強欲を司る略奪者   作:ユキシア

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神隠しの町タウビリア

魔獣騒動が終わり、煉たちはいつもの日常へと戻ったなか、一つの変化が生まれた。

 

「では、転校生を紹介する。入ってきなさい」

 

担任の言葉に従い教室の扉を開けると男女共に声を上げる。入ってきたのはウェーブを引いたショートカットが、金髪に整った小顔を引き立てている美少女だった。その転校生を見た松田や元浜は言うまでもなく息を荒くして転校生を凝視している。

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

転校生を凝視しているなか一誠は頭を抱え、アーシア、ゼノヴィア、イリナは目元を引きつらせていた。まるで、転校生が何者なのか知っているかのように。そして教壇に立った転校生はそこで初めて口を開いた。

 

「初めまして、歌憐 ヴィクトルといいます。これからは兄と一緒によろしくお願いします」

 

まるで歌っているかのような声で笑顔で挨拶する煉の妹を名乗る美少女。一誠は歌憐を見て激しい頭痛がするかのように頭を抱えて心の中で嘆いていた。

 

レンの野郎・・・・・ッ!何で、何で美少女になった姿で転校してくるんだよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!

 

そう、転校生、歌憐 ヴィクトルの正体は煉本人だった。これは魔獣騒動が終わって煉たちが人間界に戻ってきた時、部室で優雅に紅茶を飲む一人の美少女に一誠やアーシアたちは驚いているときのことだった。

 

「あ、あの部長。あの美少女はどちら様ですか?」

 

部室の扉の前で隣にいたリアスに一誠は尋ねているとリアスはイタズラな笑みを浮かばせて一誠に言う。

 

「あなたもよく知っている人よ。話しかけてみなさい」

 

リアスの言葉に一誠は疑問を持ちつつ部室に入り、その美少女に話しかける。

 

「は、初めまして・・・・?」

 

「お久しぶりです。お邪魔しております」

 

紅茶の入っているティーカップを置き、笑顔で挨拶してくる美少女に一誠は顔を赤くしながら美少女に訊く。

 

「えっと、どちら様でしょうか?」

 

「え?」

 

一誠の言葉にショックを受けたのか、ポロポロと涙を流す美少女は手で顔を覆った。

 

「ひどい・・・私にあんなことまでしといて・・・。やっとあなたに会えたと思ったら私のことを忘れるなんて・・・・。あんまりです・・・・・ッ!」

 

「イッセーさん!」

 

「おい!イッセー!いったい何をしたんだ!?」

 

「そうよ!女の人を泣かすなんて・・・・!イッセーくんってそういう人だったのね!」

 

「・・・・・・最低です」

 

涙を流す美少女を庇うように一誠を睨みながら怒るアーシアたちに一誠は狼狽する。

 

「いや、ちょっと待ってくれ!お、俺はその人に今日初めて会ったばかりだぞ!」

 

「・・・・私の初めてを奪って・・そんなことをおっしゃるんですね・・・・」

 

その言葉にアーシアは涙目で一誠を睨み、ゼノヴィアはエクス・デュランダルを握り、イリナは光を出して、小猫は一誠に向けてシャドーする。全員、一誠に今までにないほどの殺気をぶつけながらゆっくりと近づいて行くのを見た一誠は尻餅しながらも後退しながらも必死に誤解を解こうとする。

 

「いやいやいや、アーシアも皆、落ち着いて!ゼノヴィア!それはシャレにならん!イリナも光はやめて!小猫ちゃんもそんな冷たい目でシャドーしながら俺を見ないで!」

 

必死に誤解を解こうと口を動かすがアーシアたちはそれを聞いていないかのようにドンドン近づいていくと一誠とアーシアたちの間にリアスが入って仲裁する。

 

「アーシア、それにゼノヴィアもイリナも小猫も落ち着きなさい。レンもそろそろ悪ふざけは止めなさい」

 

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

リアスの言葉に目を見開きながらもリアスの視線の先にいる美少女に視線を向けると美少女は声を殺しながら必死に笑いを堪えていた。

 

「ク、ククク・・・・ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ダメだ!我慢できねえ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

腹を抱えながら大声で笑う美少女が突然、煉になるのを見た一誠たちは驚愕する。煉は呼吸を整え、涙を拭きながら立ち上がる。

 

「どうよ?いい演技だったろ?」

 

「「「「「「レン(先輩)!」」」」」」

 

美少女が突然、煉になったことに驚愕する一誠ただがリアスが一誠たちに説明する。

 

「イッセーが肉体をグレートレッドの肉体を使って生き返ったようにレンもグラシス・マモンさま、魔神の肉体を使って生き返ったの。だから、今のレンは魔神であり、肉体だけをグラシス・マモンさまにもなれるみたいなの」

 

「正確には今まで取り込んだ奴らの肉体も使える。肉体を変換したらこの通り」

 

煉はまた美少女にへと姿を変える。

 

「見た目じゃなく、肉体そのものが変化しているからな。体の構造も女そのものだ。どうだ?イッセー。胸でも揉むか?」

 

煉は自分の胸を揉みながら一誠に見せると一誠はその胸を一瞬、凝視していたがすぐに我に返り目を逸らす。

 

「だ、誰が男の胸など触るか!」

 

「今は肉体だけは女だぞ。ま、いっか。俺、しばらくこの格好で学園通うから」

 

「はぁ!?何で!?」

 

「面白いから」

 

一誠の問いに煉は美少女の姿で満面な笑みを浮かばせて答えた。そして、転校生としてきた煉、いや、歌憐の周りには人が集まっていた。

 

「歌憐さんってヴィクトルくんも妹さんなのよね!」

 

「はい。私は今までドイツにいましたが兄に呼ばれてこの学園に転校して来ました」

 

「でも、お兄さんと随分見た目は違うのね」

 

「私は祖母似で兄は母似なのです」

 

「お兄さんってやっぱり海外でも女の人を口説いたりしてるの!?」

 

「はい。でも、兄は女の人を泣かせたことはありませんよ」

 

「ヴィクトルくんって若社長で噂聞いたことあるんだけど本当?」

 

「はい。本当です」

 

女性陣から煉に関する質問を律儀に答える歌憐、いや、煉を一誠たちは見ていた。

 

「・・・・非常識な奴とは思っていたがついに性別をも非常識になったか」

 

「・・・まあ、レンだしな」

 

「ほう、誰が非常識だって?イッセー」

 

ゼノヴィアの言葉に一誠も肯定するかのように言うといつのまにか背後に現れて耳元でつぶやいた煉に体をビクつかせる一誠は煉と距離を取って煉につぶやかれた耳を押さえる。

 

「な、なんだよ!?驚かすなよ!レ、ングッ!?」

 

「アホ、今の俺は歌憐だ。わかりましたか?イッセーくん」

 

口を押えられ煉は女声で一誠に忠告すると一誠は頷いて返事をすると手を離す。

 

「それと、神様ってんのはきまぐれなんだよ。常識、非常識を抜いてな」

 

「「歌憐ちゃん!」」

 

一誠を突き飛ばして煉の前に現れる松田と元浜は煉に手を差し伸べ

 

「「俺と友達になってください!」」

 

頭を綺麗に90°下げる松田と元浜に煉は笑顔で二人の手を握る。

 

「ええ、私でよければ喜んで」

 

「「いよっしゃあああああああああああああああああああああっっ!とうとう、俺らにも美少女が来たーーーーーーーーーーー!!」」

 

感涙しながら声を上げる松田と元浜を見て煉は何かを思いついたのかいやらしい笑みを浮かばせて一誠の腕に抱きつく。

 

「先に申しておきますが、私はすでに婚約者がいますので友達以上の関係にはなれません。そうですよね、イッセーくん」

 

「なっ!?何、言ってやがる!?」

 

「なにーーーーーーーーーーッ!イッセーェェェェエエエエエエッ!貴様ぁぁぁああああああッ!」

 

「またしても貴様に美少女だとぉぉぉぉおおおおおおおおっ!」

 

狂ったかのように一誠の胸ぐらを掴み激しく揺らす松田と元浜に一誠はそれでも煉がついた嘘だと説明しようとしていたが

 

「すでに兄は了承済みです。高校を卒業と同時に私とイッセーくんは一つになります」

 

頬を赤く染めながら照れる振りをする煉を見た松田と元浜だけじゃなくクラス全員の視線が一誠に向けられる。

 

「兵藤、ヴィクトルくんの妹にまで・・・」

 

「野獣・・・・きっと無理矢理言わせてんのね」

 

「最低ね」

 

何の罪もないのに一人の人物によってクラスの女子から罵倒を喰らう一誠を見て煉は誰にも見れないように密かに笑いを堪えていた。

 

レンの野郎ぉぉぉおおおおおおっ!俺を貶めて楽しいかぁぁあああああっ!?

 

心の中で煉に恨みの視線を送ると煉は口パクで一誠に告げた。

 

た、の、し、い、ぞ。

 

一誠の心を読んでいるかのよう煉は一誠に告げる。その後も煉は一誠を貶め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっはははははははははははいっひひひひひひひひひひひひひひひゲホガホ!ははははははははははははははははひーひー!ダメだ!笑いが止まらねえ!」

 

男に戻った煉は部室で寝転びながら腹を抱え大声で笑っているなか一誠はソファで死んでいるかのように倒れていた。

 

「死んだ・・・・俺の学園生活は死んだ・・・・・・」

 

「イッセーさん、しっかりしてください」

 

一誠を必死に慰めるアーシアに一誠は微笑みながらアーシアの頭を撫でる。

 

「大丈夫だ・・・・アーシア。例え、俺がこの学園から抹消されてもアーシアにはもう大事な仲間がいる・・・・」

 

「イッセーさん!死んじゃ嫌です!」

 

涙を流しながら一誠の手を強く握るアーシアに一誠は笑みを崩さず言い続ける。

 

「大丈夫・・・・・俺はずっと、アーシアの傍で見守・・・・って・・・い・・・・・く・・から」

 

「イッセーさん?イッセーさん!イッセーさん!!いやあああああああああああああっ!」

 

アーシアの握っている手がゆっくりと落ちていき、アーシアは一誠を抱きしめ悲痛な叫ぶ声をあげるなか、煉は手を合わせて目を瞑る。

 

「赤龍帝、兵藤一誠。死す。さよなら、イッセー。お前のハーレムは俺が責任を持って大事にするよ」

 

「いやいや、イッセーくんは死んでないよ!」

 

珍しくもツッコミを入れる木場。煉はソファに座り朱乃に入れてもらった紅茶を飲みながら今日のこと考える。

 

「にしてもこの魔神の体は便利だわ。いや、魔神と神器が融合バージョンか。見た目だけじゃなく体の構造までもそっくりそのまま女になれるなんてな。たまには女で学園に行くのも悪くはないな」

 

「もう・・・・止めて・・・・これ以上何かされたら俺、死んじゃう」

 

「おっ、生き返ったか。イッセー」

 

何とか一命を取り留めた一誠に煉は再び歌憐にチェンジする。

 

「どうしました?イッセーくん。まさか、アーシアのようにこんな健気な女の子に会いたくないのですか?」

 

微笑みながら一誠に顔を近づける煉に一誠は顔を背けてながら言う。

 

「だ、誰がアーシアのように健気だ。腹の中は真っ黒のくせによ!」

 

「魔を司る神と呼んで魔神だからな、俺は。笑顔に騙されてはいけませんよ?」

 

「クソ!見た目が美少女だから殴れねえ!」

 

「ハハハハハハ!」

 

苛づく一誠に笑う煉。もはや見慣れた光景のように見るリアスたち。すると、突如部室に魔方陣が現れる。そして、その魔方陣から現れたのはサーゼクスだった。

 

「お兄さま!」

 

「やぁ、リアス。それに義弟に眷属の皆。この前の魔獣騒動のときはありがとう。キミたち若手には助けられたよ」

 

にこやかに笑いながら労いの言葉を送るサーゼクスに煉は話しかける。

 

「どうした?サーゼクス。確かまだ魔獣騒動で起きた被害の確認やこれからのテロリストでの会議が山ほどあるんじゃなかったか?」

 

いつのまにか男に戻った煉はサーゼクスにそう言うとサーゼクスは真剣な眼差しで言う。

 

「レンくん。実はキミに頼みたい仕事があるんだ」

 

「俺に?」

 

サーゼクスは煉に指名すると煉は怪訝そうにするがサーゼクスは話を続ける。

 

「魔獣騒動が終わりすぐ、新たな事件が起きたんだ。いや、正確には前から起きてはいるんだけどね」

 

「何だよ。もったいぶらずに言えよ」

 

急かすように言う煉にサーゼクスは口を開く。

 

「人が消える町。タウビリア。この町は毎年必ずと言っていいほど誰かが行方不明になっているらしんだ。そして、行方不明になった人たちは誰一人戻ってこない」

 

「神隠しってわけか。で、それのどこが新たな事件なんだ?」

 

「行方不明になる人たちは毎年多くて七人なんだが、魔獣騒動が終わると同時、ここ数日ですでに数十人が行方不明になっているんだ。調査にむかった上級悪魔も含めてね」

 

サーゼクスの言葉に煉以外全員が目を見開いていたが煉はため息を吐きながらサーゼクスに問う。

 

「で、俺に調査して来いと」

 

「ああ、もちろん強制じゃない。嫌なら他の者に『いいぜ、やってやる』え?」

 

「やってやるって言ったんだよ。ただし、報酬は高くもらうぞ」

 

サーゼクスに頼みを了承する煉。それを聞いたサーゼクスは申し訳なさそうに煉に謝る。

 

「すまない。何度もキミに無理を押し付けてしまって」

 

「気にすんな。お前は払う報酬の額でも数えてな。さっそく今から行くな」

 

「レン!私も行くわ!」

 

リアスも煉の任務に同行しようとしたが煉は首を横に振った。

 

「いや、リアスにはやることが大量にあるだろう?この仕事は俺に任せな。あ、そうだ。サーゼクス、一人連れて行きたい奴がいるんだがいいか?」

 

「もちろん、かまわないよ。誰を連れて行くんだい?」

 

「ああ、それは・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、やってきました!神隠しの町、タウビリア!さぁ、張り切っていこう!」

 

歌憐バージョンになった煉がテンションを上げていると

 

「いや、何で俺がお前と一緒に行かなきゃならねえんだよ!?」

 

「いいじゃねえか。匙。ちょっと付き合え」

 

生徒会書記でソーナ・シトリーの兵士(ポーン)の匙元士郎だった。

 

「俺、生徒会での仕事が残っているのによ・・・・」

 

「魔王のため、お前の愛するソーナのためと考えれば頑張れるだろ?ま、俺は生徒会の仕事手伝わねえが」

 

「そこは手伝えよ!」

 

煉は今回の仕事で付き添いで匙を選び、匙もソーナの命令でしぶしぶ煉に付き添うことになった。

 

「というか、何で俺を選んだよ?お前一人でも大丈夫だろ。それに兵藤やお前にはリアス先輩がいるだろう」

 

「イッセーはまだドライグが不調でいざというとき紅の鎧になれねえし、リアスたちはギャスパーや魔法使いたちのこともある。それに今回の事件は呪いや何かの呪縛の可能性が高いと俺はふんでいる。だからヴリトラの力を持つお前を呼んだんだよ」

 

「・・・・なるほど、でもさ、一つ気になってるんだが何で女のままなんだ?」

 

「ん?なんだ?気になるのか?」

 

ニヤニヤしながらスカートをめくる煉に匙は顔を赤くしながら顔を背ける。

 

「バッ!んなわけねえだろ!」

 

「そんな大声で言わなくても聞こえるって。意識しているのバレバレだぞ。それといざというとき女の方が都合がいいんだよ。何より女の格好だとお前をいじりやすいしな」

 

「そっちが目的か!」

 

ツッコム匙にケラケラと笑う煉たちはとうとう問題のある神隠しの町タウビリアに到着した。煉たちは辺りを見渡すとそこは山奥である人口が数百程度の小さな町だったが煉たちが見渡す限りの町の人たちの数はすでに半数以下になっていた。

 

「ふ~ん。ここが神隠しの町か」

 

煉はそうつぶやきながら町に入っていくと煉に近づく一人の老人が現れた。

 

「依頼に応じてくださった悪魔さまでしょうか?」

 

「はい、そうです。依頼主の町長さまでしょうか?」

 

歌憐モードで話す煉に町長は以外そうな声を出す。

 

「おやおや、まさかこんな美人な悪魔さまが来てくださるとは」

 

「いえいえ、それほどでもないですよ。それより現状のことを教えてくれませんか?」

 

「はい、実は・・・・」

 

町長から今までの行方不明者と現在の現状を訊くとすでに四十人近くが行方不明になっており、調査に向かった悪魔たちもいつのまにか姿を消していたという。

 

「なるほど、だいたいは把握しました。それではしばらく我々独自で行動したいのですがよろしいでしょうか?」

 

「もちろん、かまいません。一刻も早くいなくなった者たちを見つけてください」

 

「はい、必ず。匙さん、行きますよ」

 

「あ、ああ」

 

町長との話を終え、煉は匙を連れて町の中を歩き出すと匙が煉に話しかけてくる。

 

「な、なあ、ヴィクトル。何か俺の予想以上にヤバいことになってねえか?たった数日で四十人もいなくなるなんて・・・・俺たちだけで何とかできるのか?」

 

「バカが。下手に人数を多くしてくるとかえって混乱を招く。それに神隠しの謎はもうあらかた解けてる」

 

「もうっ!?早くね!?」

 

「少し考えれば簡単だ。一つ、テロリストが神隠しという現象を作っている。だが、この可能性は低い」

 

「何で?俺はてっきりテロリストがやっていると思ったんだが」

 

「神隠し現象はテロリストが行動を起こす前から起きていた。それにこの前の魔獣騒動が起きてからここまで異常に発生するのはおかしい。まるでテロリストのせいにしているように俺は感じる」

 

「その言い方だとまるで禍の団(カオス・ブリゲート)が犯人じゃないみたいだな」

 

「あくまで可能性の話だけどな。わざわざテロリストがあんな騒動を起こしてこんな小さな町の奴らを神隠し現象を利用して人を攫うより、一気に町の奴ら全員攫った方がいちいちこの町に来るよりずっと楽で面倒もかからない」

 

「言われてみれば、禍の団(カオス・ブリゲート)が町の人たちを攫っているとは聞いてねえし、もし、ヴィクトルの言うとおりならすでにこの町の人たちはテロリストに攫われたら報告が来るよな」

 

「そうだ。二つ、この町になにかあるか。俺はこれが神隠しの原因の可能性が高いと思う。この町にはなん百年の前から数人ではあるが神隠しが起きていたのにもかかわらず誰もこの町から出ていこうとしない。普通なら気味悪がって出ていくのに出ていく奴らがいない。今のような現状でもな」

 

煉の言葉に匙は辺りを見渡すとすれ違う人数が少ないが誰も知らないかのように平然としていた。

 

「・・・・確か気味ワリィな。何で誰も出ていこうとしないんだ?」

 

「三つ、これはほぼ確信している。何百年の前からこの町に住みついている誰かが神隠しという現象を起こし、自分の都合のように町全員の奴らに何かを仕込み、誰かがいなくなってもおかしくないようにした。そして、魔獣騒動でテロリストの騒ぎを利用してこの町の女たちを神隠しに会わせ別の町に移動しようとしている」

 

「ちょっと待て。何で女だけなんだ?」

 

「周りに女の数と男の数を比べてみろ。あきらかにおかしいだろ」

 

煉の言うとおりに周りを見ると女より男のほうがあきらかに多かった。そして煉が匙に忠告する。

 

「気をつけろ、匙。もし、俺の予想が正しかったら今回の主犯の力量はハンパねえぞ。数百人だけとはいえ、誰も怪しまれず、気づかせないなんてとんでもない能力の持ち主だ」

 

「止めてくれよ!だったらなおさら俺より、他の奴らにしてくれよ。お前の眷属たちは全員、強いじゃねえか」

 

「そんなつれない事言うな。男同士、たまには付き合え。あ、今の俺は女だったな。失礼」

 

くるりと回りながら笑顔を匙に向ける煉。スカートも一緒に回り、匙は顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「おま!何で女物の下着なんか着けてんだよ!?」

 

「ん?ああ、一応、女の体だから女物の下着を着けろとリアスたちがうるさかったからな。別に慣れればどうてこともない。それに元から女の体には熟知しているし、いざとなれば洋服変換(ドレス・チェンジ)でどうとでもなる」

 

「おまえ、いつかその姿で男に襲いそうだな。女に飽きたとか言って」

 

「それはない。俺は心の底からの女好きだ。間違っても木場みたいにはならない。まあ、お前やイッセーにならやらんでもないぞ?足コキを」

 

「誰がそんなこと頼むか!俺は会長一筋だ!」

 

「実は会長には好きな男がいるんだぜ」

 

「・・・・・・・・死にます」

 

笑みながら匙にとっての爆弾発言に匙は気に縄を括りつけて輪に首を通そうとしていたが煉が急いで止める。

 

「冗談だ冗談。だから死ぬな。お前が死んだら俺がソーナの眷属たちに殺されるわ」

 

ソーナの眷属の殆どが匙に惚れている奴ばかり。だが、匙はまったくそれに気付かずソーナ一筋で頑張っている。

 

そういや、花戒と仁村が早くソーナも口説いてくれって頼まれたな。ま、生憎俺はまだソーナを口説かねえよ。まだな。

 

フフフと心の中で笑み煉に匙か声をかけて来ていた。

 

「なぁ、ヴィクトル。これからどうするんだ?お前の仮説通りならこの町の近くに神隠しの犯人がいるんだろ?どうやって探すんだ?」

 

「ああ、それは心配するな。簡単だ。俺が神隠しに会えばいいんだよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 

平然と恐ろしいことを言い放つ煉に匙は仰天するが煉は淡々と説明する。

 

「まず、間違いなく神隠しの主犯、こいつを・・・・・そうだな、女好きだけは俺と同じようなのでエロ怪盗と名付けよう」

 

「すっげーどうでもいいな!それ!」

 

「まあ、聞け。エロ怪盗は女を狙う可能性が高い。だから俺の方が神隠しに会いやすい。それに会った方が行方不明者を発見しやすいしな」

 

「でも、おまえがそのまま行方不明になったらどうするんだよ」

 

「そうしない為にもお前の力が必要なんだよ。お前のラインで俺を繋ぎ、命綱を作る。そうすればそれをたどって行方不明者たちと一緒に脱出できる。それに、もしエロ怪盗が何かの魔物の類なら俺がそのままぶっ飛ばせばいいだけだしな・・・・・・ん?どうした?」

 

作戦を匙に説明していると匙は目を見開きながら煉を見ていたことに気づいた煉は怪訝そうに首を傾げると匙の視線から外れる。

 

「悪いが男に視姦される趣味はねえんだ。他を当たってくれ」

 

「違ーよ!そんなんじゃねえし、俺もそんな趣味はねえ!」

 

「じゃあ、何なんだよ」

 

煉の問いに匙は頭を掻きながら答える。

 

「・・・・本当、お前はスゲーと思う。まだ来てから少ししか時間が経ってねえのにそこまで考えられるなんて。俺だけだったらそこまで考えられねえ。先生を目指してんのに俺は」

 

匙の口を指で押さえて喋れないようにすると煉は歌憐バージョンで匙に言う。

 

「私はこういう異常な現象での経験が豊富なだけですよ。ようは慣れです。匙さんが努力しているのは誰もが知っています。だから、落ち込む必要なんてないですよ」

 

笑みながら匙を励ます煉に匙は視線を煉から逸らすのを見て煉はニヤニヤと笑む。

 

「どうした?匙。視線なんか逸らして俺に惚れたか?ん?」

 

「んなわけねえだろ!ほら、さっさと終わらせるぞ!」

 

「はいはい」

 

足踏みをしながら先に進む匙に煉も嘆息しながら追う。そして、煉の体にラインが繋がれ作戦を開始した。煉はとりあえず町より少し離れた森の中で一人歩いて行く。匙は煉の指示通りにラインを繋げたまま少し距離を取って移動する。

 

ヴィクトルの野郎。いくら一人のほうが狙われやすいからって大丈夫なのかよ。

 

煉から少し距離を取りながら煉を心配する匙。今のところ何も問題は起きてはいないがいつでも戦闘に持ち込めるように神器は発動させ、周りに警戒すると匙はあることに引っかかっている。

 

そういや、何かが引っかかるんだよな・・・。いったいなんだ?クソッ!思いつかねえ!

 

何にも思いつかない自分に苛立っているとラインに変化が起きた。それに気付いた匙は慌てて煉のほうに視線を向けると煉の姿が消えていた。

 

「・・・・・ウソだろ。一瞬、目を離しただけで・・・・・おい!ヴィクトル!いたら返事しろ!」

 

大声で煉の名を呼び続ける匙はラインをたどって行き煉のいたところにまで行くと突然、視界が暗くなった。

 

「なっ!?どこだここは!?おわっ!?」

 

暗闇のなか誰かに引っ張られた匙は急いで振り返って見ると

 

「アホか。お前まで来てどうする。作戦台無しじゃねえか」

 

「ヴィクトル!」

 

匙を引っ張ったのは煉だった。煉は嘆息しながら匙に言う。

 

「俺が帰れるようにお前がラインを繋げておけって言っただろ。何でお前まで神隠しに会ってんだよ」

 

「う・・・・悪い」

 

「まあいい。それよりこれからどうするかだ。周りを見てみな」

 

暗闇のなか匙は周りを見るとそこには大勢の女性がいた。泣いている女性、嘆いている女性、周りに怒鳴りつける女性、落ち込み女性。様々な感情をむき出しにしながら暗闇に囚われている女性たちがいた。

 

「数的にはちょうど町の女たちだろう。ここに閉じ込められたみたいだな」

 

冷静になりながら思考を働かせる煉は男に戻って町の女性たちのほうへ行くと煉に話しかけてくる人物がいた。

 

「もしかしてヴィクトルさんでしょうか?」

 

「ん?あんたは確かシーグヴァイラ・アガレスか。」

 

青いローブを身に着けメガネをかけた女性、シークヴァイラ・アガレスが煉に話しかけてきた。

 

「あんたも魔王からここの調査に来ていたのか?」

 

「ええ、しかし、お恥ずかしいことに私まで神隠しに会ってしまって、見たところあなたもそのようですね」

 

「ああ、どっかのアホが帰り道を塞いじまったせいでな。それより、今、あんたが知っている情報を教えてくれ」

 

煉の言うとおりにアガレスはこれまでの出来事を話す。魔王さまに言われ町の調査に来たがいつのまにかこの暗闇に閉じ込められてしまった。

 

「一応、この空間も調べてみました。どうやらここは一つの箱のような中で壁も存在しております。試しに魔力をぶつけてみましたが何の効果もありません」

 

「なるほどな、厄介極まりねえな」

 

「そうだ!ヴィクトル!お前の瞬間移動が出来る神器で!」

 

「出来るならとっくにそうしている。だが、出来ねえんだ。俺の次元空間(ディメンション・スペース)は神器独自の次元空間を通って移動しているんだ。恐らくここは空間そのものを閉じ込めた何かだ。空間を閉じ込められたら次元空間(ディメンション・スペース)は使えねえ」

 

煉の言葉に頭を悩ませる匙だが煉はアガレスに訊いた。

 

「この空間に閉じ込められ何かあったか?」

 

「実は数人ではありますが・・・・・・その・・・・・され・・・・・」

 

「何だって?」

 

口ごもるアガレスに煉は聞き返すとアガレスは恥ずかしそうに小さな声でつぶやく。

 

「・・・・たんです・・・・」

 

「聞こえねえよ。もっと大きい声で言ってくれ」

 

「裸にされたんですよ!そして、そのままいなくなってしまったんです!」

 

顔を真っ赤にしながら叫ぶアガレスの言葉を聞いた煉と匙。匙にいったっては一瞬思考が止まり、煉は表情一つ変えずに言う。

 

「さすがはエロ怪盗。盗んだ女を溜めこみゆっくりと喰うのが趣味か。だったら俺たちも急いでここから脱出しねえとな」

 

「それが出来れば苦労はしませんが、何かいい手があるのですか?」

 

「多分な。匙。試しにヴリトラの炎を空間の壁に放ってみてくれ」

 

「ん、ああ」

 

匙は煉の言うとおりにヴリトラの黒炎を壁にぶつけるが何の変化も見れなかった。それを見たアガレスと匙は悔しそうにする。

 

「やはり、無理ですか」

 

「どうするんだよ、ヴィクトル。ヴリトラの炎が効かねえんなら何か他の手はねえのか?」

 

ヴリトラの炎が効かないことがわかり匙は次にどうするか煉の意見を聞こうとしていたが煉は先程、匙の放った黒炎の壁を触れる。

 

「・・・・なるほど、わかった。呪いや呪縛系の技じゃない。人などを空間にへと閉じ込める能力だ」

 

「どうして、そう断言できるのですか?」

 

「この壁を見てみな」

 

煉は黒炎がぶつかった壁を指すとその壁には傷一つどころか汚れ一つついていなかった。

 

「もし、この壁が呪いや呪縛系統なら匙のヴリトラの力をぶつければ何らかの変化が起きるはずだ。なのにこの壁には汚れ一つついていない。何故なら」

 

ガキン!

 

煉は魔剣で壁を斬ろうとしたとき、壁に当たる数ミリで魔剣が止まり、壁に当たっていなかった。

 

「薄い透明なもう一つの壁でこの空間の中からの攻撃を守っているんだ。こんなこと出来るのは空間系の能力じゃないと無理だ」

 

「じゃあ、どうすることもできねえじゃねえか!?」

 

怒鳴るように叫ぶ匙を無視して煉はアガレスに言う。

 

「シーグヴァイラ。悪いが町の女たちに防御の魔法を頼む。少し強引だが脱出する」

 

「・・・・・・出来るのですか?」

 

一瞬、煉の言葉に驚いたアガレスだがすぐに冷静な表情に戻り確認すると煉は頷いて答える。

 

「ああ、匙。お前はラインで町の女たちがバラバラにならないようにしてくれ。これからこの空間ごと斬り裂く」

 

「わ、わかった!」

 

匙はとアガレスは煉の指示通りに動き出し、煉は魔剣を次元刀にへと変化させる。

 

次元そのものを斬り裂くことのできる破月次元斬ならこの空間ごと斬り裂くことは出来るはず。問題があるとすればその後だ。

 

煉がもし、空間を斬り裂いても元の場所には戻れないかもしれない。もしくは別の場所になっているかもしれない。だが、煉自身それはまだ何とかなる。一番の問題は空間を斬り裂いた先には何もない世界だったらどうするか。その場合は元の場所に戻れる自信が煉にはなかった。

 

とはいえ、このままだと余計に危ねえし、一か八かの賭けに賭けるしかねえな。

 

次元刀を握り、刀身に揺らぎを発生させる。そして、防御魔法が完成したアガレスとラインの繋ぎ終わった匙が煉に叫ぶ。

 

「ヴィクトル!こっちは完了した!」

 

「お願いします!」

 

「ああ、まかせな!」

 

次元刀を振り上げ、力を込める煉は一呼吸して叫ぶ。

 

「破月次元斬ッ!」

 

次元の裂け目を飛ばした煉の斬撃はそのまま壁へとぶつかり、壁に衝突したときに衝撃波が匙たちを襲うがアガレスの防御魔法でそれを防いでいた。そして、衝撃が収まり、視線を煉の方へと向けるが

 

「・・・・失敗・・・・したのか・・・」

 

破月次元斬の衝突した壁は無傷だった。だが、煉は匙たちのほうに振り返り笑みを浮かばせる。

 

「成功だ」

 

バリィィィィイイイイイイイイインッ!

 

煉の斬り裂いて生まれた裂け目から亀裂が広がり空間を破壊するとそこは煉たちがいなくなった森のなかだった。そして、外に出られた町の女たちが歓喜していると匙とアガレスが煉のところに来る。

 

「やったな!ヴィクトル!これで魔王さまからの依頼達成だ!」

 

「ありがとうございます。あなたのおかげで私も出ることが出来ました。この礼はいつか」

 

依頼が達成したと喜ぶ匙と礼を言うアガレスに煉は首を横に振る。

 

「いや、礼を言われるまでもねえし、まだ依頼は達成していない。まだ主犯を捕まえられていないからな」

 

「「・・・・・あ」」

 

「レンの言葉に今回の依頼の内容を思い出す匙とアガレスだが煉は笑みを浮かばせて二人に告げる。

 

「まぁ、安心しな。主犯はもう誰かわかっているから」

 

そうして、煉たちは町の女たちを連れながら町へ帰った。

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