーゼクスがそう強い口調で言うと
「ふざけんなぁぁぁぁぁああああああああっっ!サーゼクスゥゥゥゥゥウウウウッ!」
煉がサーゼクスの横から思い切り飛び蹴りをサーゼクスに喰らわせてフィールドの壁まで蹴り飛ばした。
「てめえ!何、人の獲物を横取りしようとしてんだよ!てめえからぶっ倒すぞ!?」
サーゼクスとクルゼレイの一触即発な状況で煉がサーゼクスに飛び蹴りしたことにこの場にいる全員が唖然とする。そして、煉はサーゼクスのところに行き、サーゼクスの胸ぐらを掴む。
「それとな!魔王としていまの冥界に敵対する者を排除するだと!?いいか!?例え魔王だろうが、悪魔だろうが、堕天使だろうが、ドラゴンだろうが、そいつの命を奪うことに変わりわねえ!魔王という名の大義名分で言い訳にすんな!」
煉の言葉に目を見開き驚くサーゼクス。煉はサーゼクスを離して踵を返す。
「奪う奴の全てを背負おうとしない今のお前に戦う資格なんてない。それが、魔王でもだ」
煉はそう言い残し、クルゼレイと向かい合う。
「久しぶりに使えるな。出てこい!マモン!」
煉の言葉に応じるように煉の体から巨大な巨鳥マモンが姿を現す。
「フン!それが、マモンか。だが、元人間などに使われているそんな力で真なる魔王である私の敵ではない!」
クルゼレイがそう言うが、煉は無視してマモンに手を向けて叫ぶ。
「マモン!
煉がそう叫ぶとマモンは煉に向かって飛び降りる。そして、マモンが煉にぶつかるように当たり、煉を中心に周りに衝撃波を与え、アザゼルはその衝撃に目を瞑り、次に目を開けると煉の姿が変わっていた。頭に鳥の骨のような兜をかぶり、背中には堕天使と悪魔が混ざり合った四枚の翼を広げ、全身を全身を鳥の羽で出来たかのような毛皮のようなものを着ていて右手には黒く刀身には赤い意匠の紋様のようなものが刻まれていた魔剣を持った煉が不敵な笑みを浮かばせながら立っていた。
「この夏で眷属を集めつつ修行してようやくマモンの力をコントロールすることが出来た俺の新たな力だ。来いよ、クルゼレイ・アスモデウス。初代七大魔王の一人、強欲の魔王、グラシス・マモンの力、見せてやる」
「たかが、転生悪魔ごときが、なめるでないわっ!」
煉がクルゼレイに手招きするように挑発すると、クルゼレイは先程サーゼクスにしようとしていた巨大な魔力を両手から掃射する。そして、その巨大な魔力は煉に直撃する。
「レン!?」
「レンくん!?」
アザゼルとサーゼクスが直撃した煉の名を叫ぶ。
「ハハハハ!所詮、その程度なのだよ!いくら魔王の力を扱えたとしても、真なる魔王の血を引いている私の敵ではない!さあ、サーゼクスよ!今度こそ貴様の番だ!あの転生悪魔のように滅ぼしてくれるッ!」
クルゼレイが、笑いながら視線をサーゼクスに向け、再び両手に魔力を塊を作りだす。だが、
「おいおい、気が早いな。まだ終わってねえぞ」
クルゼレイはその声に反応し、視線を元に戻すと、そこには無傷の煉がいた。
「バ、バカな!?確かに貴様は私の魔力で直撃させたはず・・・・!?」
混乱するクルゼレイに煉は笑いながらクルゼレイに言う。
「なんだったらもう一回放ってこいよ。今度も避けないでやるよ」
「ふざけるなっ!!」
クルゼレイは再び両手から魔力の塊を煉に向かって掃射する。すると
「喰らえ」
煉が黒い魔剣を地面に突き刺すと、クルゼレイが掃射した魔力はその魔剣に吸い込まれていった。それを見たクルゼレイは驚愕の表情をする。
「な、なんなのだ!?貴様のその魔剣は相手の意識を幻想空間へと送るだけの能力のはず!なのに、何故そんなことが出来る!?」
そう叫ぶクルゼレイに煉は魔剣をかまえる。すると
「ッ!?」
一瞬。クルゼレイは、煉がいつの間にか後ろに移動していたことに気づき、振り返る。
「貴様ッ!いったい何がしたい!?何もせず私の後ろに現れて、私を愚弄しているのか!?」
煉は踵を返してクルゼレイと向かい合う。
「いや、何もしていないことはねえぞ。ほら、十秒経った」
「いったい何を言って・・・」
クルゼレイが、言いかけた瞬間クルゼレイの右腕が斬り落ちた。驚くクルゼレイに煉は言う。
「幻想空間へと送る能力は確かに
煉の言葉に怪訝するクルゼレイに煉は続けて話す。
「どういう意味か?って顔をしてるな。元々この魔剣はマモンの強欲から生み出された魔剣だ。こいつの本当の能力は欲望の具現化。炎を生み出そうと思えば出来るし、空間を斬りたいと思っても出来る。ただ、その欲望の強さが深くないと使えないがな。そう、強欲のように」
煉は魔剣をクルゼレイに向ける。
「この魔剣の本当の名はアヴァール・クレアシアン。初代強欲を司る魔王により生み出されし魔剣。そして、俺が今、具現化させた欲望は十秒経ちごとに斬られたところから、傷が発現する。ほら、十秒経った」
煉の言葉通り次はクルゼレイの両足が斬られていた。足を斬られたクルゼレイは地面に倒れてうつ伏せの状態になる。そんなクルゼレイを煉は見下すように見て言う。
「次の十秒後は左腕、最後に首。お前の命のカウントダウンは始まってる。最後に言い残しておきたいことはあるか?」
「たかが、転生悪魔の分際で真の魔王である私を見下すなっ!私は・・・私は前魔王の血を・・・ッ!」
十秒が経ち左腕が斬り落ちる。残り十秒でクルゼレイは血だらけになりながら血涙を流す。
「・・・・な、なぜ・・・・本物である私が、転生悪魔ごとき・・・に」
十秒が経ち、クルゼレイの首と胴が分離した。煉はアヴァール・クレアシアンを巨鳥のマモンに戻し
「お前の命は俺が奪った。だから、お前の命は俺が背負おう。マモン!喰らえ!」
ドォォォォォォォオオオオオオンッッ!
マモンは煉の命令どおり、クルゼレイの体を消滅するかのように喰らった。
「さらばだ、クルゼレイ・アスモデウス」
煉とクルゼレイの戦いは終わった。煉はマモンを体の中に戻し、アザゼルたちのところに行く。
「アザゼル、サーゼクス。俺はこのままリアスたちのところに行く。あとは頼んだ」
煉はそれだけを言い残して、
「・・・・アザゼル。私は本当に甘いみたいだよ。自分にたいしても」
煉の言葉がサーゼクスの心に深く刺さっていた。
一誠たちはディオドラとの戦いが終わり、アーシアを無事取り戻すことが出来た。だが、突然現れた光の柱にアーシアは包まれ、光の柱と共にアーシアの姿が消えた。どうなっているかわからず混乱している木場たちに突然第三者の声が聞こえる。
「神滅具で創りしもの、神滅具で散る、か。霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ」
木場たちは声のするほうへ視線を送るとそこには
「・・・・誰?」
「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりのも愚行が過ぎる」
「シャルバ!助けておくれ!キミと一緒なら、赤龍帝を殺せる!旧魔王と現魔王が力を合わせれば」
ディオドラがシャルバに懇願するが、ディオドラの胸に光の一撃が容赦なく貫いた。
「哀れな。あの娘の神器の力まで教えてやったというのに、モノにもできずじまい。たかが知れているというもの」
吐き捨てるようにシャルバが言う。ディオドラは塵と化して霧散した。
「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血族を滅ぼすためだ」
「グラシャラボラス、アスタロト、そして、私たちグレモリーを殺すというのね」
リアスの問いにシャルバは目を細める。
「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ」
シャルバは嘆息して言う。
「今回の作戦はこれで終了。私たちの負けだ。まさか、神滅具のなかでも中堅クラスのブーステッド・ギアが上位クラスのディメンション・ロストに勝つとは。想定外としか言えない。まあ、今回は今後のテロの実験ケースとして有意義な成果が得られたと納得しよう。クルゼレイが死んだが問題ない。私がいればヴァーリがいなくても十分に我々は動ける。真のベルゼブブは偉大なのだから。さて、去り際のついでだ。サーゼクスの妹よ、死んでくれたまえ」
「テメエが死ね!」
「なに!?」
突然の声に視線を向けると煉がシャルバの上から刀で攻撃しようとシャルバは間一髪で避ける。煉はそのままリアスたちのところへ行く。
「レン!?無事だったのね!」
リアスが煉に抱き着きながら喜ぶ。煉はリアスを抱き返す。
「ああ、心配かけたな。それより、アーシアはどうした?」
煉がリアスたちにそう訊くと全員の表情が暗くなる。それを察知した煉はリアスたちに言う。
「リアス、イッセーを連れてウラルたちと合流しろ。こいつは俺がなんとかする」
「ダメよ!あなた一人を残すなんて『頼む!』・・・ッ!?」
リアスの言葉を大声で煉は遮りイッセーを指す。リアスたちは一誠に視線を送ると
「アーシア?アーシア?」
ふらふらと歩きながら一誠はアーシアを呼んでいた。
「アーシア?どこに行ったんだよ?ほら?帰るぞ?家に帰るんだ。父さんと母さんも待ってる。か、隠れていたら、帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」
一誠はアーシアを探すように辺りを見渡していた。
「アーシア?帰ろう。もう、誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。アーシア、体育祭で一緒に二人三脚するんだから・・・」
その光景を見て、小猫とギャスパーが嗚咽を漏らしていた。
「今のイッセーをあのままにしておくといずれ精神が壊れる。だから、頼む!イッセーを安全なところへ連れてってやってくれ!」
煉がリアスにそう言うとシャルバを睨む。
「俺はあいつを殺す。俺のもんを殺したんだ。それ相当も報いを受けさせなきゃ気が収まらねえ・・・・ッ!」
煉は全身から殺気を出す。シャルバは煉に視線を向けて言う。
「ほう、貴様がカテレアとクルゼレイを倒した奴か。あいつらも堕ちたもんだ、魔王の力が使えるとうだけで、真なる血族には敵うわけがないはずが、こんな下劣な転生悪魔に殺されてしまうとはな」
呆れたかのようにカテレアとクルゼレイを貶める。
「ハッ!なら、てめえも殺してやるよ!血のことしか頭にない、蠅野郎!」
悪魔の翼を広げてシャルバのところまで飛ぶ煉。そして、本日二度目のマモンを出し、マモンを体に纏わせる。そして、アーヴァル・クレアシアンを殺気と一緒にシャルバに向ける。
「俺の親友に惚れた女を殺したんだ。簡単に死ねると思うなよ」
「フン!真なるベルゼブブの血を引いている俺が下劣な転生悪魔に負けるものか」
煉は魔剣をかまえシャルバを殺そうとしたとき
『リアス・グレモリー、いますぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去したほうがいい』
突然、ドライグが発声した。リアスたち全員は怪訝そうな表情をしていると、ドライグの声が次にシャルバへと向けられた。
『そこの悪魔よ。シャルバと言ったか?』
一誠はおぼつかない足取りでシャルバの所まで行く。
『おまえは』
そして、一誠はシャルバの真下に来たとき、ドライグの口元から発せられた。それは心身を底冷えさせるほど、無感情な一声だった。
『選択を間違えた』
ドオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!
神殿が大きく揺れ、一誠は血のような赤いオーラを発していく。そして、一誠の口から老若男女、複数入り交じった不気味な声で呪詛のごとき、呪文が発せられる。
『我、目覚めるわ』
〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉
『覇の理を神より奪いし二天龍なり』
〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉
『無限に嗤い、夢幻を憂う』
〈世界が求めるのは〉〈世界が否定するのは〉
『我、赤き龍の覇王と成りて』
〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉
《何度でもおまえたちは滅びの選択をするのだなっ!》
一誠の鎧が変質していく。さらに鋭角なフォルムが増し、巨大な翼が生え、両手両足から爪のようなものが伸び、兜から角のようなものがいくつか形作られていく。
その姿はドラゴンそのものだった。
そして、絶叫に近い声が老若男女入り乱れて発声される。
「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう」」」」」」
『Juggernaut Drive!!!!!!』
一誠の周囲が弾け飛び、周りのある物を全て破壊していく。
「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!アーシアァァァァァァッァァァッァァァァァァァッッ!」
そして、一誠は獣のような叫びをあげた。