「・・・・部長、朱乃さん」
煉が寝ている病室でリアスと朱乃は煉が病院に運ばれてからずっと煉の傍から離れなかった。
「本当に腹立つわね!あの老人共!少しは話を聞いたっていいじゃない!」
「落ち着いてください!レスティナさん!ここは病院ですよ!」
レスティナが大声で愚痴りながら煉の病室に入る。香歩はレスティナを宥める。
「・・・レスティナさん、香歩さん。どうでした?」
木場がレスティナたちにサイラオーグとのゲームに参加できるか訊くがレスティナを宥めながら木場に言う。
「・・・・
「本当に腹立つわ!精霊界でも種族の政治でもめたりすることはあるけど、あそこまでじゃないわよ!」
怒りが収まらないレスティナを香歩は落ち着かせる。すると、アーシアがウラルたちのことを訊くと
「ウラルは今、雫ちゃんのところにいるわ。雫ちゃん、目が覚めてからずっと泣きっぱなしだからね。何度も謝っていたわ、ごめんなさいって・・・・。他は今、病院の警備に回っているわ。万が一のことも考えないといけないからね」
「・・・警備ですか?ここは冥界の病院ですし、警備の方もいます。レンさんの眷属の方まですることはないのでは?」
ロスヴァイセが、怪訝そうにレスティナに訊くとレスティナは答える。
「甘いわよ、ロスヴァイセ。確かにここは冥界屈指の病院よ。
『っ!?』
レスティナの言葉にこの場にいる全員が目を見開くが、レスティナは続けて言う。
「よほど、レンのことが気に入らなかったようね。暗殺者にレンを殺すように依頼をしたら自分の手は汚れずに済むうえに、万が一暗殺者を雇った証拠が見つかったとしても権力でなんとかしようとするでしょうね。本当に腐っている言ってもいいわ!あの悪魔たち!」
「俺たちも手伝ったほうがいいでしょうか?」
一誠がレスティナたちにそう言うが、二人は首を横に振った。
「いいえ、大丈夫よ。あなたたちはバアル家との試合に集中しなさい。私たちが棄権する以上あなたたちが出るのだから」
「そうでございます。幸い、あずみ様は忍。暗殺の心得があります。ご主人様のことは私たちにお任せください」
レスティナと香歩の言葉に一誠は少し躊躇いながらも頷いて返事をする。
「・・・わかりまました。レンのことを頼みます」
一誠の言葉にレスティナと香歩は力強く頷いて応える。そして、一誠はリアスと朱乃に言う。
「部長、朱乃さん。行きましょう。部室に戻ってレンたちのぶんもゲームを頑張って勝ちにいきましょう」
一誠の言葉に朱乃は名残惜しそうにするが、立ち上がる。
「レン、絶対に私たちのゲームまでには起きて下さいね」
朱乃はそう言って煉から離れるが
「・・・・・・ごめんなさい。もう少しだけここにいさせて」
リアスは動かなかった。その言葉にレスティナは何か言おうとするが、香歩に口を塞がれ、そのままレスティナを病室の外へ連れて行く。一誠たちもそれにつられるかのように病室から出て行く。
「何で、止めるのよ!?香歩!」
病室の外へ出たレスティナたちだが、レスティナは止められた香歩に言うと
「レスティナさん。あの時私が止めなかったらリアスさまに何を言おうとしてたのですか?」
「決まってるじゃない!何であんただけそんなわがままを言っているのよ!辛いのは皆もなのよ!?自分だけ辛そうにしないで!って言って怒ろうと思ったのよ!」
「やっぱりそうだったのですね。ですが、リアスさまは情愛が深い人なのですよ。甘やかすようなことを言いますが、少しは煉と二人にさせたほうが良いと私は思います」
「甘いわよ!レンの傍にいたいのは私だって同じなのよ!香歩だってそうでしょう!?」
「当たり前です!私だって傍にいたいです!ですが、私たちにはご主人様のためにやることがあります!ご主人様だってきっと誰かに傍にいて欲しいと思っています!」
香歩の精一杯の言葉にレスティナは口を閉じるがつぶやくような声で香歩に言う。
「じゃあ・・・どうして、リアスなの?私たちじゃダメだって言うの?」
「それは違うよ」
レスティナの後ろから突然、聞き覚えの声がしてレスティナは振り返ると
「「ウラル(さま)ッ!」」
レスティナと香歩は声を揃えて驚く。
「ウラルさま、雫ちゃんの傍にいなくてもいいのですか?」
「今は泣き疲れて寝ているからしばらくは大丈夫。それとさっきの言葉なんだけど私たちがダメってわけじゃないんだよ。レスティナちゃん」
ウラルがレスティナにそう言うとレスティナは頷く。
「わかっているわよ。レンはリアスも朱乃もそして、私たちを平等に愛してくれていることぐらい。でも・・・・・ッ!」
「納得が出来ない。だね?」
ウラルの言葉にレスティナは小さく頷いて答えるとウラルは笑みを浮かばせて言う。
「じゃ、レンくんが起きたら私たち全員でレンくんと一緒にベットでしよう!そうすればその気持ちもどっかに飛んでいくよ!大丈夫!私もたっぷりとレスティナちゃんを可愛がってあげるから!こうやって!」
「きゃ!?と、突然、何するのよ!?私もあなたも女なのよ!」
突然、背後から胸を揉まれたレスティナは慌てて両腕で胸をガードしながらウラルから距離を取る。
「大丈夫!私、女の子もいけるから!あ、男はレンくんだけだけど」
「「そういう問題じゃないでしょう(です)ッ!」」
ウラルのレズ発言にレスティナと香歩はウラルにツッコミを入れてしまう。すると、ウラルが二人に言う。
「どう?さっきまでの気持ちはまだある?」
ウラルがレスティナにそう訊くとレスティナは一瞬、目を見開くがすぐにため息を吐く。
「ないわよ。あんなとんでも発言をされたら誰だってそんな気持ちにはいられないわよ」
「ですが、ご主人様なら今みたいなことをしてレスティナさんにそういうことを言わせたでしょうね」
香歩の言葉にレスティナは笑みを浮かばせる。それを見たウラルは満足そうに頷く。
「よし!それじゃあ、私はそろそろ雫ちゃんのところに行くね!あと、レンくんならもうすぐ目が覚めるよ」
「どうしてそう言いきれるの?」
ウラルの言葉に怪訝そうにするレスティナと香歩。すると、ウラルは笑みを浮かばせながら言う。
「だって、般若さまを呼んだんだもん」
「「般若さま?」」
レスティナと香歩は同時に首を傾げる。
「・・・・・」
煉の病室に一人残ったリアスはずっと煉を見ていた。リアスはアザゼルが連絡が入ってから急いで病院へ駆けつけ、医者に煉の容体を訊くと酷かった。全身の殆どの骨は折れ、内臓も各所ズタズタ。しかも右腕を失い、大量の失血。医者が言うには生きていることが奇跡だと言われるほど、煉の容体は酷かった。助かったのは煉の異常な回復力とレスティナの精霊魔法により特殊な治療、そして、小猫の仙術のおかげ。
「レン、あなたってほんと、無茶をするわね」
リアスはそうつぶやきながら寝ている煉の左手を握る。そして、悲しげな表情で寝ている煉に言う。
「レン・・・・早く起きて。皆、あなたが起きるのを待っているのよ。お願いだから・・・・起きて、レン」
リアスが煉の手を握りながら祈るかのように煉が目覚めるのを願う。すると
「きゃ!?」
突然のことにリアスは悲鳴を上げると、いままで寝ていたはずの煉が突然、飛び起きる。
「レン!」
目を覚ました煉にリアスは涙を流しながら煉に抱き着こうとするが
「あぶねえ!」
煉は抱きつこうとしたリアスを回避する。いつもなら喜んで抱き着いてくるどころかそのままリアスを喰おうとしてもおかしくないはずの煉が回避した。怪訝に思ったリアスは煉をよく見てみると煉は全身から大量の冷や汗を流していた。
「あ、ああ。リアスか。脅かすなよ。いや、いまはそんなことどうでもいい!リアス!」
「え、ええ、な、なに?」
「頼む!俺を今すぐ人間界にまで転移させてくれ!じゃないとあいつが・・・・般若が来る!」
冷や汗を流しながら青くなっていく煉の顔。どういうことかわかわらいリアスは煉に訊く。
「と、とりあえず、落ち着いて、レン。あなたはまだ万全の状態じゃないんだから」
「だから、頼んでんだよ!リアス!この通りだ!頼む!」
煉はベットの上でリアスに土下座してまで頼みこむ。煉の行動に驚きを隠せないリアス。
「レン、どうしたの?いつものあなたらしくもない。般若が来るって言っているけどどういうことか説明してちょうだい」
「だから、説明する時間がねえんだよ!あとで話すから頼む!もう般若がすぐそこまで」
煉の言葉の途中で突然、煉の病室の扉が開く。煉は壊れた人形のようにギギギと首を動かしながら扉のほうを見るとまるでこの世の終わりかのような表情となった。あまりのことにリアスも後ろに振り返って見ると、そこには、長く白い髪を後ろに束ねてポニーテールのようにし、瞳は髪と同じ白い。そして、女性としては180㎝ある身長にリアス負け劣らずのスタイルの女性が煉の病室の前に立っていた。その女性はニコと笑顔で煉に話しかける。
「こうして会うのは3年ぶりですね、レン。元気にしていましたか?」
笑顔の表情で優しい口調で話しかける女性。いつもの煉なら普通に返事をするはずなのに煉は顔を青ざめながら女性に返事をする。
「お、お久ぶりです。と、ところでどうしてここに?」
「何を言っているのですか。ウラルちゃんから連絡があって急いで来たんですよ。あなたが一週間も目が覚めないと聞いたときは心臓が止まるかと思いましたよ」
「そ、それはご心配をお掛けして大変申し訳ありませんでした」
煉はベットから降りて床に膝をつき土下座しながら謝る。リアスもいつもの煉との違いに驚く一方だが、白い女性は片膝をつき、煉の頭を上げさせる。
「そんなかしこまなくてもいいんですよ。あなたは私の弟なのですから」
「弟!?」
あまりの衝撃発言にリアスは思わず、叫んでしまう。すると、女性はリアスに視線を向けて挨拶する。
「初めまして、リアス・グレモリーさま。私はエキノ・アフルレイトと申します」
「あ、どうも、ご丁寧に。私はグレモリー家次期当主のリアス・グレモリーと申します」
エキノの丁寧な挨拶に思わずリアスも返事をしてしまう。
「あ、あのレンとはどういったご関係でしょうか?」
リアスの質問にエキノは首を傾げながらいまだに床に座っている煉に視線を向けると煉の体がビクッと震える。
「なんですか?レン。私のこと話してくれていないのですか?悲しいですね。泣いてしまいますよ」
冗談のように聞こえるエキノの言葉に煉はエキノの足場まで行き再び土下座をする。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
もはや別人かのように謝り続ける煉。
「そんなに謝らなくてもいいですよ。ふふふ、相変わらずですね」
土下座をしている煉の頭を撫でながら微笑むエキノ。
「リアスさま。先程の質問をお答えしますと、レンとウラルちゃんは私の義理の弟と妹でございます。それと、二人とも私の弟子でもあります。レン、起き上がってリアスさまに私のことを説明してあげてください」
「はい!」
レンはエキノの言葉どおりすぐに立ち上がりリアスにエキノのことを説明する。
「え~と、リアス。この方はエキノ・アフルレイトさま。3年前に俺とウラルで旅をしているときに出会った人だ。そして、先程もエキノさまがおっしゃったように俺とウラルの姉であり、俺たちを鍛えてくれた師匠でもある」
煉がリスに説明すると、エキノが不満そうに煉に言う。
「もう、他人行儀みたいな言い方をして、ウラルちゃんのようにお姉ちゃんと呼んでいいんですよ」
「は、はい。すみませんでした。姉御、いえ!お姉さま!」
煉に姉と呼ばれて満足したのか、エキノはリアスに言う。
「改めて自己紹介をします。私はエキノ・アフルレイト。レンとウラルちゃんの姉であり師匠であり、周りからは人外と呼ばれています」