強欲を司る略奪者   作:ユキシア

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番外編 バレンタイン

バレンタインデーあるいはセントバレンタインズデーは2月14日に祝われ、世界各地で男女の愛の誓いの日とされる。もともと、269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌスに由来する記念だと、主に西方協会の広がる地域において伝えられていた。(Wikipedia調べ)

 

「野郎どもォォッ!準備はいいかぁぁああああああああああああっっ!!」

 

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!」」」」」」

 

松田を始めとする駒王学園男子生徒(一誠、木場、煉、ギャスパーを除く)が一つの教室に集まり怒声を上げる。

 

「諸君!まずはこれを見てくれ!」

 

元浜がメガネを上げ黒板を叩くとそこには一誠、木場、煉の写真が貼られていた。そのなかの一枚、木場を指す。

 

「まずは皆を知っているように我が駒王学園一のイケメン、木場祐斗!」

 

「イケメンめ!」

 

「いつも女子を独り占めしやがって!」

 

「イケメンなんて滅んでしまえ!」

 

男子生徒たちの怒りと嫉妬が混じった殺意を飛ばすが松田が手で制して止める。

 

「皆の気持ちは痛いほどわかる。だが、今は我慢だ。今は情報を纏めるのが先決だ。元浜参謀。説明を」

 

「駒王学園二年、木場祐斗。爽やかな挨拶と紳士的な態度で女子から高い人気を誇る。よって警戒ラインはAと断定!」

 

「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおそんなにイケメンがいいか!?いったいイケメンの何がいいんだぁぁああああああああああああああああああっっ!」」」」」」」」

 

男子生徒たちの木場に対する嫉妬に教室は震える。その想いに松田も涙を流す。

 

「わかる!わかるぞ!皆の気持ち!ちくしょう!イケメンなんて滅んでしまえぇぇえええええ!!」

 

「落ち着け、松田隊長!イケメンは我らにとって敵という気持ちは多いに賛成だが今の我らには重大な任務がある」

 

「・・・・・ああそうだったな。すまなかった。元浜参謀。続けてくれ」

 

「ああ、次に我らの悪友である兵藤一誠!」

 

「くたばれ!」

 

「あの世へ落ちろ!」

 

「いや、地獄を味わってから死ね!」

 

圧倒的な殺意が教室を一瞬で充満させる。

 

「この半年で悪友、兵藤一誠は変わった。我らの天使、アーシア・アルジェントちゃん、クールのゼノヴィアさん、天真爛漫少女、紫藤イリナちゃん、学園のマスコット塔城小猫ちゃん。うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお小猫ちゃんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっっ!!」

 

「落ち着くのだ、元浜参謀!」

 

「ハッ!すまない、取り乱した。ごほん、我らの悪友、兵藤一誠は以上あげられた学園トップクラスに入る女子に何故かモテている」

 

「奴にモテない男の鉄槌を!」

 

「ギロチンを!」

 

「アイアンメイデンを!」

 

「どうどう、皆、落ち着け。というかどこからそんなもん出した?え、ここにあった?何でそんなもん学園に・・・・え?所持者、煉 ヴィクトル。ああ、納得」

 

教室から出てきた鉄槌、ギロチン、アイアンメイデンを元の場所に戻し、話を戻す元浜。

 

「だが、それ以外の女子からは我らの流した噂で最低クラスだ。よって警戒ランクはB」

 

「まあ、打倒だな。だが、一番の問題が残っている・・・・・ッ!」

 

松田の震えた言葉に教室に集まった男子生徒全員の体が微かに震えるなか、元浜もメガネをあげて冷静な口調を装い続ける。

 

「頭脳は測定不可能と言ってもおかしくないほど異常。運動神経は世界トップクラス。世界規模の企業の社長。容姿端麗だがその中身はドSの鬼畜で女好きの野獣。だが、学園、いや、学園以外でも恐らく抱かれたい男No1と断言できる。更に恐ろしいのはそこ知らずの強欲」

 

「・・・・・去年、学園の表では木場が多くもらっているがその裏で奴は木場以上にもらっているという噂もあった」

 

「・・・・奴は木場や兵藤とは桁が違う!警戒ランクSS!皆、奴には十分、いや、十二分に気をつけてくれ!」

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

松田の注意に男子生徒たちは静まった。その表情はまるでこれから勝敗が決まった戦いへ行こうとする敗兵のようだった。そんな男子生徒を見て松田は目を見開いた。

 

「お前ら!それでも我らIVUの同志か!?確かに奴は強敵だ!例えるならレベル1の勇者がレベル99の魔王に挑む程強敵だ!だが、それがどうした!?」

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

「ああ、確かに俺たちがこれからすることは無謀だ!負けるとはわかっている!だがな、それでいいのか!?俺は嫌だ!例え負けるとはわかっていても俺は戦う!何もしないで負けるより何かをして負けたほうがマシだ!!」

 

バンッ!

 

教室のドアを勢いよく開けて松田は自分の背中を男子生徒たちに見せつける。

 

「共に戦う奴は俺についてこい!」

 

多くは語らず松田はそのまま教室から出ていく。その松田の勇士に男子生徒たちは顔を見合わせ頷き一人、また一人と松田のあとを追い始める。それに気付いた松田は不敵に笑う。

 

「ふ、それこそが、イケメンからバレンタインのチョコを奪う。通称IVUの同志たちだ」

 

そうして松田を率いるIVUたちはバレンタインに向けて動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁああ~眠い。そして、甘いな。ウラル」

 

「んふふ~。甘いでしょう~このチョコ。せっかくのバレンタインなんだもん。一番にレンくんに渡したかったからね」

 

「だろうな。朝一番でチョコと一緒にウラルを喰えるなんてな。これは予想できなかった」

 

「ふふ。さぁ、私をた・べ・て♡」

 

全身チョコまみれで朝から煉に舐められいじられるのを嬉しがっているウラルに煉もウラルの体を余すことなく両方とも頂いた。

 

「ふぅ、ごちそうさま。美味かったぞ、ウラル。って聞こえちゃいねえか」

 

「あ・・・・・・ん・・・・・」

 

感極まった声を漏らしながらベットで寝そべっているウラルに煉は毛布をかけて部屋から出る。

 

「はよー、リアス、朱乃、雫、あずみ」

 

「おはよう、レン。朝から元気ね」

 

「ふふ、おはようございます」

 

「お兄ちゃん、おはよう」

 

「主。おはようございます」

 

「おう」

 

返事をしてウラル以外で朝食を食べ始める煉たちは食べ終わるとそれぞれの準備をして学園に向かう。そして、しばらく歩いていると

 

「ヴォクトルさん!これ、受け取ってください!」

 

「おう、ありがたくいただくぜ」

 

「ヴィクトル先輩!私のも!」

 

「ああ、もらうぜ」

 

通学中にも拘らずすでに煉の手元には数十ものチョコで埋め尽くされていたが煉はあらかじめ持ってきた袋にそれを入れる。

 

「相変わらずモテるわね」

 

「まあな。今年は去年以上にもらえるから準備は万全だ。おまえらのも楽しみにしてるぜ」

 

「ふふふ。楽しみに待っていてください」

 

「ヴィクトルさ~ん!」

 

そう雑談も混じりつつ歩いていると再び遠くからトッピングが施された箱を手に持っている女生徒が煉のところに向かって走ってきていた。煉もかわらずその女生徒のところに行こうとした瞬間。

 

「おっと」

 

突然、野球ボールが煉目掛けて飛んできたが煉はそれを躱し足で見事に来た方向へ蹴り返す。

 

「またか、こりねえな。IVUの連中」

 

煉はボールを蹴り返した方向を見てそうぼやく。

 

「あ、あの・・・」

 

「ああ、悪い。サンキューな」

 

女子生徒からチョコを貰い再び歩き始める煉たちより距離が離れた場所から姿を現す松田を率いるIVS。

 

「クソ、さすがにこんな手は通用しねえか」

 

「松田隊長!野球部の日下部が気絶しております!」

 

「すぐに保健室へ運んでやれ。あーあー、聞こえるか?作戦Aは失敗。繰り返す、作戦Aは失敗。次に作戦Bに変更」

 

『了解!』

 

松田たちと煉や一誠たちとのバレンタイン戦争はまだ始まったばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「木場くん!これ受け取って!」

 

「私のも!」

 

「うん、ありがとう」

 

爽やかな態度でチョコを受け取る木場の手もすでにチョコで埋め尽くされていた。それを見た木場は苦笑する。

 

「さすがにこれ以上は持てないな。どうしようか」

 

「なら、俺たちがいただいてやる!」

 

悩んでいる木場の背後から突然、襲いかかるように木場の抱えているチョコを奪おうとする男子生徒たち。

 

「ん~。レンくんなら袋を持ってるかな?彼も去年多く貰っていたし」

 

悩みながら男子生徒たちの略奪を軽やかに回避する木場だが男子生徒たちも負けずと襲いかかる。

 

「クソ!イケメンめ!」

 

「こんなところでもイケメン力を発揮するのか!?」

 

「この時間帯だし教室に行ってみるかな?」

 

「・・・・・・って、俺たちを無視するなー!!」

 

あっさりと男子生徒たちを撒く木場に男子生徒たちは叫ぶしかなかった。

 

「作戦B失敗です!繰り返します!作戦B失敗!松田隊長!指示を!?」

 

「く、やはりあの二人は後回しだ!先にイッセーを片づける!」

 

『サー!』

 

松田たちの醜い争いはまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーさん、これをどうぞ!」

 

「こ、これは・・・・・・・・ッ!?」

 

「はい。バレンタインチョコです。今日は好きな殿方にチョコを渡す日なんですよね」

 

頬を赤く染め嬉しそうに渡すアーシアに一誠は涙を流した。

 

「うう・・・・ありがとう!アーシア!一生大切にするからな!」

 

「いえ、イッセーさんが喜んでくれるなら私は・・・・」

 

「朝からあちーなお二人さん。教室の温度が上がってるぜ。チョコを溶かさないでくれよ」

 

桃色の空気になっていた一誠とアーシアに言ってきたのは大量のチョコを持っていた煉だった。それを見た一誠は鋭い目つきで睨む。

 

「相変わらず理不尽が似合うくらい貰ってんな!」

 

「ハハハ、悔しいか?ん?悔しいのか?イッセーくん。これが俺とお前との差だ!」

 

高笑いする煉の両手にはすでに袋から溢れんばかりのチョコが入っていた。

 

「ま、それでも今年は、今年は!チョコが貰えてよかったな、イッセー。これでお前も狙われるな」

 

「二回も言うな!というか狙われるって誰にだよ?」

 

「レンくん。袋持っていないかな?これ以上は持てなくて」

 

煉の言葉の意味が分からず聞き返すと両手にチョコを持った木場が教室に入ってきた。煉も鞄から袋を木場に渡す。

 

「ほいよ。その様子だとお前もか」

 

「うん。キミも、みたいだね」

 

「だから何なんだよ!?」

 

短き言い合っただけで通じる木場と煉の会話に苛立った一誠は怒鳴る。するといきなり教室の窓が割れそこから二人の男が現れた。

 

「イッセーェェェエエエエエエエエッッ!」

 

「裏切り者ォォォォオオオオオオオオッッ!」

 

「うおっ!?松田に元浜!?お前らどこから出て来てんだよ!?」

 

「「我らIVUは決してお前らを許さないっ!!」」

 

「ちょっ!?お前ら何しやがる!?」

 

アーシアから貰ったチョコを奪おうとばかりの勢いで襲いかかる松田に元浜。そして、少し離れたところで煉は笑い木場は苦笑しながら見ていた。

 

「うおぉい!お前ら助けてくれよ!」

 

「無理だ。自分のチョコぐらい自分で守れ。それがモテる男の宿命だ」

 

「そうだね、頑張ってね。イッセーくん。応援するよ」

 

「この薄情者ぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

それからチャイムが鳴るまで一誠はチョコを死守した。

 

「ヴィクトルくん。これあげる」

 

「はい、お礼は楽しみにしてるよ」

 

「おう、楽しみにしとけ」

 

休み時間に煉にチョコを渡そうとする女子たちが列を作って並んでいた。その光景を初めて見たアーシア、ゼノヴィア、イリナは驚愕する。

 

「・・・・・凄いな、まるでテレビで見たアイドルのサイン会のようだ」

 

「というよりこの学園の女子全員がヴィクトルくんに渡しに来てるんじゃない?」

 

「凄い行列です・・・」

 

「クソ・・・・やっぱりムカつく」

 

驚愕する三人の隣で嫉妬の眼差しを向ける一誠に煉は余裕な笑みを浮かべる。

 

「・・・・レンの野郎は木場と違って自分から女子に話しかけるからな。木場以上にモテるんだ」

 

「でも、それだけじゃないわよ」

 

突然、話に割り込んできた桐生が説明する。

 

「ヴィクトルくんのお返し目当ての子も結構いるんだよ。去年なんか『お返しはお菓子一年分頂戴ね』って冗談で言った子がいたのよ。そしたらあいつ本当にお菓子一年分で返したのよ。まぁ私もそれ目当てでさっきチョコ渡してきたけど」

 

「って、お前もかよ!?」

 

思わずツッコミを入れてしまった一誠。そして女子たちからチョコを貰い続けている煉の背後から数人の男子がいた。

 

「ヴィクトル!今年こそは!」

 

「そのチョコを喰わせてもらうぞ!」

 

「モテない男の怒りを思い知れッ!」

 

襲い掛かる男子生徒たちに煉は振り返らずポケットから三つ。小さな赤い球を取り出しそれを指で弾いて男子生徒たちの口の中に入れると男子生徒たちはその場で倒れ悶絶する。

 

「俺特性激辛チョコだ。じっくりと味わいな。まぁ、気が付いたころには口はたらこ唇になっていようがな」

 

それから放課後になるまでIVUは一誠や木場、煉(特に煉)のチョコを奪おうと躍起になったが誰一人たりとも奪えることは出来なかった。

 

「クソ!誰か!?誰か!?戦果を挙げた奴はいないのか!?」

 

「負傷者七名、軽傷者四名、死者、いえ、戦闘不能者十一名!戦果を挙げたものは・・・・・ゼロです!」

 

放課後に誰もいない教室を占領した男子生徒たちが成果を発表するが結果は惨敗。

 

「ちくしょう・・・・ッ!今年も・・・今年もダメだったか・・・・ッ!」

 

「戦闘不能者や負傷者は全員、ヴィクトルに返り討ちにあった者ばかりやはり奴だけは木場たちと次元が違います」

 

「イッセーや木場はともかくヴィクトルは容赦なく攻撃するからな。クソッ!何か・・・何か手はないのか!?」

 

号泣し床を殴る松田の肩に手を乗せてくる人物がいた。

 

「うっふっふ。お困りのようだね。少年」

 

「あ、あなたは・・・・誰?」

 

銀の長髪に銀のマントと仮面。全て銀で覆い尽くされた女性がいつのまにか現れた。そんななか元浜が得意のスリーサイズスカウターを発動するが。

 

「な、なんだと・・・これ俺のスカウターが効かないだと!?いったい何者だ!?」

 

「ふっふっふ。そうだね。ある時は可愛いものを精一杯愛でるのが大好きな美女!またある時は全身チョコだらけで愛する人に全身を舐められる美女!そして、その正体は」

 

マントを羽ばたかせ銀の髪が宙を舞い、仮面に隠されたその瞳からキラリと光った。

 

「バレンタインの使者!スウィートウラリンで~す!」

 

「「「「「ス、スウィートウラリン・・・・・ッ!?」」」」」

 

謎の銀色美女、スウィートウラリンの登場に松田や元浜を始めとする全員が唖然とするなか元浜が正気を取り戻しスウィートウラリンに問う。

 

「それで、スウィートウラリンさんが何故ここに?」

 

「ふっふっふ、それはね。せっかくのバレンタインの日に他の男の子からチョコを奪おうとするキミたちがあまりにも可哀想でバレンタインの国から飛んで来たの」

 

「・・・なんか酷い言われようだな」

 

「じ、事実だから否定も出来んが」

 

「だが、そんな君たちにバレンタインの神様がチャンスをくれたの!」

 

「「バレンタインの神!?チャンスとはいったい!?」」

 

スウィートウラリンの言葉に食いついた松田たちにスウィートウラリンは祈りるかのようなポーズを取り言う。

 

「そう、あなた方が本当にチョコが欲しい、可愛い女の子からチョコが欲しいと願ったとき美少女がチョコを渡しに来る。さあ!祈りましょう!バレンタインの神に!それでは失敬」

 

そう言ってスウィートウラリンは姿を消した。

 

「よっしゃああああああああ!祈ろうぜ!野郎ども!美少女からチョコを貰うんだっ!」

 

「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」」」」」」」」」」

 

ここにモテない男どもの心は一つになった。

 

「美少女からチョコ!美少女からチョコ!」

 

「美幼女からチョコ!美幼女からチョコ!」

 

「モテない俺たちにも青春を・・・バレンタインチョコを・・・・ッ!」

 

「ミステリアス系美女からチョコが貰えますように。ミステリアス系美女からチョコが貰えますように」

 

「金髪美女からチョコ・・・・金髪美女からチョコ」

 

それぞれの心の欲望をぼやきながら必死願ったとき教室の天井が光輝き出した。

 

「うわっ!?な、なんだ!?バレンタインの神か!?」

 

突然の輝きの目を瞑り次に目を開けたときは松田たちの視界に入ったものは

 

「バレンタインの国からあなた方にバレンタインチョコをお持ちしました!」

 

元気一杯な明るい声を出し水色の髪をポニーテールにしたメイド服姿の美少女。

 

「香歩さん!?」

 

「私だけではありません!」

 

香歩の後ろから出てきた少女。

 

「メガネのお兄さん。こんにちは」

 

「雫ちゃん!?」

 

更にその後ろから現れるレスティナ、サイト、鬼姫、あずみ、徹が現れた。次々現れる美女美少女に声も出すことを忘れた松田たちの前に香歩が笑顔で松田の前に立つ。

 

「はい、いつもお店に来てくださりありがとうございます。これはそのお礼です」

 

香歩から松田に渡されたのは装飾が施された箱。松田は手を震わせながらそれを受け取る。

 

「あ、開けてもいいですか?」

 

「もちろんです」

 

震える手を必死に動かしながら丁寧に開けるとそこにはハート型・・・・ではないが丸や四角、星型に型取りされたチョコがあった。それを見た松田の目から大量の涙が溢れ出た。

 

「うぅ・・・・こんな・・・こんなにも嬉しいものなのか。美女から貰うチョコレートは・・・・」

 

感動の涙を流す松田の隣にいる元浜に雫が裾を引っ張る。

 

「メガネのお兄ちゃんも、はい」

 

無邪気な笑顔で元浜にチョコを渡す雫に元浜も感激のあまり涙を流しながらチョコを貰う。

 

「ありがとう・・・ありがとう・・・雫ちゃん。俺は幸せ者だよ・・・・」

 

それから香歩たちは男子生徒たちにチョコを渡し始めた。

 

これでいいですよね。ご主人様。

 

ちらりと扉の方を見ると扉がほんの少しだけ開いていた。まるでそこから誰かが見ていたかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、サンキュー。ウラル」

 

「いいよ~。こっちも面白かったから」

 

廊下を歩きながらウラルに礼を言う煉。

 

「優しいね、レンくん。眷属の皆を使ってあの子たちにチョコをプレゼントするなんて」

 

「あいつらは面白いからな。ご褒美だよ」

 

「相変わらず飴と鞭の使い方が上手いよね。ところで・・・・その手に持っているものはなーに?」

 

ウラルが指す煉の右手にはビデオカメラが握られていた。

 

「一生に一度。モテない男たちにバレンタインの使者が現る。来年も撮ってあいつらに見せるんだ。そして、その時のリアクションを見て俺が楽しむ」

 

「やっぱり、何があっても一番楽しむのはレンくんだね」

 

「当たり前だろ」

 

ウラルの言葉に満面な笑みで答える煉。そして、ウラルたちを帰らせ煉は部室に向かって歩き出すとソーナに出会った。

 

「よう、ソーナ。チョコくれ」

 

「さっそくですか・・・・。どうぞ、市販の物ではありますがこれで良ければ」

 

「貰えるなら市販でもなんでもいい。お前がくれたってだけで十分だ」

 

「そう言ってもらえると幸いです。それでは私は生徒会の仕事がありますのでこれで」

 

安堵するかのように小さく息を吐くと再び歩き出す。

 

「ああ、何かあったら俺に言えよ。いつでも力になってやるからな」

 

「・・・・・・・ありがとうございます」

 

早歩きでその場を去るソーナの後ろ姿を見て煉は再び歩きながらすれ違う女子からチョコを貰い目的地である部室に到着する。

 

「おーす・・・・・・・イッセーが死んでる」

 

部室の扉を開けた瞬間、目の前で顔を真っ青にして倒れている一誠とその横で涙を流しながら必死に一誠を揺らしているアーシアと落ち込んでいるゼノヴィアとイリナがいた。

 

「リアス。説明プリーズ」

 

「・・・・・・ゼノヴィアとイリナがイッセーに手作りのチョコを渡したのよ。それを食べたら」

 

「こうなったと・・・・・・。イッセー、念願の美少女からチョコを貰ったんだ。成仏しろよ」

 

「勝手に殺すなぁぁあああああああっ!!」

 

「チッ」

 

「今の舌打ち何!?そんなに残念だったのか!?」

 

「まあ、一割の冗談は置いといて」

 

「九割は本当か!?」

 

「朱乃。紅茶くれ」

 

「無視するなぁー!」

 

いつもどおりにソファに座る煉とツッコミを入れる一誠。それを見て苦笑する木場や呆れるリアスや小猫。一誠が生き返り安堵するアーシアにいまだにショックから立ち直せないゼノヴィアとイリナ。

 

「どうぞ、レン」

 

「サンキュー」

 

そして、笑顔で紅茶を入れてくれる朱乃。煉は早速朱乃が淹れてくれた紅茶を飲むと気づく。

 

「チョコレートティーか」

 

「ふふ、正解ですわ。レン。これが私からのバレンタインチョコです」

 

「なるほど、美味しいぞ。朱乃」

 

「ありがとうございます」

 

朱乃のバレンタインティーを味わいながら飲むとリアスが煉が大量に貰ったチョコを指す。

 

「ところで、レン。あれはどうするの?いくらなんでもあの量を一人じゃ食べれないでしょう?」

 

「いや、普通に全部喰うぞ。もって一週間だな。このチョコが食べ終わるのは」

 

「・・・・・嘘でしょう?」

 

部室のテーブルに置かれた百はあるであろうチョコを煉は一週間で終わるくらいの量だった。

 

「部長、レンはとんでもないほどの甘党ですよ。糖尿病になってもおかしくないくらい食べても平然としていますから」

 

「俺にとっては普通だがな」

 

「普通じゃねえから言ってんだよ!」

 

そうなこんなで煉はいつも通りに部活を終わらせると香歩が働いているメイド喫茶へと向かう。

 

「「「「「お帰りなさいませ!ご主人様!」」」」」

 

「おう、ただいま。香歩いる?」

 

「「「「「今御呼びしますので少々お待ちください!」」」」」」

 

メイドたちが煉に席に案内させた後、すぐに香歩を呼びに行く。それから数分経後。

 

「ご主人様、どうなされたのですか?」

 

「チョコを貰いに来た。くれないか?」

 

「え・・・・ここで、ですか?」

 

「それ以外何かあるか?恥ずかしがらなくても今はバレンタインキャンペーンでチョコを多めに仕入れてるんだろ?他の客にもチョコを配ってるみたいだし、それに紛れて渡してくれたら問題ないだろう?それに今夜は久しぶりに祖父と祖母がお前ん家に来るんだろ?だったら今しかないだろう。お前の手作りチョコ美味いんだから貰わない訳ねえからな」

 

「・・・・・ご主人様」

 

薄らと感動の涙を流す香歩。煉の言うとおり今日は香歩の祖父と祖母が実家から香歩たちの家に遊びに来る。学園には入れないし夕方の忙しい時間帯ではメイド喫茶で働き、夜は家族と過ごす。そうなってしまっては煉にチョコを渡す機会がなかったが煉がそれに気遣って来てくれたことに香歩は嬉しかった。

 

「ぐす・・・ちょっと待っていてください!すぐに持ってきます!」

 

涙を拭き、すぐに動き出す香歩を煉は笑みを浮かばせていると香歩がすぐにチョコを持ってきた。

 

「ど、どうぞ。ご主人様」

 

照れながらもチョコを渡す香歩。煉はそれを笑顔で受け取るとすぐにそれを開ける。その中にはハート型の小さなチョコがいくつもあった。煉はそれを一つつまむ。

 

「香歩」

 

「なんでしょきゃっ!?」

 

何でしょうか?と訊こうとした香歩の腕を引っ張った煉はすぐさま香歩を自分の膝の上に座らせ向かい合わせると香歩が作ったチョコを香歩の口に噛ませる。

 

「香歩、口移しでくれ。キスまでは今はしなくていいから」

 

ざわめく他の客を無視し、満面な笑みで言う煉に香歩は気づいた。

 

そうでした・・・・・。ご主人様がこんないい感じに終わらせてくれる人ではありませんでした。

 

いい感じな雰囲気を出させて落とす。それが煉が香歩をいじめるときによく使う手。

 

「さぁ、速くしないと余計に目立っちまうぞ?もう充分に目立ってはいるが」

 

「うう~。やふぁふぃ、(やっぱり、)ごしゅひぃんひゃま(ご主人様)はひぃじふぁるれす(は意地悪です)

 

チョコを口に(くわ)えている為ちゃんと喋れないが煉は香歩が何を言っているには余裕でわかった。香歩もこれ以上何を言っても無駄だと分かり頬を赤く染めながらゆっくりと煉に口を近づける。

 

「ん・・・・」

 

唇と唇が重なるまでほんの一センチの距離で煉の口にチョコを渡した香歩の顔は真っ赤になっていた。

 

「うん、やっぱりいいもんだな。サンキュー香歩」

 

「・・・・・ご主人様のイジワル」

 

「わりぃわりぃ。じゃ、仕事頑張れよ。あ、それと他の奴らの記憶は誤魔化しているから変に言ってくる奴はいねえから安心しな」

 

煉は満足そうにしながらメイド喫茶を出た。

 

やっぱり、香歩で弄るのは楽しいな。次はどんな風に弄ってやろうか。

 

香歩の苦労はこれからも続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、レン。受け取りなさい」

 

家に帰ると玄関で待ち構えるように立っていたレスティナから煉はチョコを受け取るのを確認するとレスティナは煉に背を向ける。

 

「あ、味は保障しないわよ!リアスや朱乃に教わって初めて作ったんだから・・・・」

 

「お前の初めての手作りチョコか。ありがとな、レスティナ」

 

「べ、別にお礼を言われるまでもないわ」

 

「それでもだ、礼はしっかりとベットで満足さ」

 

ドッガァァアアアアアアアアアンッ!

 

レスティナの見事なアッパーが煉の顎を捉えて煉は天井に突き刺さった。

 

「レ、レスティナ・・・・お前、戦車(ルーク)のほうが相性よかったんじゃねえか?」

 

あまりの腕力に煉はそうつぶやきながら気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・・リアス?」

 

「おはよう。といってもあなたが気絶してからまだ一時間も経っていないけどね」

 

煉が目を覚まし最初に視界に入ったのはリアスの顔。煉は今、リアスに膝枕をされていることに気づいた。

 

「レスティナを転生するとき僧侶(ビショップ)じゃなくて戦車(ルーク)にすべきだったかな?」

 

「あれはどう考えてもあなたが悪いわよ。レスティナは純情なのだからからかうのもいい加減にしなさい」

 

「それが面白いから止められない止まらない」

 

「はぁ、まったくあなたって人は・・・・」

 

呆れるかのように嘆息するリアス。するとリアスは煉の口の中に何かを入れる。

 

「もぐもぐ・・・・・ウィスキーチョコか」

 

「そう、私も朱乃みたいにちょっと工夫してみたの。味はどう?」

 

「いい感じ、ちょうど俺好みだ」

 

「よかった。なら、今日はこのまま食べさせてあげるわ」

 

「そうだな、たまには甘えるのも悪くねえな」

 

そうして煉はそのままリアスに膝枕をされながらリアスのチョコをいただいた。

 

あ、そういえば松田たちにやったチョコ。普通のチョコに見せかけたハバネロ入り超激辛チョコだったな。ま、奴らも美少女からチョコを貰えたんだ。幸せだろう。

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