強欲を司る略奪者   作:ユキシア

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僕に力を貸してくれ!

中級悪魔昇格試験から二日後の昼頃、木場たちはグレモリー家にいた。旧魔王シャルバ・ベルゼブブの外法によって生み出された巨大モンスターたちは現在、格重要拠点及び都市部へと進撃。

 

『ご覧ください!突如現れた超巨大モンスターは歩みを止めぬまま、一路都市部へと向かっております!』

 

レポーターがその様子を恐々しながら報道している。魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)に生み出された巨大モンスターは全部で十三体。そのなかで一際巨大な一体のモンスターを『超獣鬼(ジャバウォック)』。それ以外の十二体のモンスターを『豪獣鬼(バンナースナッチ)』と呼称されている。そして、今も最上級悪魔たちが攻撃をしてはいるが致命傷になる傷は与えられないでいる。

 

「『超獣鬼(ジャバウォック)』と『豪獣鬼(バンナースナッチ)』の迎撃に魔王さま方の眷属がついに出撃されるようだ」

 

突然の声に木場は顔を向けるとそこにはライザー・フェニックスがいた。

 

「兄貴の付き添いでな、ついでにリアスとレイヴェルの顔でも見にきたんだが。やっぱり、状況が状況だからな。・・・・察するぜ、木場祐斗」

 

眉をひそめ、深刻な表情をするライザー。木場のその表情ですでに一誠と煉は死んでいるということがライザーの耳に届いていることがわかった。あの日、シャルバに囚われていたオーフィスを助ける為一誠は単身で奪還、煉はアキレウスとの決着をつけに行ったが龍門で戻ってきたのは一誠の『兵士(ポーン)』の駒と、煉の魔剣だけだった。そして、二人の死は一部の者しか伝えられていない。

 

「痛み入ります。部長に会うことはできましたか?」

 

「無理だったな。部屋のドアを開けてもくれなかったぜ。呼んでも反応もなかった。・・・ま、会える状況でもないだろう。愛した男がああいう形になってしまったんだからな」

 

「・・・・お茶、どうぞ」

 

フロアに備えられてあるテーブルにティーカップを置いた小猫はいつもと変わらない表情のままフロアの隅にある椅子に座った。

 

「いいかね、レイヴェル。ともかく、元気を出すのだよ?」

 

フロアに現れた二人、一人はレイヴェル。もう一人の男はフェニックス家の次期当主ルヴァル・フェニックス。ルヴァルはレイヴェルを励ましたあと、木場を確認する。

 

「リアスさんの『騎士(ナイト)』か。このような状況だ。キミでいいだろう」

 

ルヴァルは木場に数個のフェニックスの涙を渡した。

 

「これをキミたちに渡すついでに妹とリアスさんの様子も見に来たのだよ。こんな非常識だ、涙も各迎撃部隊のもとに出回りこれしか用意できなかった。有望な若手であるキミたちに大変申し訳なく想う。もうすぐ私は愚弟を連れて魔獣迎撃に出るつもりでね」

 

「・・・・愚弟で悪かったな」

 

ルヴァルはライザーの頭にチョップを加えながら、微笑む。

 

「リアスさんもリアスさんの『女王(クイーン)』も強奪神くんの死で酷く落ち込んでいる。こんなこときに冷静であるべきはおそらくキミだろうね。情愛深い眷属でありながら、仲間の死に耐える。見事だよ」

 

「ありがとうございます」

 

だが、そんな木場もいっぱいいっぱいだった。それでも木場は仲間のために耐える。リアスも朱乃もまともな状態ではない。リアスは自室で閉じこもり、朱乃はうつろな表情でゲストルームのソファに座っているだけ、アーシアはゲストルームでずっと泣いている。

 

「・・・・いますぐイッセーさんのもとにいきたい・・・・。でも、私がイッセーさんを追ったら・・・・イッセーさんは悲しむから・・・・。ずっと一緒だって、約束したんです・・・。それなら、私もそこにいけばずっと一緒だと思ってしまって・・・・。イッセーさん・・・私はどうすればいいんですか・・・・・?」

 

ゼノヴィアとイリナはまだ天界、ギャスパーとロスヴァイセは出かけたまま連絡がない。

 

・・・・バラバラだな、グレモリー眷属。少し前まではこれ以上にないほどに最高のチームだったのに、いまではその面影すらない。

 

「我が家としてもレイヴェルを赤龍帝くんの眷属にしていただきたかったのだよ。できることならそのまま彼のもとに送りだしたかった」

 

「はい、それは存じております」

 

「・・・レイヴェルの今後をどうするかはこれからだが、いまはここに置いてくれないだろうか?せっかく、友人ができたようだし、小猫くんとギャスパーくんだったかな?連絡用の魔方陣越しによく二人のことを話してくれていた。とても楽しそうだったよ」

 

「はい、レイヴェルさんは僕たちがお預かりします」

 

木場の一声にルヴァルは笑んだ。

 

「うむ、では行くぞ、ライザー。おまえもフェニックス家の男子ならば業火の翼を冥界中に見せつけておくのだ。これ以上、成り上がりとバカにされたくはないだろう?」

 

「わかっていますよ、兄上。じゃあな、木場祐斗。リアスたちを頼むぜ」

 

それだけを言い残してこの場を去っていくライザーたち。すると、それと同時、入ってくる人物がいた。

 

「木場くん。ちょっといい?」

 

「ウラルさん」

 

煉の『女王(クイーン)』ウラルだった。ウラルはいつものとは違う真剣な表情で木場に言う。

 

「私たちヴィクトル眷属もこれから魔獣迎撃に向かうの。これ以上の進撃は阻止しないといけないからね」

 

その言葉に少なからず木場は驚いた。リアスや朱乃同様、煉のことが好きなウラルたちがそんなことを言うのだから。

 

「もちろん、皆もこのことは了承しているよ。準備もできてる。でも出発前にリアスちゃんに言おうとしたけどドアも開けてくれなかったから・・・キミに押し付けるようで悪いけど一応、言っておこうと思ってね」

 

それだけを言い残して部屋から去ろうとするウラルに思わず木場は訊いてしまった。

 

「・・・・悲しくないんですか?」

 

「・・・悲しいよ。今すぐにでも大好きなレンくんの傍に行きたい。でも、レンくんはリアスちゃんたちに約束したんでしょう?皆のところに戻るって」

 

その言葉に木場は頷いて答えるとウラルは笑顔で言う。

 

「だったら大丈夫だよ。レンくんは約束は破ったことはないから。必ず帰ってくる。私は、ううん、私たちはそう信じている」

 

そう言って部屋から出ていくウラルを見て強いと木場は思った。

 

彼は・・・レンくんは絶対の信頼を自分の眷属たちに与えているんだね。ほんと、凄いな。

 

「木場祐斗、くんか」

 

第三者の声に振り返ればそこにいたのは堕天使の幹部『雷光』のバラキエルの姿とその隣にはバラキエルの妻、姫島朱璃がいた。

 

 

 

 

 

 

「そうか、やはり、朱乃は・・・・」

 

フロアに現れたバラキエルと朱璃に説明しながら、廊下を進むと着いたところは朱乃がいるゲストルーム。入室するとなかは明かりをつけず、暗い部屋の隅でソファに座りうつろな双眸をしている朱乃がいた。バラキエルと朱璃はそんな朱乃を抱きしめた。

 

「・・・・とう、さま、かあ、さま」

 

「話は聞いてある」

 

「朱乃。今は泣きなさい。私たちはあなたが泣き止むまでずっとこうしてあげるから。でもね、あなたは若手悪魔の代表となりつつあるグレモリー眷属の『女王(クイーン)』すぐにその力を冥界のために使わなければならないわ」

 

「・・・・うぅ、レン・・・・どうして・・・」

 

二人の胸のなかで嗚咽を漏らす朱乃に朱璃は続けて言う。

 

「それにあなたは本当にレンくんが死んだと思っているの?」

 

「・・・・え?」

 

涙を流しながら顔を上げる朱乃に朱璃は笑みを浮かばせながら話す。

 

「私は一応はあの人の眷属としてこの世界に蘇ることが出来た。眷属だからかしら?どうしてかレンくんがすぐそこにいると感じてしまうのよ。だから、断言できるわ。あなたの愛したレンくんは死んではいない」

 

「・・・でも、でも・・・・ッ!」

 

「わかっているわ。だから、今は泣きなさい」

 

朱乃を顔を再び自分の胸のなかへと誘導させる朱璃に朱乃はまた嗚咽を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロアに戻ろうとした木場は見知った人物に会う。

 

「匙くん」

 

「よ、木場」

 

「どうしてここに?」

 

木場がそう尋ねると匙は息を吐きながら言う。

 

「ま、会長がちょいとリアス先輩の様子を見に来たってところかな。その付添い。表ですれ違い様フェニックスのヒトたちにも会ったけど」

 

「そっか、ありがとう」

 

匙と共にフロアまで歩くと匙は決意の眼差しで言った。

 

「木場、俺も今回の一件に参加するつもりだ。都市部の一般人を守る」

 

「僕たちも合流するつもりだ」

 

「・・・・リアス先輩たちは戦えるのか?」

 

「戦うしかないさ。この冥界の危機に力ある悪魔すべてに召集がかけられているのだから。僕たちは力のある悪魔だ。やらなきゃダメさ」

 

匙はにんまりと笑みながら大きく頷く。

 

「だよな」

 

笑みを浮かばせた匙は一転して表情が強張る。

 

「兵藤とヴィクトルを殺した奴はわかるか?」

 

迫力に染まった瞳で匙は木場に訊くが木場は首を横に振るう。

 

「わかるけど、もうこの世には存在しないよ。その者たちはイッセーくんとレンくんが倒したのだろうからね」

 

その答えに匙は一瞬だけ目元を緩ませた。

 

「そうか。相討ち。いや、負けるわけがねぇ。勝って死んだんだよな?あいつらが負けるはずがねぇんだッ!」

 

匙は目元から大粒の涙を流しながら心底悔しがっていた。そして気迫に満ちた表情で匙は言う。

 

「あいつを殺した奴らはもういないんだな。だったら、そいつらが属していた『禍の団(カオス・ブリゲード)』の奴らをぶっ倒せばいいだけか」

 

「匙くん、キミは・・・」

 

「俺の目標だったんだ、あいつらは。あいつらのおかげで俺はここまでがんばれた。アガレスとの戦いでも活躍できた・・・・っ!身近に同じ『兵士(ポーン)』と追い続けられる『(キング)』がいたからどんな辛いトレーニングでも耐えてこられた!」

 

匙は憎悪に包まれた言葉を吐き出す。

 

「俺の目標を、俺のダチを殺した奴らは絶対に許さない。全員、ヴリトラの炎で燃やし尽くしてやる・・・ッ!俺の炎は死んでも消えない呪いの黒炎。たとえ、刺し違えても命だけは削りきってやるさ・・・・・っ!」

 

匙は凄まじいオーラを内部でたぎらせていると

 

「死んでもらっては困りますよ、サジ」

 

振り向いた先にはソーナの姿があった。

 

「会長」

 

「サジ、感情的になるのはわかりますが、だからといってあなたが死んでもらっては困ります。やるなら、生きて相手を燃やしなさい」

 

ソーナの言葉に匙は涙をぬぐい、大きく頷く。

 

「はいっ!」

 

「それと、イッセーくんはわかりませんが、レンくんだったらすぐにでもリアスたちの前に現れるでしょう。彼はどんな状況でも常識という言葉を壊してきますし、自分の女を泣かすようなことはしないでしょう」

 

煉は生きていると平然と言い放つソーナに木場はリアスに会えたかどうか問うと

 

「部屋にこもったきりです。私が問いかけても反応はありませんでした」

 

・・・・・親友のソーナ会長でもダメだったのか。

 

「代わりにこういうときにうってつけの相手を呼んでおきました」

 

「うってつけの相手?」

 

木場が訝しげに問いかけるとソーナは薄く笑むだけだった。木場はフロアに戻ってくるとテレビで首都の様子が映りだされていた。

 

『レスティナちゃんと徹くんは豪獣鬼(バンナースナッチ)の足止めをお願い!あ、徹くんはまだ無理しちゃダメだよ!香歩ちゃん、鬼姫ちゃん、サイトちゃん、あずみちゃんは小型を倒しながら逃げ遅れた人たちの避難をお願い!雫ちゃんは私の傍で何かあったら教えて!』

 

『了解!』

 

(キング)の煉がいないにも関わらずヴィクトル眷属はモンスターの足止めや一般人を避難させていく。そして、誰一人たりとも煉が死んだなんて思ってなかった。

 

『あのバカッ!戻って来たらただじゃさまさないんだからッ!』

 

愚痴を言いながら精霊魔法で攻撃するレスティナ。

 

『レンさん、レスティナさんが大変です、よ』

 

巨大化して巨大モンスターの動きを止め煉のことを心配する徹。

 

『まーまー、レスティナさん落ち着くっす。どうせ、ひょっこり出てくるっすよ。それが兄貴なんすっから』

 

雷を放ちながら小型のモンスターを倒す鬼姫。

 

『それには同意』

 

『・・・・・同じく』

 

一般人に攻撃してくる小型モンスターを守護するあずみとサイト。

 

『ふふふ、戻って来たらたたでは終わらせませんよ。ご主人様』

 

左に魔力で具現化した刀を持ち、右手にハリセンを持って不気味な笑み浮かばせる香歩。

 

『・・・・お兄ちゃん。戻って来たら逃げてね』

 

周りを見て煉のことを心配する雫。

 

『皆、落ち着いて。皆の言うとおり、レンくんは必ず戻ってくる。だから、今は私達に出来ることをしよう!』

 

『はい!』

 

ウラルの掛け声を全員は返事をしながらそれぞれのすることに意識を集中させた。そして、次に映しだされたのは首都の子供たちだった。

 

『ばく、怖くない?』

 

『へいきだよ!だって、あんなモンスター、おっぱいドラゴンがきてたおしてくれるもん!』

 

おっぱいドラゴンの人形を持った子供が満面な笑顔でそう応えると横から別の子供が言ってきた。

 

『エロまおうもやっつけてくれるもん!エロまおう!あんなモンスターぶっとばしてー!』

 

さらに次々に画面の端から顔と声を現す子供たちの表情には誰もがおっぱいドラゴンとエロ魔王が助けに来てくれると信じ切っていた。それを見た木場は口元を押さえ、必死にこみ上げてくるものをこらえていた。

 

・・・・見ていてくれているかい、イッセーくん、レンくん。キミたちを待ち望む子供たちの姿・・・・。皆、不安な顔ひとつ見てせていないよ?皆キミたちが助けてくれると心から信じ切っているんだ・・・・。

 

「俺たちの思っている以上に冥界の子供たちは強い」

 

「あなたは!」

 

「兵藤一誠と煉 ヴィクトルはとてつもなく大きなものを冥界の子供たちに宿したのだな。久しいな、木場祐斗。リアスに会いにきた」

 

突然の声。そして、そこにいたのはサイラオーグ・バアルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナに呼ばれたサイラオーグは木場を連れてリアスの部屋に行くと

 

「入るぞ、リアス」

 

それだけを言ってサイラオーグは部屋に入るとそこにはベットで体育座りをし目元を赤く腫れていたリアスがいた。それを見たサイラオーグはリアスに近づくなり嘆息する。

 

「情けない姿を見せてくれるものだな、リアス」

 

「・・・・サイラオーグ。何をしに来たの?」

 

「ソーナ・シトリーから連絡をもらってな。安心しろ、プライベート回線だ。大王側にあの男たちが現在どのような状態か一切漏れてはいない」

 

そして、サイラオーグは真正面からリアスに言う。

 

「行くぞ。冥界の危機だ。強力な眷属を率いるおまえがこの局面に立たずにしてどうする?俺とおまえ、そして、煉 ヴィクトルの眷属たちは若手の最有力として後続の者に手本を見せねばならない。それにいままで俺たちを見守ってくださった上層部の方々、魔王さまの恩に報いるまたとない機会ではないか」

 

そう言うサイラオーグにリアスは顔を背け

 

「・・・・知らないわ」

 

「・・・・自分の男が行方知れずというだけでここまで堕ちるか、リアス。おまえはもっと良い女だったはずだ」

 

サイラオーグの一言にリアスは枕を投げて激高する。

 

「彼がいない世界なんてッ!レンがいない世界なんてもうどうでもいいのよッ!・・・・私にとって彼は、あのヒトは・・・誰よりも大切なものだった。あのヒト無しで生きるなんて私には・・・・」

 

「あの男が・・・・強奪神の煉 ヴィクトルが愛した女はこの程度ではなかったはずだッ!」

 

サイラオーグはリアスに大きく言い放つ。

 

「奴の眷属たちを見たかッ!?煉 ヴィクトルの眷属たちは誰一人たりとも奴が死んだなんて思ってない!生きて必ず戻ってくると信じて自分たちの出来ることに取り組んでいる!あの男の愛しているお前がこんなところで立ち止まってどうする!?」

 

サイラオーグの言葉に驚くリアスだがサイラオーグは続ける。

 

「それと貴様の下僕である兵藤一誠は貴様と仲間たちの為にどんなときでも立ったぞ。そして、前へ出てこの俺を真正面から殴り倒した!煉 ヴィクトルもそうだ!どんな相手でも堂々と前から敵を倒した!俺よりも奴らのことを知っているお前がそれを一番わかっているはずだッ!」

 

二人の拳をぶつけ合ったサイラオーグからの言葉。

 

「それにおまえはあの男たちが本当に死んだと思っているのか?」

 

ーっ。

 

サイラオーグの言葉に言葉を失ったリアスと木場を見てサイラオーグは苦笑する。

 

「それこそ滑稽だ。あの男たちが死ぬはずがない。ひとつ訊こう。煉 ヴィクトルに約束を破ったことはあるか?」

 

「・・・・ないわ」

 

「ハハハハハハハハッ!」

 

リアスの一言を聞いて、サイラオーグは一際笑ったあと、強い眼差しで言う。

 

「ならやはりあの男は死んでいない。奴は滅茶苦茶ではあるが、それを全て計算に入れているかように誰もが奴の手の平の上で踊ろされる。それが奴だ。そしてなにより、自分のものを置いてどこかに行こうとはしない。それがエロ魔王だろう?」

 

それだけを言い残してサイラオーグは踵を返す。

 

「俺は先に戦場で待つ。必ず来い、リアス。そして、グレモリー眷属!あの男たちが守ろうとしている冥界の子供たちを守らずして何が『おっぱいドラゴン』と『エロ魔王』の仲間かッ!」

 

それだけを言い残してリアスたちから去っていくサイラオーグ。その言葉に少しだけ瞳に光が戻ったリアス。木場はそのあとすぐに歩みを進めるといつものメイド姿じゃない戦闘服を身に着けたグレイフィアがいた。木場はグレイフィアから現四大魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブの現在地の書かれた地図を貰うと

 

「私の義弟になる者がこの程度で消滅など許されることではありませんから。早く生存の情報を得てリアスを奮い立たせておあげなさい。力ある若手がこの冥界の危機に立たずして次世代を名乗るなどおこがましいことです。私は義妹と義弟が冥界を背負えるほどの逸材だと信じていますから」

 

微笑みながら言うグレイフィアを見て木場は思った。

 

・・・・僕たちだけじゃないか。彼らを死んだと思い込んでいるのは・・・・・。そうだ、イッセーくんもレンくんも今まで常識という言葉を乗り越えて来たじゃないか。仲間なのに二人を信じなくてどうする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、木場、リアス、朱乃、アーシア、小猫、レイヴェルたちはアジュカのいる場所へと到達した。

 

「こちらへ。屋上でアジュカさまがお待ちです」

 

スーツを着た女性悪魔に案内され、エレベーター乗り着いた先は、庭園だった。

 

「グレモリー眷属か。勢ぞろいでここに来るとはね」

 

「アジュカさま」

 

視線を送った先には庭園の中央の椅子に座っているアジュカ・ベルゼブブだった。

 

「話は聞いている。大変なものに巻き込まれたようだ。いや、キミたちには今更なことか。毎度、その手の襲撃を受けていて有名だからね」

 

「アジュカさまに見ていただきたいものがあります」

 

「ほう、見て欲しいもの。しかし、それはあとなりそうだ。キミたちの他にもお客さまが来訪しているようなのでね」

 

庭園に木場たち以外の何物かが現れる。

 

「人間界のこのようなところにいたとはな。偽りの魔王アジュカ」

 

巨大なオーラを体に漂わせ、アジュカを「偽り」と聞いた時点で木場たちは何者かわかった。

 

「口調だけで一発で把握できてしまえるのが旧魔王派の魅力だと思うよ」

 

「僕もいるんだ」

 

聞き覚えのある声のほうに視線を向けると白髪の青年ジークフリートがいた。

 

「・・・彼を殺した者たち・・・」

 

後方で朱乃の殺意がざわめきだした。

 

「初めまして、アジュカ・ベルゼブブ。英雄派のジークフリートです。それとこの方々は英雄派に協力してくれている前魔王関係者ですよ」

 

「知っているよ、キミは元教会の戦士だったね、ジークフリートくん。上位ランクに名を連ねていた者だ。協力体勢前は我々にとって脅威だった。二つ名は魔帝(カオスエッジ)ジークだったかな。それで、俺に何の用があるのだろうか?先客がいるのでね。用件を聞こうか」

 

「以前より打診していたことですよ。我々と同盟を結ばないだろうか、アジュカ・ベルゼブブ」

 

この場にいる木場たちは驚愕した。そして、ジークフリートは淡々に続けるとアジュカはサーゼクスとは違う思想をし、アジュカも魔王でありながら個人的な嗜好で動いている。更に言えば、アジュカとサーゼクスはイレギュラーな悪魔だ。加わればこれ以上の戦力はない。だが、アジュカはジークフリートの言う同盟をハッキリと断った。サーゼクスを裏切ることは出来ないという理由で。

 

「そうですか。『友達』、僕にとってはわからない理由だが、そういう断わり方もあるというのは知っているよ」

 

皮肉げな笑みを浮かばせるジークに対して旧魔王の悪魔たちは色めきだつとアジュカは片手を突きだして小さな魔方陣を展開させる。

 

「言っても無駄だとはわかっている。仕方ない、俺も魔王の仕事を久しぶりにしようか。あなた方を消そう」

 

「「「ふざけるなッ!」」」

 

激高した旧魔王派の悪魔たちは大質量の魔力の波動を放出するがアジュカは動じることなく手元の魔方陣を操作すると魔力の波動がすべて軌道をはずしてあらぬ方向に飛んでいった。

 

「俺の能力ことは大体把握してここに赴いているのだろう?まさか、自分の魔力だけは問題なく通るとでも思ったのだろうか?それとも強化してきて、この結果だったことに驚いているのか・・・・。どちらにしてもあなた方では無理だ」

 

アジュカの苦笑に顔をひくつかせる旧魔王派。アジュカは更に先程旧魔王派の放った魔力の波動を操り、追撃し、旧魔王派をあっさりと倒してしまう。

 

「さて、残るは英雄派のジークフリートくんか。どうするかな?」

 

ジークフリートに視線を向けるアジュカにジークフリートは肩をすくめる。

 

「まだ切り札は残っているので、撤退はそれを使ってからにしてみようと思っているよ」

 

「ほう、それは興味深い。だが、そちらにいるグレモリー眷属の『騎士(ナイト)』くん。さっきから、彼にいい殺気を送ってくれていたね。どうだろうか、彼はキミが相手をしてみては?見たところ、この英雄派の彼と面識はあるようだ。このビルと屋上庭園は特別に手をかけていてね。かなりの堅牢さを持ち合わせているよ。多少威力のある攻撃があっても崩壊することはない」

 

・・・・願ってもないお申し出だと思ってしまった。

 

木場は一歩前に出ていく。

 

「・・・祐斗?」

 

リアスが木場の行動を見て訝しげに訊いてくる。

 

「・・・・部長、僕はいきます。もし、共に戦ってくださるのであれば、そのときはよろしくお願いします」

 

それだけを伝え、歩きながら手元に聖魔剣を一振り創りだす木場。そして、煉の魔剣を見て

 

「レンくん。キミの力を貸してくれ」

 

煉の魔剣を握りしめる木場。そして、木場の脳裏にあることが過る。それはある日、木場に頼まれて剣の修業が終わったとき煉が木場に言ったことだ。

 

木場。万が一、いや、億に一、兆に一。ほぼ0%だが、俺が死んだときのことを想定して頼み上がる。俺の代わりにリアスたちを守ってくれ。

 

「何を言ってるんだい。キミが死ぬなんて想像もできないよ」

 

ああ、俺は死ぬつもりはねえ。つーか、死なん。だがな、絶対の死なない奴なんていない。だから、いざというとき俺の魔剣をお前に託す。俺の魔剣は普通魔剣とは違ってな。俺の力の一部でありながら俺が死んでも存在する魔剣なんだ。だから

 

一拍して煉は木場に頼み込む。

 

俺の魔剣で仲間を、リアスたちを助けてやってくれ。

 

木場は煉の魔剣を力強く握りしめて感じる煉の魔剣の力。それはあまりにも禍々しくそして、力強くも感じる魔剣だが、気を緩めたら全てを喰われるようにも感じた木場は驚愕する。

 

レンくん、キミはこんな恐ろしい剣をよく平然と扱えるね。本当に魔剣という名ににピッタリな剣だよ。

 

片手に聖魔剣、もう片手に煉の魔剣をかまえ、木場は憎悪の瞳で怨敵を捉える。

 

「ジークフリート、悪いが僕のこの抑えられない激情をぶつけさせてもらう。貴女方のせいで僕の親友たちは帰ってこられなかった。あなたが死ぬには十分な理由だ」

 

「キミからかつてないほどの重圧がにじみ出ているね・・・・。おもしろい。しかし、キミたちグレモリー眷属とは驚くほどに縁があるようだ。このようなところでも出会うだなんてさすがに想像はできなかった。まあ、いいか。さあ、決着をつけようか、赤龍帝と強奪神の無二の親友ナイトくん」

 

ジークフリートは背中に龍の腕を出現させ四本の魔剣を全て抜き放つ。

 

「現状でキミと戦い、勝ったとしても深手は否めめないだろうね。それほどまでにキミの実力は向上している。キミに勝利したとしても、その後にリアス・グレモリーや姫島朱乃の攻撃をもらえば僕は確実に命を落とす。このまま逃げるにも悪くないんだけど・・・アジュカ・ベルゼブブとの交渉に失敗して、グレモリー眷属を相手に何もせず逃げたとあっては仲間や下の者に示しがつかない」

 

独りごちながらジークフリートは懐からピストル型の注射器を取り出す。

 

「これは旧魔王シャルバ・ベルゼブブの協力により完成に至ったもの。いわばドーピング剤だ。神器のね」

 

「神器の能力を強化するというのか」

 

木場の問いにジークフリートは頷く。

 

「聖書に記されし神が生み出した神器に、宿敵である真の魔王の血を加工して注入した場合、どのような結果を生み出すか。それが研究のテーマだった。かなり犠牲と膨大なデータ蓄積の末に神聖なアイテムと深淵の魔性は融合を果たした」

 

ジークフリートは注射器を首元に近づけて挿入していくとミチミチと奇怪な音を立てながら龍の腕は太く肥大化していき、顔中に血管が浮かび上がり、全身の筋肉が別の生物のようにうごめき回り、素の姿は蜘蛛のバケモノのようなシルエットだった。

 

『「業魔人(カオス・ドライブ)」この状態を僕たちはそう呼称している。このドーピング剤を「業魔人化(カオス・ブレイク)」と呼んでいてね、それぞれ「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」と「禁手(バランス・ブレイカー)」から名称の一部を拝借しているんだよ』

 

「素晴らしい。人間とは、時には天使や悪魔すらも超えるものを作り出してしまう。俺はやはり人間こそが可能性の塊なのだと思えてしまうよ」

 

アジュカがそう言う。そして、魔人と化したジークフリートが一歩前へ出るだけで屋上庭園の空気が一変し、瘴気が渦巻いていく。魔剣と同化したし、異常な腕となった龍の手(トゥワイス・クリティカル)がしなる。

 

来る!

 

そう判断した木場は前へ駆け出すと先程まで木場がいたところに渦巻き状の鋭いオーラと氷の柱が生まれて、地が抉れていた。木場はその場で聖魔剣を聖剣に変えて騎士団を一体具現化し、空中を蹴って、距離を取った。刹那、騎士団のいるところに極大なオーラが奔流して騎士団を跡形もなく消え去った。屋上に降り立った木場は瞬時にジークフリートに詰め寄り、煉の魔剣を振るうが魔剣の一本で受け止められてしまう。

 

やっぱり、レンくんじゃないとこの魔剣の力は使いこなせない・・・・ッ!

 

木場は試しに煉の魔剣を変化させ次元刀にしようとしたが何の反応もなかった。そして、木場とジークフリートの剣戟合戦はしばらく続いていった。残像を生みながら高速で攻撃する木場をジークフリートは魔剣で防ぐ。五本の魔剣が一斉に木場目掛けてさし込まれてきたが木場はそれを避け、足元に聖魔剣を創りだして、ジークフリートの脇腹に蹴り込むが儚い金属音を立てて、木場の聖魔剣は砕け散った。それを見たジークフリートは不敵に笑んだ。

 

『どうやら、強化された僕の肉体はキミの龍殺しの聖魔剣を超えていたようだ』

 

ジークフリートは木場の足を掴みそのまま宙に高く持ち上げ下に叩きつける。言い難い激痛のなか、木場は懸命に意識を繋ぎ止め、立ち上がり足を動かした。その場から一時退避して態勢を立て直してすぐに斬りこみに行くがジークフリートは二本の魔剣で防いだ。

 

『防御の薄いキミではいまの一撃で相当な傷を負ったんじゃないかな?』

 

ジークフリートが低い声音で笑う。木場は体中から残った力を総動員させて、足に注ぎ込むとなんとか、足のふらつきが止まったと思った矢先に木場の足元が氷に包まれていた。木場はすぐに炎の聖魔剣で消失させようとするが二本の氷柱が木場の両足を貫く。

 

足を封じられた木場は手元に大量の聖魔剣を創造して盾を作るが束になった聖魔剣が破壊され、煉の魔剣を握っている左腕ごと難なく斬り落とされてしまう。片腕となった木場は炎の聖魔剣を振り払い、後方に飛び退いたが激痛のあまり、膝をついてしまう。

 

「祐斗・・・・・ッ!」

 

沈痛な表情で木場の名を呼ぶリアス。朱乃や小猫たちもハラハラしながら見ているだけで動けない状態になっていた。アーシアは恐慌状態となって、手を木場に向けるが回復のオーラは手から弱弱しく出現するだけだった。木場は懐からフェニックスの涙を傷口にかけ、傷をふさぐ。この状況を見て、ジークフリートは嘲笑した。

 

『酷いな。先日出会ったときのグレモリー眷属とは思えない。先ほど、いい殺気を放ってくれたから、木場祐斗との戦いに乱入でもしてくれるものかと期待したんだけどね。まさか、この程度とは・・・』

 

正直、木場もいっぱいいっぱいだった。いつもは木場の隣や前に一誠や煉がいたが、今はいない。それだけで木場は今、無様に膝をついていた。

 

『兵藤一誠は無駄死にしたよ。出涸らしとなったオーフィスを救うためにシャルバと相討ちになったんだろう?アキレウスから聞いたよ。あのまま兵藤一誠がオーフィスを放置して帰還すれば、いまごろ態勢を整えて再出撃できただろうに。オーフィスはともかく、シャルバはあとで討てたはずだよ。自分の後先を考えないで行動するのは赤龍帝のよくないところだいや、そう考えるなら強奪神も勝てた戦いにわざわざ余裕を見せて負けるから強奪神も無駄死と言ったらそうなるだろうね』

 

ーっ。

 

・・・・・・・・・。

 

ジークフリートの台詞を聞いた木場の思考は一瞬真っ白になり、次の瞬間にはドス黒いものが底から湧きあがってきた。

 

ヒョウドウイッセイ ト レン ヴィクトル ハ ムダジニ シタヨ。

 

・・・無駄死に・・・・?イッセーくんとレンくんが・・・・・?

 

・・・ふざけるな。・・・・ふざけるなよ・・・・・ッ!

 

木場の心を支配するのは、悔しさと悲しみ。全身を震わせながら木場は足に力を込めていくと徐々に立ち上がり始めた。ぶるぶると両足が情けなく震わせながら、木場はどうにか立ち上がりのどまで出かけているものを木場は遠慮なしで点に向かって放った。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

腹の底から、心の底から、何かが湧き上がってふきだしてきたかのように。

 

「・・・・まだだ」

 

煉の魔剣を拾い、一歩、また一歩木場はジークフリートに近づいて行く。

 

「まだ戦えるッ!僕は立たないといけなんだッ!あの男たちのようにッ!グレモリー眷属の兵藤一誠はどんなときでも、どんな相手でも決して臆せず立ち向かったッ!煉 ヴィクトルはどんなときでも堂々と前へ出たッ!赤龍帝と強奪神はあなたが貶していい男たちじゃないッ!僕の親友たちをバカにするなッ!」

 

涙混じりの咆哮にジークフリートはきっぱりと断ずる。

 

『無駄だっ!あの赤龍帝や強奪神のようにいこうとも、キミでは限界がある!ただの人からの転生者では、いくら才能があろうとも肉体の限界がダメージがキミを止める!』

 

木場は煉の魔剣を血が出るほど強く握りしめて懇願する。

 

頼む!イッセーくんの意地を!レンくんの力を!少しでもいいから、僕にキミたちの力を貸してくれ! 

 

剣をかまえて前に飛びだしていこうとしたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前もずいぶんと暑っ苦しくなったな、木場』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の声にこの場にいる誰もが目を見開き驚いた。その声はこの場にいる全員が聞き覚えている声だった。そして、次の瞬間、煉の魔剣が急に木場の手元から離れ、宙に浮き、黒い光に包まれ始めると

 

『解放しろ。侵略する強奪(インヴァード・ピヤージュ)

 

次の瞬間、魔剣が黒い閃光を放ち、木場たちは思わず目を瞑ってしまった。そして、目を開けた瞬間視界に映しだされたのは黒い髪にところところに白が混ざった髪に左眼は紅く、右目は金色の男性。一瞬、誰だかわからなかったがそんなことは杞憂に終わった。見た目が変わったとしてもすぐにわかってしまうほどの存在感。そして、いかなるときでも堂々とし、不敵な笑みを浮かばせている男はこの世で一人しかいない。

 

「天国も地獄もつまらなかったから戻って来てやったぜ」

 

「レン!」

 

「レン!」

 

「レンくん!」

 

「レンさん!」

 

「レン先輩!」

 

「レンさま!」

 

リアス、朱乃、木場、アーシア、小猫、レイヴェルが一斉に煉の名前を呼ぶと煉は平然とした表情でリアスたちに手を上げる。

 

「よぉ、煉 ヴィクトル。ただいま帰還しました」

 

笑みを浮かばせて言う煉に朱乃は駆け寄って煉に抱き着いた。

 

「・・・・お願い。私を置いていかないで・・・・・あなたのいない世界なんてもうゴメンなのだから・・・」

 

「悪かった。ごめんな、朱乃」

 

煉は短く謝り、朱乃を優しく抱きして顔を上げさせて朱乃の唇を奪うようにキスする。

 

「-。んっ」

 

朱乃も涙を流しながら煉と数秒キスを続けると

 

「・・・・もう大丈夫ですわ。あなたが戻って来てくれたのですから」

 

次にリアスが涙を流しながら歩み寄る。

 

「・・・・・よく、帰ってきたわね」

 

「おいおい、約束しただろう?必ずお前たちのところへ帰ってくるって」

 

「・・・・そうだったわね」

 

リアスはその言葉を聞いて愛しそうに煉に抱き着くと煉は朱乃と同じようにリアスにキスをして言う。

 

「いつまで辛気臭い顔してんだよ。いつも言ってんだろが、俺は強情でいるお前が好きなんだよ。俺の女なら俺の好きな女のままでいな」

 

煉はもう一度キスをして視線を木場とジークフリートに向けると

 

「さて、俺がさっさと終わらせるのもいいが、木場。メインはお前にくれてやるよ。それにどうやら、お前に力を貸してくれる奴も来たみたいだしな」

 

「イッセーさんの駒が」

 

煉の言葉と同時、紅い閃光を発する一斉の駒の一つが宙に浮かび木場のもとに飛来して来たと思ったら駒が弾けるように光を深めるとそこにあったのは一本の聖剣、アスカロンだった。

 

「・・・・イッセーくんの駒が・・・・アスカロンに・・・・?」

 

 

 

いこうぜ、ダチ公。

 

 

「-っ」

 

一斉の声が聞こえたような気がした木場の顔は涙にあふれていた。顔中をしわくちゃにしてアスカロンを手にする木場。

 

「そうだね、イッセーくん。いこうよ!キミとなら、僕はどこまでも強くなれるんだからさッ!キミが力を貸してくれるならッ!どんな相手だろうと・・・・・切り刻めるッ!」

 

『・・・・・ッッ!バカな・・・・ッ!立つというのか・・・・・ッ!血をあれだけ失えば自慢の足も動かなくなるはずだ・・・・・ッ!』

 

「いけってさ。立ってさ。この剣を通してイッセーくんが僕に無茶を言うんだ。じゃあ、いかなきゃダメじゃないか・・・・・ッ!」

 

アスカロンから膨大なオーラを解き放たれるとジークフリートの体から異様な煙をあげ始めていた。

 

『・・・・・なんだ、その聖剣から感じる・・・・・力は・・・・・ッ』

 

アスカロンがジークフリートを苦しめているなかジークフリートが持っているグラムが輝き始めた。その輝きは木場に向けられ、その輝きはまるで木場に受け入れているよな光だった。

 

『-っ!グラムが!魔帝剣が呼応している!?木場祐斗に!?まさか、魔人化(カオス・ドライブ)の弊害なのか!?』

 

仰天するジークフリート。木場はグラムを真正面から捉え、叫ぶ。

 

「来い、グラム!僕を選ぶというのなら、僕はキミを受け入れよう!」

 

木場の言葉を受けて、グラムはジークフリートを拒絶して木場の眼前の地面に突き刺さる。それを見たジークフリートは首を横に振って、起きたことが信じられないでいた。

 

『こんなことが・・・・・ッ!こんなことがあり得るのか!?駒だけで赤龍帝はッ!戦うというのか!?この男を立たせるというのか!?』

 

「ああ、そのとおりだ。イッセーはなバカで、嫉妬深くて、エロくて、おっぱい信者で、すぐに感情的になる奴だが、誰よりも仲間想いで、誰よりも心が強く、誰よりも気合と根性がある男だ。そのイッセーの力を少しでも宿っている駒だけでもあいつは仲間のために戦うのさ」

 

仰天するジークフリートの目の前で魔剣を肩に担いでいる煉がそう教えている間にアーシアたちが木場の腕を治し治った腕でグラムを握っていた。

 

『まだだよ!それでも僕は、英雄の子孫として』

 

言いかけたジークフリートの頭上に稲光が閃いた。刹那、夜空を裂くような極大な雷光がジークフリートの全身を飲み込んでいく。宙に視線を向けるとそこには六枚の堕天使の翼を広げる朱乃の姿があった。

 

「これが私の最後の手。堕天使化ですわ。父とアザゼルに頼んで、『雷光』の血を高めてもらったの」

 

朱乃の両手首には魔術文字が刻まれたブレスレット。

 

「ついでだ。喰らっとけ」

 

煉は全身黒焦げとなったジークフリートの腕を全て斬り落して木場に告げる。

 

「木場!トドメだ!」

 

ズンッと木場の持つアスカロンとグラムが正面からジークフリートに深々と突き刺さった。ジークフリートあ口から血の塊を吐き出していく。

 

『・・・・この僕が・・・・やられる・・・・・?』

 

ジークフリートは自分を裏切ったグラムをそっと撫でるがグラムは拒絶するかのようにジークフリートの手を焦がす。それを見たジークフリートは自嘲した。

 

「勝ったよ、イッセーくん」

 

木場はそれだけつぶやき、二本の剣をジークフリートの体から抜き放った。

 

 

 

 

 

 

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