それでは、どうぞ。
「おらっ!」
「フンっ!」
サイラオーグと煉との最後のレーティングゲームの最終試合。フィールドは実際の宇宙のように再現したフィールドで、煉とサイラオーグは殴り合っていた。
「まだまだ、行くぞ!サイラオーグ!」
「ああ、来い!」
鬼神になった煉と闘気をまとるサイラオーグたちの攻撃は一撃一撃が致命傷になるほどの攻撃。だが、二人は一切の防御もせずただ、殴っては殴られの繰り返しだった。
『な、なんと、激しい殴り合いでしょうか!?しかもお互いに避けるどころか、防御もしていません!でも、何故でしょう!?サイラオーグ選手もヴィクトル選手も笑いながら戦っています!』
面白いからに決まってるだろ!こんな心の底から感じるこの爽快感!サイラオーグと殴り合うことでこの爽快感を味わえられるんだ!この爽快感を笑うなってほうが無理だ!
実況の言葉に煉は内心そう思った。
「・・・・楽しそうだな」
サイラオーグが殴り合いながらも訊いてくる。すると、煉は笑いながら言う。
「それはお前もだろ?サイラオーグ」
「そうだな、こんなに清々しいのは初めてだ。だからこそ!」
「ああ、だからこそ!」
「「ぶっ倒すっ!」」
更にヒートアップする煉とサイラオーグ。その殴り合いに生じる衝撃波が周りの惑星を破壊していく。その光景を見た観客たちが興奮しながら声をあげる。
「「「「「「「サイラオーグ!サイラオーグ!サイラオーグ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「エロ魔王!エロ魔王!エロ魔王!」」」」」」」
盛り上がっている観客たちとは違い、一誠たちは真剣な表情で煉とサイラオーグたちの戦いを見る。瞬きすら許せられないかのように見る。いや、瞬きするのがもったいないかのように見ていた。
すると、殴り合っていた煉とサイラオーグは初めてお互いに距離を取った。
「楽しいぜ、こんなに楽しい殴り合いは初めてだ。サイラオーグ。そして、感じるぞ、お前の心の強さを!魔王になるためにお前がしてきた努力も!全部、お前の拳から感じてくるぜ!サイラオーグ!」
「俺もだ、だが、煉 ヴィクトル。一つ訊きたい。貴様の拳から感じるのは俺と同じ、いや、俺以上に強い何かを感じる。貴様はいったい何になろうとしている?」
サイラオーグの問いかけに煉は笑う。
「そうだな、本当はまだ、言うつもりはなかったが、せっかくのいい場面だ。教えてやるよ。貴様に、いや、冥界全域に教えてやるよ!」
そう言う煉はモニターに向かって冥界全域に聞こえるように叫んだ。
「いいか!?冥界に住む全ての国民たちよ!よく聞け!ここで、今、俺は宣言する!俺はいずれ、魔王をも従えさせる王になる!そして、この冥界全てを俺は手に入れる!」
煉の言葉に観客や一誠たちやアザゼル、冥界の全ての悪魔たちは唖然とする。そんななか、煉はかまわずに続ける。
「俺はいずれ、サーゼクスたち四大魔王、全員を倒して従えさせる。そして、俺が魔王をも超える王になり、お前らが叶えたい夢や目標を俺が叶えさせてやる!」
「ハハハハハハハハハハハハッッ!」
煉の目標を聞いたサイラオーグは大きく笑った。
「面白い!面白いぞ!煉 ヴィクトル!まさか、現四大魔王さまたちをも超える王になろうとは!」
「当たり前だ!俺を従えていいのは俺だけだ!俺より上の奴がいたら俺はそいつより強くなる!例えその相手が魔王でもな!さて、それじゃあ、お互い本気でいこうぜ。サイラオーグ」
「ああ、そうだな」
煉の言葉にサイラオーグは笑いながら答えると、それを聞いた一誠たちを含めた観客たちは驚きの声をあげる。
『お互い、あれだけ激しい殴り合いが、本気ではなかった!?いったいこれはどういうことでしょうか!?アザゼル総督!』
『きっと、本当のことでしょうね。サイラオーグはわかりませんが、レンはまだ自分のなかで一番強い魔神にはなっていません。まぁ、私はさっきのレンの発言のほうにド肝を抜かされましたがね』
『確かにそれは私もです!ヴィクトル選手は本気なのでしょうか!?』
『ああ、本気だろう。本気で現四大魔王を倒すつもりだろうな。しかし、あいつなら本気でしそうだからこえーな』
アザゼルはふざけた口調をしていたが、眼は本気でするなと思いながら煉を見る。すると、サイラオーグが叫ぶ。
「煉 ヴィクトル。俺は今日この場を死戦と断定するッ!殺しても恨むなよ!来い!レグルスゥゥゥゥッ!」
サイラオーグの呼び声に応えたかのようにサイラオーグの隣から魔方陣が現れ、そこからサイラオーグの
『まさか、ネメアの獅子か!?いや、あの宝玉はまさか・・・・!
アザゼルの言葉にサイラオーグは首を横に振る。
「いや、残念ながら所有者は死んでいる。俺が『
『・・・所有者抜きで単独で意志を持って動く神器・・・しかも、神滅具だと!?さらに悪魔に転生できてしまった!獅子がすごいのか、
アザゼルは目を輝かせながらサイラオーグに言う。そして、レグルスは全身を金色に輝かせて、光の奔流と化してサイラオーグに向かう。黄金の光を全身に浴びるサイラオーグは高らかに叫んだ。
「我が獅子よッ!ネメアの王よッ!獅子王と呼ばれた汝よ!我が猛りに応じて、衣と化せェェェェッッ!」
周囲の風景を吹き飛ばしながら、サイラオーグとレグルスは弾けた。
『
まぶしい閃光が、広がる。そして、その閃光が止んだとき、前方に現れたのは金色の姿をした獅子の全身鎧のサイラオーグだった。
「
「ああ、
煉の体から黒い輝きを放ち、その黒い輝きは煉の体に纏わる。そして、その輝きが収まったとき、煉は邪悪さを感じさせる闇色の戦闘服に身を包み、右手には大剣を握っている。
「
『で、出ました!ヴィクトル選手の切り札ともいえる禁手化!強奪神!あらゆるものを奪う神!そして、ヴィクトル選手が持っている大剣は全ての力を奪う魔剣!』
実況が、そう言うなか、サイラオーグは煉に言う。
「それが、魔神か?なるほど、恐ろしいまでの力を感じる」
「ああ、始めるぞ。
煉は
「叩き潰せ!
煉はサイラオーグに拳を向けて言い放つ。
「さぁ、サイラオーグ!お互い、拳で決着をつけようぜ!」
「望むところだ!行くぞ!」
「ああ、来い!」
煉とサイラオーグは再び、突っ込む合う。そして、お互いの拳がぶつかり合った瞬間、ぶつかり合った拳の衝撃波で周りの惑星が、一気に消え去った。だが、煉もサイラオーグもそれを気にせず、殴り合う。ただ、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。煉とサイラオーグはそれだけしかしなかった。避けることも防御することも魔力で攻撃することも殴るということ以外しなかった。それでも、煉もサイラオーグも笑いながら殴り合っていた。
「「ハハ」」
「「ハハハ!」」
「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!」」
煉とサイラオーグは殴り合いながらも笑っていた。その笑いは歓喜の笑い。楽しくて楽しくて仕方ないという歓喜の笑い。だが、それでも、二人には譲れないものがあった。
「煉 ヴィクトル!俺は負けんッ!俺には叶えなければならないものがあるのだッ!」
「悪いが、負けられねえのはこっちもだ!俺は悪魔も魔王も冥界をも統べる王になるんだ!こんなところで負けるわけにはいかねえんだよッ!」
ドゴンッ!
煉の拳がサイラオーグの顔面をとらえてサイラオーグを殴り飛ばすが、サイラオーグは立ち上がる。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」
獅子の咆哮。と、煉はそう感じた。そして、その咆哮に煉の心は更に打ち震えた。それは、高揚感や興奮のようなもの。それが、煉の体の全身に巡っていく。
「いいぜ、いいぜ!サイラオーグ!お前のその勝利への執念!最高だ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!」
煉とサイラオーグは殴り合う。お互いに譲れないもののためにただ、拳をぶつけ合う。血を吐こうとも、全身の骨が砕かれようともただ、目の前にいる相手をただ殴る。倒すまで殴り続ける。そして、その光景を観客たちは見守るかのように見る。そして、思った。
この戦いをいつまでも見てみたい。と
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」
「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
サイラオーグと煉は叫びながら、殴り合う。それでも倒れない二人。だが、殴り合っていた煉は途中で殴るのを止め、サイラオーグに近づくとサイラオーグは立ったまま気絶をしていた。
「俺の・・・勝ちだ・・・」
煉は気絶しているサイラオーグにトドメの一発。その攻撃で倒れるサイラオーグ。そして、アナウンスが流れた。
『サイラオーグ・バアル選手、投了。リタイヤです。よってこのゲーム、煉 ヴィクトルチームの勝利です』
煉は自分の勝利を確信すると同時、その場で笑いながら倒れる。そして、気絶しているサイラオーグに告げる。
「楽しかったぞ」
その一言だけ言うと煉の意識は闇に落ちる。